オフ状態 じょうたい とオン状態 じょうたい のクルックス管 かん 。右 みぎ のガラス壁 かべ の蛍光 けいこう に差 さ すマルタ十字 じゅうじ の影 かげ が示 しめ すように、電子 でんし 線 せん (陰極線 いんきょくせん )は陰極 いんきょく (左 ひだり )から出 で たあと直進 ちょくしん する。基 もと 底部 ていぶ に取 と り付 つ けられた電極 でんきょく が陽極 ようきょく である。
クルックス管 かん (クルックスかん、英 えい : Crookes tube )とは、初期 しょき の実験 じっけん 用 よう 真空 しんくう 放電 ほうでん 管 かん である。真空 しんくう 放電 ほうでん の実験 じっけん に利用 りよう されていた[ 1] 。1869 - 1875年 ねん 頃 ごろ にイギリス人 じん の物理 ぶつり 学者 がくしゃ ウィリアム・クルックス などによって発明 はつめい された[ 2] [ 3] 。陰極線 いんきょくせん 、すなわち真空 しんくう 中 ちゅう の電子 でんし 線 せん はクルックス管 かん の中 なか で初 はじ めて見出 みいだ された[ 4] 。
前身 ぜんしん であるガイスラー管 かん と同 おな じように、クルックス管 かん は様々 さまざま な形状 けいじょう のガラス容器 ようき の両 りょう 端 はし に金属 きんぞく 電極 でんきょく (陰極 いんきょく と陽極 ようきょく )を取 と り付 つ けたものである。ただし、ガイスラー管 かん よりも高 たか い真空 しんくう 度 ど にまで排気 はいき されている。電極 でんきょく 間 あいだ に高 こう 電圧 でんあつ が印加 いんか されると、陰極 いんきょく からいわゆる陰極線 いんきょくせん がまっすぐ飛 と び出 だ してくる。クルックスのほか、ヴィルヘルム・ヒットルフ 、ユリウス・プリュッカー (英語 えいご 版 ばん ) 、オイゲン・ゴルトシュタイン 、ハインリヒ・ヘルツ 、フィリップ・レーナルト らはクルックス管 かん を用 もち いて陰極線 いんきょくせん の性質 せいしつ を研究 けんきゅう した。陰極線 いんきょくせん に関 かん する最大 さいだい の知見 ちけん は、その正体 しょうたい が負 まけ の電荷 でんか を持 も つ粒子 りゅうし の流 なが れ だというもので、J. J. トムソン の発見 はっけん による。この粒子 りゅうし は後 のち に「電子 でんし 」("electron")と名付 なづ けられた。現在 げんざい ではクルックス管 かん は陰極線 いんきょくせん の演 えんじ 示 しめせ 用 よう にしか用 もち いられていない。
ヴィルヘルム・レントゲン は1895年 ねん にクルックス管 かん から放射 ほうしゃ されるX線 せん を発見 はっけん した。実験 じっけん 用 よう のクルックス管 かん から発展 はってん した第 だい 一 いち 世代 せだい の冷 ひや 陰極 いんきょく X線 せん 管 かん は「クルックスのX線 せん 管 かん 」と呼 よ ばれ、1920年 ねん ごろまで利用 りよう されていた[ 5] 。
磁石 じしゃく がなければ陰極線 いんきょくせん は直進 ちょくしん する。
陰極線 いんきょくせん がU字 じ 磁石 じしゃく によって下方 かほう に曲 ま げられた。
陰極線 いんきょくせん の磁気 じき 偏向 へんこう を実演 じつえん している様子 ようす 。陰極 いんきょく (右側 みぎがわ )の近 ちか くに磁石 じしゃく を置 お いて水平 すいへい 方向 ほうこう の磁場 じば を作用 さよう させると、陰極線 いんきょくせん は磁場 じば に直交 ちょっこう する方向 ほうこう に力 ちから を受 う けて下方 かほう に曲 ま げられ、管 かん 底 そこ の蛍光 けいこう スポットが下 した にずれる。管 かん の中 なか の残留 ざんりゅう 空気 くうき が電子 でんし 線 せん を受 う けてピンクに発光 はっこう している。
クルックス管 かん の回路 かいろ の模 も 式 しき 図 ず 。
クルックス管 かん は冷 ひや 陰極 いんきょく 管 かん の一種 いっしゅ である。すなわち、後 のち に実用 じつよう 化 か された真空 しんくう 管 かん と異 こと なり熱 ねつ 電子 でんし 放出 ほうしゅつ のための加熱 かねつ フィラメントを持 も っていない。その代 か わり、誘導 ゆうどう コイル などで作 つく った高 こう 圧 あつ の直流 ちょくりゅう 電圧 でんあつ (数 かず kV - 100 kV)を電極 でんきょく 間 あいだ に印加 いんか することで、電離 でんり した残留 ざんりゅう 気体 きたい 分子 ぶんし を陰極 いんきょく に衝突 しょうとつ させて二 に 次 じ 電子 でんし を生成 せいせい する。このためクルックス管 かん は内部 ないぶ に少量 しょうりょう の空気 くうき がなければ動作 どうさ しない。必要 ひつよう な真空 しんくう 度 ど はおよそ10−6 - 5×10−8 atm (0.1 - 0.005 Pa )である。
