真空しんくうかん

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きょく真空しんくうかんから転送てんそう
5きゅうスーパーラジオに使つかわれる代表だいひょうてき真空しんくうかん(mTかんひだりから6BE6、6BA6、6AV6、6AR5、5MK9

真空しんくうかん(しんくうかん、べい: vacuum tubeえい: radio valve)とは、内部ないぶ高度こうど真空しんくうとし、電極でんきょく封入ふうにゅうした中空なかぞらかんかんだま)のことである[1]陰極いんきょくから陽極ようきょくながれる電子でんしりゅう制御せいぎょすることによって増幅ぞうふく検波けんぱ整流せいりゅう発振はっしんなどをおこなうことができる[2]

電子でんしかん[注釈ちゅうしゃく 1]あるいはねつ電子でんしかん[注釈ちゅうしゃく 2]などとばれる[注釈ちゅうしゃく 3]

概要がいよう[編集へんしゅう]

構造こうぞうとしては、一般いっぱんてきガラス金属きんぞくあるいはセラミックスなどでつくられた容器ようき内部ないぶ複数ふくすう電極でんきょく配置はいちし、容器ようき内部ないぶ真空しんくうもしくは低圧ていあつとし、少量しょうりょうまれガス水銀すいぎんなどをれた構造こうぞうつ。

原理げんり機能きのうとしては、電子でんし放出ほうしゅつする電極でんきょく陰極いんきょく)を高温こうおんにしてねつ電子でんし放出ほうしゅつ効果こうかにより、陰極いんきょく表面ひょうめんから比較的ひかくてきひく電圧でんあつにより容易ようい電子でんし放出ほうしゅつさせ、この電子でんし電界でんかい磁界じかいにより制御せいぎょすることにより、増幅ぞうふく検波けんぱ整流せいりゅう発振はっしん変調へんちょうなどができる。

きょくかん発明はつめいされたイギリスを中心ちゅうしんとした欧州おうしゅうおもに、その電極でんきょくかずにより、きょくかんのことをダイオード[注釈ちゅうしゃく 4]三極さんきょくかんのことをトライオード[注釈ちゅうしゃく 5]四極よんきょくかんのことをテトロード[注釈ちゅうしゃく 6]きょくかんのことをペントード[注釈ちゅうしゃく 7]以下いか同様どうよう)という。さらにきょくかんなかでも整流せいりゅうもちいるものをとくレクティファイア[注釈ちゅうしゃく 8]ぶこともある。

発明はつめい多様たよう小型こがたかんたいする代替だいたい用語ようご登場とうじょう[編集へんしゅう]

真空しんくうかん構造こうぞうをした小型こがたかん増幅ぞうふくなどをおこな素子そしは、発明はつめい当時とうじから真空しんくうかん(vacuum tube)とばれて発展はってんしたが、のちになって(真空しんくうのガラスかんという構造こうぞうではおなじでも)大型おおがたかんブラウン管ぶらうんかん、マイクロなみかんなど機能きのうことなるものや、機能きのうっているが内部ないぶ真空しんくうでない放電ほうでんかんなどが出現しゅつげんし、これらを電子でんしかん(electron tube)と総称そうしょうするようになり、従来じゅうらい真空しんくうかん」とばれた小型こがたかんは、受信じゅしんかん(receiving tube)とばれるようになった[3]

つまり「真空しんくうかん」という言葉ことばは、古風こふうもちかたとしては狭義きょうぎに、もっぱら小型こがた真空しんくうかんすが、いまでは広義こうぎに、小型こがたのものにかぎらず、真空しんくうもしくは低圧ていあつ雰囲気ふんいき空間くうかんにおける電界でんかい磁界じかいによる電子でんし様々さまざまいを利用りようする素子そし全般ぜんぱん総称そうしょうする用法ようほうもある(蛍光けいこうとうなどの光源こうげん目的もくてきとしたものをのぞく)。容器ようき内部ないぶ真空しんくうもしくは低圧ていあつとした陰極線管いんきょくせんかんブラウン管ぶらうんかんなど)、プラズマディスプレイ放射線ほうしゃせんみなもとかん代表だいひょうてきなものとしてXせんかん)、放射線ほうしゃせん検出けんしゅつかん代表だいひょうてきなものとしてGM計数けいすうかん)なども真空しんくうかんのひとつである。

日本語にほんごりゃくよびほう助数詞じょすうし[編集へんしゅう]

日本語にほんごでは専門せんもん用語ようごで「たま(たま)」、あるいは白熱はくねつ電球でんきゅう同様どうように「かんだま(かんきゅう)」[4]ともばれる。たとえば、トランジスタ使用しようアンプたいして真空しんくうかん使用しようのものを「たま(たま)のアンプ」とう。また、セット(電気でんき回路かいろによる装置そうち)に使つかっている真空しんくうかん本数ほんすうしょうして「nたま(きゅう)」といういいかたをする。たとえばAMラジオ受信じゅしん代表だいひょうてき構成こうせいひとつである、真空しんくうかんを5ほん使用しようしたスーパーヘテロダイン受信じゅしんを「5きゅうスーパー」と[5]。なお、たんかぞえるとき(たとえば部品ぶひん在庫ざいこすう)の助数詞じょすうしは「ほん[6](ほん)」。いっぽう、真空しんくうかん代替だいたいとして発明はつめいされたトランジスタなどの半導体はんどうたい素子そし専門せんもん用語ようごで「いし(いし)」とぶことがあり、回路かいろでの使用しようすうをあらわす助数詞じょすうしは「いし(せき)」がもちいられた[7]たんかぞえるときには「[6](こ)」)。

利用りよう減少げんしょうおよび現在げんざいつづ特殊とくしゅ目的もくてきでの利用りよう[編集へんしゅう]

21世紀せいきでは、一般いっぱんてき電気でんき電子でんし回路かいろにおいて汎用はんようてき整流せいりゅう変調へんちょう検波けんぱ増幅ぞうふくなど)にもちいる目的もくてき素子そしとしては、おおくが半導体はんどうたい素子そしえられ、真空しんくうかんはその役割やくわりをほぼえているが、半導体はんどうたいでは実現じつげんむずかしい高周波こうしゅうは/だい電力でんりょくあつか特殊とくしゅ用途ようとでの増幅ぞうふく素子そしとして現在げんざいでも使つかわれており、日本にっぽんでも放送ほうそうきょくよう、また防衛ぼうえいしょうとして製造せいぞうされている。またオーディオアンプや楽器がっきようアンプなどでは、現在げんざい真空しんくうかんによる増幅ぞうふく回路かいろがしばしばもちいられるため、それらの用途ようとのための真空しんくうかん現在げんざい製造せいぞうされている。

一方いっぽう特殊とくしゅ真空しんくうかん一種いっしゅであるマグネトロンは、強力きょうりょくマイクロ発生はっせいげんとして、電子でんしレンジレーダーなどに使つかわれ、現在げんざいでも大量たいりょう生産せいさんされている。テレビ受像じゅぞうなどにもちいるブラウン管ぶらうんかん広義こうぎ真空しんくうかんであり世界せかい量産りょうさんされているが、薄型うすがたテレビへの移行いこうから減少げんしょう傾向けいこうにあり日本にっぽん国内こくないでの生産せいさんオシロスコープなどの測定機そくていきなどをのぞ終了しゅうりょうしている。

ほかにも、Xせん発生はっせいさせるXせんかんや、こう精度せいどこう計測けいそくもちいるひかり電子でんしぞうばいかんかく融合ゆうごう装置そうちのマイクロ発生はっせいげんなど、真空しんくうかん高度こうど先端せんたんてき用途ようとに21世紀せいき現在げんざい使つかわれている。プラズマディスプレイ蛍光けいこう表示ひょうじかん (VFD) などには、長年ながねんわた蓄積ちくせきされた関連かんれん技術ぎじゅつ継承けいしょうされている。東日本ひがしにっぽん大震災だいしんさい事故じここした福島ふくしまだいいち原発げんぱつ現場げんばでは、真空しんくうかんはトランジスタより放射線ほうしゃせん影響えいきょうけにくい性質せいしつ利用りようして、ひと安全あんぜんることが困難こんなん場所ばしょにおける現状げんじょう確認かくにんはい作業さぎょうのためのロボットに搭載とうさいするカメラなどに真空しんくうかんもちいること予定よていされている[8]。また、MOSがたFETバイポーラトランジスタ真空しんくうかん構造こうぞうをあわせ真空しんくうチャネルトランジスタ実用じつよう徐々じょじょ現実味げんじつみびつつあり、デジタル回路かいろ高速こうそくのほか、高速こうそく動作どうさかしたテラヘルツ送受信そうじゅしん回路かいろ、そして真空しんくうかん同様どうよう放射線ほうしゃせん(宇宙うちゅうせん)の影響えいきょうけにくいことをかした人工じんこう衛星えいせいへの利用りよう期待きたいされている[9]

