有機ゆうき的てき建築けんちく

フランク・ロイド・ライトによる落水おちみず荘そう

有機ゆうき的てき建築けんちく（ゆうきてきけんちく、Organic_architecture）とは、人間にんげんの生活せいかつと自然しぜん界かいとの調和ちょうわを図はかる建築けんちく哲学てつがくである。

建築けんちく物ぶつ、家具かぐ、周辺しゅうへん環境かんきょうが一体いったいとなり、相互そうごに関連かんれんし合あう構成こうせいとなるように、敷地しきちとの調和ちょうわを図はかりながら設計せっけいすることで達成たっせいされる。

歴史れきし

「有機ゆうき的てき建築けんちく」という言葉ことばは、フランク・ロイド・ライト（1867-1959）の造語ぞうごである。

私わたしはこの場ばに立たち、みなさんの前まえで、有機ゆうき的てきな建築けんちくについて説とき、有機ゆうき的てきな建築けんちくこそが近代きんだいの理想りそうであり、私わたしたちが生命せいめい全体ぜんたいを見渡みわたし、生命せいめい全体ぜんたいに奉仕ほうしするために必要ひつような教おしえであると宣言せんげんする。過去かこ、現在げんざい、未来みらいのいずれかにおいて私わたしたちに固定こていされた先入観せんにゅうかんのない形かたちを大切たいせつにするのではなく、常識じょうしき、あるいは超ちょう常識じょうしきに乗のっ取とって、素材そざいの性質せいしつによって形かたちを定さだめるという単純たんじゅんな法則ほうそくを高たかく評価ひょうかする。

Reima PietiläとRaili Pietiläによるフィンランドのタンペレ中央ちゅうおう図書館としょかん「Metso」をモチーフにした郵便ゆうびん切手きって。

有機ゆうき的てきな建築けんちくは、包括ほうかつ的てきな性質せいしつを持もつライトの設計せっけいプロセスにも通つうずる。素材そざい、モチーフ、そして基本きほん的てきな秩序ちつじょが、建物たてもの全体ぜんたいを通とおして繰くり返かえされる。有機ゆうき的てきな建築けんちくとは、建築けんちくと自然しぜんとの関係かんけいだけでなく、建築けんちくの設計せっけいがあたかも一ひとつの生命せいめい体たいのように慎重しんちょうに考かんがえられていることを意味いみする。

有機ゆうき的てきな建築けんちくとは、建物たてもののあらゆる要素ようそをデザインすることでもあり、 窓まどから床ゆか、そして空間くうかんを満みたすための個々ここの椅子いすまで、すべてが互たがいに関連かんれんし合あい、自然しぜん界かいの共生きょうせい的てきな秩序ちつじょシステムを反映はんえいすることを理想りそうとする。

アメリカやヨーロッパなどのモダニズム建築けんちく家かたちは、建築けんちくがいかにして自然しぜんを模倣もほうするかについて、互たがいに補完ほかんしあいながら、しばしば競合きょうごうする見解けんかいを示しめしていた。アメリカではルイス・サリバン、クロード・ブラグドン、ユージン・ツイ、ポール・ラフォリが、ヨーロッパではヒューゴ・ヘリング、アーサー・ダイソン、ハンス・シャロウン、ルドルフ・シュタイナーが代表だいひょう的てきである。第だい二に次じ世界せかい大戦たいせん後ご、有機ゆうき的てきな建築けんちくは、バックミンスター・フラーの作品さくひんに見みられるように、サイバネティックで情報じょうほう化かされた生活せいかつ様式ようしきを反映はんえいすることが多おおくなった。

建築けんちく家かでありプランナーでもあるデイヴィッド・ピアソンは、有機ゆうき的てきな建築けんちくをデザインするためのいくつかのルールを提案ていあんした。有機ゆうき的てきな建築けんちくとデザインのための「ガイア憲章けんしょう」として知しられるこのルールは次つぎのようなものである：

• 自然しぜんからインスピレーションを受うけ、持続じぞく可能かのうかつ健康けんこう的てき、保全ほぜん的てき、多様たようであること
• 有ゆう機体きたいのように、内うちなる種たねから展開てんかいすること
• 「連続れんぞくする現在げんざい」に存在そんざいし、「何なん度ども何なん度ども始はじまる」こと
• 流ながれに身みを任まかせ、柔軟じゅうなん性せいと適応てきおう力りょくを持もつこと
• 社会しゃかい的てき、物理ぶつり的てき、精神せいしん的てきなニーズを満みたすこと
• 「土地とちから生はえる」ように建たち、独自どくじ性せいを持もつこと
• 若わかさ、遊あそび、驚おどろきの心しんを大切たいせつにすること
• 音楽おんがくのリズムとダンスのパワーを表現ひょうげんすること

有機ゆうき的てきな建築けんちくの代表だいひょう例れいとして、ライトはペンシルバニアの田舎町いなかまちにあるカウフマン家かのために設計せっけいした住宅じゅうたく「落水おちみず荘そう」を挙あげることができる。ライトは、この広大こうだいな敷地しきちに家いえを建たてるにあたり、多おおくの選択肢せんたくしの中なかから、滝たきと小川おがわの真上まうえに家いえを配置はいちすることを選えらび、水みずのせせらぎや急峻きゅうしゅんな敷地しきちと密接みっせつに対話たいわすることを可能かのうにした。石造いしづくりの水平すいへいの縞しまとベージュのコンクリートによる大胆だいたんなキャンティレバーは、自生じせいする岩いわや森林しんりんの環境かんきょうと調和ちょうわしている。

戦後せんごヨーロッパでは、ハンガリーのイムレ・マコヴェッツが有機ゆうき的てき建築けんちくの最もっとも著名ちょめいな提唱ていしょう者しゃの一人ひとりであった。

現代げんだいにおいても有機ゆうき的てきな建築けんちくを体現たいげんする作品さくひんは多おおくある。「有機ゆうき的てき」という言葉ことばの定義ていぎは、近年きんねん大おおきく変化へんかしてきている。建設けんせつや維持いじに多おおくの体積たいせきエネルギーを必要ひつようとする建設けんせつ資材しざいを避さけ、建物たてものが自然しぜんに溶とけ込こみ、周囲しゅういの環境かんきょうに馴染なじみ、文化ぶんかの連続れんぞく性せいを反映はんえいしている場合ばあい、それは「有機ゆうき的てき」である。ストックホルムの地下鉄ちかてつ駅えきであるRådhuset駅えきでは、形状けいじょうに手てを加くわえず自然しぜんのままの岩盤がんばんを露出ろしゅつさせている。

外部がいぶリンク

『有機ゆうき的てき建築けんちく』 - コトバンク