怪文書かいぶんしょ

怪文書かいぶんしょ（かいぶんしょ）とは、信憑しんぴょう性せいおよび発行はっこう者しゃが不明ふめいな状態じょうたいで出回でまわる事実じじつ上じょうの匿名とくめいの文書ぶんしょである。内容ないよう的てきには、その多おおくが特定とくていの組織そしき・個人こじんなどに関かんする情報じょうほうと称しょうする類るいのもの、誹謗ひぼう中傷ちゅうしょうもしくは一方いっぽう的てきな主張しゅちょうを述のべるものとなっている。根拠こんきょ不明ふめいであるかあるいは明確めいかくに誤あやまった情報じょうほうでありながら、拾ひろい読よんだ者ものにある種しゅの影響えいきょうを与あたえ得えるために問題もんだい視しされる。

目的もくてき・動機どうき

ビラの内容ないようが虚偽きょぎであってもそれを証明しょうめいすることは難むずかしい。（撒まかれるビラの例れい）

会社かいしゃ、大学だいがく、役所やくしょなどの組織そしきにおいて不満ふまんを持もつ者ものや、選挙せんきょの際さいに対立たいりつ候補こうほを貶おとしめることを望のぞむ者ものによって多おおく作成さくせいされるとされている（ネガティブキャンペーン）。たとえその内容ないようが全まったくの事実無根じじつむこんだったとしても嘘うそであることを証明しょうめいすることが不可能ふかのうないし困難こんなんな場合ばあいもあり、様々さまざまな事情じじょうにより当事とうじ者しゃが否定ひていしきれずに、あるいは嘘うそである事ことを証明しょうめいできぬままに、さらに問題もんだいが大おおきくなってゆくケースもみられる。

不正ふせいを世間せけんに知しらしめるための義憤ぎふんに基もとづく内部ないぶ告発こくはつという形かたちによるもの、権力けんりょくや出世しゅっせ争あらそいに絡からんだ私利しり私欲しよくによる暴露ばくろ・中傷ちゅうしょうを目的もくてきとするもの、精神せいしん疾患しっかんによる妄執もうしゅうによるもの、また単たんなる愉快ゆかい犯はんによるものなど、その作成さくせいの動機どうきは様々さまざまである。過去かこのケースには、完全かんぜんな悪戯いたずら目的もくてきで流布るふされたものもみられる。最近さいきんではアクセスカウント数すうやアフィリエイト収入しゅうにゅうを効果こうか的てきに稼かせぐ為ために耳目じもくを集あつめる事ことなどを目的もくてきとしたブログの持もち主ぬしが、企業きぎょう不祥事ふしょうじ・著名ちょめい人じんのスキャンダル・オタクバッシングの風潮ふうちょうなどに乗じょうじて、「この様ような怪文書かいぶんしょが出回でまわっていて、自分じぶんも入手にゅうしゅした」などの様態ようたいを装よそおって、自作じさくの怪文書かいぶんしょをインターネット上じょうに掲載けいさいし、これが怪文書かいぶんしょの発信はっしん源げんとなっていると思おぼしきものも少すくなくない。

手段しゅだん

古ふるくは落書らくがきのような手書てがき文章ぶんしょうをわざと人目ひとめに触ふれさせる形かたちで貼はり付つけたり拾ひろわせたりといった様式ようしきもあったが、郵便ゆうびん業務ぎょうむの発達はったつした近代きんだい以降いこうでは、そのような情報じょうほうに比較的ひかくてき関心かんしんが高たかいと思おもわれる者ものに郵送ゆうそうするという形かたちを取とり、近年きんねんではコピー機きやFAXの普及ふきゅうといった情報じょうほう機器ききの発達はったつや通信つうしんの利便りべん性せい向上こうじょうにより、より広範囲こうはんいに短時間たんじかんで撒まき散ちらされる傾向けいこうが強つよい。特とくにインターネットの普及ふきゅう以降いこうは、これらの怪かい文章ぶんしょう発信はっしん者しゃはより簡便かんべんに、より大量たいりょうに、より素早すばやく、そして匿名とくめい性せいをより維持いじしやすい環境かんきょうが整ととのっている。

法ほう規制きせい

怪文書かいぶんしょの体裁ていさいをとって流布るふされる情報じょうほうは、組織そしきの内部ないぶにおける秘密ひみつ情報じょうほうであるが、内部ないぶの者ものによる内部ないぶ情報じょうほうの漏出ろうしゅつは背任はいにん罪ざいに該当がいとうすることがある。また、行為こうい者しゃが内部ないぶの者ものであるか外部がいぶの者ものであるかを問とわず、それが真実しんじつであってもなくても侮辱ぶじょく罪ざいや名誉めいよ毀損きそん罪ざいになりうる。さらにはデータの入手にゅうしゅ方法ほうほうのいかんによっては不正ふせいアクセス禁止きんし法ほう違反いはんや不法ふほう侵入しんにゅう罪ざいに問とわれることもあり、データの取得しゅとくの際さいにあわせてたとえばその媒体ばいたいとして有形ゆうけい物ぶつをも取得しゅとくすれば窃盗せっとう罪ざいにも問とわれうる。これらの犯罪はんざいの発覚はっかくを恐おそれてか、怪文書かいぶんしょの制作せいさく者しゃは多おおくの場合ばあいにおいて不明ふめいであり匿名とくめいであるか、或あるいは個人こじんを特定とくていさせない自称じしょうをとる。怪文書かいぶんしょが単たんなる告発こくはつと異ことなる点てんは、発信はっしん者しゃ自身じしんは匿名とくめいを強つよく望のぞんでいることで、そのため作成さくせい者しゃの真意しんいや内容ないようの真偽しんぎが不明ふめいな傾向けいこうが強つよい。ただ、事前じぜんに「そのような可能かのう性せいがありうる」という心証しんしょうを読者どくしゃ側がわが持もっていた場合ばあいに、それなりの行動こうどうを誘発ゆうはつさせる要因よういんになりうる。

