一般いっぱん法ほう・特別とくべつ法ほう

一般いっぱん法ほう・特別とくべつ法ほう（いっぱんほう・とくべつほう）とは、法学ほうがくにおける法ほうの種別しゅべつであり、一般いっぱん法ほう（いっぱんほう）は、適用てきよう対象たいしょうがより広ひろい法ほうのことを、特別とくべつ法ほう（とくべつほう）は、適用てきよう対象たいしょうがより特定とくていされている法ほうのことをいう。両者りょうしゃの区別くべつは相対そうたい的てきである。

概説がいせつ

一般いっぱん法ほうとはその分野ぶんやに対たいして一般いっぱん的てきに適用てきようされる法ほうであり、特別とくべつ法ほうがない限かぎりその法律ほうりつは適用てきようされる。

特別とくべつ法ほうは一般いっぱん法ほうに優先ゆうせんする。一般いっぱん法ほうと特別とくべつ法ほうとで法ほうが異ことなった規律きりつを定さだめている場合ばあい、特別とくべつ法ほうの適用てきようを受うける事象じしょうは一般いっぱん法ほうの規律きりつが排除はいじょされ、特別とくべつ法ほうの規律きりつが適用てきようされる。

特別とくべつ法ほうが規定きていされる理由りゆうはさまざまであるが、一般いっぱん的てきにいえば、特別とくべつな分野ぶんやに対たいしては一般いっぱん的てきな法律ほうりつの他ほかにその分野ぶんや特有とくゆうの規律きりつが必要ひつようであることから、特別とくべつ法ほうが定さだめられるのが通例つうれいである。

一般いっぱん法ほう、特別とくべつ法ほうの例れい

区別くべつは相対そうたい的てきである。以下いかに例れいを挙あげる。

• 民法みんぽうと商法しょうほうとの関係かんけいは、民法みんぽうが一般いっぱん法ほうであるのに対たいし、商法しょうほうは特別とくべつ法ほうである。
• 商法しょうほうと国際こくさい海上かいじょう物品ぶっぴん運送うんそう法ほうとの関係かんけいは、前者ぜんしゃが一般いっぱん法ほうであるのに対たいし、後者こうしゃが特別とくべつ法ほうである。
• 民法みんぽうと会社かいしゃ法ほうとは、一般いっぱん法ほう―特別とくべつ法ほうの関係かんけいにある。会社かいしゃは法ほう概念がいねん上じょう、民法みんぽう上じょうの社団しゃだんに含ふくまれるが、会社かいしゃは営利えいり性せいを目的もくてきとする社団しゃだんであることなどから民法みんぽうとは別べつに会社かいしゃ法ほうが独自どくじの規律きりつを定さだめている。そのため、一般いっぱん法ほうと特別とくべつ法ほうの適用てきようの規律きりつから、会社かいしゃは民法みんぽうの規定きていとは別べつに会社かいしゃ法ほうの規律きりつに服ふくし、民法みんぽうと会社かいしゃ法ほうの規定きていが相違そういする時ときは会社かいしゃ法ほうの規定きていが優先ゆうせんされる。
• 民法みんぽうと特定とくてい商しょう取引とりひき法ほうのクーリング・オフは意思いし表示ひょうじや契約けいやくの解除かいじょ（解約かいやく）の点てんにおいて、一般いっぱん法ほうと特別とくべつ法ほうの関係かんけいにある。クーリング・オフの規定きていは契約けいやく締結ていけつ日びから8日にちまで無条件むじょうけんの契約けいやくの解除かいじょ（解約かいやく）が認みとめられており、民法みんぽうの規定きていと別べつの意味合いみあいを持もつ規定きてい、すなわち特別とくべつ法ほうといえるからである。
• 皇室こうしつ典範てんぱんと天皇てんのうの退位たいい等とうに関かんする皇室こうしつ典範てんぱん特例とくれい法ほうとの関係かんけいは、皇室こうしつ典範てんぱんが一般いっぱん法ほうであるのに対たいし、皇室こうしつ典範てんぱん特例とくれい法ほうは特別とくべつ法ほうである。この特例とくれい法ほうにより皇室こうしつ典範てんぱん第だい4条じょう(崩御ほうぎょによる皇位こうい継承けいしょう)の特例とくれいとして、皇室こうしつ典範てんぱん特例とくれい法ほう第だい2条じょう(退位たいいによる皇位こうい継承けいしょう)や、その他た退位たいいした天皇てんのう・皇后こうごうの地位ちい、当該とうがい皇位こうい継承けいしょうにより皇嗣こうしとなった皇族こうぞくを皇太子こうたいしと同等どうとうの扱あつかいとする等ひとしの特例とくれいが定さだめられた。
• 公職こうしょく選挙せんきょ法ほうと4年ねんごとの統一とういつ地方ちほう選挙せんきょの際さいに定さだめられる地方ちほう公共こうきょう団体だんたいの議会ぎかいの議員ぎいん及および長ちょうの選挙せんきょ期日きじつ等とうの臨時りんじ特例とくれいに関かんする法律ほうりつとの関係かんけいは、前者ぜんしゃが一般いっぱん法ほうであるのに対たいし、後者こうしゃが特別とくべつ法ほうである。統一とういつ地方ちほう選挙せんきょの前後ぜんごに任期にんきが満了まんりょうすることとなる選挙せんきょを一括いっかつして行おこなうための特別とくべつ法ほうである。
• 国家こっか公務員こうむいん法ほうと検察庁けんさつちょう法ほう（の内うち、検察官けんさつかんについて定さだめた条項じょうこう）との関係かんけいは、国家こっか公務員こうむいん法ほうが一般いっぱん法ほうであるのに対たいし、検察庁けんさつちょう法ほうは特別とくべつ法ほうであるとされる。検事けんじ総長そうちょうやその他たの役職やくしょくの検察官けんさつかんの定年ていねんについて、検察庁けんさつちょう法ほう第だい22条じょうは「検事けんじ総長そうちょうは、年齢ねんれいが六ろく十じゅう五ご年ねんに達たっした時ときに、その他たの検察官けんさつかんは年齢ねんれいが六ろく十じゅう三さん年ねんに達たっした時ときに退官たいかんする」とだけ定さだめており、国家こっか公務員こうむいん法ほう第だい81条じょうの3の条項じょうこうは、定年ていねんが特別とくべつ法ほうによって定さだめられている検察官けんさつかんには適用てきようされないという政府せいふ見解けんかいが2019年ねんまで続つづいていた。こうした特別とくべつな取とり決きめは、司法しほうの一翼いちよくを担になうという検察官けんさつかんの特殊とくしゅ性せいに鑑かんがみて定さだめられているものであって、検察庁けんさつちょう法ほうはその他たにも罷免ひめんについても特別とくべつな取とり扱あつかいをしている。2020年ねん2月がつに安倍晋三あべしんぞう内閣ないかく総理そうり大臣だいじんは従来じゅうらいの法ほう解釈かいしゃくを変更へんこうし、検察官けんさつかんについても国家こっか公務員こうむいん法ほう第だい81条じょうの3が適用てきようされるとした。

関連かんれん項目こうもく

• 民法みんぽう
• 措置そち法ほう

外部がいぶリンク

• 『一般いっぱん法ほう』 - コトバンク
• 『特別とくべつ法ほう』 - コトバンク