白しろロム

白しろロム（しろロム）とは、携帯けいたい電話でんわ回線かいせんの契約けいやく情報じょうほう（電話でんわ番号ばんごう）を端末たんまつに直接ちょくせつ書かき込こむ方式ほうしきの機種きしゅで、契約けいやく情報じょうほうが記録きろくされていないものをいう。

PDC方式ほうしきの端末たんまつや、CDMA2000 1x方式ほうしきでR-UIMカード(CDMA版ばんのSIMカード)を採用さいようしていない端末たんまつは、契約けいやく情報じょうほうの記録きろくを端末たんまつに直接ちょくせつ行おこなう。GSM方式ほうしきやW-CDMA方式ほうしきの端末たんまつでは、SIMカードの採用さいようが、規格きかくの必須ひっすの条件じょうけんになっているので、このような状態じょうたいの端末たんまつは存在そんざいしない。

定義ていぎ

SIMカードを採用さいようしていない携帯けいたい電話でんわやPHS端はし末まつ（国内こくないでは、NTTドコモとソフトバンクモバイル（旧きゅうボーダフォン・J-PHONE）の第だい2世代せだい携帯けいたい電話でんわ端はし末まつ、au（KDDI／沖縄おきなわセルラー電話でんわ）のau ICカード非ひ対応たいおう端はし末まつ、大だい部分ぶぶんのPHS端末たんまつ）では、電話でんわ番号ばんごうは専用せんようの機械きかいを用もちいて端末たんまつ内部ないぶのROMに書かき込こまれる。また、解約かいやくするときは同様どうようにして電話でんわ番号ばんごうを消去しょうきょする（「番号ばんごうを抜ぬく」という）。解約かいやくして番号ばんごうを消去しょうきょした後のちの端末たんまつを、ROMに番号ばんごうが書かき込こまれていないという意味いみで、白しろロムと呼よぶ。白しろロムの状態じょうたいでは通話つうわ・通信つうしんはできない。

これに対たいして、有効ゆうこうな回線かいせん契約けいやくがあり、番号ばんごうが書かき込こまれている状態じょうたいの端末たんまつを、黒くろロムと呼よぶ。

なお、端末たんまつ紛失ふんしつや破損はそんによる解約かいやくの場合ばあいは、電話でんわ番号ばんごうを消去しょうきょすることができないため、解約かいやくしたにもかかわらず電話でんわ番号ばんごうが記録きろくされたままの端はし末まつが残のこる（また、事業じぎょう者しゃによっては、特とくに申もうし出でがない限かぎり番号ばんごうを消去しょうきょしないところもある）。このような端末たんまつを、白しろロムと黒くろロムの中間ちゅうかんという意味いみで、灰はいロムと呼よぶ。灰はいロムも通話つうわ・通信つうしんはできない。改あらためて申もうし出でれば、電話でんわ番号ばんごうを消去しょうきょして白しろロムにしてもらうことができる。

番号ばんごうが記録きろくされているが、ショップに納入のうにゅうされたばかりの状態じょうたいで、一いち度ども正式せいしきな契約けいやくが結むすばれていない端末たんまつは、半はん黒くろロムと呼よぶ。半はん黒くろロムも通話つうわ・通信つうしんはできないが、一いち度どでも契約けいやくが結むすばれたかにより、灰はいロムとは区別くべつされる。

3G世代せだいでの用法ようほう

UIMカード/R-UIMカード（auのみ、CDMA2000/GSMデュアルのため。以下いか便宜上べんぎじょうUIMカードとする）を採用さいようした携帯けいたい電話でんわ端はし末まつ（国内こくないでは、FOMA・SoftBank 3Gとイー・モバイル、およびauの現行げんこう機種きしゅ（およそ2005年ねん以降いこう発売はつばいのau ICカード対応たいおう端末たんまつ）、WILLCOMの一部いちぶ機種きしゅ）では、UIMカードに電話でんわ番号ばんごうが記録きろくされており、端末たんまつ自体じたいには電話でんわ番号ばんごうが存在そんざいしない。

したがって白しろロムという概念がいねんも存在そんざいしないが、解約かいやくしてSIMカードを返却へんきゃくするか、別べつの端末たんまつを新あらたに調達ちょうたつしてSIMカードを入いれ替かえたことにより、それまで使つかっていた端はし末まつがSIMカード未み挿入そうにゅうの状態じょうたいを便宜べんぎ的てきに白しろロムと呼よぶ。本来ほんらい、これは誤用ごようであるが、現在げんざいではこの状態じょうたいをいうことが多おおい。

