樹影じゅえい譚たん

『樹影じゅえい譚たん』（じゅえいたん）は、丸谷まるや才一さいいちの短編たんぺん小説しょうせつ、及およびそれを表題ひょうだいとした短編たんぺん小説しょうせつ集しゅう。

概要がいよう

『群像ぐんぞう』1987年ねん4月がつ号ごうに掲載けいさいされた。1988年ねん8月がつ1日にち刊行かんこうの短編たんぺん小説しょうせつ集しゅう『樹影じゅえい譚たん』（文藝春秋ぶんげいしゅんじゅう）に収録しゅうろく。同どう短たん編集へんしゅうには他たに「鈍感どんかんな青年せいねん」「夢ゆめを買かいひます」の2作品さくひんが収おさめられている。

第だい15回かい川端かわばた康成やすなり文学ぶんがく賞しょうを受賞じゅしょうした（1988年ねん4月がつ16日にち決定けってい、6月24日にち贈呈ぞうてい）。

丸谷まるやは本ほん作品さくひんについて次つぎのように述のべている。

「わたしは昔むかしから『千せん一いち夜や物語ものがたり』が好すきで、あらゆる文学ぶんがく作品さくひんに出でて来くる女おんなのなかで一番いちばんのお気きに入いりは、あの話はなしの中なかに話はなし、夢ゆめのなかに夢ゆめがある本ほんの語かたり手てシェヘラザードなのですが、ああいふ調子ちょうしで一ひとつの小説しょうせつのなかに数すう多おおくの小説しょうせつがはいつてゐる小説しょうせつをわたしが書かかうとすると、小説しょうせつ家かを中心ちゅうしん人物じんぶつにするしかありませんでした」

「いつたい何なにを書かかうとしたのかとよく訊きかれます。ベルリンで朗読ろうどくしたときも質問しつもんされた。これは簡単かんたんで、世よの中なかで一番いちばん不思議ふしぎなのは自分じぶんが今いまここにゐるつてこと、といふのを書かきたかつたんです」

翻訳ほんやく

翻訳ほんやく言語げんご	タイトル	翻訳ほんやく者しゃ	発行はっこう年ねん	発行はっこう元もと
英語えいご	Tree Shadows	デニス・キーン	1990年ねん	講談社こうだんしゃインターナショナル André Deutsch
フランス語ふらんすご	L’Ombre des arbres	Aude Fieschi	1993年ねん	Éditions Philippe Picquier
ドイツ語ご	Baumschatten	Tobias Cheung	2010年ねん	Angkor Verlag
中国ちゅうごく語ご (簡体字かんたいじ)	树影谭	方ほう明生あきお	2010年ねん	上海しゃんはい文化ぶんか出版しゅっぱん社しゃ

備考びこう

• 本ほん作品さくひんが『群像ぐんぞう』（講談社こうだんしゃ）に掲載けいさいされたのに単行本たんこうぼんが文藝春秋ぶんげいしゅんじゅうから出でた理由りゆうを、丸谷まるやは後年こうねんこう述のべている。「集中しゅうちゅうの一いち篇へん『鈍感どんかんな青年せいねん』を『文学ぶんがく界かい』に発表はっぴょうしたとき、文藝春秋ぶんげいしゅんじゅう編集へんしゅう部ぶの面々めんめんのおもしろがり方かたが楽たのしかつたので、これを収おさめる本ほんはここから出だすと決きめたのでした」

• 村上むらかみ春樹はるきが読書どくしょ案内あんない書しょ『若わかい読者どくしゃのための短編たんぺん小説しょうせつ案内あんない』（文藝春秋ぶんげいしゅんじゅう、1997年ねん）で本ほん作品さくひんを取とり上あげている。

• 語かたり手てが書かいた小説しょうせつに次つぎのような記述きじゅつがある。「フランスの某ぼう女流じょりゅう批評ひひょう家かが小説しょうせつの起源きげんについて論ろんじてゐる。子供こどもが、自分じぶんは両親りょうしんの実みの子こぢやないのぢやないかと疑うたぐふ。それが起源きげんだといふのである。フロイト」。この部分ぶぶんはマルト・ロベールの『起源きげんの小説しょうせつと小説しょうせつの起源きげん』に基もとづいている。

• 著者ちょしゃの作家さっか生活せいかつ50周年しゅうねんを記念きねんして、作品さくひん集しゅう『樹影じゅえい譚たん』は2008年ねん12月に200部ぶ限定げんてい特とく装そう版ばんが出版しゅっぱんされた（定価ていか45,000円えん、税別ぜいべつ）。

関連かんれん項目こうもく

• ウラジーミル・ナボコフ
• エドナ・オブライエン