クルックス管 かん の中 なか ではわずかな数 かず のイオン と自由 じゆう 電子 でんし が光 ひかり 電離 でんり や自然 しぜん 放射線 ほうしゃせん の電離 でんり 作用 さよう などによって自然 しぜん 発生 はっせい している。これらの荷電 かでん 粒子 りゅうし は高 こう 電圧 でんあつ が管内 かんない に作 つく る電場 でんじょう によって駆動 くどう される。電子 でんし がほかの気体 きたい 分子 ぶんし と衝突 しょうとつ すると、分子 ぶんし 内 ない の電子 でんし が外 そと に叩 たた き出 だ されて陽 ひ イオンが残 のこ ることがある。この過程 かてい が連鎖 れんさ して多数 たすう の陽 ひ イオンが発生 はっせい することをタウンゼント放電 ほうでん という。生 しょう じた陽 ひ イオンはすべて陰極 いんきょく (カソード)に引 ひ き付 つ けられていき、陰極 いんきょく に突入 とつにゅう してその表面 ひょうめん から大量 たいりょう の電子 でんし を叩 たた き出 だ す。この電子 でんし が陰極 いんきょく から斥力 せきりょく を受 う け、陽極 ようきょく (アノード)めがけて飛 と んでいったものが陰極線 いんきょくせん である。
管内 かんない は適度 てきど に排気 はいき されており、大半 たいはん の電子 でんし が一 いち 度 ど も気体 きたい 分子 ぶんし と衝突 しょうとつ せずに管 かん の全長 ぜんちょう を飛 と び抜 ぬ けることができる。軽量 けいりょう の電子 でんし は高 こう 電圧 でんあつ の印加 いんか によって相当 そうとう な速度 そくど にまで加速 かそく される(典型 てんけい 的 てき な管 かん 電圧 でんあつ 10 kVに対 たい して約 やく 5万 まん 9000 km/s 、光 ひかり 速度 そくど の20%[ 6] )。陽極 ようきょく 付近 ふきん に差 さ し掛 か かった電子 でんし は運動 うんどう 量 りょう が高 たか まっているため、陽極 ようきょく の引力 いんりょく を振 ふ り切 き ってその横 よこ を通 とお り過 す ぎ、管 かん 底 そこ の内壁 ないへき に突 つ き当 あ たる。電子 でんし がガラスの原子 げんし と衝突 しょうとつ すると、その軌道 きどう 電子 でんし を上 うえ のエネルギー準 じゅん 位 い に押 お し上 あ げる。励起 れいき された電子 でんし はもとのエネルギー準 じゅん 位 い に戻 もど る時 とき 、そのエネルギー差 さ に相当 そうとう する光 ひかり を放出 ほうしゅつ する。蛍光 けいこう と呼 よ ばれるこのプロセスにより、ガラスは黄 き 緑色 みどりいろ の光 ひかり を発 はっ する。電子 でんし そのものは目 め に見 み えないが、電子 でんし ビームが照射 しょうしゃ されているスポットは発光 はっこう によって識別 しきべつ できる。後年 こうねん の研究 けんきゅう 者 しゃ は発光 はっこう を見 み やすくするためガラス管 かん の内壁 ないへき に蛍光 けいこう 体 たい を塗 ぬ った。蛍光 けいこう 体 たい とは硫化 りゅうか 亜鉛 あえん をはじめとする蛍光 けいこう や燐光 りんこう を発 はっ する化学 かがく 物質 ぶっしつ の総称 そうしょう である。内壁 ないへき にぶつかった電子 でんし は最終 さいしゅう 的 てき に陽極 ようきょく にたどり着 つ き、陽極 ようきょく に接続 せつぞく された導線 どうせん を伝 つた って電源 でんげん へと進 すす み、陰極 いんきょく へと送 おく り返 かえ されてくる。
クルックス管 かん の中 なか で観察 かんさつ できる様々 さまざま なグロー領域 りょういき 。
電子 でんし の運動 うんどう については以上 いじょう のように理解 りかい することができるが、クルックス管内 かんない 部 ぶ は陽 ひ イオン ・電子 でんし ・中性 ちゅうせい 原子 げんし が相互 そうご 作用 さよう し合 あ う非 ひ 平衡 へいこう プラズマ になっているため、その運動 うんどう を細部 さいぶ まで完全 かんぜん に記述 きじゅつ するのは容易 ようい ではない。管内 かんない の圧力 あつりょく が10−6 atm(0.1 Pa)より高 たか くなると、プラズマの作用 さよう により、圧力 あつりょく の値 ね に応 おう じて異 こと なる色 いろ を持 も つ各種 かくしゅ のグロー領域 りょういき が生 う まれる(右 みぎ 図 ず )。その詳細 しょうさい については20世紀 せいき 初頭 しょとう にプラズマ物理 ぶつり 学 がく が発展 はってん するまで理解 りかい されなかった。