しかし、3G端末たんまつ自体じたいはいわゆる上述じょうじゅつで述のべられたような「白しろロム」であっても、UIMカードについては番号ばんごうの書かき込こみがあるか否ひかという状態じょうたいがあるため、番号ばんごうの書かき込こみのないUIMカードを「白しろSIM」、書かき込こみのあるUIMカードを「黒くろSIM」（上述じょうじゅつの「半はん黒くろロム」に相当そうとうするものを含ふくむ。なお、この定義ていぎからいくと、初回しょかいチャージを行おこなっていないプリモバイル用ようのUSIMカードも「半はん黒くろSIM」に近ちかい状態じょうたいになっている）、解約かいやく済ずみ（あるいは、国外こくがいローミング利用りようなどの理由りゆうにより、ドコモUIMカードを青あお→緑みどりないしは白しろ、緑みどり→白しろに切きり換かえる場合ばあいに発生はっせいする、以前いぜん利用りようしていたものを含ふくむ）のUIMカードを「灰はいSIM」（解約かいやくされたUIMカードは、本来ほんらいは再さい利用りようされず、事業じぎょう者しゃで回収かいしゅうした上うえで廃棄はいき・再さい処理しょり（これまでのUIMカードの無効むこう化かを呈示ていじする意味いみもあり、ユーザの目めの前まえでショップ店員てんいんがハサミを入いれる場合ばあいもある）となるが、紛失ふんしつしたものを新あらたなUIMカード発行はっこう後ごに発見はっけんした場合ばあいやプリモバイルUSIMカードや海外かいがいのプリペイドUIMカードの有効ゆうこう期限きげんが切きれて再さい利用りよう不可ふかとなったUIMカードが存在そんざいするため、このように呼よぶ。ただし、解約かいやくせずに同どう一いち事業じぎょう社内しゃないで電話でんわ番号ばんごうの変更へんこうを行おこなう場合ばあいは元もとの有効ゆうこうなUIMに書かき込こむ場合ばあいがあり、灰はい化かせず、「黒くろSIM」のままとなる）と呼よぶことはある。

Vodafone 3Gの2004年ねん冬ふゆモデルからは、世界せかい規格きかくの端末たんまつと共通きょうつう化かを図はかった際さいにSIMロックが解除かいじょしやすい機種きしゅが存在そんざいしていたのと、全ぜん世界せかい的てきには白しろロムが主流しゅりゅうであるにもかかわらず、当時とうじの日本にっぽんではインセンティブシステムの為ため他国たこくより高性能こうせいのうな端はし末まつが安やすく手てに入はいった関係かんけいから、端末たんまつを新規しんき契約けいやくで購入こうにゅうした直後ちょくごに解約かいやくし他国たこくに輸出ゆしゅつされるケースが多おおくなっている。契約けいやくを破棄はきした際さいの違約いやく金きんが支払しはらわれているのであれば、携帯けいたい電話でんわ本体ほんたいの代金だいきんが一括いっかつ購入こうにゅう・分割ぶんかつ支払しはらい未み完済かんさいに関かかわらず所有しょゆう権けんは使用しよう者しゃに移行いこうしている為ため、分割ぶんかつ債務さいむの履行りこうに関かんする請求せいきゅうを除のぞき、解約かいやく者しゃに違法いほう性せいを問とう事ことは難むずかしい。

2008年ねん以降いこう、日本にっぽんでは端末たんまつ販売はんばいに際さいし従来じゅうらいのインセンティブモデルから割賦かっぷ販売はんばいモデルへの転換てんかんが進すすんでいるが、新規しんき契約けいやく時じの支払しはらい額がくが少すくないことに変かわりはなく、端はし末まつが海外かいがいに輸出ゆしゅつされる状況じょうきょうは依然いぜん続つづいている。日本にっぽん国内こくないで使つかわれる端末たんまつについては、通信つうしん事業じぎょう者しゃ側がわも残ざん債さいのある白しろロム端末たんまつの通信つうしんを制限せいげんする措置そち等とうで対抗たいこうが可能かのうだが（詳細しょうさいは後述こうじゅつ）、海外かいがいに輸出ゆしゅつされた端末たんまつについては効果こうか的てきな対抗たいこう措置そちがなく、通信つうしん事業じぎょう者しゃ側がわも手てをこまねいているのが現状げんじょうである。

