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登記とうき請求せいきゅうけん

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』

登記とうき請求せいきゅうけん(とうきせいきゅうけん)とは、不動産ふどうさん物権ぶっけん変動へんどうがあった場合ばあいに、登記とうき権利けんりしゃが、登記とうき義務ぎむしゃたいし、不動産ふどうさん登記とうきおこなうことに協力きょうりょくするようもとめる実体じったいほうじょう請求せいきゅうけん、あるいは具体ぐたいてき登記とうき手続てつづきもとめる登記とうき手続てつづきじょう権利けんりをいう。

登記とうき請求せいきゅうけん意義いぎ

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実体じったいほうじょう登記とうき請求せいきゅうけん

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不動産ふどうさん購入こうにゅうして所有しょゆうけん取得しゅとくしたものや、不動産ふどうさん抵当ていとうけん設定せっていけたものは、これらの物権ぶっけん登記とうき簿ただしく登記とうきされないと、第三者だいさんしゃ対抗たいこうできなかったり、他人たにんへの譲渡じょうとさまたげられたりするなど、様々さまざま不利益ふりえきける。

そのため、買主かいぬし抵当ていとうけんしゃが、売主うりぬし抵当ていとうけん設定せっていしゃたいしてただしい登記とうきへの協力きょうりょくもとめる実体じったいほううえ権利けんりみとめる必要ひつようがあり、これを実体じったいほうじょう登記とうき請求せいきゅうけんという(以下いかたん登記とうき請求せいきゅうけんというときは実体じったいほうじょう登記とうき請求せいきゅうけんす)。

実体じったいほうじょう登記とうき請求せいきゅうけんゆうするもの買主かいぬし抵当ていとうけんしゃなど)を「実体じったいほうじょう登記とうき権利けんりしゃ」といい、これにたいして登記とうき義務ぎむゆうするもの売主うりぬし抵当ていとうけん設定せっていしゃなど)を「実体じったいほうじょう登記とうき義務ぎむしゃ」という。

登記とうきほうじょう登記とうき手続てつづきじょう)の登記とうき請求せいきゅうけん

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実体じったいほうじょう登記とうき請求せいきゅうけんみとめられる場合ばあいでも、実際じっさい登記とうきおこなうためには、不動産ふどうさん登記とうきほうさだめる手続てつづきしたがわなければならない。すなわち、不動産ふどうさん買主かいぬし抵当ていとうけんしゃは、売主うりぬし抵当ていとうけん設定せっていしゃたいし、共同きょうどう申請しんせい登記とうき手続てつづきをするようもとめ(不動産ふどうさん登記とうきほう60じょう)、任意にんい協力きょうりょくられない場合ばあいは、うった提起ていきし、確定かくてい判決はんけつ単独たんどく申請しんせい登記とうき手続てつづきをする必要ひつようがある(どうほう63じょう1こう)。

そして、この場合ばあい登記とうきほうじょう登記とうき請求せいきゅうけんゆうする「登記とうきほうじょう登記とうき権利けんりしゃ」は、権利けんりかんする登記とうきをすることにより登記とうきじょう直接ちょくせつ利益りえきけるもの、その相手方あいてがたである「登記とうきほうじょう登記とうき義務ぎむしゃ」は、権利けんりかんする登記とうきをすることにより登記とうきじょう直接ちょくせつ不利益ふりえきける登記とうき名義めいぎじんである必要ひつようがある(不動産ふどうさん登記とうきほう2じょう12ごう、13ごう)。

たとえば、A→B→Cと不動産ふどうさん売買ばいばいされたが、登記とうきがまだAにある場合ばあい、CはBにたい実体じったいほうじょう登記とうき請求せいきゅうけんゆうするが、Bは登記とうき名義めいぎじんではないので、登記とうき手続てつづきじょう登記とうき義務ぎむしゃにはなれない。

このように、登記とうき請求せいきゅうけんは、実体じったいほうじょう裏付うらづけがなければならないが、さらに不動産ふどうさん登記とうきほうさだめる手続てつづきによって制約せいやくされる。このような登記とうき手続てつづきじょう制約せいやくしたにおける登記とうき請求せいきゅうけん登記とうきほうじょう登記とうき手続てつづきじょう登記とうき請求せいきゅうけんという。