歴史れきし[編集へんしゅう]

エジソン白熱はくねつ電球でんきゅう実験じっけんちゅう発見はっけんしたエジソン効果こうか1884ねん)が端緒たんしょとなり、そのフレミング発明はつめい1904ねん)した素子そしきょく真空しんくうかんきょくかん)で、三極さんきょく真空しんくうかん三極さんきょくかん)は、リー・ド・フォレスト発明はつめい1906ねん)した。

すで白熱はくねつ電球でんきゅう製造せいぞう技術ぎじゅつがあり、リー・ド・フォレストの真空しんくうかんウェスタン・エレクトリックしゃでもリー・ド・フォレストの特許とっきょのもとに生産せいさんうつされ、1914ねん には三極さんきょくかん電話でんわ回線かいせんのリピーター回路かいろ汎用はんようされタイプM (101A) が製造せいぞうされた[10]1915ねんのバージニア、アーリントンあいだ大陸たいりく横断おうだん電話でんわ回線かいせん実験じっけんにおいては、550ほん真空しんくうかん使つかわれたとされている。使つかわれた真空しんくうかんはタイプL、タイプW、タイプSであった。アメリカぐんではフレミングバルブを使つかっていたこともありフランスせい通信つうしん使つかっていたが、だいいち世界せかい大戦たいせん末期まっきフランスからのRチューブの供給きょうきゅうとどこおるようになり、急遽きゅうきょ、タイプJ (203A) から耐震たいしん構造こうぞうした受信じゅしんよう検波けんぱ増幅ぞうふくかんであるVT-1が、タイプL (101B) をもとにタイプKの後継こうけいかんとして送信そうしんもちい5Wがた発振はっしん変調へんちょうかんであるタイプE (VT-2) [注釈ちゅうしゃく 9]製造せいぞうされた[11]1929ねんには5きょくかん (UY-247[注釈ちゅうしゃく 10]) が登場とうじょうし、1935ねん画期的かっきてきなメタルビームかん6L6)が登場とうじょう、これにより基本きほんとなる真空しんくうかん技術ぎじゅつ完成かんせいした[12]初期しょきコンピュータには大量たいりょう真空しんくうかん使用しようされ、寿命じゅみょうそろった真空しんくうかん大量たいりょう調達ちょうたつするのが製作せいさくじょう難関なんかんのひとつだった。れいとしてENIAC(1946ねん)には17468ほん使つかわれている。

しかし、

  • 原理げんりてきねつ電子でんしげんフィラメント・ヒーター英語えいごばん)が必要ひつようなので消費しょうひ電力でんりょくおおきく、発熱はつねつする。
  • フィラメントやヒータをゆうするため寿命じゅみょうみじかい(すうせんあいだ程度ていど)。
  • 真空しんくうかんそのものや、これをもちいる機器きき小型こがた耐震たいしんせい問題もんだいがある。

などの欠点けってんがあった。トランジスタ発明はつめいされ1960年代ねんだい以降いこうには生産せいさん歩留ぶどまりたかまって安価あんかになると、放送ほうそう通信つうしん分野ぶんや機器ききにおいては、次第しだいにトランジスタにってわられることとなった。その結果けっかしゅ回路かいろ真空しんくうかん使用しようしたテレビ受像じゅぞうラジオ受信じゅしんは、1970年代ねんだいはいると生産せいさん中止ちゅうしされた。なお直接的ちょくせつてき欠点けってんではないが、トランジスタではコンプリメンタリの素子そしられるという特長とくちょうがあるが、真空しんくうかんでは原理げんりじょう単一たんいつ極性きょくせいのものしかられないことも理由りゆうひとつであった。

電子でんし回路かいろ半導体はんどうたいひろ使つかわれるようになった1970年代ねんだいにおいても、こう出力しゅつりょく電波でんぱ送信そうしんというような用途ようとでは真空しんくうかんおも使つかわれていた。1976ねんきた「ベレンコ中尉ちゅうい亡命ぼうめい事件じけん」のMiG-25機体きたい検証けんしょうで、搭載とうさい電子でんし機器ききるい真空しんくうかん使用しようされており話題わだいとなった。

形態けいたい[編集へんしゅう]

真空しんくうかん形状けいじょうひだりからナスかん、STかん、GTかん、mTかん

容器ようきにはおおむね6つの形態けいたいがある。

  • ナスかん(1930年代ねんだいまで): 茄子なすびナスかたち[13]のガラスかん。Sかんともばれる[14]
  • STかん(1930年代ねんだい - 1950年代ねんだい): だるまかたち[13]のガラスかんで、「ダルマかん」ともばれる[14]
  • GTかん(1940年代ねんだい - 1950年代ねんだい
  • mT(ミニチュアあるいはミニアチュア)かん(1950年代ねんだい - 末期まっき
  • サブミニチュア(サブミニアチュア)かん(1960年代ねんだい - 末期まっき): 1941ねんRCAしゃ補聴器ほちょうきよう開発かいはつ、1942ねん試作しさく量産りょうさん開始かいしされた近接きんせつ信管しんかん使用しようされた)
  • ニュービスタ[注釈ちゅうしゃく 11]かん(1960年代ねんだい - 末期まっき

このほか外装がいそう金属きんぞくとしたメタルかんがある。メタルかん金属きんぞくつつおおわれているため、そとから内部ないぶることはできず、放熱ほうねつ効率こうりつたかめるため一般いっぱんてきくろ塗装とそうされている。メタルかん大文字おおもじ使つかいMTかん表記ひょうきすることがある[14]。これはミニチュアかん区別くべつするためである。

mTかん以降いこう小型こがた真空しんくうかんは、機器きき単体たんたいおおくの真空しんくうかん利用りようするようになり、その小型こがた多様たよう需要じゅようによって主力しゅりょくとなったものである。

ただ、小型こがた真空しんくうかんそのものは真空しんくうかん実用じつよう初期しょきにはすでにつくられており、1919ねんころには「ピーナッツ・チューブ」とばれる、mTかんよりも若干じゃっかんおおきめの真空しんくうかん、WE-215Aが登場とうじょうしている。しかしこれは初期しょき真空しんくうかん使用しよう電池でんち蓄電池ちくでんち乾電池かんでんち)にたよっていたことから、そのおも目的もくてき節電せつでんであり、WE-215Aなどは「経済けいざいかん」ともばれていた。

発熱はつねつする真空しんくうかんでは無理むり小型こがたのぞましいものではなく(はげしい温度おんど変化へんかによる材料ざいりょうおおきな膨張ぼうちょう伸縮しんしゅくにより、とく電極でんきょく損傷そんしょうしょうじやすく、この部分ぶぶんからの外気がいき侵入しんにゅう問題もんだいとなる)、そのもなく電灯でんとう普及ふきゅうし、電灯でんとうせん交流こうりゅう電源でんげん)による使用しよう一般いっぱんしたことから、メタルかん登場とうじょうした1935ねん以降いこう一部いちぶ目的もくてきのぞき、民需みんじゅにはおもにSTかん軍需ぐんじゅにはおもにメタルかんという状態じょうたいになった。

真空しんくうかんRCAしゃのメタルかんにより技術ぎじゅつてきにほぼ完成かんせいされたものとなったが、メタルかん軍需ぐんじゅにより開発かいはつされたものであり、コストだかであった。そこでていコストでメタルかんおとらないしょ特性とくせいつものとしてGTかん[注釈ちゅうしゃく 12]考案こうあんされ、おも民需みんじゅようとしてもちいられた。 GTかん米国べいこくではかなり普及ふきゅうしたが、日本にっぽんでは太平洋戦争たいへいようせんそう影響えいきょう特許とっきょ関係かんけいであまり生産せいさんされず、戦後せんご、STかんから直接ちょくせつ、mTかんへとその需要じゅよう移行いこうした。

