整流せいりゅう

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交流こうりゅう信号しんごうはんなみ整流せいりゅう全波ぜんぱ整流せいりゅう

整流せいりゅう(せいりゅうき、英語えいご:rectifier)は、電流でんりゅう一方向いちほうこうにだけながす(整流せいりゅう作用さようゆうする素子そし[1][2]交流こうりゅう直流ちょくりゅう変換へんかんする素子そし総称そうしょうであり、実際じっさい素子そしとしては、陰極いんきょく(カソード)と陽極ようきょく(アノード)の2端子たんし、あるいは、さらに制御せいぎょ端子たんしくわえた3端子たんしのものがある[1]

じゅん変換へんかん装置そうちともいう。また、整流せいりゅうもちいて交流こうりゅう直流ちょくりゅう変換へんかんする回路かいろ整流せいりゅう回路かいろじゅん変換へんかん回路かいろ)という。

整流せいりゅう種類しゅるい[編集へんしゅう]

整流せいりゅうもちいる回路かいろは、てい電圧でんあつしょう電流でんりゅうからこう電圧でんあつだい電流でんりゅうまで多岐たきにわたる。したがって、もちいる回路かいろてきした素子そし選択せんたくする必要ひつようがある。

整流せいりゅうとしては、以下いかのものがある。

また、制御せいぎょ端子たんしゆうする整流せいりゅうとしてもちいられる素子そしとうとしては以下いかのものがある。

整流せいりゅう回路かいろにおける整流せいりゅう素子そし)の接続せつぞく方法ほうほう[編集へんしゅう]

ダイオードモジュール(さんそう全波ぜんぱ整流せいりゅう

出力しゅつりょくがわ等価とうかしょうすうおおいほど、直流ちょくりゅうがわ脈動みゃくどう対策たいさく容易よういとなるので、だい電力でんりょく用途ようとほど等価とうかしょうすうおおくする。

たんしょうはん整流せいりゅう[編集へんしゅう]

整流せいりゅう素子そし1個いっこで、じゅん電圧でんあつ期間きかんのみ整流せいりゅうするもっと簡単かんたん整流せいりゅう方法ほうほう

はんなみ整流せいりゅう

たんしょうはん整流せいりゅうでは、交流こうりゅう正弦せいげんせいもしくはまけ部分ぶぶんのみがされ、のこりの半分はんぶん整流せいりゅう素子そしにより通電つうでん阻止そしされる。

電流でんりゅう用途ようとでは周期しゅうき半分はんぶん通電つうでんしない期間きかんであるため、出力しゅつりょくはパルスじょうとなり平滑へいかつみゃくりゅう参照さんしょう)するとひく電圧でんあつしかられないばかりか、電源でんげんがわにもおおくの高調こうちょうをもたらすため電源でんげん用途ようとにはあまりてきしない。しかしながら回路かいろけい交流こうりゅう電圧でんあつ測定そくてい回路かいろ後述こうじゅつ高周波こうしゅうはプローブの用途ようとでは、構造こうぞう単純たんじゅんであるのと整流せいりゅう素子そしを1つしか通過つうかしないためエネルギー損失そんしつ最小限さいしょうげんおさえられるため、もっぱらはんなみ整流せいりゅう主流しゅりゅうである。またしょう容量ようりょうDC-DCコンバータにおいては絶縁ぜつえんがたにおいてもせいパルスの矩形くけいであるためはん整流せいりゅうりる。

正弦せいげん入力にゅうりょく電圧でんあつ理想りそうてきはんなみ整流せいりゅう負荷ふか出力しゅつりょく直流ちょくりゅう電圧でんあつ[6]

Vdc, Vav直流ちょくりゅうまたは平均へいきん出力しゅつりょく電圧でんあつ
Vpeak, フェーズりょく電圧でんあつのピーク
Vrms, 出力しゅつりょく電圧でんあつ二乗にじょう平均へいきん平方根へいほうこん

たんしょう全波ぜんぱ整流せいりゅう[編集へんしゅう]

整流せいりゅう素子そしわせ、それぞれのじゅん電圧でんあつ期間きかん整流せいりゅうする。

たんしょうブリッジ整流せいりゅう[編集へんしゅう]