クルックス管 かん の前身 ぜんしん となったガイスラー管 かん は現代 げんだい のネオン管 かん に似 に た実験 じっけん 用 よう 放電 ほうでん 管 かん である。ガイスラー管 かん は10−3 atm(100 Pa)程度 ていど の低 てい 真空 しんくう で動作 どうさ するため[ 7] 、管内 かんない の電子 でんし は少 すこ しの間 あいだ 飛 と んだだけで気体 きたい 分子 ぶんし と衝突 しょうとつ する。したがって電子 でんし の流 なが れはゆっくりした拡散 かくさん 過程 かてい によって行 おこな われる。電子 でんし は繰 く り返 かえ し気体 きたい 分子 ぶんし と衝突 しょうとつ しながら進 すす むので、運動 うんどう エネルギーがそれほど高 たか くなることはない。このような事情 じじょう によりガイスラー管 かん では陰極線 いんきょくせん のビームが作 つく られることはない。その代 か わり、電子 でんし が気体 きたい 分子 ぶんし に衝突 しょうとつ してそれらを励起 れいき させ、光 ひかり を放出 ほうしゅつ させることで、管内 かんない は鮮 あざ やかな色 いろ を持 も つグロー放電 ほうでん で満 み たされる。
1902年 ねん のバニティ・フェア に掲載 けいさい されたカリカチュア 。クルックスとその発光 はっこう 管 かん の名声 めいせい を物語 ものがた っている。ラテン語 らてんご のキャプション「ウビ・クルクス・イビ・ルクス」、すなわち「クルックスあるところに光 ひかり あり」が添 そ えられていた。
1870年代 ねんだい までにクルックスは共同 きょうどう 研究 けんきゅう 者 しゃ のギミンガムが改良 かいりょう したスプレンゲル式 しき の水銀 すいぎん 真空 しんくう ポンプ (en:Sprengel pump )[ 8] を用 もち い、ガイスラー管 かん の真空 しんくう 度 ど を10−6 - 5×10−8 atmにまで向上 こうじょう させた(ただし、ほかでも同様 どうよう の研究 けんきゅう は行 おこな われていた)。その結果 けっか 、管内 かんない の圧力 あつりょく を下 さ げていくにつれて、プラズマの陰極 いんきょく 近辺 きんぺん から発光 はっこう しない領域 りょういき が広 ひろ がり始 はじ めて管 かん 全域 ぜんいき を覆 おお い尽 つ くし、代 かわ りに陽極 ようきょく 側 がわ のガラス管 かん 底 そこ が発光 はっこう し始 はじ めることが発見 はっけん された。この暗 くら 領域 りょういき は現在 げんざい 「クルックス暗部 あんぶ 」と呼 よ ばれている。
ここで起 お きているのは以下 いか のようなことである。管内 かんない の空気 くうき が排気 はいき されるにつれて、陰極 いんきょく から飛 と び出 だ した電子 でんし の運動 うんどう を妨 さまた げる気体 きたい 分子 ぶんし の数 かず が減 へ っていき、電子 でんし が衝突 しょうとつ するまでに進 すす む平均 へいきん 距離 きょり が長 なが くなる。気体 きたい 分子 ぶんし は衝突 しょうとつ によって光 ひかり を放出 ほうしゅつ するので、クルックス暗部 あんぶ が管 かん 全域 ぜんいき を覆 おお い尽 つ くしたとき、電子 でんし は陰極 いんきょく から陽極 ようきょく まで衝突 しょうとつ することなく直進 ちょくしん している。衝突 しょうとつ によってエネルギーを失 うしな うことがなくなり、またクルックス管 かん は電圧 でんあつ が高 たか いことから、電子 でんし は相当 そうとう な速度 そくど にまで加速 かそく される。管 かん の端 はし の陽極 ようきょく に差 さ しかかったとき、大 だい 多数 たすう の電子 でんし はその横 よこ を飛 と び過 す ぎてガラスの内壁 ないへき にぶつかる。電子 でんし そのものは目 め に見 み えないが、電子 でんし がガラス壁 かべ にぶつかるとガラスを構成 こうせい する原子 げんし が励起 れいき され、黄 き 緑色 みどりいろ の蛍光 けいこう を放出 ほうしゅつ する。後 ご の研究 けんきゅう 者 しゃ はビームスポットを見 み やすくするためにクルックス管 かん の管 かん 底 そこ に蛍光 けいこう 塗料 とりょう を塗 ぬ った。