以下いかでは、とくことわらないかぎり、実体じったいほうじょう登記とうき請求せいきゅうけんについて記述きじゅつする。

登記とうき請求せいきゅうけん発生はっせい原因げんいん法的ほうてき性質せいしつ

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登記とうき請求せいきゅうけん発生はっせい原因げんいんについては、これを実体じったいてき権利けんり物権ぶっけん)の効力こうりょくとしてしょうじる(物権ぶっけんてき請求せいきゅうけん一種いっしゅ)という見解けんかいや、物権ぶっけん変動へんどうそのものの効力こうりょくとしてしょうじるという見解けんかいがあるが、判例はんれいは、様々さまざま場合ばあい登記とうき請求せいきゅうけんみとめており、これを一元いちげんてき説明せつめいすることは困難こんなんである。そこで、登記とうき請求せいきゅうけんを、発生はっせい原因げんいんおうじて、物権ぶっけんてき登記とうき請求せいきゅうけん物権ぶっけん変動へんどうてき登記とうき請求せいきゅうけん債権さいけんてき登記とうき請求せいきゅうけんの3類型るいけい分類ぶんるいするのが一般いっぱんてきである。

物権ぶっけんてき登記とうき請求せいきゅうけん

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物権ぶっけんてき登記とうき請求せいきゅうけんとは、現在げんざい実体じったいてき物権ぶっけん関係かんけい登記とうきとが一致いっちしない場合ばあいに、この不一致ふいっち除去じょきょするため、物権ぶっけんそのものの効力こうりょくとして発生はっせいする登記とうき請求せいきゅうけんをいう。物権ぶっけんてき請求せいきゅうけん一種いっしゅ物権ぶっけんてき妨害ぼうがい排除はいじょ請求せいきゅうけん)である。

たとえば、A所有しょゆう不動産ふどうさんについて、B名義めいぎ所有しょゆうけん移転いてん登記とうきがされているときは、実体じったいてき物権ぶっけん関係かんけい登記とうき一致いっちしていないから、Aは、Bにたいし、所有しょゆうけん移転いてん登記とうき抹消まっしょう登記とうきひとしもとめることができる。

以下いか、2当事とうじしゃあいだ場合ばあいと、うたてとくしゃCが存在そんざいする場合ばあいとにけて説明せつめいする。

2当事とうじしゃあいだ場合ばあい

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  • 所有しょゆうけん移転いてん登記とうき抹消まっしょう登記とうき請求せいきゅう
A所有しょゆう不動産ふどうさんについて、A名義めいぎ所有しょゆうけん移転いてん登記とうきまた所有しょゆうけん保存ほぞん登記とうき)ののちに、権限けんげんのB名義めいぎ所有しょゆうけん移転いてん登記とうきがされているときは、Aは、Bにたいし、所有しょゆうけん移転いてん登記とうき抹消まっしょう登記とうき請求せいきゅうをすることができる。
  • 所有しょゆうけん移転いてん登記とうき請求せいきゅう
また、上記じょうき場合ばあい、Aは、Bにたいし、抹消まっしょう登記とうきえて、真正しんせい登記とうき名義めいぎ回復かいふく登記とうき原因げんいんとするAへの所有しょゆうけん移転いてん登記とうき請求せいきゅうをすることができるとするのが判例はんれいである(最高裁さいこうさい昭和しょうわ34ねん2がつ12にち判決はんけつみんしゅう13かん2ごう91ぺーじ最高裁さいこうさい判例はんれい情報じょうほう学説がくせつ反対はんたいせつおおい)。
  • 抵当ていとうけん設定せってい登記とうき抹消まっしょう登記とうき請求せいきゅう
A所有しょゆう不動産ふどうさんについて、B名義めいぎ抵当ていとうけん設定せってい登記とうきがされているが、抵当ていとうけん設定せってい契約けいやく存在そんざいしない、無効むこう、あるいは債務さいむ完済かんさいによって消滅しょうめつした場合ばあい、Aは、Bにたいし、抵当ていとうけん設定せってい登記とうき抹消まっしょう登記とうき請求せいきゅうをすることができる。

