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商用しょうよう電源でんげん

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商用しょうよう電源でんげん(しょうようでんげん)とは、電力でんりょく製造せいぞう発電はつでん)と販売はんばい送電そうでん配電はいでん)をごうとするもの、すなわち電力でんりょく会社かいしゃから電力でんりょく消費しょうひしゃとどけられる電力でんりょくおよび電力でんりょく電力でんりょく消費しょうひしゃとどける(供給きょうきゅうする)ための設備せつび一般いっぱん総称そうしょうである[1]電力でんりょくしょう取引とりひき対象たいしょうとされることからの名称めいしょうであり、電力でんりょく消費しょうひしゃ電力でんりょく使途しとからの総称そうしょうではなく、商業しょうぎょう以外いがい製造せいぞうぎょう個人こじん使つか電力でんりょくふくむ。

一般いっぱんには商用しょうよう電源でんげんAC電源でんげん(エーシーでんげん)としょうされることもおおい。これは今日きょう電力でんりょく会社かいしゃから一般いっぱんてき電力でんりょく消費しょうひしゃ、すなわち一般いっぱん家庭かていなどに供給きょうきゅうされる電力でんりょく交流こうりゅう(Alternating Current)であることからきている。しかし電力でんりょく会社かいしゃから電力でんりょく消費しょうひしゃへの電力でんりょく供給きょうきゅう直流ちょくりゅう(Direct Current)であってもよく、実際じっさい日本にっぽんでも直流ちょくりゅうによる供給きょうきゅうがなされているところがあるため、本来ほんらい同義どうぎにはならない。

電力でんりょく人類じんるい生活せいかつ経済けいざい活動かつどうささえているが、世界銀行せかいぎんこう国際こくさいエネルギー機関きかん国際こくさい連合れんごうなどの推計すいけいによると、2020ねん時点じてんで7おく3300まんにん電気でんき使つかえる環境かんきょうにない[2]

概要がいよう[編集へんしゅう]

電気でんき電力でんりょく)はかたちエネルギーであるが、おおむね「もの」と同様どうようあつかわれ、たとえば日本にっぽんにおいては、刑法けいほうだい245じょうにおける「財物ざいぶつとみなす」(感電かんでんすることで存在そんざい認識にんしきでき、電力でんりょくりょうけいもちいて管理かんり可能かのうであることによる大審院だいしんいん判決はんけつもとづく。ただし日本にっぽんではこの「みなす」はかくほうによって解釈かいしゃくちがいがあり、電気でんきについては、刑法けいほう以外いがいには論争ろんそうがある)とされているところにより、電気でんき個人こじん製造せいぞうし、個人こじん使用しようすることは自由じゆうであり、これを直接ちょくせつ規制きせいするほうはない。これはおなじエネルギーである電波でんぱが、世界せかいてきに「人類じんるい共通きょうつう財産ざいさん」とされ、原則げんそくとしてその個人こじん所有しょゆう使用しよう、さらには個人こじんあいだ取引とりひきなどをきんじられているのとは対照たいしょうてきである。

一般いっぱんにはガソリンエンジン搭載とうさいしたいわゆるポータブルがた発電はつでんなどでつくった電力でんりょくだれでも自由じゆう使用しようすることができるといったことがげられるが、だい電力でんりょく消費しょうひする電気でんき化学かがく会社かいしゃなどでは自身じしんだい規模きぼ発電はつでんしょ水力すいりょく発電はつでん火力かりょく発電はつでん)をち、ここで製造せいぞうした(発電はつでんした)電力でんりょくの100(%)を自家じか消費しょうひしているれいもある(もっともこういっただい規模きぼ発電はつでんしょ場合ばあい各種かくしゅべつ法律ほうりつによる制約せいやくがある)。日本にっぽんでは2006ねん時点じてん電気化学工業でんきかがくこうぎょう株式会社かぶしきがいしゃが10かしょ自家じか水力すいりょく発電はつでん設備せつびゆうし、最大さいだい78000kW[3]電力でんりょく発電はつでん自家じか消費しょうひしている。また自家じか火力かりょく発電はつでん設備せつび製鉄せいてつ会社かいしゃなどが所有しょゆうしており、られた電力でんりょく自家じか消費しょうひしている。

しかしそれゆえに、製造せいぞうした電力でんりょく第三者だいさんしゃである電力でんりょく消費しょうひしゃ譲渡じょうとする、すなわち供給きょうきゅうする場合ばあいには法規ほうきせい対象たいしょうとなる。日本にっぽんでは電気でんき事業じぎょうほうによる規制きせいがあり、原則げんそくとして「所定しょてい品質ひんしつ確保かくほでき、供給きょうきゅうすることのできるもの」でなければ、第三者だいさんしゃである電力でんりょく消費しょうひしゃ電力でんりょく供給きょうきゅうおこなうことはできない。第三者だいさんしゃである電力でんりょく消費しょうひしゃ電力でんりょく供給きょうきゅうするものが「電気でんき事業じぎょうしゃ」すなわち電力でんりょく会社かいしゃであり、第三者だいさんしゃである電力でんりょく消費しょうひしゃのことを「需要じゅよう」という。そして電気でんき事業じぎょうしゃ需要じゅよう供給きょうきゅうする電力でんりょくのことを「商用しょうよう電力でんりょく」という。なお、電気でんき事業じぎょうしゃ同士どうしあいだでやりとりされる電力でんりょく商用しょうよう電力でんりょくとされる。

