欠席けっせき裁判さいばん

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欠席けっせき裁判さいばん(けっせきさいばん)とは、当事とうじしゃ代理人だいりにん出席しゅっせきしないまままた意見いけんべられないままでおこなわれる裁判さいばん

概要がいよう[編集へんしゅう]

裁判さいばんけられる権利けんり観点かんてんからは、公権力こうけんりょくによって強制きょうせいてき欠席けっせきさせたり意見いけんべさせない裁判さいばん無効むこうかんがえられている。

日本にっぽんでは日本国にっぽんこく憲法けんぽうだい32じょう裁判さいばんけられる権利けんり明記めいきされている。

刑事けいじ訴訟そしょうでは被告人ひこくにん意見いけん陳述ちんじゅつする機会きかいもうけることが原則げんそくとされている。日本にっぽんでは、刑事けいじ訴訟そしょうほうだい83じょうだい3こうにより被告人ひこくにんおよびその弁護人べんごにん法廷ほうていへの出席しゅっせき開廷かいてい原則げんそくとしている。また、刑事けいじ訴訟そしょうほうだい285じょうによりだいいちしん起訴きそじょう朗読ろうどく公判こうはんおよだいいちしん判決はんけつ公判こうはんでは被告人ひこくにん自身じしん法廷ほうてい出席しゅっせきをしなければならず、それ以外いがいだいいちしん公判こうはんでも被告人ひこくにん出頭しゅっとう被告人ひこくにん権利けんり保護ほごのため重要じゅうようでないと裁判所さいばんしょみとめられないかぎ被告人ひこくにん自身じしん法廷ほうてい出席しゅっせきしなければならない。また、刑事けいじ訴訟そしょうほうだい390じょうにより控訴こうそしん公判こうはんでも被告人ひこくにん出頭しゅっとう被告人ひこくにん権利けんり保護ほごのため重要じゅうようであると裁判所さいばんしょみとめる場合ばあいは、被告人ひこくにん自身じしん法廷ほうてい出席しゅっせきしなければならない。

例外れいがいとして、刑事けいじ訴訟そしょうほうだい286じょうの2[1]により、被告人ひこくにん出席しゅっせきしなければならない公判こうはんにおいて勾留こうりゅうちゅう被告人ひこくにん裁判所さいばんしょ出頭しゅっとう命令めいれいおうじない場合ばあいや、刑事けいじ訴訟そしょうほうだい284じょうにより50まんえん以下いか[2]罰金ばっきんまた科料かりょうたる事件じけんについては、被告人ひこくにん欠席けっせきしたまま裁判さいばんおこなうことができる。刑事けいじ訴訟そしょうほうだい341じょうにより、陳述ちんじゅつをせず許可きょかけないで退廷たいていする被告人ひこくにん裁判さいばんちょうから退廷たいてい命令めいれい[3]けた被告人ひこくにんがいた場合ばあい裁判所さいばんしょ被告人ひこくにん陳述ちんじゅつかないで判決はんけつすことができる。

だいいちしん公判こうはんではすくなくとも判決はんけつ公判こうはんには被告人ひこくにん自身じしん法廷ほうてい出席しゅっせきしなければならないため、逃亡とうぼうちゅう被告人ひこくにんについては法廷ほうていけないことになる。ただし、控訴こうそしん上告じょうこくしんでは判決はんけつ公判こうはんには被告人ひこくにん自身じしん法廷ほうていへの出席しゅっせき義務ぎむではないため、控訴こうそしん公判こうはんでも被告人ひこくにん出頭しゅっとう被告人ひこくにん権利けんり保護ほごのため重要じゅうようであると裁判所さいばんしょみとめる場合ばあい以外いがい被告人ひこくにん自身じしん法廷ほうてい出席しゅっせきをしなくてもよいため、控訴こうそしんでは国外こくがい逃亡とうぼうした被告人ひこくにん欠席けっせきしても判決はんけつをいいわたせることになる。

民事みんじ訴訟そしょうでは当事とうじしゃ代理人だいりにん意見いけん陳述ちんじゅつしないことは可能かのうであるが、その場合ばあい事実じじつあらそわないものとみなされる(擬制ぎせい自白じはく民事みんじ訴訟そしょうほうだい159じょうだい1こう)。当事とうじしゃ出頭しゅっとうしない場合ばあいも、公示こうじ送達そうたつによる場合ばあいのぞけば同様どうようである(どうじょうだい3こう)。

しかし、あくまで事実じじつかんするあらそいがなくなるだけなので、法律ほうりつ常識じょうしきはんする、矛盾むじゅん破綻はたんした主張しゅちょう請求せいきゅうとおらない。

内容ないようてき通常つうじょうではありえないものの場合ばあい、たとえ被告ひこく欠席けっせきしていても原告げんこくがわ物的ぶってき証拠しょうこなどをもとめられたり、ぎゃく原告げんこく損害そんがい賠償ばいしょう慰謝いしゃりょう命令めいれいくだされることもある。

政治せいじてき裁判さいばんにおいては当事とうじしゃ発見はっけんできないために出席しゅっせきさせることができなくても、当事とうじしゃ悪行あくぎょうおかしたことを印象いんしょうづけるために、欠席けっせき裁判さいばん有罪ゆうざい判決はんけつくだれいがある。

また比喩ひゆ表現ひょうげん当事とうじしゃ意見いけん陳述ちんじゅつ機会きかいあたえないまま当事とうじしゃ不利ふりになる決定けっていおこなうことを欠席けっせき裁判さいばん表現ひょうげんすることがある。

脚注きゃくちゅう[編集へんしゅう]

  1. ^ のメーデー事件じけん刑事けいじ裁判さいばんでの被告人ひこくにん欠席けっせき問題もんだいに1953ねん11月に新設しんせつされた。
  2. ^ 刑法けいほう暴力ぼうりょく行為こういとう処罰しょばつかんする法律ほうりつおよ経済けいざい関係かんけい罰則ばっそく整備せいびかんする法律ほうりつつみ以外いがいつみについては、当分とうぶんあいだ、5まんえん以下いか
  3. ^ 裁判所さいばんしょほうだい71じょうだい2こうにより、法廷ほうていにおける裁判所さいばんしょ職務しょくむ執行しっこうさまたげ、また不当ふとう行状ぎょうじょうをするものたいし、裁判さいばんちょう退廷たいていめいじることができる。

関連かんれん項目こうもく[編集へんしゅう]