理容りよう所しょ

理容りよう所しょ（りようしょ）と法規ほうき上じょう呼よばれているものは、理容りよう（散髪さんぱつ、刈かり込こめ、顔かお剃すりなど容姿ようしを整ととのえる）の業ごうを行おこなうために設もうけられた施設しせつ、店舗てんぽであり、一般いっぱん的てきには床屋とこや（とこや）と言いう。ほかにも理髪りはつ店てん（りはつてん）、散髪さんぱつ屋や（さんぱつや）、理容りよう院いん（りよういん）、理容りよう室しつ（りようしつ）とも。

概要がいよう[編集へんしゅう]

理容りよう所しょと美容びよう所しょの業務ぎょうむは似にているが、日本にっぽんの法律ほうりつでは次つぎの通とおりに区別くべつされている。

理容りよう：頭髪とうはつの刈かり込こめ、顔かおそり等とうの方法ほうほうにより容姿ようしを整ととのえること（理容りよう師し法ほう第だい1条じょうの2第だい1項こう）
美容びよう：パーマネントウエーブ、結髪けっぱつ、化粧けしょう等ひとしの方法ほうほうにより容姿ようしを美うつくしくすること（美容びよう師し法ほう第だい2条じょう第だい1項こう）

最近さいきんは男女だんじょとも理容りよう店てんや美容びよう室しつの区別くべつを特とくに意識いしきせずに利用りようしたり、シェービングや美顔びがんのために女性じょせい客きゃくが理容りよう店てんを利用りようする場合ばあいも多おおく、両者りょうしゃの区別くべつは明確めいかくでなくなりつつある。多おおくの理容りよう店てんの店舗てんぽには、店みせの入口いりくちにサインポールと呼よばれる赤あか青あお白しろの3色しょくで構成こうせいされた円筒えんとう状じょうの看板かんばんが螺旋らせん状じょうに回転かいてんしている（詳くわしくは理り美容びよう師しを参照さんしょう）。

近年きんねんはサービスや内装ないそうで高級こうきゅう感かんを強調きょうちょうした店みせ、ヘッドスパや顔かおそり、または剃髪ていはつのみに特とく化かした店舗てんぽや10分間ふんかん程度ていどでカットのみのサービスを提供ていきょうする店みせなど多様たような業態ぎょうたいが登場とうじょうしている。

軒数けんすう

2016年ねんの厚生こうせい労働省ろうどうしょうの衛生えいせい行政ぎょうせい報告ほうこく例れいによると、全国ぜんこくの理容りよう所しょは122,539軒けんで、人口じんこう10万まん人にんあたり96.54軒けん。軒数けんすうが最もっとも多おおいのは秋田あきた県けんで人口じんこう10万まん人にんあたり240.20軒けん(偏差へんさ値ち83.3)。2位いは山形やまがた県けんの217.52軒けん。3位い以下いかは岩手いわて県けん(193.69軒けん)、青森あおもり県けん(166.28軒けん)、徳島とくしま県けん(160.40軒けん)の順じゅん。一方いっぽう、最もっとも軒数けんすうが少すくないのは神奈川かながわ県けんで人口じんこう10万まん人にんあたり54.19軒けん(偏差へんさ値ち32.3)。2位い以下いかは、東京とうきょう都と(60.60軒けん)、兵庫ひょうご県けん(72.86軒けん)、埼玉さいたま県けん(73.26軒けん)、大阪おおさか府ふ(75.43軒けん)と続つづく。東北とうほく地方ちほうが密度みつどが高たかく、その他たの地域ちいきでも地方ちほうが高たかく三さん大都市だいとし圏けんでは低ひくくなっている。農業のうぎょう就業しゅうぎょう人口じんこうと正せいの相関そうかんがあり、人口じんこう増減ぞうげん率りつと負まけの相関そうかんがあるため、人口じんこう減少げんしょうが著いちじるしく農業のうぎょう就業しゅうぎょう人口じんこうが多おおい地方ちほうで理容りよう所しょ数すうが多おおくなる傾向けいこうがある^[1]。

定休ていきゅう日び

日本にっぽんでは、大半たいはんの個人こじん経営けいえいの店みせは毎週まいしゅう月曜日げつようびを定休ていきゅう日びとしていた。これは第だい二に次じ世界せかい大戦たいせん中なかから戦後せんごにあった全国ぜんこく的てきな電力でんりょく不足ふそくにおける休電きゅうでん日びが月曜日げつようびだった名残なごりである^[2]。全国ぜんこく的てきには月曜げつようが多おおかったが、地域ちいきにより火曜かよう（愛知あいち県けん、北海道ほっかいどうなど）や水曜すいよう（三重みえ県けんなど）に設定せっていされており、その地域ちいきでは各々おのおのの休電きゅうでん日びに合あわせて定休ていきゅう日びが設定せっていされた^[3]。休電きゅうでん日びがなくなった後のちも、過当かとう競争きょうそうを避さけるため定休ていきゅう日びは各かく地域ちいきごとの理容りよう組合くみあいへの加入かにゅうの取とり決きめとして定さだめられ（適正てきせい化か規定きてい）、休電きゅうでん日びをもとにした定休ていきゅう日びが地域ちいきごとに継承けいしょうされた。現在げんざいでは特とくに定休ていきゅう日びの規制きせいは存在そんざいしないが、土日どにちに集客しゅうきゃくが多おおいこともあり、以前いぜんからの定休ていきゅう日びを踏襲とうしゅうしている店舗てんぽが多おおい。