整流せいりゅう素子そし4で、たんしょう交流こうりゅう全波ぜんぱ整流せいりゅうする。

Graetz bridge 整流せいりゅう: 4のダイオードをもちいた全波ぜんぱ整流せいりゅう

スイッチング電源でんげんのACアダプタは、そのほとんどがこの構成こうせいをとる。

そう全波ぜんぱ整流せいりゅう[編集へんしゅう]

整流せいりゅう素子そし2で、正負せいふぎゃくそう交流こうりゅう整流せいりゅうする。

センタータップ英語えいごばん変圧へんあつと2ダイオードをもちいた全波ぜんぱ整流せいりゅう

おな出力しゅつりょく電圧でんあつるためにトランスのまきせんどうすうの2くみを、おのおのはん整流せいりゅうとしてもちいる関係かんけいじょうどう容量ようりょうたんしょうブリッジ整流せいりゅうよりも変圧へんあつおおきくなる。なおきょく真空しんくうかんにおいてはカソード共用きょうようできるため、2つのプレートをつ1ほん真空しんくうかんそうきょくかん)で整流せいりゅう回路かいろめた。

理想りそうてき負荷ふかたんしょう全波ぜんぱ整流せいりゅう平均へいきんおよび二乗にじょう平均へいきん平方根へいほうこん出力しゅつりょく電圧でんあつ

さんそうはん整流せいりゅう[編集へんしゅう]

さんそうはん整流せいりゅうさんそう全波ぜんぱ整流せいりゅう
サイリスタもちいたさんそうはん整流せいりゅう回路かいろ

整流せいりゅう素子そし3で、さんそう電源でんげんぜんそうはんなみ整流せいりゅうし、3そう整流せいりゅうとする。水銀すいぎん整流せいりゅう構造こうぞうじょう陰極いんきょく共用きょうようする構造こうぞうのため、はんなみ整流せいりゅう回路かいろ主流しゅりゅうであった。

さんそう全波ぜんぱ整流せいりゅう[編集へんしゅう]

サイリスタもちいたさんそう全波ぜんぱ整流せいりゅう回路かいろ

整流せいりゅう素子そし6で、さんそう電源でんげんぜんそう全波ぜんぱ整流せいりゅうし、6そう整流せいりゅうとする。

理想りそうてき負荷ふかたんしょう全波ぜんぱ整流せいりゅう平均へいきん出力しゅつりょく電圧でんあつ

ダイオードわりにサイリスタ使用しようされた場合ばあい出力しゅつりょく電圧でんあつは cos(αあるふぁ) ぶんだけ減少げんしょうする

12そう整流せいりゅう[編集へんしゅう]

サイリスタもちいた12そう整流せいりゅう

YΔでるた・YYまたはΔでるたΔでるたΔでるたYの結線けっせん変圧へんあつを2だいいちくみ使用しようして30位相いそうさんそう交流こうりゅう生成せいせいし、それぞれをさんそう全波ぜんぱ整流せいりゅうすることにより、12そう整流せいりゅうとする。

用途ようと[編集へんしゅう]

交流こうりゅう電源でんげんから直流ちょくりゅう電源でんげん[編集へんしゅう]

パソコンテレビ受像じゅぞう、オーディオ機器ききなどの各種かくしゅ電子でんし機器ききない電子でんし回路かいろのほとんどは、直流ちょくりゅう電源でんげん駆動くどうするように設計せっけいされている。商用しょうよう電源でんげんとう交流こうりゅう電源でんげんでこれらの回路かいろ動作どうささせるために、整流せいりゅうにより交流こうりゅう電源でんげんから直流ちょくりゅう電源でんげんる。ノートパソコンなどのACアダプタ代表だいひょうてきれいである。

高周波こうしゅうはプローブ[編集へんしゅう]

高周波こうしゅうはあるいは無線むせん周波数しゅうはすう電圧でんあつ測定そくていするのに、通常つうじょう交流こうりゅう電圧でんあつけいでは周波数しゅうはすうたかすぎて測定そくていできない。ゲルマニウム・ダイオードとうによる整流せいりゅう直流ちょくりゅう変換へんかんし、直流ちょくりゅう電圧でんあつけい測定そくていするということがおこなわれる。

AGC回路かいろ[編集へんしゅう]