すなわち商用しょうよう電力でんりょくとは「あきないにもちいるための電力でんりょく」ではなく、「あきなうことのできる電力でんりょく」そのもののことであり、「商用しょうよう電源でんげん」とはこの電力でんりょくそのものや、これを供給きょうきゅうするための設備せつび一般いっぱん総称そうしょうしている。

現代げんだい社会しゃかいにおいて商用しょうよう電力でんりょくは、社会しゃかいインフラストラクチャー一部いちぶとみなされており、所定しょてい、すなわちこう品質ひんしつ電力でんりょく安定あんていしてなく電力でんりょく消費しょうひしゃ供給きょうきゅうするうれでん事業じぎょうはきわめて公共こうきょうせいたか事業じぎょうであるとかんがえられている。

歴史れきし[編集へんしゅう]

事業じぎょうとしての電力でんりょく供給きょうきゅう、すなわち商用しょうよう発電はつでん送電そうでん配電はいでん歴史れきしは、アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくトーマス・エジソン1879ねん実用じつようてき白熱はくねつ電球でんきゅう発明はつめいしたことにはしはっする。当時とうじ一般いっぱん家庭かていには電気でんき使つか器具きぐ存在そんざいせず、配電はいでん事業じぎょうおこなわれていなかった。電池でんちすで存在そんざいしたが、電灯でんとうすのに電池でんち使用しようするのは繁雑はんざつであり、白熱はくねつ電球でんきゅうによる照明しょうめい一般いっぱん普及ふきゅうさせるためには、事業じぎょうとして配電はいでんはじめる必要ひつようがあった。そこでエジソンは1882ねん世界せかいはつ商用しょうよう発電はつでんしょニューヨーク建設けんせつし、配電はいでん事業じぎょうした。この発電はつでんしょ直流ちょくりゅう発電はつでんしょであり、配電はいでん直流ちょくりゅうおこなわれた。

一方いっぽうで、交流こうりゅうによる配電はいでん事業じぎょうもほぼどう時期じき開始かいしされている。交流こうりゅう配電はいでん事業じぎょう重要じゅうよう役割やくわりになったのはニコラ・テスラである。かれは、交流こうりゅう発電はつでん変電へんでん送電そうでん配電はいでんかんするすうおおくの特許とっきょ取得しゅとく交流こうりゅう動力どうりょくとするための、交流こうりゅうモーター実用じつようなどをおこなっている。

初期しょき配電はいでん事業じぎょうにおいては、直流ちょくりゅう交流こうりゅうあらそったことから電流でんりゅう戦争せんそうともばれた。配電はいでん事業じぎょうはじめられた当初とうしょ需要じゅようもまだすくなく、発電はつでんしょから直接ちょくせつ需要じゅよう配電はいでんする、すなわち送電そうでんのないサービス形態けいたいであったことから、直流ちょくりゅう配電はいでん優位ゆういにあった。これは直流ちょくりゅう発電はつでんまわして電力でんりょく供給きょうきゅうする一方いっぽう蓄電池ちくでんち予備よび電源でんげんとして利用りようできるため、信頼しんらいせいひく直流ちょくりゅう発電はつでんもちいそれが故障こしょう停止ていししても、その修理しゅうり時間じかんちゅう蓄電池ちくでんちたくわえた電力でんりょく需要じゅよう供給きょうきゅうすればよく、継続けいぞく安定あんていした電力でんりょく供給きょうきゅうができるためであった。しかし当時とうじ直流ちょくりゅう配電はいでんには決定的けっていてき欠点けってんがあった。それは電圧でんあつ問題もんだいであり、需要じゅよう要望ようぼうおうじた電圧でんあつ電力でんりょく供給きょうきゅうするためには、それぞれ発電はつでんしょからの配電はいでんせん必要ひつようだった。

一方いっぽう交流こうりゅう変圧へんあつにより自由じゆう電圧でんあつ昇降しょうこうでき、必要ひつよう電圧でんあつ電力でんりょく配電はいでん系統けいとうちゅう自在じざいつくれる。すなわち配電はいでん必要ひつよう配電はいでんせんかずは3ほんのみであり、結果けっかすくない設備せつび需要じゅよう多様たよう電圧でんあつ需要じゅようこたえられる。このことから次第しだい直流ちょくりゅう配電はいでん駆逐くちくされ、交流こうりゅう配電はいでんわっていった。