だい世界せかい大戦たいせん本格ほんかくてき需要じゅようにより、真空しんくうかん本体ほんたいとピンを一体いったいとしたmTかん主力しゅりょくとなり、世界せかい各国かっこくひろ生産せいさんされた。その、ピンをはいしてリードせんをそのまま真空しんくうかん本体ほんたいからすことにより、さらに小型こがたしたサブミニチュアかんつくられた。

そしてトランジスタとの市場いちば競争きょうそうとなった末期まっきのニュービスタかんは、プリント基板きばん搭載とうさいして使用しようする目的もくてきのため、当時とうじのトランジスタとおな程度ていどおおきさまで小型こがたすすめられた。

なお、現在げんざい[いつ?]生産せいさんつづけられているオーディオよう真空しんくうかん後述こうじゅつ)などでは、オリジナルのものはメタルかんやGTかんであっても、ガラスかんがSTかん形状けいじょうとなっているものなどもある。

ふくごうかん[編集へんしゅう]

1ほん容器ようき複数ふくすう本分ほんぶん機能きのう封入ふうにゅうした、ふくごうかんそうさんきょくかん三極さんきょくきょくかんなど)とばれる製品せいひんもある[13]

特徴とくちょう[編集へんしゅう]

真空しんくうかん役割やくわりは21世紀せいきになってほぼ終焉しゅうえんしているが、高周波こうしゅうはだい電力でんりょく(10GHz・1kW以上いじょう)の用途ようとでは2013ねん現在げんざいでも真空しんくうかんもちいられている。トランジスタなど半導体はんどうたい比較ひかくしたおも特長とくちょう長所ちょうしょつぎとおりである。

  • キャリア自由じゆう空間くうかんちゅう電子でんしであるため、キャリア移動いどうたかい。
  • 強電きょうでんかいくわえられるのが真空しんくうちゅうであるため、構造こうぞうによってはたかたい電圧でんあつ確保かくほできる。
  • 構造こうぞう単純たんじゅんで、絶縁ぜつえん破壊はかいひとしによる可逆かぎゃくてき損傷そんしょうすくない(ごく短時間たんじかんならじょうかく多少たしょうえても破損はそんしにくい)。この特徴とくちょう利用りようして、軍事ぐんじ設備せつびなどでEMP攻撃こうげきによる負荷ふか予想よそうされる箇所かしょ半導体はんどうたいわりに真空しんくうかん使つかうことがある。

一方いっぽうで、短所たんしょつぎとおりである。

  • 消費しょうひ電力でんりょくおおきい(とく内部ないぶのフィラメントやヒータ)。
  • 寿命じゅみょうみじかい(通常つうじょう製品せいひんで1000あいだ程度ていどとく内部ないぶのフィラメントやヒータ。寿命じゅみょうきて従来じゅうらい性能せいのうなくなることをぞくに「ボケる」とぶ)。
  • コストがたかい(素子そし単価たんかたかい)。
  • 機械きかいてき振動しんどう衝撃しょうげきよわい。
  • 大型おおがたである。

動作どうさ原理げんり[編集へんしゅう]

電極でんきょく構造こうぞう動作どうさ[編集へんしゅう]

きょく真空しんくうかんによる整流せいりゅう作用さよう[編集へんしゅう]

きょく真空しんくうかんしき

きょく真空しんくうかんきょくかん)はガラスかんなかに、フィラメント電気でんき抵抗ていこう比較的ひかくてきおおきい電線でんせんで、りょうはし外部がいぶしてある)と、フィラメントにいたじょう電極でんきょく(アノード、形状けいじょうからプレートぶ)を封入ふうにゅうしたものである。

真空しんくうちゅうでフィラメント電極でんきょく陰極いんきょくカソード)に電流でんりゅうながすと加熱かねつされ、ねつ電子でんし放出ほうしゅつされる。このとき、フィラメントを基準きじゅんにしてプレート(陽極ようきょく、アノード)がわせい電圧でんあつあたえると、放出ほうしゅつされたねつ電子でんしせい電荷でんかかれ陽極ようきょくかってぶ。この結果けっかフィラメントからプレートにけて電子でんしながれがしょうじる。すなわち、プレートからフィラメントにかって電流でんりゅうながれることになる。また、プレートに電圧でんあつあたえるとねつ電子でんし電荷でんか反発はんぱつしてプレートにはたっしない。したがって、きょくかんはプレートからフィラメントにかう電流でんりゅうのみとおすことになり、整流せいりゅう効果こうかられる。

しきでは電極でんきょく並列へいれついてあるが、実際じっさい製品せいひんではフィラメントをかこむような、つつじょうのプレートをもった構造こうぞう普通ふつうである。

きょく真空しんくうかんはダイオードとばれたが、今日きょうではおな機能きのうった半導体はんどうたい素子そしを「半導体はんどうたいダイオード」、あるいはたんダイオードぶのが普通ふつうである。電源でんげん整流せいりゅうようのものはプレート電流でんりゅうおおきく、発熱はつねつおおきくなることから寿命じゅみょうみじかいことがおおい。機器ききにより、がり時間じかん突入とつにゅう電流でんりゅう問題もんだいはあるが、半導体はんどうたいダイオードえることが可能かのうなため、自作じさくアンプや真空しんくうかんラジオ補修ほしゅうとうで、整流せいりゅうかんのみ半導体はんどうたいえることもおこなわれている。

自動車じどうしゃよう電球でんきゅうにはぜんあきらとう制動せいどうとうのようにダブルフィラメントのものがある。このうちの一方いっぽうのフィラメントのみがれた状態じょうたいのものは、のこったフィラメントをヒーター、れたほうの電極でんきょくをプレートとればきょく真空しんくうかん同等どうとう構造こうぞうゆうしていることとなる。内部ないぶ活性かっせいガスが封入ふうにゅうされ真空しんくうでないものはうまくいかないが、ガスあつきわめてひくいものはフィラメントに適当てきとう電流でんりゅうながして整流せいりゅう作用さよう観察かんさつできる場合ばあいがある。

三極さんきょく真空しんくうかんによる増幅ぞうふく作用さよう[編集へんしゅう]

三極さんきょく真空しんくうかんしき

きょくかんのフィラメント(陰極いんきょく)とプレート(陽極ようきょく)のあいだあら網状もうじょう電極でんきょく形状けいじょうからグリッドぶ)を配置はいちする。この三極さんきょく真空しんくうかんにおけるグリッドは、陰極いんきょくたいするその電位でんい変化へんかさせることによって、陰極いんきょく-陽極ようきょくあいだ加速かそく電界でんかい増強ぞうきょうまたは抑制よくせいさせる役割やくわりっている。きょくかん同様どうように、プレートにたいしてせい電圧でんあつくわえられると、陰極いんきょくから放出ほうしゅつされたねつ電子でんしがプレートに到達とうたつする。そのとき一部いちぶねつ電子でんしはグリッドにまれるが、それ以外いがいおおくの電子でんしはグリッドをとお加速かそくされる。以上いじょうにより、グリッドにあたえる電圧でんあつ変化へんか入力にゅうりょく信号しんごう)を、プレートから電流でんりゅう変化へんか出力しゅつりょく信号しんごう)としてすことで、信号しんごう増幅ぞうふく可能かのうになる。

四極よんきょく真空しんくうかんきょく真空しんくうかん[編集へんしゅう]

三極さんきょく真空しんくうかん増幅ぞうふくりつたかめるには、グリッドをこまかくしておおくの電子でんし捕捉ほそくしたり、グリッドをカソードに接近せっきんさせて電子でんし軌道きどうへの影響えいきょうおおきくしたりする方法ほうほうかんがえられる。いずれもたかいプレート電圧でんあつ必要ひつようとなるため、ひくいプレート電圧でんあつもちいるにはグリッドとプレートのあいだだいグリッド(スクリーングリッド)をもうけ、せい電圧でんあつくわえる。これを四極よんきょく真空しんくうかんぶ。だいグリッドはプレートとグリッドあいだしずかでん遮蔽しゃへいし、浮遊ふゆう容量ようりょうちいさくする作用さようもある。