受信じゅしんAGC回路かいろにおいて、てい周波しゅうは増幅器ぞうふくき中間なかま周波しゅうは増幅器ぞうふくき出力しゅつりょく電圧でんあつ整流せいりゅう直流ちょくりゅうちか電圧でんあつ変換へんかんして、その電圧でんあつもとかく増幅器ぞうふくきのバイアスりょう増幅ぞうふくりつ)を変化へんかさせ、AGC回路かいろ成立せいりつさせている。

電圧でんあつ調整ちょうせい回路かいろ[編集へんしゅう]

ぶんしゅう制御せいぎょ
パルス変調へんちょうにより、電圧でんあつ調整ちょうせいする。直流ちょくりゅうがわ脈動みゃくどう対策たいさく容易よういとなる。
位相いそう制御せいぎょ
周期しゅうきごとにおけるON時間じかん割合わりあい変化へんかさせることで、出力しゅつりょく電圧でんあつ連続れんぞくてき制御せいぎょする。サイリスタもちいたものはサイリスタ位相いそう制御せいぎょばれる。ちからりつひく高調こうちょう発生はっせいする。
変圧へんあつタップせつかわ
変圧へんあつタップにより、整流せいりゅう素子そし交流こうりゅう入力にゅうりょく電圧でんあつ制御せいぎょする。

ちからりつ改善かいぜん回路かいろ[編集へんしゅう]

交流こうりゅう入力にゅうりょく電圧でんあつ波形はけいわせた電流でんりゅう入力にゅうりょく波形はけいにし、ちからりつ改善かいぜんするためもちいられる。

ピーク電流でんりゅう制御せいぎょ
周波数しゅうはすう可変かへん発振はっしんおこなうことによりピーク電流でんりゅう波形はけい電圧でんあつ同相どうしょうにする。小型こがた機器ききもちいられる。
平均へいきん電流でんりゅう制御せいぎょ
周波数しゅうはすう固定こてい発振はっしんおこなうことにより平均へいきん電流でんりゅう波形はけい電圧でんあつ同相どうしょうにする。大型おおがた機器ききもちいられる。

平滑へいかつコンデンサ[編集へんしゅう]

整流せいりゅう回路かいろ抵抗ていこう負荷ふか接続せつぞくしたとき、負荷ふか端子たんしあいだ脈動みゃくどう成分せいぶんらすために、平滑へいかつコンデンサを整流せいりゅう回路かいろ出力しゅつりょく端子たんしあいだ挿入そうにゅうする。

この場合ばあい、そのしずかでん容量ようりょうおおきく、抵抗ていこう負荷ふか電流でんりゅうちいさいほど、コンデンサからの放電ほうでんゆるやかになり、脈動みゃくどう成分せいぶんちいさくなる[7]

脚注きゃくちゅう[編集へんしゅう]

  1. ^ a b 電気でんき用語ようご辞典じてん編集へんしゅう委員いいんかいへん新版しんぱん 電気でんき用語ようご辞典じてん』 コロナしゃ、1982ねん 「整流せいりゅう」「整流せいりゅう」「整流せいりゅう素子そし
  2. ^ 岡村おかむらそうわれ監訳かんやく 『IEEE電気でんき電子でんし用語ようご辞典じてん丸善まるぜん、1989ねん整流せいりゅう」「整流せいりゅう」「整流せいりゅう素子そし
  3. ^ a b 堀井ほりい武夫たけお電気でんき機器きき概論がいろん』コロナしゃ電子でんし通信つうしん大学だいがく講座こうざ〉、1963ねん8がつ30にち 
  4. ^ 宮入みやいり庄太しょうた 「4.整流せいりゅう回路かいろ」『大学だいがく講義こうぎ パワーエレクトロニクス』 丸善まるぜん、1974ねん
  5. ^ 佐藤さとう守男もりおだい3しょう ソフト同期どうき整流せいりゅうがたスイッチング電源でんげん…16.5V3A」『トランジスタ技術ぎじゅつSPECIAL No.57』 pp.47-49、CQ出版しゅっぱんしゃ、1997ねん
  6. ^ Lander, Cyril W. (1993). “2. Rectifying Circuits” (英語えいご). Power electronics [パワーエレクトロニクス] (3rd ed.). London: McGraw-Hill. ISBN 978-0-07-707714-3 
  7. ^ 電気でんき主任しゅにん技術ぎじゅつしゃ国家こっか試験しけん問題もんだい平成へいせい16年度ねんどだい3しゅ

関連かんれん項目こうもく[編集へんしゅう]