しかし直流ちょくりゅう送電そうでん交流こうりゅう比較ひかくして損失そんしつすくないことから、負荷ふか途中とちゅうさない長距離ちょうきょりだい電力でんりょく送電そうでんについて有利ゆうりである。いち完全かんぜん駆逐くちくされた「商用しょうよう直流ちょくりゅう」であるが、1970ねん、アメリカのパシフィック・インターネイのれんけいせん本格ほんかくてき復活ふっかつした。これはこうちょう1362km、±400kV、1440MW、2回線かいせんれんけいせんである。また、すうじゅうkm以上いじょう海底かいていケーブルでも経済けいざいてき有利ゆうりになってくることから、今日きょうとく長距離ちょうきょり海底かいてい電力でんりょく送電そうでん線路せんろ直流ちょくりゅうによるものとなってきている。日本にっぽんでは、北海道電力ほっかいどうでんりょく東北電力とうほくでんりょくとの電力でんりょくれんけい関西電力かんさいでんりょく四国電力しこくでんりょく電力でんりょくれんけい一部いちぶなどが直流ちょくりゅうとなっている[4]

現代げんだい社会しゃかいにおいて商用しょうよう電力でんりょくは、くににより若干じゃっかん差異さいはあるものの、社会しゃかいインフラストラクチャー一部いちぶとみなされ、各国かっこくひろ普及ふきゅうしているが、一方いっぽうで、基本きほんてき自家じか消費しょうひする電力でんりょくについては自由じゆう、また発電はつでんしょ発電はつでんした電力でんりょく長距離ちょうきょり送電そうでん配電はいでんすることは、直流ちょくりゅうであっても交流こうりゅうであっても経路けいろでの損失そんしつおおきくなるため、今日きょうとく環境かんきょう問題もんだい、まただい規模きぼ災害さいがい対策たいさく目的もくてきなどから、一般いっぱん家庭かていなどにおいても、技術ぎじゅつ進歩しんぽにより安価あんかこう効率こうりつとなった自家じか発電はつでん装置そうちそなけ、自分じぶん消費しょうひする電力でんりょく自分じぶんつくるといううごきがひろまりはじめている。日本にっぽんでは昭和しょうわ40年代ねんだいごろまで山間さんかん僻地へきち商用しょうよう電力でんりょく送配そうはいでん困難こんなんという理由りゆうから、一所いっしょたいないしはすうじゅう世帯せたい電力でんりょくまかなうためにかず-じゅうすうkW程度ていど発電はつでん能力のうりょく自家用じかよう水力すいりょく発電はつでんしょ、あるいは島嶼とうしょおなじく自家用じかようディーゼル発電はつでんしょなどがいくつもあり、そのこれらは次々つぎつぎ廃止はいし、あるいは電力でんりょく会社かいしゃ譲渡ゆずりわたされ、商用しょうよう電力でんりょくえられていったのであるが、これが今日きょうでは山間さんかん僻地へきちあるいは島嶼とうしょかぎらず、自家用じかよう燃料ねんりょう電池でんちあるいは独立どくりつ太陽光たいようこう発電はつでん装置そうちなどにかたちえてふたたかれるようになってきた。

日本にっぽん商用しょうよう電源でんげん事情じじょう[編集へんしゅう]

電圧でんあつ[編集へんしゅう]

周波数しゅうはすう[編集へんしゅう]

各国かっこく商用しょうよう電源でんげん事情じじょう[編集へんしゅう]

くにべつ商用しょうよう電源でんげん 電圧でんあつ/周波数しゅうはすう 一覧いちらんひょう[5]
国名こくめい 電圧でんあつ (V) 周波数しゅうはすう (Hz)
日本にっぽん 100 / 200 50 / 60
中国ちゅうごく 220 50
中国ちゅうごく香港ほんこん 220 50
台湾たいわん 110 / 220 60
韓国かんこく 220 60
シンガポール 230 50
マレーシア 230 50
タイ 220 50
インド 115 / 230 / 240 50
インドネシア 127 / 220 / 230 50
アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこく 120 / 240 60
カナダ 120 / 240 60
メキシコ 120 / 127 / 230 60
ドイツ 127 / 230 50
イギリス 230 / 240 50
チェコ 220 50
ポーランド 230 50

脚注きゃくちゅう[編集へんしゅう]

  1. ^ 日本にっぽん国内こくない使用しようされる交流こうりゅう電源でんげんについておしえてください。”. ジャパンセンサー株式会社かぶしきがいしゃ. 2022ねん4がつ9にち閲覧えつらん
  2. ^ 世界せかいの7おくにんちょう 電気でんき使つかえず 世銀せぎん試算しさん東京とうきょう新聞しんぶん』2022ねん7がつ5にち7めん掲載けいさい共同通信きょうどうつうしん記事きじ同日どうじつ閲覧えつらん
  3. ^ 電気化学工業でんきかがくこうぎょう株式会社かぶしきがいしゃ環境かんきょう安全あんぜん報告ほうこくしょ 2006ねん (PDF)
  4. ^ 前川まえかわ幸一郎こういちろう荒井あらい聰明さとあき送配そうはいでん東京電機大学とうきょうでんきだいがく出版しゅっぱんきょく,1988ねん11がつ20日はつかだい5はん初版しょはん発行はっこう1967ねん)pp.266-284 ISBN 4-501-10240-3
  5. ^ 海外かいがい商用しょうよう電源でんげんしょく

関連かんれん項目こうもく[編集へんしゅう]