しかし、四極よんきょく真空しんくうかん安定あんてい動作どうさしないことがおおい。それはカソードからプレートに到達とうたつし、プレートから反射はんしゃ放出ほうしゅつされた電子でんしだいグリッドに吸収きゅうしゅうされて電位でんい変化へんかし、全体ぜんたい増幅ぞうふく特性とくせい影響えいきょうするためである。その問題もんだい解決かいけつするため、だいグリッドとプレートのあいだだいさんグリッド(サプレッサグリッド)をもうけ、カソードまたはアースに接続せつぞくしたものをきょく真空しんくうかんぶ。プレートから反射はんしゃ放出ほうしゅつされた電子でんしだいさんグリッドによって再度さいど反発はんぱつされるため、電子でんし影響えいきょうほとん安定あんてい動作どうさ可能かのうとなる。

また、四極よんきょく真空しんくうかんだいいちグリッドとだいグリッドの位置いちを、電子でんしいちてん収束しゅうそくするよう調整ちょうせいすることでも、電子でんし影響えいきょう減少げんしょうさせることができる。これをビーム真空しんくうかんび、こう効率こうりつ動作どうさ可能かのうなため電力でんりょく増幅ぞうふくおおもちいられる(ただし、動作どうさのプレート電流でんりゅうすくない場合ばあいには電子でんし影響えいきょうすくなからず存在そんざいし、特性とくせいあばれがけられない)。

ビームよんきょくかん[編集へんしゅう]

ビームよんきょくかん(または「ビームパワーかん」)は、カソードからの電子でんしりゅう複数ふくすう部分ぶぶんてき平行へいこうビーム形成けいせいし、アノードとスクリーングリッドのあいだてい電位でんい空間くうかん電荷でんか領域りょういき生成せいせいし、アノード電位でんいがスクリーングリッドの電位でんいよりひく場合ばあいにアノードからの放出ほうしゅつ電子でんしをアノードにもど[15][16]一部いちぶ円筒えんとう対称たいしょうビームよんきょくかんでは、カソードが、コントロールグリッドの開口かいこう一直線いっちょくせんならんだせまいストリップじょう発光はっこう材料ざいりょう形成けいせいされており、コントロールグリッド電流でんりゅう低減ていげんしている[17]。この設計せっけいは、こう出力しゅつりょくこう効率こうりつパワーかん設計せっけいにおける実用じつようじょう障壁しょうへきのいくつかを克服こくふくするのに役立やくだっている。 メーカーのデータシートでは、ビームよんきょくかんわりにビームきょくかんやビームパワーきょくかんという用語ようごがしばしば使用しようされ、ビーム形成けいせいプレートをしめすグラフィック・シンボルのわりにきょくかんのグラフィック・シンボルが使用しようされている[18]。ビーム・パワーかんは、同等どうとうのパワーきょくかんよりもなが負荷ふかせん、よりすくないスクリーン電流でんりゅう、よりたかいトランスコンダクタンス、よりひくだい3高調こうちょうゆがみという利点りてん提供ていきょうする[19][20]。ビームよんきょくかんは、オーディオの音質おんしつ改善かいぜんするために三極さんきょくかんとして接続せつぞくすることができるが、三極さんきょくかんモードでは出力しゅつりょく大幅おおはば低下ていかする[21]

陰極いんきょく加熱かねつ方法ほうほう[編集へんしゅう]

陰極いんきょく加熱かねつ方法ほうほうについて分類ぶんるいしたちょくねつかんはたねつかんがある。はたねつかんのほうが長所ちょうしょおおく、はたねつかん発明はつめい以降いこう一般いっぱんてきはたねつかんひろもちいられた。

ちょくねつかん
  • フィラメントと陰極いんきょく(カソード)を兼用けんようした電子でんしかん
  • フィラメント表面ひょうめんからねつ電子でんし放出ほうしゅつされる。
  • ねつ電子でんし放出ほうしゅつ効率こうりつはフィラメント材料ざいりょうによりまる。
  • フィラメントに通電つうでんすると、ガラスかん場合ばあい、フィラメントがひか様子ようす容易ようい観察かんさつできる。
  • はたねつかんくらべ、電源でんげん投入とうにゅうから動作どうさ開始かいしまでの予熱よねつ時間じかんみじかい。
  • 陰極いんきょく直流ちょくりゅう電位でんいはフィラメント電源でんげん直流ちょくりゅう電位でんいどう電位でんいであり、回路かいろ設計せっけいうえ制約せいやくとなる。
  • フィラメント電源でんげん交流こうりゅう電源でんげん場合ばあい出力しゅつりょく商用しょうよう電源でんげん周波数しゅうはすうノイズあらわれる。オーディオ回路かいろでは、このハムノイズ減少げんしょうさせるためフィラメント回路かいろ並列へいれつてい抵抗ていこう可変かへん抵抗ていこうをつなぎ、すりどう端子たんしグラウンドとして陰極いんきょく電位でんい調整ちょうせいするハム・バランサをもちいることがある。
はたねつかん
  • つつじょう金属きんぞくかん陰極いんきょく(カソード)とし、その内側うちがわにカソードと絶縁ぜつえんした加熱かねつよう電線でんせん(ヒーター)を内蔵ないぞうする電子でんしかん
  • ヒーターでねっせられたカソードの表面ひょうめんからねつ電子でんし放出ほうしゅつされる。
  • カソード材質ざいしつ選択せんたく自由じゆうまれた結果けっか効率こうりつてきねつ電子でんし放出ほうしゅつできるようになった。
  • ヒーターに通電つうでんすると、ガラスかん場合ばあい、カソードのはし中心ちゅうしんからヒーターがくら赤色あかいろひか様子ようす観察かんさつできるがちょくねつかん場合ばあいほどあかるくない。
  • ちょくねつかんくらべ、電源でんげん投入とうにゅうから動作どうさ開始かいしまでの予熱よねつ時間じかんながい。
  • 陰極いんきょく(カソード)とヒーター回路かいろ分離ぶんりされているので、陰極いんきょく(カソード)の直流ちょくりゅう電位でんいたいする自由じゆうおおきくなり、回路かいろ設計せっけい自由じゆうすことができる。
  • ヒータ電源でんげん交流こうりゅう電源でんげん場合ばあいでも、出力しゅつりょくにはちょくねつかんほどハムノイズはない。

代表だいひょうてき真空しんくうかん[編集へんしゅう]