この思 おも わぬ蛍光 けいこう 現象 げんしょう により、管内 かんない にある陽極 ようきょく などの物体 ぶったい が蛍光 けいこう スポットにくっきりした影 かげ を映 うつ すことが発見 はっけん された。1869年 ねん 、ヒットルフ は陰極 いんきょく から何 なん らかの直進 ちょくしん するビームが出 で ていなければ影 かげ は作 つく られないことを初 はじ めて指摘 してき した[ 9] 。1876年 ねん 、ゴルトシュタイン は何 なに かが陰極 いんきょく から放出 ほうしゅつ されていることを確 たし かめ、「陰極線 いんきょくせん 」(Kathodenstrahlen )と名付 なづ けた[ 10] 。
その当時 とうじ 、既知 きち の粒子 りゅうし の中 なか で最小 さいしょう のものは原子 げんし であり、電子 でんし の存在 そんざい は知 し られておらず、電流 でんりゅう が何 なに によって運 はこ ばれているかは謎 なぞ だった。そんな中 なか 、陰極線 いんきょくせん の性質 せいしつ を探求 たんきゅう するために様々 さまざま な工夫 くふう を凝 こ らしたクルックス管 かん が作製 さくせい された(後 ご の節 ふし を参照 さんしょう )。真空 しんくう 中 ちゅう を弾道 だんどう 的 てき に飛 と ぶ電子 でんし は導線 どうせん を流 なが れる電子 でんし よりも研究 けんきゅう 対象 たいしょう として手 て ごろであり、その性質 せいしつ は次々 つぎつぎ と暴 あば かれていった。また、色 いろ 鮮 あざ やかな光 ひかり を発 はっ する放電 ほうでん 管 かん は、最新 さいしん の電気 でんき 科学 かがく の神秘 しんぴ を紹介 しょうかい する公開 こうかい 講座 こうざ においても人気 にんき を博 はく した。蛍光 けいこう 鉱物 こうぶつ を材料 ざいりょう としたり、蛍光 けいこう 塗料 とりょう で蝶 ちょう の絵 え が描 えが かれるなどの装飾 そうしょく 的 てき なクルックス管 かん も作製 さくせい され、各種 かくしゅ の蛍光 けいこう 物質 ぶっしつ が放 はな つ多彩 たさい な色 いろ の光 ひかり で観衆 かんしゅう の目 め を楽 たの しませた。
1895年 ねん 、レントゲン はクルックス管 かん から放出 ほうしゅつ されているX線 せん を発見 はっけん した。X線 せん に様々 さまざま な使 つか い道 みち があることはすぐに明 あき らかになり、ここでクルックス管 かん に初 はじ めて実用 じつよう 的 てき な用途 ようと が生 う まれた。
クルックス管 かん の動作 どうさ は不安定 ふあんてい で信頼 しんらい 性 せい に欠 か けていた。陰極線 いんきょくせん のエネルギーと流量 りゅうりょう はどちらも残留 ざんりゅう 気体 きたい の圧力 あつりょく に左右 さゆう された。時間 じかん とともに気体 きたい 分子 ぶんし は管 かん の壁 かべ に吸収 きゅうしゅう されていくため、圧力 あつりょく が減少 げんしょう することで陰極線 いんきょくせん の放出 ほうしゅつ 量 りょう は減少 げんしょう していった。さらに管内 かんない の電位 でんい 差 さ も上昇 じょうしょう するため、陰極線 いんきょくせん はより「硬質 こうしつ 」な(エネルギーの高 たか い)ものとなる。そのうち圧力 あつりょく がさらに低下 ていか するとクルックス管 かん はまったく動作 どうさ しなくなってしまう。これを防 ふせ ぐため、X線 せん 管 かん のように使用 しよう 頻度 ひんど の高 たか いクルックス管 かん では、少量 しょうりょう の気体 きたい を放出 ほうしゅつ して機能 きのう を回復 かいふく させる調節 ちょうせつ 器 き ("softener")が組 く み込 こ まれていた。
クルックス管 かん の後 のち を継 つ いだのは、1906年 ねん ごろに発明 はつめい された電子 でんし 回路 かいろ 用 よう の熱 ねつ 陰極 いんきょく (英語 えいご 版 ばん ) 真空 しんくう 管 かん である。この種 たね の真空 しんくう 管 かん はクルックス管 かん より低 ひく い10−9 atm(10−4 Pa)程度 ていど の圧力 あつりょく で動作 どうさ した。この圧力 あつりょく では気体 きたい 分子 ぶんし が少 すく なすぎるため電離 でんり による伝導 でんどう は行 おこな われない。その代 かわ り、より信頼 しんらい 性 せい の高 たか い電子 でんし 源 げん として、熱 ねつ 陰極 いんきょく と呼 よ ばれる加熱 かねつ 用 よう フィラメントからの熱 ねつ 電子 でんし 放出 ほうしゅつ を利用 りよう していた。現代 げんだい では、クルックス管 かん のように電離 でんり によって陰極線 いんきょくせん を作 つく る方式 ほうしき は、サイラトロン のような特殊 とくしゅ な気体 きたい 放電 ほうでん 管 かん でしか用 もち いられていない。