KDDI、並ならびに沖縄おきなわセルラー電話でんわ（各かくauブランド）のau ICカード対応たいおう端末たんまつについては、iPhone 4Sを含ふくむごく一部いちぶのスマートフォンを除のぞき最初さいしょに使用しようされたICカード以外いがいが挿入そうにゅうされても使用しようできなくなるようにロック（セキュアロック）が掛かけられており、第三者だいさんしゃから譲渡じょうとされた端末たんまつを使用しようする際さいにはauショップに持もち込こみ、ロッククリア（セキュアロック解除かいじょ）の手続てつづきが必要ひつようとなり、新規しんき契約けいやくとして利用りようする場合ばあいは2,916円えん（税別ぜいべつ2,700円えん）が、機種きしゅ変更へんこう（増設ぞうせつ）として利用りようする場合ばあいは2,160円えん（税別ぜいべつ2,000円えん）の手数料てすうりょうがそれぞれかかる。

用途ようと

白しろロムは以下いかのような用途ようとに使つかわれる。

機種きしゅ変更へんこう

白しろロムは日本にっぽんでは中古ちゅうこ品ひんの機種きしゅ変更へんこう用よう端末たんまつとみなすことができる。白しろロムを知人ちじんからもらったり、売買ばいばい業者ぎょうしゃから購入こうにゅうしたりして持もち込こみ、機種きしゅ変更へんこうにあてることができる。新品しんぴんの機種きしゅ変更へんこう用よう端末たんまつよりやや安やすいぐらいの価格かかくで取引とりひきされている。なお、盗難とうなん端末たんまつ・詐欺さぎ端末たんまつの取引とりひきが行おこなわれているが、通信つうしん時じに通信つうしん会社かいしゃに、電話でんわ番号ばんごう、SIMカードの番号ばんごう、端末たんまつ固有こゆうの機械きかい番号ばんごうが記録きろくされるので、警察けいさつと通信つうしん会社かいしゃは端末たんまつ固有こゆうの機械きかい番号ばんごうを元もとに、現在げんざいの使用しよう者しゃを日本にっぽん国内こくないでは特定とくていすることが可能かのう。

回線かいせん契約けいやく不要ふようの通話つうわ・通信つうしん

これはPHSや一部いちぶの無線むせんLANを搭載とうさいしたスマートフォンに特有とくゆうな利用りよう法ほうで、自営じえいモードやトランシーバモード、無線むせんLANモード（つまり超ちょう小型こがたのタブレットPCとして使つかう）など、回線かいせん契約けいやくを必要ひつようとしない通話つうわ・通信つうしんに利用りようできる。

端末たんまつ単体たんたい機能きのうの利用りよう

近年きんねんの携帯けいたい電話でんわは、カメラ・ゲーム・テレビ・音楽おんがく再生さいせいなど多彩たさいな機能きのうを備そなえているため、白しろロム（ないし灰はいロム）でも通話つうわ・通信つうしんと無関係むかんけいにデジタルガジェットとして利用りようすることができる。ただし、最近さいきんの機種きしゅでは、このような目的もくてきで契約けいやく後ご即そく解約かいやくされるのを防ふせぐため、解約かいやくするとこれらの機能きのうが使つかえなくなるものもある。既すでに所有しょゆう権けんの譲渡じょうとが行おこなわれている個人こじん所有しょゆうの物品ぶっぴんへの行為こういとしては、財産ざいさん権けんの観点かんてんから異論いろんがあるため、NTTドコモなど、インセンティブ分離ぶんりによって端末たんまつ代金だいきんを確実かくじつに回収かいしゅうできるようになったことに併あわせ、ワンセグテレビに対たいする制限せいげんを取とりやめたキャリアも存在そんざいする。auについても、カメラ、メーラー、アドレス帳ちょうなど、EZアプリを除のぞく機能きのうは原則げんそくとして利用りよう可能かのうとしているが、ソフトバンクモバイルのように、UIMカード未み挿入そうにゅうの場合ばあい、依然いぜんとして電話でんわ帳ちょう等とうを含ふくめ全すべての機能きのうの利用りようを許可きょかしないキャリアも存在そんざいする。このため、ソフトバンク端末たんまつについては、解約かいやくに伴ともないUIMカードを返却へんきゃくする前まえに所要しょようの操作そうさを行おこなっておかない限かぎり、個人こじん情報じょうほう消去しょうきょのような作業さぎょうすらも行おこなえなくなるため、十分じゅうぶんな注意ちゅういが求もとめられる。ただしiPhoneにおいてはこの限かぎりでない。

