12AX7

12AX7(ヨーロッパでは ECC83^[1])は、12AV6(6AV6）双そう二に極きょく・三極さんきょく複ふく合あい真空しんくう管かんの三極さんきょく部分ぶぶんだけが2組くみ封入ふうにゅうされたものに相当そうとうする双そう三さん極きょくミニチュア真空しんくう管かんである。

概要がいよう

1946年ねんにRCAのニュージャージー州しゅうカムデンの工場こうじょうで開発かいはつされ^[2]、開発かいはつ時じの型番かたばんはA-4522で、1947年ねん9月がつ15日にちの発売はつばい時じに、製品せいひん名めい12AX7とされた。

12AX7は、もともとオーディオ用よう増幅ぞうふく管かんである双そう三さん極きょくGT管かんの6SL7ファミリーをミニチュア管かんで代替だいたいする用途ようとで開発かいはつされたものである。電圧でんあつ利得りとくが大おおきく、ギターアンプ用よう真空しんくう管かんとして多おおく使用しようされ、発売はつばい以来いらい継続けいぞくして生産せいさんされている数少かずすくない小しょう信号しんごう用よう真空しんくう管かんである。

12AX7は基本きほん的てきに 6AV6の三極さんきょく管かん部分ぶぶんだけを 2組くみ封入ふうにゅうしたものに相当そうとうする双そう三さん極きょく管かんである。

その6AV6は、AMラジオに使用しようされていた6SQ7 オクタルベース双そう二に極きょく・三極さんきょく管かんをミニチュア管かん（カソードは1個いっこ）にしたもので、1930年ねん頃ごろの75形かたち三さん極きょく管かんとよく似にている。

性能せいのう

12AX7は高こう利得りとく(100μ程度ていど)、低ひくプレート電流でんりゅうの三極さんきょく管かんで低ていレベルのオーディオ電圧でんあつ増幅ぞうふく回路かいろに最適さいてきである。オーディオアンプの入力にゅうりょく段だんおよび中間ちゅうかんプリアンプ段だんに広ひろく使用しようされている。ミラー効果こうかによる静しずか電でん容量ようりょうが比較的ひかくてき大おおきいので、高周波こうしゅうは用ようには不向ふむきである。

一般いっぱん的てきに12AX7のプレート抵抗ていこうは大おおきく、ほとんどのギターアンプでは100kΩおめが、ハイファイ機器ききでは220kΩおめが以上いじょうとなる。グリッドバイアスはカソード抵抗ていこうに供給きょうきゅうされることがほとんどである。

カソード抵抗ていこうがバイパスされていない場合ばあい、負ふ帰還きかんにより12AX7の各かく三さん極きょく部分ぶぶんの電圧でんあつ利得りとくは約やく30μとなる。

プレートインピーダンスを一致いっちさせる必要ひつようがあるので、増幅ぞうふく率りつは基本きほん的てきに最大さいだいステージ利得りとくの2倍ばいで、電圧でんあつの半分はんぶんは静止せいし状態じょうたいの真空しんくう管かんにかかり、半分はんぶんは負荷ふか抵抗ていこうにかかることになる^[3]。

　 $A_{v}=\mu \times R_{tot}/(r_{P}+R_{tot}+(R_{K}\times (\mu +1))$

ただし

　 $A_{v}$ ：電圧でんあつ利得りとく

　 $\mu$ ：真空しんくう管かんの増幅ぞうふく率りつ

　 $r_{P}$ ：プレート内部ないぶ抵抗ていこう

　 $R_{K}$ ：カソード抵抗ていこう

　 $R_{tot}$ ： $R_{P}$ (外そと付づけプレート抵抗ていこう)と $R_{load}$ との並列へいれつ接続せつぞく。

もし、カソード抵抗ていこうをバイパスする場合ばあいは $R_{K}=0$ とする。

同様どうようの設計せっけいの双そう三さん極きょく管かん

12AX7の型番かたばんの「12」はヒーター電圧でんあつ定てい格かく12Vであることを示しめしている。ただし、フィラメントはセンター分岐ぶんき形がたなので、6.3V 300mA（並列へいれつ接続せつぞくにした場合ばあい）、12.6V 150mA（センターを使用しようせずに直列ちょくれつにした場合ばあい）のいずれのヒーター回路かいろにも使用しよう可能かのうである。