  • 整流せいりゅうようきょくかん : 12F(K)、81、35W4、25M-K15、5M-K9、19A3、5G-K3、80BK、80HK、36AM3、35Z5
  • 整流せいりゅうようそうきょくかん : 80、5Z3、5AR4、5U4G(B)、6X4、5Y3、83、82、5G-K18、5G-K20、5G-K22
  • 検波けんぱようそうきょくかん : 6AL5
  • マジックアイ : 6E5、6M-E5、6M-E10、1629、1N3、1H3
  • 電圧でんあつ増幅ぞうふくようさんきょくかん : 6C4、76、6J5、6C5、6J4、WE101D、102D、104D、3A/167M
  • 検波けんぱようきょく電圧でんあつ増幅ぞうふくようさんきょくかん : 75、6Z-DH3、6Z-DH3A
  • 検波けんぱようそうきょく電圧でんあつ増幅ぞうふくようさんきょくかん : 6AT6、6AV6、6BF6、6SQ7、6SR7
  • 電圧でんあつ増幅ぞうふくようそうさんきょくかん : 12AX712AUえーゆー712AT712BH7A6DJ86SN76SL7、6240G、12R-LL3、12R-HH14、5678、6350、6414、30MC、109C、3A5
  • 電力でんりょく増幅ぞうふくようさんきょくかん : 10、12A、71A、45、VT-52、2A3、6B4G、WE300B、211、845、8045G、6(50)C-A10、VT-25(A)、VT-62、PX4、PX25(A)、WE275A、50、801A、R120、Ed、EbⅢ、AD1、6G-A4
  • 電力でんりょく増幅ぞうふくようそうさんきょくかん : 6336A、6080、5998(A)、6528、6AS7、6C33CB、3C33、19、6BX7
  • 電力でんりょく増幅ぞうふくようビームかん : UY-807、KT66、KT88、6550(A)、6L66V66AQ5、1619、12A6
  • 電圧でんあつ増幅ぞうふくようきょくかん : 6C6、6D6、6SH7、6SJ7、6SK7、6AUえーゆー6、6BA66BD6、6267、WE310A
  • 電力でんりょく増幅ぞうふくようきょくかん : 6CA7、6BQ56AR5、42、30A5、50C5、6K6、6F6、7189(A)、35C5、35(50)EH5、30M-P23、32ET5、34GD5、45M-P21、35(50)L6、47
  • 周波数しゅうはすう変換へんかんようななきょくかん : 6SA7、6BE66WC5、6A7、1R5、18FX6
  • 電圧でんあつ増幅ぞうふくようさんきょくきょくかんなど : 6U8(LD611)、6BL8、6AN8、6GH8(A)、6EA8、6R-HV1、6R-DHV1、6R-DHV2
  • 電圧でんあつ増幅ぞうふくようさんきょく電力でんりょく増幅ぞうふくようきょくかん : 6BM8、6(14)GW8、6R-HP2、8R-LP1、18GV8
  • 送信そうしんようさんきょくかん : 3-500Z、3-1000Z、T-307、800、808、830B
  • 送信そうしんようよんきょくかん : 4CX250B
  • 送信そうしんようきょくかん : 6146B、S2001(A)、S2002、S2003、813

電源でんげん[編集へんしゅう]

A電池でんち
B電池でんち
C電池でんち

真空しんくうかんはその原理げんりじょう、プレート、カソードあいだにどうしてもたか直流ちょくりゅう電圧でんあつ必要ひつようとする。このたか電圧でんあつ直流ちょくりゅう供給きょうきゅうする電源でんげんのことをB電源でんげんという[22]一方いっぽう、ヒーターなどにはひく電圧でんあつ必要ひつようとする。このひく電圧でんあつ直流ちょくりゅう供給きょうきゅうする電源でんげんのことをA電源でんげんという。また、とく電力でんりょく増幅ぞうふくようおわりだんかんのグリッド電圧でんあつをカソードにたいしてまけたもつために共有きょうゆうするバイアスよう電源でんげん(カソードに抵抗ていこうれた自己じこバイアス回路かいろでは不要ふよう)をC電源でんげんという。

A、Bと大別たいべつする電源でんげん呼称こしょうは、回路かいろじょう直流ちょくりゅう電源でんげん系統けいとうけ、すなわち低圧ていあつをA系統けいとうこうあつをB系統けいとうとすることからきており、「ラジオ・ニュース」1926ねん11月ごうにおいて、すでにその統一とういつられる。なお、初期しょき真空しんくうかんすべ直流ちょくりゅう電源でんげんにより動作どうささせるものであったが、のちにそのヒーターについては、低圧ていあつ交流こうりゅうでもそのままもちいることのできるはた熱型ねっけい改良かいりょうされた真空しんくうかん登場とうじょうし、ひろ交流こうりゅうにより動作どうささせるようになったことから、ヒーターを動作どうささせるための低圧ていあつ交流こうりゅうもしくは直流ちょくりゅう供給きょうきゅうする電源でんげんのことを、ヒーター電源でんげんべつよびするようになった。なお真空しんくうかん欠点けってんひとつには、ヒーター(フィラメント)の寿命じゅみょうや、とく電力でんりょく増幅ぞうふくよう真空しんくうかんではヒーター電流でんりゅうおお必要ひつようとすることがあり、1970年代ねんだいころまでの真空しんくうかんもちいたアマチュア無線むせんよう無線むせんとうに、機器きき全体ぜんたい動作どうささせる「POWER電源でんげん)」とはべつに「HEATER(ヒーター)」表示ひょうじのある電源でんげんスイッチがもうけられていたものがあったのはこのためである。このスイッチをれておかないと、真空しんくうかん通電つうでんされないので受信じゅしん部分ぶぶん動作どうさしても送信そうしん出来できない。

ラジオ放送ほうそう開始かいしされ、その初期しょき家庭かていよう真空しんくうかん受信じゅしんは、電灯でんとう普及ふきゅう十分じゅうぶんでなかったことから、B電源でんげんようおおくの蓄電池ちくでんち乾電池かんでんち直列ちょくれつにつないでもちいていた。そのまもなく交流こうりゅう配電はいでん普及ふきゅうともない、電灯でんとうせんからられる電力でんりょく変圧へんあつ(トランス)により昇圧しょうあつ機器きき内部ないぶで2きょく真空しんくうかんにより整流せいりゅうしてもちいることができるようになり、電灯でんとうせんから電力でんりょくる、固定こていしてもちいる機器ききでのB電源でんげん問題もんだい解決かいけつした。

しかしラジオ受信じゅしんなどにおいては、その携帯けいたい可能かのうなものがはやくからのぞまれており、比較的ひかくてきひく電圧でんあつ動作どうさする真空しんくうかん開発かいはつされた。その携帯けいたい機器ききへの使用しようのため、電池でんちでの使用しよう前提ぜんていとした小型こがたしょう電力でんりょくの「電池でんちかん」が開発かいはつされ、これをもちいた携帯けいたい機器きき開発かいはつされると、そのB電源でんげんようとして67.5Vや45Vの乾電池かんでんち使用しようされるようになった。これをB電池でんちんでいた。90年代ねんだいまでFDK製造せいぞうしていたが、衰退すいたいともな日本にっぽん国内こくないからは姿すがたした。日本にっぽん国外こくがいではエバレディひとしでは現在げんざい[いつ?]生産せいさんされているが、日本にっぽん国内こくないでの入手にゅうしゅ困難こんなんでかつ高価こうかである。現在げんざい[いつ?]アマチュアではトランジスタラジオようの006P電池でんち (9V) や3Vのリチウム電池でんち複数個ふくすうこ使用しようして代用だいようしているのが散見さんけんされる。学研がっけん大人おとな科学かがくではB電池でんちに006P電池でんちを5使用しようし45Vにしていた。A電池でんち、C電池でんちは1.5Vから6Vがおおく、一般いっぱんたん1がたたん2がた使用しようされていた。

なお、この67.5Vという電圧でんあつであるが、電池でんちかん規格きかくとはべつに、1926ねんにクライド・フィッチにより発表はっぴょうされた「battery coupled audio amplifier(バッテリー音響おんきょう増幅器ぞうふくき)」において、プレートよう電源でんげんとして67.5Vの電池でんち使用しよう記載きさいがある。

だい世界せかい大戦たいせんちゅうとく日本にっぽんでは金属きんぞく材料ざいりょう不足ふそくし、いわばどうてつかたまりであるトランスは貴重きちょう軍需ぐんじゅ物資ぶっしとなり、トランスをもちいない回路かいろ(トランスレス方式ほうしき)が使つかわれるようになった。これは、使用しよう真空しんくうかんのヒーターを同一どういつ特性とくせいつものとして直列ちょくれつ接続せつぞく合計ごうけい電圧でんあつ電灯でんとうせん電圧でんあつ (100V) にうようにして電灯でんとうせん直結ちょっけつ、さらに電灯でんとうせんの100ボルトを直接ちょくせつ整流せいりゅうおもばい電圧でんあつ整流せいりゅう)してB電源でんげん方式ほうしきである。絶縁ぜつえんしょう中性ちゅうせいしょう接続せつぞくぎゃく状態じょうたい金属きんぞくシャシ部分ぶぶんにうっかりれると感電かんでんする、またヒーターの特性とくせいにばらつきがあると、均等きんとうぶんあつされないことからヒーター寿命じゅみょうみじかくなるといった欠点けってんがあるが、戦後せんご真空しんくうかん品質ひんしつ向上こうじょうともない、今度こんどおも小型こがた軽量けいりょう目的もくてきとして、末期まっき(1950年代ねんだい後半こうはん)の家庭かていようラジオ受信じゅしんなどにおおもちいられた。

