実用じつよう音楽おんがく

実用じつよう音楽おんがく（じつようおんがく、ドイツ語ご：Gebrauchsmusik）とは、音楽おんがくはそれ自身じしんのために存在そんざいするのみならず、特定とくていの目的もくてきのために存在そんざいするという、ドイツで発達はったつした思想しそうをいう。特定とくていの目的もくてきとは政治せいじ集会しゅうかいや軍ぐんの式典しきてん、ダンスや無声むせい映画えいがの伴奏ばんそう、学生がくせいの演奏えんそうなど教育きょういく目的もくてきの演奏えんそうも含ふくまれる。

実用じつよう音楽おんがくという考かんがえが生うみ出だされた背景はいけいには音楽おんがく学がくの発達はったつがある。19世紀せいき後半こうはんから20世紀せいきにかけて音楽おんがく学がくは主おもにドイツの学者がくしゃたちによって近代きんだい的てきな学問がくもんへと発達はったつし、伝記でんき研究けんきゅうだけではなく、歴史れきし上じょうの音楽おんがくの社会しゃかい的てきな位置いちづけや音楽おんがくと音楽家おんがくかの社会しゃかい的てきな関係かんけいなど研究けんきゅうテーマが広ひろがったことがある。それにより第だい一いち次じ世界せかい大戦たいせん後ごのドイツでは音楽おんがくを、個人こじん主義しゅぎ的てきかつロマン主義しゅぎ的てきな側面そくめんからとらえることよりも、現実げんじつ的てきな社会しゃかいや政治せいじとの関かかわりからとらえることに重おもきが置おかれるようになった。

最初さいしょに「実用じつよう音楽おんがく」という語かたりを使用しようしたのは音楽おんがく学者がくしゃのパウル・ネットルであるが、さらにハインリヒ・ベッセラーは聴衆ちょうしゅうが受うけ身みになる絶対ぜったい音楽おんがくに対たいして、実用じつよう音楽おんがくは参加さんか型がたの芸術げいじゅつであるとして肯定こうてい的てきな意味合いみあいを与あたえた。このように誰だれもがアクセスしやすい音楽おんがくという実用じつよう音楽おんがくの概念がいねんは商業しょうぎょう音楽おんがくの発展はってんにつながり、1920年代ねんだいのベルリンでのジャズやキャバレーソングの隆盛りゅうせいに大おおきな影響えいきょうを与あたえた。

クラシック音楽おんがくの分野ぶんやで実用じつよう音楽おんがくを提唱ていしょうした人物じんぶつとしてパウル・ヒンデミット、クルト・ヴァイル、エルンスト・クルシェネクらがいる。

関連かんれん項目こうもく

• 宗教しゅうきょう音楽おんがく
• 軍楽隊ぐんがくたい

参考さんこう文献ぶんけん

• Stephen Hinton, 'gebrauchsmusik,'New Grove Dictionary of Music and Musicians Online, ed. L. Macy, accessed 10 June, 2005. http://www.grovemusic.com
• Guido Salvetti. Historia de la música, 10. El siglo XX, primera parte. Madrid, 1986 (Turner Música) ISBN 84-7506-166-4