クルックス管 かん で開発 かいはつ された電子 でんし 線 せん 操作 そうさ 技術 ぎじゅつ は、後 ご の時代 じだい の真空 しんくう 管 かん 、中 なか でもフェルディナント・ブラウン が1897年 ねん に発明 はつめい したブラウン管 ぶらうんかん に生 い かされている。
1910年 ねん ごろのクルックスX線 せん 管 かん 。
クルックスX線 せん 管 かん 。管 かん の頸部(右側 みぎがわ )に取 と り付 つ けられた装置 そうち は「水素 すいそ 浸透 しんとう 式 しき 圧力 あつりょく 調節 ちょうせつ 器 き 」である。
クルックス管 かん に加 くわ えられる電圧 でんあつ が約 やく 5000 V以上 いじょう の十分 じゅうぶん 高 たか い値 ね であれば[ 11] 、陽極 ようきょく やガラス管 かん 壁 かべ にぶつかったときにX線 せん を生成 せいせい するほどの速度 そくど まで電子 でんし を加速 かそく することができる。高速 こうそく の電子 でんし がX線 せん を生成 せいせい する過程 かてい は二 に 通 とお りある。まず、正 せい 電荷 でんか が集中 しゅうちゅう している原子核 げんしかく の近傍 きんぼう を通 とお り過 す ぎると電子 でんし の軌道 きどう が鋭 するど く曲 ま げられ、その際 さい にX線 せん を放射 ほうしゃ する。この過程 かてい を制動 せいどう 放射 ほうしゃ という。次 つぎ に、電子 でんし が原子 げんし と衝突 しょうとつ して原子 げんし 内 ない の電子 でんし を上 うえ のエネルギー準 じゅん 位 い に押 お し上 あ げた際 さい 、その電子 でんし が元 もと のエネルギー準 じゅん 位 い に戻 もど るときに余分 よぶん なエネルギーをX線 せん として放出 ほうしゅつ することがある。この過程 かてい は蛍光 けいこう X線 せん と呼 よ ばれる。
初期 しょき に作 つく られたクルックス管 かん もX線 せん を発生 はっせい させていたのは間違 まちが いない。実際 じっさい 、イヴァン・プリュイ(en )などの当時 とうじ の研究 けんきゅう 者 しゃ は、クルックス管 かん の近 ちか くに未 み 感光 かんこう の写真 しゃしん 乾板 かんぱん を置 お くと乾板 かんぱん が曇 くも ることに気 き づいていた。1895年 ねん 11月8日 にち 、黒 くろ い厚紙 あつがみ で覆 おお われたクルックス管 かん を操作 そうさ していたレントゲン は、近 ちか くに置 お いてあった蛍光 けいこう スクリーンがかすかに光 ひかり を発 はっ していることに気付 きづ いた[ 12] 。レントゲンはクルックス管 かん から何 なん らかの目 め に見 み えない放射線 ほうしゃせん が出 で ており、厚紙 あつがみ を透過 とうか してスクリーンに蛍光 けいこう を発 はっ させていることを察知 さっち した。手元 てもと にあった紙片 しへん や本 ほん ではこの放射線 ほうしゃせん を遮 さえぎ ることはできなかった。レントゲンは腰 こし を据 す えてこの放射線 ほうしゃせん の研究 けんきゅう に取 と り掛 か かり、1895年 ねん 12月28日 にち にはX線 せん に関 かん する最初 さいしょ の研究 けんきゅう 論文 ろんぶん を公開 こうかい した[ 13] 。レントゲンはこの発見 はっけん により第 だい 一 いち 回 かい ノーベル物理 ぶつり 学 がく 賞 しょう (1901年 ねん )を受賞 じゅしょう した。
X線 せん は医療 いりょう に応用 おうよう され始 はじ め、クルックス管 かん に初 はじ めて実用 じつよう 的 てき な用途 ようと が生 う まれた。各地 かくち の工房 こうぼう ではX線 せん の発生 はっせい に特 とく 化 か したクルックス管 かん が製作 せいさく され始 はじ め、これがX線 せん 管 かん の原型 げんけい となった。重金属 じゅうきんぞく はX線 せん の発生 はっせい 量 りょう が大 おお きいため、陽極 ようきょく の材料 ざいりょう として主 おも にプラチナ が用 もち いられた。陽極 ようきょく は陰極 いんきょく に対 たい して適当 てきとう な角度 かくど で傾 かたむ けられており、その表面 ひょうめん から発 はっ したX線 せん が管 かん の側壁 そくへき を透過 とうか するようになっていた。鮮明 せんめい なX線 せん 像 ぞう を得 え るにはX線 せん 源 げん を点 てん 光源 こうげん に近 ちか づける必要 ひつよう があるため、陰極 いんきょく 形状 けいじょう を凹球面 めん とすることで陽極 ようきょく 上 じょう の直径 ちょっけい 1 mm のスポットに電子 でんし 線 せん を集中 しゅうちゅう 照射 しょうしゃ していた。この種 たね の冷 ひや 陰極 いんきょく X線 せん 管 かん は1920年 ねん 頃 ころ まで用 もち いられていたが、熱 ねつ 陰極 いんきょく クーリッジ管 かん に後 こう を譲 ゆず った。