オーディオ・楽器がっきようアンプ[編集へんしゅう]

SOUND WARRIOR SW-10 真空しんくうかんアンプ
MTかん使用しようのパワーアンプのいちれいイーケイジャパンしゃせいTU-870。使用しよう真空しんくうかんエレクトロ・ハーモニックスしゃせい6BM8。

オーディオマニア機器ききや、ゆがみもおとづくりの一部いちぶとしてれる楽器がっきようアンプでは、今日きょうでも比較的ひかくてきおお真空しんくうかん使用しようされる。オーディオよう真空しんくうかんは、でん蓄(電気でんきしき蓄音機ちくおんき)の需要じゅようにより、1927ねん開発かいはつされた出力しゅつりょくかんUX-250(´50)にはしはっする(ギター・アンプよう真空しんくうかん参照さんしょう)。

真空しんくうかんもちいたアンプのおとを「よい」とかんじる原因げんいんには諸説しょせつある。そのなかでかつてもっと有力ゆうりょくだったせつは、真空しんくうかん倍音ばいおん高調こうちょうゆがみ)のすうばい周波数しゅうはすうである「奇数きすう高調こうちょうゆがみ」を低減ていげんするという主張しゅちょうである。その主張しゅちょうによると、奇数きすう高調こうちょうゆがみがった結果けっか相対そうたいてき偶数ぐうすうばい周波数しゅうはすうの「偶数ぐうすう高調こうちょうゆがみ」がえる。偶数ぐうすう高調こうちょうゆがみは楽器がっき自然しぜんかいおとおおふくまれる周波数しゅうはすうで、その偶数ぐうすう高調こうちょうゆがみがおおいと、おとひとみみには自然しぜんに、あるいは生々なまなましくこえる。一方いっぽう奇数きすう高調こうちょうゆがみはひとみみには不快ふかいまたは金属きんぞくてきこえる周波数しゅうはすうで、トランジスタアンプのおとにはそのすうばい周波数しゅうはすう真空しんくうかんアンプのおとよりもおおふくまれている。そのため「真空しんくうかんアンプはよいおとす」、というのが愛好あいこうべんである。ただし、現在げんざい[いつ?]のトランジスタアンプやデジタルアンプはいびつりつ絶対ぜったい自体じたい真空しんくうかんアンプよりもはるかにちいさく、また真空しんくうかんアンプでもプッシュプル回路かいろとすれば奇数きすうゆがみのほう優勢ゆうせいとなるため「真空しんくうかんしきプッシュプルアンプはよいおとす」ことの説明せつめいにはなりない。そもそもおとこのみはじゅうにんじゅうしょくであり、それは真空しんくうかんアンプのおとかんしても例外れいがいではなく、トランジスタアンプやデジタルアンプの愛好あいこうからはぎゃくわるおととの評価ひょうかけることもめずらしくない。

一般いっぱんてきなアンプの特性とくせい評価ひょうか項目こうもくである、矩形くけい応答おうとう特性とくせいいびつりつ周波数しゅうはすう応答おうとう特性とくせいなどで、あきらかにトランジスタアンプやデジタルアンプのほうがすぐれている場合ばあいでも、くらべると「よい」とかんじる愛好あいこうおおい。このようにヒトの聴覚ちょうかく特性とくせい個人こじん嗜好しこうるところのおおきいオーディオ・アンプは、21世紀せいきにおいてもオーディオよう真空しんくうかんもちいるほうがトランジスタをもちいるよりも簡単かんたん構造こうぞうで「このみのおと」をられる場合ばあいがあり、自作じさくオーディオマニア真空しんくうかんアンプを自作じさくするれいもよくられる。これらのオーディオよう真空しんくうかんは、中国ちゅうごく東欧とうおう諸国しょこくなどで2013ねん現在げんざい製造せいぞうつづけられているほか、2010ねん日本にっぽん高槻たかつき電器でんき工業こうぎょうが35ねんぶりにTA-300B、TA-274Bとして生産せいさんおこなわれており、2015ねん日本にっぽんコルグノリタケ伊勢いせ電子でんし共同きょうどう開発かいはつ試作しさくした蛍光けいこう表示ひょうじかん技術ぎじゅつもとづく新型しんがた真空しんくうかんNutube」が発表はっぴょうされた。

アメリカRCAせい808電力でんりょく増幅ぞうふく3きょくかん送信そうしんようたまだが、21世紀せいきになってオーディオアンプへ流用りゅうようれいが「MJ無線むせん実験じっけんとう掲載けいさいされている

すうだん比較的ひかくてき簡単かんたん構成こうせい増幅ぞうふく回路かいろでも、オーディオよう真空しんくうかんもちいると、とく直線ちょくせん増幅ぞうふく範囲はんいえる入力にゅうりょく過大かだい入力にゅうりょく)にたいし、個性こせいてきひずみ出力しゅつりょくられることから、とくにギターアンプでは、セミプロ〜プロようおおくの機種きしゅ真空しんくうかん方式ほうしき採用さいようしている。このため21世紀せいきでも量産りょうさんつづけているロシア(リフレクターJSCやスベトラーナJSC)、スロヴァキア(JJ-エレクトロニックしゃ)、中国ちゅうごく曙光しょこう電子でんししゃ)などの生産せいさんすう増加ぞうか傾向けいこうにある。

これらのオーディオよう真空しんくうかん一部いちぶには、その型番かたばんおなじでもオリジナルのものよりも最大さいだいじょうかくとくにプレート損失そんしつ、プレート電圧でんあつなど)が改良かいりょうされた製品せいひん供給きょうきゅうされている。しかし、たとえば長期ちょうき信頼しんらいせい残留ざんりゅうノイズなどのめんではほとんど改善かいぜんされておらず、むしろオリジナルのものよりおとっているものも散見さんけんされる。オーディオよう真空しんくうかんは、その全盛期ぜんせいきには家庭かていようオーディオセットから、通信つうしん放送ほうそう機器ききようをはじめ軍事ぐんじ医療いりょうようといったたか信頼しんらいせいもとめられる分野ぶんやまで汎用はんようされていたが、21世紀せいきにおいては趣味しゅみ嗜好しこうひんとしての用途ようと大半たいはんである。

工業こうぎょう製品せいひんである以上いじょう真空しんくうかんおな型番かたばんであっても特性とくせいのばらつきがあるが、半導体はんどうたい製造せいぞうほどおおきな製品せいひん偏差へんさはばではないため、トランジスタのように製造せいぞう増幅ぞうふく特性とくせいによって区分くわけし出荷しゅっかするようなランクけはなされない。したがって使用しよう機器ききがわ、すなわち機器きき設計せっけい段階だんかいにおいて、そのばらつきを考慮こうりょして回路かいろ余裕よゆうたせ、必要ひつよう調整ちょうせい箇所かしょもうけるのが普通ふつうである。全盛ぜんせい時代じだいには、信頼しんらいせい寿命じゅみょう耐震たいしんせいなど)や残留ざんりゅうノイズ・ヒータのがり時間じかん規定きていなどによって、おな型番かたばん真空しんくうかんでもえだばんけたり用途ようと記載きさいして販売はんばいおこなわれていた(たとえば「通信つうしんよう」はロット管理かんりやライン管理かんり信頼しんらいせい向上こうじょうさせたもの、「Hi-Fiハイファイ」はおもにローノイズかんであった)。また真空しんくうかん使用しようともなって、ヒーターは白熱はくねつ電球でんきゅうおなじく消耗しょうもう、カソードのエミッション(電子でんし放出ほうしゅつりょう特性とくせい徐々じょじょ減少げんしょう管内かんない真空しんくう低下ていか電極でんきょくふうとめ絶縁ぜつえん低下ていかするというように特性とくせい変化へんか劣化れっか)するため、おおくの真空しんくうかん実用じつようきょうされていたころ業務ぎょうむ用途ようとではチューブ・テスター(チューブ・チェッカー、真空しんくうかん試験しけん)とばれる専用せんよう測定そくていそなけて、定期ていきてきにその特性とくせい消耗しょうもう)を確認かくにんしながらもちいていた。2013ねん現在げんざいでもおな型番かたばん真空しんくうかんで、製造せいぞうしゃちがいなどによってそのしをわれることがあるが、これは製造せいぞうしゃ供給きょうきゅうしゃ選別せんべつ基準きじゅん個体こたいをどこまでゆるすか)のほか、もともとの真空しんくうかん使用しよう材料ざいりょうなどに起因きいんする特性とくせい変化へんか程度ていど寿命じゅみょう長短ちょうたんしての評価ひょうかふくまれている。