同おなじピン配列はいれつ（EIA 9A）の双そう三さん極きょくミニチュア管かんとして、12AT7、12AUえーゆー7、12AV7、12AY7や、低圧ていあつ12U7、さらに4桁けたのEIAシリーズもある。

これらの設計せっけいは、電圧でんあつ利得りとくが100μ程度ていどである12AX7よりも利得りとくが低ひくく（プレート電流でんりゅうを大おおきくするためにトレードオフ）、より高周波こうしゅうはの用途ようとに適てきしている。

ファミリーの電圧でんあつ利得りとくと相互そうごコンダクタンスは幅広はばひろく、耐久たいきゅう性せい、低ていマイクロフォニック雑音ざつおん、安定あんてい性せい、寿命じゅみょうなどを向上こうじょうさせるよう設計せっけいされている。

また、これらは、性能せいのうの違ちがいがあるものの、緊急きんきゅう時じには差さし替かえが可能かのうなものもある。

双そう三さん極きょくミニチュア管かんファミリーの一員いちいんとして世界中せかいじゅうで製造せいぞうされ続つづけている。

12AX7ファミリー一覧いちらん

12AD7(1955年ねん10月がつ10日とおか- 225mA ヒーター電流でんりゅう・低ひくハムノイズ)
12AT7^[4](1947年ねん5月がつ20日はつか - 6AB4×2に相当そうとう、 $A_{v}$ = 60)
12AUえーゆー7(1946年ねん10月がつ18日にち - $A_{v}$ = 17-20、6C4^[5]×2に相当そうとう）
12AV7(1950年ねん2月がつ14日にち - $A_{v}$ = 37-41、6BC4×2に相当そうとう)
12AX7(1947年ねん9月がつ15日にち - $A_{v}$ = 100、6DR4×2あるいはオクタルベース6SL7に相当そうとう、12AV6(6AV6)双そう二に極きょく・三極さんきょく（複ふく合ごう管かん）の三さん極きょく部分ぶぶん×2相当そうとう）
12AY7(1948年ねん12月7日にち - $A_{v}$ = 44）、オーディオプリアンプで使用しようされている^[6]
12AZ7(1951年ねん3月がつ2日にち - $A_{v}$ = 60、ヒーター電流でんりゅう225mA )
12DF7( $A_{v}$ = 100、低ひくマイクロフォニック雑音ざつおん)
12DT7( $A_{v}$ = 100)
12DW7 ^[7](第だい1三さん極きょく部ぶ: $A_{v}$ = 100、第だい2三さん極きょく部ぶ: $A_{v}$ = 17)
12U7( $A_{v}$ = 20、12Vプレート電源でんげんの自動車じどうしゃ用ようラジオに使つかわれていた)

ヨーロッパではマラード・フィリップス社しゃのECC83が一般いっぱんに知しられているが、その他たにも低てい雑音ざつおんの12AX7A、12AD7、6681、7025、7729、ヨーロッパ版ばんのB339、B759、CV492、CV4004、CV8156、CV8222、ECC803、ECC803S、E2164、M8137、航空機こうくうき器用きようの低てい利得りとく低てい雑音ざつおんの5751と6851などが存在そんざいする。

ヨーロッパでは、E83CCはECC83というように、ある種しゅの特別とくべつな品質ひんしつのバルブをアルファベットと数字すうじで表記ひょうきすることが多おおかった。米国べいこくでは、12AX7WAのようにWをつけると、軍用ぐんよう規格きかくでより信頼しんらい性せいの高たかい仕様しようの真空しんくう管かんを指定していすることができる。

ヨーロッパの呼称こしょうの「E」は6.3Vのヒーター電圧でんあつ仕様しようとして分類ぶんるいされ、アメリカの呼称こしょうの12AX7は12.6Vのヒーター電圧でんあつ仕様しようとして分類ぶんるいされる。もちろん、どちらの電圧でんあつでも動作どうさするように配線はいせんすることができる。