クルックス管 かん は多 おお くの歴史 れきし 的 てき な実験 じっけん に用 もち いられたが、その焦点 しょうてん は陰極線 いんきょくせん の正体 しょうたい を探 さぐ ることだった[ 14] 。当時 とうじ 二 ふた つの説 せつ があった。イギリスのクルックスやヴァ―リー(en )らが信 しん じているところでは、陰極線 いんきょくせん とは「小体 こてい 」("corpuscle")ないし「放射 ほうしゃ 物質 ぶっしつ 」("radiant matter")、すなわち電荷 でんか を帯 お びた原子 げんし であった。ドイツのヘルツ やゴルトシュタイン らは陰極線 いんきょくせん を「エーテル 振動 しんどう 」、すなわち未知 みち の種類 しゅるい の電磁波 でんじは だとみなし、管内 かんない を流 なが れる電流 でんりゅう とは切 き り離 はな して考 かんが えていた[ 15] [ 16] 。トムソン が陰極線 いんきょくせん の質量 しつりょう を測定 そくてい し、その正体 しょうたい が負 まけ の電荷 でんか を持 も った新種 しんしゅ の粒子 りゅうし だと実証 じっしょう したことで論争 ろんそう は終結 しゅうけつ した。トムソンはこの粒子 りゅうし を「小体 こてい 」と呼 よ んでいたが、後 のち に「電子 でんし 」("electron")という名 な に改 あらた められた。
プリュッカー は1869年 ねん にマルタ十字 じゅうじ 型 かた の陽極 ようきょく をクルックス管 かん に取 と り付 つ けた。陽極 ようきょく にはヒンジ がついており、折 お り曲 ま げて管 かん の底面 ていめん に寝 ね かせることができた。スイッチを入 い れると管 かん 底 そこ の蛍光 けいこう 面 めん に鮮明 せんめい な十字 じゅうじ 型 がた の影 かげ が映 うつ り、陰極線 いんきょくせん が直進 ちょくしん していることが見 み て取 と れた。そのまましばらくおくと、蛍光 けいこう が「へたって」光 ひかり が弱 よわ まってくる。ここで十字架 じゅうじか を倒 たお して陰極線 いんきょくせん の経路 けいろ を空 あ けると、それまで影 かげ だった領域 りょういき が他 た よりも明 あか るく蛍光 けいこう を発 はっ した。
表面 ひょうめん に垂直 すいちょく な方向 ほうこう への放出 ほうしゅつ [ 編集 へんしゅう ]
ゴルトシュタイン は1876年 ねん 、陰極線 いんきょくせん は常 つね に陰極 いんきょく 表面 ひょうめん に対 たい して垂直 すいちょく に放出 ほうしゅつ されることを発見 はっけん した[ 17] [ 10] 。陰極 いんきょく が平板 へいばん なら、陰極線 いんきょくせん はその面 めん に直交 ちょっこう する直線 ちょくせん 上 じょう を進 すす む。これは陰極線 いんきょくせん が粒子 りゅうし であるという証拠 しょうこ の一 ひと つだった。なぜなら、赤熱 しゃくねつ した金属 きんぞく 板 ばん のような発光 はっこう 体 たい はあらゆる方向 ほうこう に光 ひかり を発 はっ するが、荷電 かでん 粒子 りゅうし ならば同 どう 電荷 でんか を帯 お びた物体 ぶったい 表面 ひょうめん から垂直 すいちょく に遠 とお ざかる方向 ほうこう に力 ちから を受 う けるはずである。陰極 いんきょく が凹球面 めん を持 も つ皿 さら 型 がた であれば、陰極線 いんきょくせん は皿 さら の前 まえ にある一 いち 点 てん に集中 しゅうちゅう する。これを利用 りよう して試料 しりょう の一 いち 点 てん に陰極線 いんきょくせん を照射 しょうしゃ することで高温 こうおん に熱 ねっ することができた。
ヘルツ はクルックス管 かん の両 りょう 側面 そくめん にもう一 いち 組 くみ の極 きょく 板 ばん を取 と り付 つ け、陰極線 いんきょくせん を挟 はさ むようにした。この構造 こうぞう はごく素朴 そぼく なCRT(ブラウン管 ぶらうんかん )だとみなせる。もし陰極線 いんきょくせん が荷電 かでん 粒子 りゅうし であれば、極 ごく 板 いた に電圧 でんあつ をかけると電場 でんじょう が生 しょう じて陰極線 いんきょくせん の軌道 きどう を曲 ま げ、ビームが照射 しょうしゃ されている管 かん 底 そこ の蛍光 けいこう スポットが横 よこ に動 うご くはずである。