真空しんくうかん製造せいぞう工場こうじょうでは、全数ぜんすう特性とくせい検査けんさおこな合格ごうかくひんのみを出荷しゅっかしている。しかし21世紀せいき以降いこうのオーディオよう真空しんくうかん高級こうきゅう志向しこうとなり、その合格ごうかくひんさらにセットメーカーや商社しょうしゃ特性とくせい検査けんさ選別せんべつしたものを販売はんばいしている場合ばあいすくなくない(とくにギターアンプよう真空しんくうかん顕著けんちょ)。これらの供給きょうきゅうしゃはアメリカを中心ちゅうしん多数たすう存在そんざいしており、代表だいひょうてきなのはグルーブ・チューブズしゃやルビーしゃなどである。これらの供給きょうきゅうしゃ独自どくじ規格きかくもとづきさい検査けんさ選別せんべつ)がなされ、合格ごうかくひんはその供給きょうきゅうしゃのブランドでおも楽器がっきてん販売はんばいされている(インターネットなどでの通信つうしん販売はんばいおこなわれている)。一般いっぱん供給きょうきゅうしゃ規格きかく非常ひじょうきびしく設定せっていされており、選別せんべつれした製品せいひんについても十分じゅうぶん実用じつようとなるため(もともと製造せいぞう工場こうじょうでの合格ごうかくひんであるから当然とうぜんである)、秋葉原あきはばらほかみせなどで販売はんばいされていることがある。しかし選別せんべつれしたオーディオよう真空しんくうかん合格ごうかくひんくらべると、微妙びみょう音質おんしつちがいが聴感じょうでもかんじられることもある。

プッシュプル増幅ぞうふく回路かいろでは、特性とくせいおおむそろっているものを2もちいるのがのぞましく、製造せいぞう工場こうじょう商社しょうしゃ販売はんばいてんのいずれかで特性とくせいちかいものを選別せんべつして21セットとして販売はんばいされている。これをペア・チューブ(ペア・トロン)などとぶ。

真空しんくうかんつよ振動しんどう衝撃しょうげきにより、内部ないぶ電極でんきょく位置いちわり、特性とくせいわってしまうことがある。とく旧型きゅうがた真空しんくうかん精密せいみつ内部ないぶ構造こうぞうつものなどの場合ばあい内部ないぶ電極でんきょくやヒーターがタッチして使つかえなくなることもある。たとえば大型おおがた送信そうしんかんひかり電子でんしぞうばいかんなどはその輸送ゆそう梱包こんぽうとく厳重げんじゅうにされる。

輸送ゆそうちゅうのみでなく、一般いっぱんてきにその通電つうでん使用しようちゅうはさらに振動しんどう衝撃しょうげきよわい。

また、一般いっぱんてき小型こがたのガラスせいオーディオよう真空しんくうかん電球でんきゅうおなじく、なまりガラスまたは石灰せっかいガラスによってつくられているものがおおく、またおおむね1950年代ねんだいさかいにしてガラスかんのつくり(とくにガラスのあつさ)の管理かんり検査けんさ徹底てっていされるようになったことから、オーディオよう真空しんくうかんではまず心配しんぱいはないが、1950年代ねんだい以前いぜん製造せいぞうされたふる真空しんくうかん使用しようする場合ばあい、ガラスのあつみにばらつきのあるものがあり、素手すででガラスめんさわるなどして油脂ゆしよごれを付着ふちゃくさせた状態じょうたい使用しようすると、れることがある[注釈ちゅうしゃく 13]

真空しんくうかん特性とくせい安定あんていするまでには、ある程度ていど使用しよう必要ひつようなので、直流ちょくりゅう増幅器ぞうふくきなどの精密せいみつ調整ちょうせい必要ひつよう回路かいろ新品しんぴん真空しんくうかん使用しようする場合ばあいでは、しばらく使用しようして特性とくせい安定あんていしたのち使用しようしゃがわ回路かいろさい調整ちょうせいおこな必要ひつようがある。真空しんくうかん特性とくせい安定あんていさせるために真空しんくうかん一定いってい条件じょうけん使用しよう状態じょうたいくことを「エージング」という。ほぼすべての真空しんくうかんはその工場こうじょう出荷しゅっか規定きていのエージングを完了かんりょうさせ、すぐにその性能せいのうがほぼ発揮はっきできるようにしてあるが、精密せいみつ繊細せんさい性能せいのう要求ようきゅうするものについては、くわえて使用しようしゃ機器きき実装じっそうして短時間たんじかんのエージングをおこない、特性とくせい安定あんていしたのち回路かいろほろ調整ちょうせいおこなう。ただし通常つうじょう真空しんくうかんアンプにおいてこれを要求ようきゅうするものはすくない。

高信頼こうしんらいかん[編集へんしゅう]

Hi-Fi真空しんくうかんいちれい東芝とうしばせい12AUえーゆー7A

高信頼こうしんらいかん上記じょうき合格ごうかくひんからさらに特性とくせいべつ選別せんべつしたものや、ラインやロットの管理かんり精度せいどたか部品ぶひん使用しようおこなっている。官公庁かんこうちょう研究所けんきゅうじょ機器きき無線むせん機器きき軍事ぐんじ医療いりょうけの真空しんくうかんとなっている。軍用ぐんよう高信頼こうしんらいかん一般いっぱん数字すうじ表記ひょうきとなっている(れい : 6BA6は5749、6AQ5は6005)。これらの真空しんくうかん一般いっぱんでは高価こうかかつ入手にゅうしゅむずかしいものだったが、1990年代ねんだい以降いこうぐん放出ほうしゅつ倉庫そうこ在庫ざいこ流通りゅうつうによって比較的ひかくてき安価あんかである。

また高信頼こうしんらいかんたものに堅牢けんろうかん存在そんざいする。振動しんどう衝撃しょうげきえうるように設計せっけい製造せいぞうされた真空しんくうかんで、真空しんくうかんめい末尾まつびにWがつく(れい : 6BA6W)。なお高信頼こうしんらい堅牢けんろう双方そうほうそなえた真空しんくうかん存在そんざいする(れい : 5749W)。こちらは軍用ぐんようである場合ばあいおおい。

軍用ぐんよう高信頼こうしんらいかん一般いっぱんてき無地むじはこ真空しんくうかんめい、メーカーめい製造せいぞうこく梱包こんぽう、オーダーもと明記めいきしてあり、それらとともに乱数らんすうじょう数字すうじコードがかれている。べいぐん真空しんくうかんはJAN規格きかくもとづくためJAN 5749Wのように表示ひょうじされる。英国えいこく軍用ぐんよう同様どうようにCV規格きかく存在そんざいする。またCVという表示ひょうじはオーダーもと表示ひょうじべいぐんでももちいることがある。オーダーもと基地きち部隊ぶたいコードのほか空軍くうぐんではP-51 とう使用しようする機体きたいめい機体きたい番号ばんごうかれる。梱包こんぽうはOCT1951や89/02などと表示ひょうじされる。軍用ぐんようかん多数たすう真空しんくうかんメーカーの入札にゅうさつせいによって発注はっちゅうするため、はこなか真空しんくうかんメーカーが一致いっちしないことがある。

ごくまれにNOSひんとして白丸しろまる航空こうくうけんさくらのマークに航空こうくうけん印字いんじされた真空しんくうかん流通りゅうつうしているが、前者ぜんしゃ航空機こうくうきけに航空こうくう会社かいしゃきゅう運輸省うんゆしょう試験しけんした真空しんくうかん後者こうしゃ航空こうくう自衛隊じえいたい選別せんべつしたことをしめすものでメーカーが選別せんべつした真空しんくうかん高信頼こうしんらいかん)をさらに選別せんべつし、特性とくせい規定きてい以上いじょうそろえたものである。同様どうよう日本にっぽん放送ほうそう協会きょうかいしめすNHKと印字いんじした真空しんくうかん存在そんざいしているが、こちらも放送ほうそう機材きざいけに選別せんべつした真空しんくうかんである。NOSひん中古ちゅうこだまとして流通りゅうつうしているがこれら放出ほうしゅつひんはすべて一定いってい条件じょうけんによって使用しよう交換こうかんされたものである。価格かかく同然どうぜんのものからオーディオようペアかん相当そうとうする高額こうがくなものまで存在そんざいしている。