製造せいぞう

2022年ねん現在げんざい^[update]の、12AX7/ECC83の生産せいさん状じょう況きょうは次つぎのとおり。

ロシア: New Sensor（Sovtek、エレクトロ・ハーモニックス、Svetlana、Tung-Sol、Mullard ブランドで販売はんばいされている）
スロヴァキア: JJ Electronic(年間ねんかん約やく200万まん個こ生産せいさん)
中国ちゅうごく: Hengyang Electronics^[8] （Psvane and TAD^[9]ブランド名めいで販売はんばいされている。同社どうしゃは中国ちゅうごく南部なんぶに独立どくりつした製造せいぞう工場こうじょうを所有しょゆうしており（旧きゅう貴光たかみつ管かん工場こうじょう)^[10]^[11]、最近さいきんでは天津てんしん全ぜん正せい工場こうじょう (TJ Full Music) から旧きゅう小しょう信号しんごう管かん製造せいぞうラインを取得しゅとくした^[12]^[13]）

脚注きゃくちゅう・参考さんこう文献ぶんけん

^ “www.thetubestore.com - 12AX7 / ECC83 Tube Types”. 2022年ねん12月8日にち閲覧えつらん。
^ Jung, David (September 2010). “Draw! A 12AX7 'Shootout'”. Vintage Guitar: 114.
^ “Preamp Gain and Output Impedance Calculator”. 2022年ねん12月8日にち閲覧えつらん。
^ killerrig.com,“12AX7 vs 12AT7 Tube Types” (13 April 2022). 2022年ねん12月8日にち閲覧えつらん。
^ “www.thetubestore.com - Tubes with part numbers beginning with 6C4 - M8080 Tube”. 2022年ねん12月8日にち閲覧えつらん。
^ “www.thetubestore.com - Tubes with part numbers beginning with 12AY7 - 6072 Tube”. 2022年ねん12月8日にち閲覧えつらん。
^ “www.thetubestore.com - Tubes with part numbers beginning with 12DW7 - 7247 Tube”. 2022年ねん12月8日にち閲覧えつらん。
^ Classic series ECC83,“Changsha Hengyang Electronics Co.,Ltd.”. 2022年ねん12月8日にち閲覧えつらん。
^ Sales network,“Changsha Hengyang Electronics Co.,Ltd.”. 2022年ねん12月8日にち閲覧えつらん。
^ Rachel Zhang,“Who is Psvane?”. 2022年ねん12月8日にち閲覧えつらん。
^ Rachel Zhang,“Who was GuiGuang”. 2022年ねん12月8日にち閲覧えつらん。
^ About Linlai Team,“LINLAI Globa”. 2022-12-08l閲覧えつらん。
^ “Changsha Qiangsheng Light Power Co., Ltd.”. 2022年ねん12月8日にち閲覧えつらん。

外部がいぶリンク

[1] “www.thetubestore.com - 12AX7 / ECC83 Tube Types”. 2022年ねん12月8日にち閲覧えつらん。

[vintage-2] Jung, David (September 2010). “Draw! A 12AX7 'Shootout'”. Vintage Guitar: 114.

[3] “Preamp Gain and Output Impedance Calculator”. 2022年ねん12月8日にち閲覧えつらん。

[4] rrig.com,“12AX7 vs 12AT7 Tube Types” (13 April 2022). 2022年ねん12月8日にち閲覧えつらん。

[5] “www.thetubestore.com - Tubes with part numbers beginning with 6C4 - M8080 Tube”. 2022年ねん12月8日にち閲覧えつらん。

[6] “www.thetubestore.com - Tubes with part numbers beginning with 12AY7 - 6072 Tube”. 2022年ねん12月8日にち閲覧えつらん。

[7] “www.thetubestore.com - Tubes with part numbers beginning with 12DW7 - 7247 Tube”. 2022年ねん12月8日にち閲覧えつらん。

[8] Classic series ECC83,“Changsha Hengyang Electronics Co.,Ltd.”. 2022年ねん12月8日にち閲覧えつらん。

[9] Sales network,“Changsha Hengyang Electronics Co.,Ltd.”. 2022年ねん12月8日にち閲覧えつらん。

[10] Rachel Zhang,“Who is Psvane?”. 2022年ねん12月8日にち閲覧えつらん。

[11] Rachel Zhang,“Who was GuiGuang”. 2022年ねん12月8日にち閲覧えつらん。

[12] About Linlai Team,“LINLAI Globa”. 2022-12-08l閲覧えつらん。

[13] “Changsha Qiangsheng Light Power Co., Ltd.”. 2022年ねん12月8日にち閲覧えつらん。

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