ヘルツは陰極線 いんきょくせん の偏向 へんこう を観察 かんさつ できなかったが、その原因 げんいん は装置 そうち の真空 しんくう 度 ど が不十分 ふじゅうぶん だったことで表面 ひょうめん 電荷 でんか が蓄積 ちくせき し、電場 でんじょう を遮蔽 しゃへい していたためだと後 のち に結論 けつろん 付 つ けられた。アーサー・シュスター はより真空 しんくう 度 ど が高 たか い装置 そうち を用 もち いて陰極線 いんきょくせん を偏向 へんこう させることに成功 せいこう し、陰極線 いんきょくせん が正 せい 電荷 でんか を帯 お びた極 きょく 板 ばん に引 ひ き付 つ けられ、負 ふ 電荷 でんか に反発 はんぱつ することを発見 はっけん した。これは陰極線 いんきょくせん が負 ふ 電荷 でんか を帯 お びており、したがって電磁波 でんじは ではないことの証拠 しょうこ とされた。
クルックスの磁気 じき 偏向 へんこう 管 かん 。
クルックスによる1879年 ねん の論文 ろんぶん "On Radiant Matter"で紹介 しょうかい されている羽根車 はねぐるま の実験 じっけん 。
クルックスは陰極線 いんきょくせん の経路 けいろ 上 じょう に小 ちい さい羽根車 はねぐるま を取 と り付 つ け、陰極線 いんきょくせん が当 あ たると車 くるま が回転 かいてん することを発見 はっけん した。回転 かいてん は陰極 いんきょく から離 はな れる向 む きだったことから、ビームが陰極 いんきょく から発 はっ していることが示唆 しさ された。クルックスはこの現象 げんしょう から陰極線 いんきょくせん が運動 うんどう 量 りょう を持 も っており、したがって質量 しつりょう を持 も つ粒子 りゅうし だと結論 けつろん した。しかし後 のち になって、羽根車 はねぐるま が回 まわ るのは粒子 りゅうし (電子 でんし )の運動 うんどう 量 りょう のためではなく、ラジオメーター効果 こうか のためだと判明 はんめい した。すなわち、羽根 はね の表面 ひょうめん で陰極線 いんきょくせん が当 あ たっている部分 ぶぶん が熱 ねつ を帯 お び、熱 ねつ で膨張 ぼうちょう した気体 きたい が羽根 はね を押 お すというものである。これを1903年 ねん に実証 じっしょう したのはトムソン である。トムソンは計算 けいさん により、羽根車 はねぐるま に当 あ たっている電子 でんし の運動 うんどう 量 りょう では毎 まい 分 ぶん 1回転 かいてん というゆっくりした回転 かいてん しか起 お こせないことを示 しめ した。クルックスの実験 じっけん が示 しめ していたのは、単 たん に陰極線 いんきょくせん が物体 ぶったい 表面 ひょうめん を加熱 かねつ することができるということである。
ジャン・ペラン は陰極線 いんきょくせん それ自体 じたい が負 まけ 電荷 でんか を持 も っているのか、あるいはドイツ説 せつ のように電荷 でんか のキャリア が別 べつ に存在 そんざい するのかを突 つ き止 と めようとした。1895年 ねん 、ペランはクルックス管 かん に「捕獲 ほかく 器 き 」("catcher")を取 と り付 つ けた。これは両 りょう 端 はし が閉 と じたアルミニウム筒 とう で、陰極 いんきょく に向 む いた側 がわ に小 ちい さい穴 あな が開 あ けられており、陰極線 いんきょくせん を捕 とら えられるようになっていた。捕獲 ほかく 器 き は検 けん 電器 でんき と接続 せつぞく され電荷 でんか を測定 そくてい することが可能 かのう だった。その結果 けっか 、負 ふ 電荷 でんか が検出 けんしゅつ され、陰極線 いんきょくせん が負 まけ の電気 でんき を持 も つことが確 たし かめられた。
陰極 いんきょく に穴 あな が開 あ けられた特製 とくせい のクルックス管 かん で陽極線 ようきょくせん が生 しょう じている(上部 じょうぶ のピンク色 ぴんくいろ の発光 はっこう )。
1886年 ねん にゴルトシュタインは、陰極 いんきょく に穴 あな を穿 うが つと陽極 ようきょく と逆 ぎゃく 側 がわ の口 くち からぼんやりした光 ひかり を放 はな つものが流 なが れ出 だ すことを発見 はっけん した[ 18] [ 19] 。この「陽極線 ようきょくせん 」に電場 でんじょう をかけると、陰極線 いんきょくせん とは逆 ぎゃく に負 ふ 電荷 でんか を帯 お びた極 きょく 板 ばん に引 ひ き付 つ けられた。陽極線 ようきょくせん の正体 しょうたい は陰極 いんきょく に引 ひ き寄 よ せられた陽 ひ イオン のビームであった。ゴルトシュタインはこれを「カナル線 せん 」("canal ray")と名付 なづ けた[ 20] 。
