樫かし出で勇いさむ

樫かし出で 勇いさむ
生誕せいたん	1915年ねん2月がつ 新潟にいがた県けん 刈羽かりわ郡ぐん北条ほうじょう村むら
死没しぼつ	2004年ねん6月がつ
所属しょぞく組織そしき	大日本帝国だいにっぽんていこく陸軍りくぐん
軍ぐん歴れき	1934 - 1945
最終さいしゅう階級かいきゅう	陸軍りくぐん大尉たいい
戦闘せんとう	ノモンハン事件じけん 第だい二に次じ世界せかい大戦たいせん

樫かし出で 勇いさむ（かしいで いさむ、1915年ねん〈大正たいしょう4年ねん〉2月がつ - 2004年ねん〈平成へいせい16年ねん〉6月がつ）は、陸軍りくぐん軍人ぐんじん、戦闘せんとう機き操縦そうじゅう者しゃ。最終さいしゅう階級かいきゅうは陸軍りくぐん大尉たいい。新潟にいがた県けん刈羽かりわ郡ぐん北条ほうじょう村むら（現げん・柏崎かしわざき市し）出身しゅっしん。

ノモンハン事件じけんおよび太平洋戦争たいへいようせんそう末期まっきの本土ほんど防空ぼうくう戦せんにおいて活躍かつやくし、B-29爆撃ばくげき機きに対たいする通算つうさん最多さいた撃墜げきつい記録きろくを有ゆうする。陸軍りくぐんのエースパイロットである。

経歴けいれき

• 1934年ねん（昭和しょうわ9年ねん）2月がつ、陸軍りくぐん少年しょうねん飛行ひこう兵へい第だい1期生きせいとして所沢ところざわ陸軍りくぐん飛行ひこう学校がっこう入校にゅうこう。
• 1935年ねん（昭和しょうわ10年ねん）11月、所沢ところざわ陸軍りくぐん飛行ひこう学校がっこう卒業そつぎょう、明野あけの陸軍りくぐん飛行ひこう学校がっこうに入校にゅうこう。
• 1936年ねん（昭和しょうわ11年ねん）2月がつ、飛行ひこう第だい1連隊れんたいに配属はいぞく。
• 1938年ねん（昭和しょうわ13年ねん）7月がつ、飛行ひこう第だい59戦隊せんたいに転属てんぞく。
• 1939年ねん（昭和しょうわ14年ねん）9月がつ、ノモンハン航空こうくう戦せんに参戦さんせん。
• 1940年ねん（昭和しょうわ15年ねん）、飛行ひこう第だい4戦隊せんたいに転属てんぞく。12月、少尉しょうい候補者こうほしゃ第だい21期き学生がくせいとして陸軍りくぐん航空こうくう士官しかん学校がっこう入校にゅうこう。
• 1941年ねん（昭和しょうわ16年ねん）7月がつ、陸軍りくぐん航空こうくう士官しかん学校がっこう卒業そつぎょう。10月、少尉しょうい任官にんかん。任官にんかん後ご原隊げんたい復帰ふっき。
• 1943年ねん（昭和しょうわ18年ねん）4月がつ、中尉ちゅうい進級しんきゅう。
• 1945年ねん（昭和しょうわ20年ねん）5月がつ、武功ぶこう徽章きしょう乙種おつしゅ受章じゅしょう。
• 1945年ねん（昭和しょうわ20年ねん）6月がつ、大尉たいい進級しんきゅう。

ノモンハン航空こうくう戦せん　

日本にっぽん陸軍りくぐんとソ連それん空軍くうぐんの間あいだに起おこったノモンハン航空こうくう戦せんに樫かし出では参戦さんせんしており、5機き以上いじょうを撃墜げきついする戦果せんかを挙あげた。20機き以上いじょうを撃墜げきついしたノモンハンエースは23名めいおり、その中なかで篠原しのはら弘道ひろみち准尉じゅんい、井上いのうえ重俊しげとし大尉たいい、西原にしはら吾郎ごろう軍曹ぐんそう、3名めいは九きゅう七なな式しき戦闘せんとう機きを駆かり戦たたかった撃墜げきつい王おうとして有名ゆうめいである。篠原しのはら弘道ひろみち准尉じゅんいは戦死せんししたが、3ヶ月かげつで58機きを撃墜げきついした。