歴史れきし[編集へんしゅう]

山口やまぐち県けん下関しものせき市しの亀山かめやま八幡宮はちまんぐうには1995年ねん（平成へいせい7年ねん）に建たてられた床屋とこや発祥はっしょうの地ち記念きねん碑ひがあり^[4]、鎌倉かまくら時代じだい後期こうきの亀山天皇かめやまてんのうに仕つかえていた武士ぶしが宝刀ほうとう紛失ふんしつの責任せきにんをとり息子むすことともに京都きょうとから下関しものせきに移うつり住すみ、髪結かみゆいの技術ぎじゅつを習得しゅうとくして亀山かめやま八幡宮はちまんぐうのある中之なかの町まちに店みせを開ひらいたが、そこには床ゆかの間あいだに立派りっぱな祭壇さいだんがあったことから「床屋とこや」の屋号やごうで知しられるようになった、との説せつがある^[4]。これについて『髪結かみゆい職しょく文ぶん由緒ゆいしょ書しょ』によれば^{[要よう出典しゅってん]}、采女うねめ之の亮政すけまさ之の（うめのすけまさゆき）が朝鮮半島ちょうせんはんとうの新しん羅ら人ひとから技術ぎじゅつを習得しゅうとくし髪結かみゆい所しょを開業かいぎょうしたのが始はじまりとする。采女うねめ之の亮あきらはその後ご鎌倉かまくらに移うつり、鎌倉かまくら幕府ばくふからも重用じゅうようされるほどになったと謂いわれている^{[要よう出典しゅってん]}。

一方いっぽう、「床屋とこや」という言葉ことばが使つかわれるようになったのは江戸えど時代じだいからで、髪結かみゆいが床店とこみせ（商売しょうばいをするだけで人ひとの住すまない店舗てんぽ）で仕事しごとをしていた髪結かみゆい床ゆか（かみゆいどこ）を起源きげんとする説せつもある^[5]。

江戸えど時代じだいの床屋とこやについて詳くわしくは「髪結かみゆい」の項こうを参照さんしょうのこと。

“床ゆか”という言葉ことばが性的せいてきな意味合いみあいも持もつためか、「以前いぜんは性せい風俗ふうぞく店てんも行おこなっていたから」という俗説ぞくせつがあるが誤あやまりである^{[要よう出典しゅってん]}。
- ただし、アジアの一部いちぶでは女性じょせい従業じゅうぎょう員いんによるマッサージ店てんや性的せいてきなサービスを提供ていきょうする男性だんせい客きゃく対象たいしょうの風俗ふうぞく店てんの役割やくわりを持もっている場合ばあいがある（頽廃たいはい理髮りはつ所しょ）。しかし、あくまでも理り美容びよう店てんの中なかにはそういった業種ぎょうしゅを兼務けんむしている場合ばあいがあるというだけで、床屋とこやという言葉ことばの意味いみや由来ゆらいとは関係かんけいない^{[要よう出典しゅってん]}。
- また、以上いじょうの俗説ぞくせつから放送ほうそう禁止きんし用語ようごとされてしまう場合ばあいがある^{[要よう出典しゅってん]}。このことには過激かげきな自主じしゅ規制きせいや言葉ことば狩かりではないかという意見いけんもあり、有川ありかわ浩ひろしの小説しょうせつ『図書館としょかん危機きき』（2007年ねん）の中なかでもテーマの1つとして取とり上あげられている。

散髪さんぱつ屋や（さんぱつや）いわゆる理髪りはつ店てん（りはつてん）は、日本にっぽんにおいては明治維新めいじいしんによる文明開化ぶんめいかいかの折おりに横浜よこはまに開業かいぎょうしたものが第だい1号ごうとされる^{[要よう出典しゅってん]}。

理容りようをテーマとした作品さくひん[編集へんしゅう]

童謡どうよう「あわて床屋とこや」作詞さくし：北原きたはら白秋はくしゅう作曲さっきょく：山田やまだ耕筰こうさく
- 「春はるは早はやうから川辺かわべの葦あしに、…子こ蟹かにぶつぶつシャボンを溶とかし、親父おやじ自慢じまんではさみを鳴ならす…」 - シェービングの様子ようすを唄うたっている。
セビリアの理髪りはつ師し戯曲ぎきょく：カロン・ド・ボーマルシェ作曲さっきょく：ジョアキーノ・ロッシーニ
無精ぶしょう床ゆか - 床屋とこやを題材だいざいにした落語らくご。
浮世うきよ床ゆか - 床屋とこやを舞台ぶたいにした落語らくご。