陽極線 ようきょくせん 管 かん の模 も 式 しき 図 ず 。「perforated cathode」(穴 あな が開 ひら いた陰極 いんきょく )の右側 みぎがわ に陽極線 ようきょくせん が発生 はっせい している。
ゴルトシュタインは陰極線 いんきょくせん の速度 そくど を測定 そくてい する方法 ほうほう を見 み つけたと考 かんが えた。クルックス管内 かんない の気体 きたい にみられるグロー放電 ほうでん が陰極線 いんきょくせん の運動 うんどう によって引 ひ き起 お こされているなら、管 かん に沿 そ って陰極線 いんきょくせん が進 すす む方向 ほうこう に放射 ほうしゃ される光 こう はドップラー効果 こうか によって振動 しんどう 数 すう に変調 へんちょう を受 う けるはずである。変調 へんちょう の有無 うむ は放出 ほうしゅつ スペクトル線 せん のシフトを分光 ぶんこう 器 き を用 もち いて検出 けんしゅつ することで確 たし かめられる。ゴルトシュタインはL字 じ 型 がた のクルックス管 かん の両 りょう 端 はし に電極 でんきょく を設 もう け、一方 いっぽう の電極 でんきょく からコーナーに向 む けてアームに沿 そ って飛 と んできた光 ひかり をコーナー部 ぶ の分光 ぶんこう 器 き で観測 かんそく できるようにした。まず分光 ぶんこう 器 き が向 む いている側 がわ の電極 でんきょく を陰極 いんきょく としてグローのスペクトル を測定 そくてい した後 のち 、電源 でんげん の配線 はいせん をつなぎ変 か えて陰極 いんきょく と陽極 ようきょく を交代 こうたい させ、電子 でんし の運動 うんどう 方向 ほうこう を逆転 ぎゃくてん させた状態 じょうたい でスペクトルを記録 きろく し、シフト量 りょう を測定 そくてい した。しかしゴルトシュタインはシフトを検出 けんしゅつ することができず、陰極線 いんきょくせん の移動 いどう 速度 そくど は極端 きょくたん に遅 おそ いと解釈 かいしゃく せざるを得 え なかった。現在 げんざい 理解 りかい されているところでは、クルックス管 かん のグロー光 こう を発 はっ しているのは電子 でんし そのものではなく、電子 でんし と衝突 しょうとつ した気体 きたい 原子 げんし である。原子 げんし は電子 でんし の数 すう 千 せん 倍 ばい の質量 しつりょう を持 も つため、その運動 うんどう は電子 でんし に比 くら べて非常 ひじょう に遅 おそ い。ドップラーシフトが検出 けんしゅつ できなかったのはこれが理由 りゆう である。
フィリップ・レーナルト は陰極線 いんきょくせん をクルックス管 かん の外 そと に取 と り出 だ すことができるか確 たし かめようとした。彼 かれ は陰極 いんきょく に面 めん した容器 ようき 壁 かべ に「窓 まど 」を開 あ け、外界 がいかい からの大気 たいき 圧 あつ にちょうど耐 た えられる程度 ていど の厚 あつ さのアルミ箔 はく を張 は って陰極線 いんきょくせん を受 う けるようにした。この仕組 しく みは後 のち に「レーナルトの窓 まど 」と呼 よ ばれた。レーナルトが実験 じっけん を行 おこな うと、まさに何 なに かが窓 まど から放射 ほうしゃ されていた。窓 まど の前 まえ に掲 かか げた蛍光 けいこう スクリーンは光 ひかり が当 あ たっていなくとも蛍光 けいこう を発 はっ し、写真 しゃしん 乾板 かんぱん を掲 かか げると露光 ろこう していないはずなのに黒 くろ く感光 かんこう した。この効果 こうか が及 およ ぶ範囲 はんい は非常 ひじょう に短 みじか く、2.5 cm 程度 ていど であった。レーナルトは様々 さまざま な物質 ぶっしつ のシートを用 もち いて陰極線 いんきょくせん の透過 とうか 力 りょく を測定 そくてい し、原子 げんし 線 せん には不可能 ふかのう なほど厚 あつ い物体 ぶったい を陰極線 いんきょくせん は透過 とうか できることを見出 みいだ した。原子 げんし は当時 とうじ 最 もっと も小 ちい さい粒子 りゅうし だと考 かんが えられていたため、当初 とうしょ この結果 けっか は陰極線 いんきょくせん が波 なみ である証拠 しょうこ とみなされた。のちになって電子 でんし は原子 げんし よりも小 ちい さいことが明 あき らかになり、透過 とうか 力 りょく の高 たか さもそのためだとされた。レーナルトはこの仕事 しごと に対 たい して1905年 ねん のノーベル物理 ぶつり 学 がく 賞 しょう を授与 じゅよ された。
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