うたてとくしゃがいる場合ばあい

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  • 所有しょゆうけん移転いてん登記とうき抹消まっしょう登記とうき請求せいきゅう
A→B→Cと不動産ふどうさん売買ばいばいされ、Cに登記とうき移転いてんしたが、A・Bあいだ売買ばいばい無効むこうであった場合ばあいなど、Aは、所有しょゆうけんもとづき、登記とうき名義めいぎじんであるCにたいして抹消まっしょう登記とうき請求せいきゅうをすることができる(大審院だいしんいん明治めいじ41ねん3がつ17にち連合れんごう判決はんけつみんろく14輯303ぺーじ)。もっとも、この場合ばあい、Bの登記とうきのこるので、AはBにたいしてあらためて抹消まっしょう登記とうき請求せいきゅうをしなければならない。
  • 所有しょゆうけん移転いてん登記とうき請求せいきゅう
上記じょうき場合ばあい、Aは、Cにたいし、真正しんせい登記とうき名義めいぎ回復かいふく登記とうき原因げんいんとして、Aへ直接ちょくせつ所有しょゆうけん移転いてん登記とうきをするようもとめることもできるとするのが判例はんれいである(最高裁さいこうさい昭和しょうわ30ねん7がつ5にちみんしゅう9かん9ごう1002ぺーじ最高裁さいこうさい判例はんれい情報じょうほう最高裁さいこうさい昭和しょうわ32ねん5がつ30にち判決はんけつみんしゅう11かん5ごう843ぺーじ最高裁さいこうさい判例はんれい情報じょうほう前掲ぜんけい最高裁さいこうさい昭和しょうわ34ねん2がつ12にち判決はんけつ。これも、物権ぶっけん変動へんどう過程かてい登記とうき正確せいかく反映はんえいしなくなるとして反対はんたいせつおおい)。
なお、真正しんせい登記とうき名義めいぎ回復かいふく原因げんいんとする所有しょゆうけん移転いてん登記とうき請求せいきゅうは、真正しんせい権利けんりしゃもと登記とうき名義めいぎじんではないときにもみとめられる。たとえば、登記とうき名義めいぎじんAからBに不動産ふどうさん売買ばいばいされたが、AからCに所有しょゆうけん移転いてん登記とうきがされてしまった場合ばあい、Bは、Cにたいし、真正しんせい登記とうき名義めいぎ回復かいふく原因げんいんとして所有しょゆうけん移転いてん登記とうき請求せいきゅうをすることができる(昭和しょうわ39ねん2がつ17にちみんさんはつ125ごうみんさん課長かちょう回答かいとう)。
  • 抵当ていとうけん設定せってい登記とうき抹消まっしょう登記とうき請求せいきゅう
AからBに抵当ていとうけん設定せっていされ、BがCに抵当ていとうけん譲渡じょうとしたが、A・Bあいだ抵当ていとうけん設定せってい契約けいやく無効むこうであった場合ばあい、Aは、登記とうき名義めいぎじんであるCを相手方あいてがたとして抵当ていとうけん設定せってい登記とうき抹消まっしょう登記とうき請求せいきゅうをすることができる(前掲ぜんけい大審院だいしんいん明治めいじ41ねん3がつ17にち判決はんけつ)。

物権ぶっけん変動へんどうてき登記とうき請求せいきゅうけん

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物権ぶっけん変動へんどうてき登記とうき請求せいきゅうけんとは、物権ぶっけん変動へんどうそれ自体じたいからしょうじる登記とうき請求せいきゅうけんをいう。

  • 積極せっきょくてき物権ぶっけん変動へんどう
たとえば、A→B→Cと不動産ふどうさん売買ばいばいされたが、登記とうきがまだAにある場合ばあい、Bは、Aにたいし、所有しょゆうけん移転いてん登記とうき請求せいきゅうをすることができる(大審院だいしんいん大正たいしょう5ねん4がつ1にち判決はんけつみんろく22輯674ぺーじ)。
この場合ばあい、Bはすで所有しょゆうけんうしなっているので、Bの登記とうき請求せいきゅうけん物権ぶっけんてき登記とうき請求せいきゅうけんとしては説明せつめいできず、また、消滅しょうめつ時効じこうにかからないてん債権さいけんてき登記とうき請求せいきゅうけんだけでも説明せつめいできないため、(積極せっきょくてき物権ぶっけん変動へんどうてき登記とうき請求せいきゅうけんとして説明せつめいされる。
  • 消極しょうきょくてき物権ぶっけん変動へんどう
A→B→Cと不動産ふどうさん売買ばいばいされ、Cに登記とうき移転いてんしたが、ABあいだ売買ばいばい無効むこうまたけしされたり解除かいじょされたりした場合ばあい、Bは、Cにたいし、抹消まっしょう登記とうき請求せいきゅうをすることができる(大審院だいしんいん明治めいじ45ねん6がつ24にち判決はんけつみんろく18輯636ぺーじ最高裁さいこうさい昭和しょうわ36ねん4がつ28にち判決はんけつみんしゅう15かん4ごう1230ごう最高裁さいこうさい判例はんれい情報じょうほう)。
この場合ばあいも、Bは所有しょゆうけん当初とうしょから取得しゅとくしていないか、すでうしなっているので、物権ぶっけんてき登記とうき請求せいきゅうけんとして説明せつめいできないため、(消極しょうきょくてき物権ぶっけん変動へんどうてき登記とうき請求せいきゅうけんとして説明せつめいされる。