その他た、コレクションや転売てんばい目的もくてきで白しろロムを集あつめている者ものも存在そんざいする。

問題もんだい点てん

近年きんねんでは、白しろロムを悪用あくようした事例じれいも見受みうけられる様ようになった。

特とくに多おおいのは、アルバイトと称しょうし、新規しんき契約けいやくと即そく解約かいやくを行おこなって白しろロムを作つくると、報酬ほうしゅうがもらえるものである。ユーザーは一見いっけん、報酬ほうしゅうで得とくをしたかに思おもえるが、その後ご解約かいやく手数料てすうりょうや機種きしゅ代だいの残額ざんがくなどで多額たがくの支払しはらいに追おわれたり、短期たんき解約かいやくの繰くり返かえしでブラックリストに載のり、携帯けいたい電話でんわを契約けいやくできなくなったりと、多大ただいな損害そんがいが残のこることとなる。

また、携帯けいたい電話でんわ端末たんまつの販売はんばい方法ほうほうが変更へんこうされた2007年ねん9月がつ以降いこう、各地かくちの携帯けいたい電話でんわ店てんの在庫ざいこ商品しょうひんが盗難とうなんに遭あう被害ひがいが相次あいつぐようになった。対象たいしょうの多おおくは、SIMカードを差さし替かえれば使用しようできるNTTドコモとソフトバンクモバイルの商品しょうひんで、不法ふほうに入手にゅうしゅした端末たんまつを、インターネットオークションなどで大量たいりょうに売うりさばく事例じれいも見受みうけられている。

2008年ねん3月がつ5日にちから、こうした事例じれいを受うけて、Yahoo!オークションでは、発売はつばい後ご6カ月かげつ未満みまんのソフトバンクモバイルの端末たんまつのみ自社じしゃインセンティブ確保かくほの観点かんてんから出品しゅっぴんを禁止きんしした。

2009年ねん3月がつ5日にちには、禁止きんし期間きかんを発売はつばい後ご12カ月かげつ未満みまんにまで延長えんちょうして規制きせい強化きょうかしたが、2010年ねん2月がつ1日にちからは発売はつばいからの経過けいか期間きかんによる出品しゅっぴん制限せいげんは廃止はいしされ、出品しゅっぴんの際さいにIMEIの記載きさいを義務付ぎむづけた。これによりソフトバンクモバイル端末たんまつの落札らくさつ者しゃに対たいして、ソフトバンクモバイルのWebサイトで利用りよう制限せいげん中ちゅうまたは利用りよう制限せいげんになる恐おそれがある端末たんまつかどうかの確認かくにんを求もとめている。

ポストペイト式しきとは比較的ひかくてき契約けいやくや解約かいやくが容易よういであったソフトバンクモバイルが提供ていきょうしているプリペイド式しき携帯けいたい電話でんわサービスも白しろロムが高値たかねでオークション等とうで転売てんばいされる事ことが多々たたあったため契約けいやく回線かいせんの制限せいげんや2012年ねん4月がつ4日にち以降いこうに契約けいやくしその期間きかんが1年ねんに満みたない場合ばあい（MNPポートアウト含ふくむ）の解約かいやくに解約かいやく手数料てすうりょうとして19,800円えん（税込ぜいこみ）が必要ひつようになった。

赤あかロム

さらに、ソフトバンクでは残ざん債さいのある白しろロムの通信つうしん機能きのうを制限せいげんする措置そちも講こうじていて、その状態じょうたいになると電波でんぱ表示ひょうじが赤あかくなることから、一部いちぶでは「赤あかロム」と呼よばれている。それに対たいして、転売てんばいされた端末たんまつの購入こうにゅう者しゃとは無関係むかんけいな第三者だいさんしゃの債務さいむ未払みはらいで機能きのうを制限せいげんするのは不当ふとうだとして、中古ちゅうこ携帯けいたい販売はんばい業者ぎょうしゃの株式会社かぶしきがいしゃeiYAAAがソフトバンク側がわを提訴ていそしている。

NTTドコモも2009年ねん10月がつ1日にちから同様どうようの規制きせいを開始かいしし、同時どうじに同社どうしゃのウェブサイトにてIMEI端はし末まつが通信つうしん制限せいげんの対象たいしょうかどうかを確認かくにんできる検索けんさく機能きのうを提供ていきょうした。第三者だいさんしゃから端末たんまつを購入こうにゅうする場合ばあいは事前じぜんに同どうサイトで確認かくにんを取とることを推奨すいしょうしている。

このほか、盗難とうなん端はし末まつに対たいしてショップや元もと所有しょゆう者しゃが遠隔えんかくロックをかけ、その結果けっか白しろロム使用しよう中ちゅうのユーザーが気付きづかないうちに、所有しょゆう端末たんまつをロックされるケースも存在そんざいする。