1936年ねん 6月15日にちから1945年ねん 10月13日にちまで不穏ふおん文書ぶんしょ臨時りんじ取締とりしまり法ほうで「人心じんしんヲ惑乱わくらんシ、軍ぐん秩ヲ紊乱びんらんシ又またハ財界ざいかいヲ撹乱かくらんスル目的もくてきヲ以テ治安ちあんヲ妨害ぼうがいスベキ事項じこう」について「発行はっこうノ責任せきにん者しゃノ氏名しめい住所じゅうしょノ記載きさいヲ為ためサズ若わかハ虚偽きょぎノ記載きさいヲ為ためシ又またハ出版しゅっぱん法ほう若わかハ新聞紙しんぶんし法ほうニ依よル納本のうほんヲ為ためサザルモノであり、出版しゅっぱんシタル者しゃ又またハ之のヲ頒布はんぷシタル者しゃ」に対たいして刑事けいじ罰ばつが規定きていされていた。

過去かこの怪文書かいぶんしょ事例じれい

堀江ほりえメール問題もんだい
当あたり屋やグループ
松本まつもとサリン事件じけん - 「松本まつもとサリン事件じけんに関かんする一いち考察こうさつ」。
薔薇ばら十じゅう字じ団だん
甲州こうしゅう選挙せんきょ - 選挙せんきょ期間きかん中ちゅうに怪文書かいぶんしょ（中傷ちゅうしょうビラ）が多おおく出回でまわる。
田中たなか上奏じょうそう文ぶん
万歳ばんざい三唱さんしょう令れい
日本にっぽん解放かいほう第だい二に期き工作こうさく要綱ようこう
シオン賢者けんじゃの議定ぎてい書しょ
ピザゲート - 電子でんし掲示板けいじばんなどに繰くり返かえし投稿とうこうされていた偽にせの事件じけん。真しんに受うけた者ものによる襲撃しゅうげき事件じけんにまで発展はってん。
パーナさん事件じけん - コンサート延期えんきによって行いき場ばのないファンに向むけた根拠こんきょのない話はなしが次々つぎつぎと拡散かくさんされた。
2020年ねん東京大学とうきょうだいがく総長そうちょう選せん^{[要よう出典しゅってん]}
岐南ぎなん町まち元もと町長ちょうちょうによる女性じょせい職員しょくいんに対たいするセクハラ行為こうい - 調査ちょうさ委員いいん会かいのヒアリングに際さいして威嚇いかく・妨害ぼうがい目的もくてきと思おもわれる文章ぶんしょうが配布はいふされた。調査ちょうさ報告ほうこく書しょにはその文章ぶんしょうが「怪文書かいぶんしょ」と明記めいきされて記載きさいされている。

出典しゅってん

参考さんこう文献ぶんけん

中央ちゅうおう滿蒙まもう研究けんきゅう會かい『支ささえ那な問題もんだいの怪文書かいぶんしょ』 1929年ねん2月がつ
坂口さかぐち義弘よしひろ『ドキュメント怪文書かいぶんしょ企業きぎょう編へん』 1977年ねん国際こくさい商業しょうぎょう出版しゅっぱん
坂口さかぐち義弘よしひろ『怪文書かいぶんしょ』 1978年ねん大陸たいりく書房しょぼう
六角ろっかく弘ひろし　『怪文書かいぶんしょ』 2001年ねん光文社こうぶんしゃ
六角ろっかく弘ひろし　『怪文書かいぶんしょ〈2〉』 2002年ねん光文社こうぶんしゃ
六角ろっかく弘ひろし　『怪文書かいぶんしょの研究けんきゅう 1』 2002年ねん
「地下ちか文書ぶんしょで学まなぶ」『B-GEEKS vol.1』 pp.155-175
「特集とくしゅう「怪文書かいぶんしょ」「内部ないぶ告発こくはつ」の研究けんきゅう」『ZAITEN 2015年ねん2月がつ号ごう』財界ざいかい展望てんぼう新しん社しゃ

外部がいぶリンク

怪文書かいぶんしょ保存ほぞん館かん

この項目こうもくは、犯罪はんざい・事件じけん（犯罪はんざい者しゃ・犯罪はんざい組織そしきなどを含ふくむ）に関連かんれんした書かきかけの項目こうもくです。この項目こうもくを加筆かひつ・訂正ていせいなどしてくださる協力きょうりょく者しゃを求もとめています（プロジェクト:事件じけん・事故じこ）。