債権さいけんてき登記とうき請求せいきゅうけん

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債権さいけんてき登記とうき請求せいきゅうけんとは、不動産ふどうさん売買ばいばい契約けいやくもとづいて所有しょゆうけん移転いてん登記とうき請求せいきゅうをする場合ばあいや、賃貸借ちんたいしゃく契約けいやくにおいて登記とうきをするとの特約とくやくもとづいて賃借ちんしゃくけん設定せってい登記とうき請求せいきゅうをする場合ばあいのように、当事とうじしゃあいだ合意ごういもとづいてしょうじる登記とうき請求せいきゅうけんをいう。

もっとも、なんらの物権ぶっけん変動へんどうしょうじていないのに、登記とうきをするむね合意ごうい無効むこうであり、そのような合意ごういからは登記とうき請求せいきゅうけんしょうじない。

  • 中間ちゅうかん省略しょうりゃく登記とうき
債権さいけんてき登記とうき請求せいきゅうけんかんし、とく問題もんだいとなるのが、中間ちゅうかん省略しょうりゃく登記とうきである。中間ちゅうかん省略しょうりゃく登記とうきとは、A→B→Cと不動産ふどうさん売買ばいばいされた場合ばあいに、A・B・Cあいだ合意ごういで、直接ちょくせつAからCにたいして移転いてん登記とうきをするような場合ばあいをいう。これは、おも登録とうろく免許めんきょぜいひとし節約せつやくするためにおこなわれる。
登記とうき実務じつむじょう、AとCが、A・BあいだおよびB・Cあいだ登記とうき原因げんいん証書しょうしょ売買ばいばい契約けいやくしょ)を提出ていしゅつして、AからCへのなかあいだ省略しょうりゃく登記とうき共同きょうどう申請しんせいしても、受理じゅりされない(もっとも、旧法きゅうほうでは、A・Cあいだ売買ばいばい登記とうき原因げんいんとして、登記とうき原因げんいん証書しょうしょえて登記とうき申請しんせいしょ副本ふくほん提出ていしゅつすれば受理じゅりされていた(きゅう不動産ふどうさん登記とうきほう40じょう)が、新法しんぽう申請しんせいしょ副本ふくほん制度せいど廃止はいしされた)。
これにたいし、訴訟そしょうによる方法ほうほうでは、Cは、AおよびBが承諾しょうだくしている場合ばあいにはAにたい中間ちゅうかん省略しょうりゃく登記とうきによる登記とうき請求せいきゅう勝訴しょうそ判決はんけつることができ(最高裁さいこうさい昭和しょうわ38ねん6がつ14にち判決はんけつあつまりみん66ごう499ぺーじ最高裁さいこうさい昭和しょうわ40ねん9がつ21にち判決はんけつみんしゅう19かん6ごう1560ぺーじ最高裁さいこうさい判例はんれい情報じょうほう)、この勝訴しょうそ判決はんけつたときは、登記とうきしょ裁判所さいばんしょ判断はんだん尊重そんちょうして中間ちゅうかん省略しょうりゃく登記とうき受理じゅりしている(不動産ふどうさん登記とうきほう63じょう1こう)。
中間ちゅうかん省略しょうりゃく登記とうきについては、物権ぶっけん変動へんどう過程かてい忠実ちゅうじつ反映はんえいするという登記とうきほう建前たてまえはんしているとして否定ひていてきとらえる見解けんかいと、現実げんじつ要請ようせいらして、やむをないものととらえる見解けんかいがある。

関連かんれん項目こうもく

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