本土ほんど防空ぼうくう戦せんのB-29撃墜げきつい王おう　

屠ほふ龍りゅう部隊ぶたい

二に式しき複ふく座ざ戦闘せんとう機き（愛称あいしょう「屠ほふ龍りゅう」）を駆かり、1944年ねん（昭和しょうわ19年ねん）6月がつ16日にちのB-29による初はつ来襲らいしゅう（八幡やはた空襲くうしゅう）の空戦くうせんから終戦しゅうせんまでに樫かし出では北九州きたきゅうしゅうに来襲らいしゅうしたB-29を26機き撃墜げきついしたとされる(日本にっぽん側がわ発表はっぴょうのみによる)。当初とうしょは二に式しき複ふく座ざ戦闘せんとう機きには「屠ほふ龍りゅう」という愛称あいしょうは冠かんされていなかったが、北九州きたきゅうしゅうを防衛ぼうえいする防空ぼうくう隊たいの活躍かつやくが日本にっぽんの一般いっぱん市民しみんに知しられた結果けっか、樫かし出でが所属しょぞくしていた小月おづきの飛行ひこう第だい4戦隊せんたい（複ふく戦せん）と芦屋あしやの飛行ひこう第だい13戦隊せんたいを「屠ほふ龍りゅう部隊ぶたい」と皆みなが呼よぶようになり、この名なが定着ていちゃくした。また彼かれらには被ひ撃墜げきつい時じには必かならず敵てき機きを道みちづれとする信念しんねんがあったという。

樫かし出でとともに戦たたかった搭乗とうじょう員いんの活躍かつやくも目覚めざましかったとされ、日本にっぽん側がわの記録きろくによれば1945年ねん（昭和しょうわ20年ねん）3月がつの時点じてんで樫かし出で中尉ちゅうい、木村きむら准尉じゅんいともにB-29を18機き撃墜げきつい、西尾にしお准尉じゅんいが11機き撃墜げきつい、藤本ふじもと軍曹ぐんそうが6機き撃墜げきつい、佐々ささ大尉たいい、河野こうの軍曹ぐんそうともに3~4機き撃墜げきつい、小川おがわ中尉ちゅうい、鈴木すずき少尉しょうい、馬場ばば曹長そうちょう、内田うちだ曹長そうちょう、西村にしむら軍曹ぐんそう、岩井いわい伍長ごちょう、辻つじ伍長ごちょう、横田よこた伍長ごちょう、筒井つつい伍長ごちょうら2機き撃墜げきつい、4機き撃破げきはというものであった。木村きむら少尉しょういは1945年ねん7月がつ14日にちに戦死せんししてしまったが、樫かし出では木村きむら少尉しょういのことを自分じぶんを上回うわまわる技量ぎりょうの持もち主ぬしであると評価ひょうかしており、（B-29撃墜げきつい数すう22機きとされる）木村きむら少尉しょういが生いきていれば自分じぶんを越こす撃墜げきつい数すうを挙あげていたと語かたっている。

戦果せんか

1944年ねん（昭和しょうわ19年ねん）8月がつ20日はつか、2度目どめのB-29大挙たいきょ来襲らいしゅうに対たいする邀撃ようげき戦せんにおいて、屠ほふ龍りゅう戦隊せんたいは来襲らいしゅうした80機きのうち23機き撃墜げきついを報ほうじた。これに対たいして屠ほふ龍りゅう戦隊せんたいの損害そんがいは3機き未み帰還きかん、5機きが被弾ひだんという損害そんがいであった。一方いっぽう、アメリカ側がわの記録きろくでは爆ばく撃げき機き61機きのうち14機き喪失そうしつ（損耗そんこう率りつ23%。交戦こうせん以外いがいによる損失そんしつを含ふくむ）で、そのうち航空機こうくうきによる損失そんしつが4機き（空そら対たい空爆くうばく撃げきによる1機きと体当たいあたりによる1機きを含ふくむ）、対空たいくう砲火ほうかによる損失そんしつが1機きとしており、逆ぎゃくに日本にっぽん機き17機き撃墜げきついを報ほうじている。

参考さんこう文献ぶんけん

• 樫かし出で 勇いさむ『B29撃墜げきつい記き 夜戦やせん「屠ほふ龍りゅう」撃墜げきつい王おう樫かし出で勇いさむ空戦くうせん記録きろく』（光人みつひと社しゃNF文庫ぶんこ、2005年ねん新装しんそう版ばん） ISBN 4-7698-2203-0
  • 潮しお書房しょぼう『丸まる』平成へいせい9年ねん（1997年ねん）7月がつ号ごう~平成へいせい10年ねん（1998年ねん）2月がつ号ごうに連載れんさいされた「私わたしは「B-29」26機き撃墜げきついした!」の文庫本ぶんこぼん。
• モデルアート No. 416 10月がつ号ごう臨時りんじ増刊ぞうかん 『陸軍りくぐん航空こうくう英雄えいゆう列伝れつでん -戦功せんこう勲章くんしょう"武功ぶこう徽章きしょう"受章じゅしょう者しゃ達たちの記録きろく-』（モデルアート社しゃ、1993年ねん。