一般いっぱんけの高信頼こうしんらいかんはアマチュア無線むせんよう通信つうしんよう測定機そくていきけに測定そくていよう双方そうほう利用りようできるつうはかもちい、オーディオけのHi-FiハイファイHi-S存在そんざいするほか、ただたん高信頼こうしんらいかれる場合ばあいもある。東芝とうしば松下まつしたTENとう各社かくしゃから販売はんばいされ価格かかく一般いっぱんよう大差たいさはなかった。2013ねん現在げんざい販売はんばい価格かかくもオーディオけをのぞ汎用はんよう通常つうじょう真空しんくうかん)と大差たいさない。

真空しんくうかんめい末尾まつび記号きごう表示ひょうじには堅牢けんろうかんのWのほかはたねつかんでヒーターが13びょう完全かんぜん点灯てんとうすることをしめしたAが存在そんざいする。こちらは21世紀せいき現在げんざい、オーディオ真空しんくうかんによくられる(れい : 12AUえーゆー7A)。

以上いじょう真空しんくうかんはそれぞれの用途ようとけに製造せいぞう選別せんべつした真空しんくうかんではあるが、用途ようとにも使用しようしてもまった問題もんだいない。

関連かんれん項目こうもく[編集へんしゅう]

脚注きゃくちゅう[編集へんしゅう]

注釈ちゅうしゃく[編集へんしゅう]

  1. ^ えい: electron tube
  2. ^ えい: thermionic valve
  3. ^ 電子でんしかん」はねつ電子でんし利用りようしないものなど、よりひろ範囲はんい素子そしして使つかわれることもある。
  4. ^ えい: diode
  5. ^ えい: triode
  6. ^ えい: tetrode
  7. ^ えい: pentode
  8. ^ えい: rectifier
  9. ^ どちらもちょく熱型ねっけいさんきょくかん
  10. ^ のUZ-2A5。
  11. ^ えい: Nuvistor
  12. ^ GTは「glass tube」のりゃくとされる。
  13. ^ 油脂ゆしとうよごれがフィラメントからのねつ吸収きゅうしゅうし、その部分ぶぶん温度おんどげることでガラスをいがませるため。製造せいぞう管理かんりとどいた現代げんだい白熱はくねつ電球でんきゅうにおいてもハロゲンランプなど、おおきさのわりには消費しょうひ電力でんりょくおおきい電球でんきゅうは、おなじく油脂ゆしよご厳禁げんきんである[23]日本にっぽん放送ほうそう協会きょうかいへん ラジオ技術ぎじゅつ教科書きょうかしょ(1946〜1947ねん)、電気でんき学会がっかいへん 電気でんき材料ざいりょう(1960ねん)にも記述きじゅつがある。
  14. ^ 高周波こうしゅうはでの増幅ぞうふく特性とくせい半導体はんどうたい素子そし凌駕りょうがすること現在げんざいでもめずらしくはない。事実じじつ高信頼こうしんらいせいてい消費しょうひ電力でんりょく要求ようきゅうされる放送ほうそう衛星えいせい通信つうしん衛星えいせいひとし人工じんこう衛星えいせいでは現在げんざいでも送信そうしんよう真空しんくうかん一種いっしゅである進行しんこうかん使用しようされる

出典しゅってん[編集へんしゅう]

  1. ^ 広辞苑こうじえんだいろくはん真空しんくうかん定義ていぎぶん
  2. ^ 広辞苑こうじえんだいろくはん真空しんくうかん定義ていぎぶんのち叙述じょじゅつぶん
  3. ^ 平凡社へいぼんしゃ世界せかいだい百科ひゃっか事典じてん』vol.14, p.261【真空しんくうかん
  4. ^ "かんだま". 精選せいせんばん 日本にっぽん国語こくごだい辞典じてん小学館しょうがくかん. コトバンクより2021ねん5がつ22にち閲覧えつらん
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  6. ^ a b 用例ようれい:通商つうしょう産業さんぎょう大臣だいじん官房かんぼう調査ちょうさ統計とうけいへん)「1 生産せいさん動態どうたい統計とうけい」『平成へいせい元年がんねん 1989 機械きかい統計とうけい年報ねんぽう』、通商産業省つうしょうさんぎょうしょう、1990ねん、286-288ぺーじ2021ねん5がつ22にち閲覧えつらん 
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  21. ^ RCA, (1954). 6L6, 6L6-G Beam Power Tube. Harrison, NJ: Tube Division, RCA. pp. 1,2,6
  22. ^ エレクトロニクス術語じゅつご解説かいせつ 1983, p. 256.
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参考さんこう文献ぶんけん資料しりょう規格きかく[編集へんしゅう]

真空しんくうかんかんするJIS規格きかく(いずれも廃止はいしされている)[編集へんしゅう]

  • C 7001 受信じゅしんよう真空しんくうかんかたちめい
  • C 7002 送信そうしんかんかたちめい
  • C 7003 ブラウン管ぶらうんかんかたちめい
  • C 7004 撮像さつぞうかんかたちめい
  • C 7005 受信じゅしんよう真空しんくうかんのベース,キャップおよびゲージの種類しゅるい寸法すんぽう
  • C 7006 電子でんしかんソケット
  • C 7007 真空しんくうかん口金くちがねようフェノールレジン成型せいけいひん
  • C 7008 真空しんくうかんのベースおよびキャップのかたちめい
  • C 7009 送信そうしんかんのベースおよびキャップの種類しゅるい寸法すんぽう
  • C 7010 真空しんくうかん口金くちがね検査けんさゲージの型名かためい
  • C 7011 送信そうしんかんのベース検査けんさゲージ
  • C 7013 てい電圧でんあつ放電ほうでんかんおよ電圧でんあつ標準ひょうじゅんかんかたちめい
  • C 7014 光電管こうでんかんかたちめい
  • C 7015 計数けいすう放電ほうでんかんかたちめい
  • C 7017 表示ひょうじかんかたちめい
  • C 7101 受信じゅしんよう真空しんくうかん通則つうそく
  • C 7102 電子でんしかん用語ようご
  • C 7103 受信じゅしんよう真空しんくうかん文字もじ記号きごう
  • C 7104 受信じゅしんよう真空しんくう管外かんがいがた種類しゅるい寸法すんぽう
  • C 7111 受信じゅしんよう真空しんくうかん試験しけん方法ほうほう
  • C 7112 マイクロなみかんかたちめい

書籍しょせき[編集へんしゅう]

  • 電子でんしかん工学こうがく だい2はん桜庭さくらば一郎いちろう森北もりきた出版しゅっぱん、1989ねんISBN 9784627710115
  • 東北大学とうほくだいがく基礎きそ電子でんし工学こうがく入門にゅうもん講座こうざだい8かん真空しんくうかん和田わだ 正信まさのぶ近代きんだい科学かがくしゃ、1960ねん
  • 電子でんし工学こうがく講座こうざ ちょう短波たんぱ真空しんくうかんさんひだりないム社むしゃ、1956ねん
  • 真空しんくうかん70ねんあゆ真空しんくうかん誕生たんじょうから黄金おうごんまで』 ジョン・W. ストークス  (ちょ)/斎藤さいとう 一郎いちろう (翻訳ほんやく)、まことぶんどう新光しんこうしゃ、2006ねんISBN 9784416106020
  • 真空しんくうかんはんだいふじむろ まもる東京とうきょう文献ぶんけんセンター、2014ねんISBN 9784925187145
  • いずみ弘志ひろし『エレクトロニクス術語じゅつご解説かいせつまことぶんどう新光しんこうしゃ、1983ねん5がつ20日はつか 

外部がいぶリンク[編集へんしゅう]