研修けんしゅう医い

日本にっぽんにおける 研修けんしゅう医い （けんしゅうい）とは、

戦後せんご、医師いし臨床りんしょう実地じっち研修けんしゅう制度せいどにおいて存在そんざいした「医師いし」の前まえの身分みぶんの名称めいしょう。
臨床りんしょう研修けんしゅう期間きかん中ちゅうの「医師いしまたは歯科しか医師いし」の呼よび名な。（本ほん項こうで詳述しょうじゅつ）

一般いっぱんに米国べいこくの医師いし制度せいどの段階だんかいの一ひとつである「インターン」と混同こんどうされることが多おおいが、日本にっぽんの「研修けんしゅう医い」とは全まったく違ちがうので注意ちゅうい^{[要よう説明せつめい]}。近ちかい英訳えいやくとしては、doctor-in-training。

地位ちい

医師いし法ほう・歯科しか医師いし法ほう上うえ「医師いし」「歯科しか医師いし」では、基礎きそ研究けんきゅうに専念せんねんするなどの臨床りんしょうとは関かかわらない道みちを選えらぶ医師いし以外いがいについては、医師いしで2年ねん以上いじょう、歯科しか医師いしでは1年ねん以上いじょうの臨床りんしょう研修けんしゅうが義務付ぎむづけられており、その期間きかんに相当そうとうする医師いし・歯科しか医師いしを「研修けんしゅう医い」と呼よぶ^[1]。臨床りんしょう研修けんしゅうを修了しゅうりょうしない医師いし・歯科しか医師いしは診療しんりょう所しょを開設かいせつすることや病院びょういん・診療しんりょう所しょの管理かんり者しゃ（いわゆる院長いんちょう）になる事ことができない。2018年ねん（平成へいせい30年ねん）4月がつ以降いこう、「研修けんしゅう医い」の語かたりを使つかう場合ばあい、厚生こうせい労働省ろうどうしょうが定さだめた2年間ねんかんの臨床りんしょう研修けんしゅうに従事じゅうじする医師いしを指さし、臨床りんしょう研修けんしゅうを修了しゅうりょうした後のちに専門医せんもんいを目指めざす医師いしについては「専攻せんこう医い」と呼よぶことになった。2018年ねん3月がつ以前いぜんは、現在げんざいの研修けんしゅう医いを「前期ぜんき（初期しょき）研修けんしゅう医い」、専攻せんこう医いを「後期こうき研修けんしゅう医い」（病院びょういんによっては専修せんしゅう医い、修練しゅうれん医いなどとも）と呼よんでいた。

制度せいど

日本にっぽんでは大学だいがくにおいて6年間ねんかんの医学いがく教育きょういくが行おこなわれているが、医師いし免許めんきょ・歯科しか医師いし免許めんきょを持もたない学生がくせいは法律ほうりつ的てきに医療いりょう行為こういを行おこなえないため、大学だいがく卒業そつぎょう時点じてんでは医師いし・歯科しか医師いしとしての実地じっち経験けいけんはないに等ひとしい。歯学部しがくぶは、文部もんぶ科学かがく省しょう高等こうとう教育きょういく局きょく医学いがく教育きょういく課長かちょう通知つうち「歯科しか医師いし卒そつ前ぜん臨床りんしょう実習じっしゅうについての考かんがえ方かたについて（15高だか医い教きょう第だい12号ごう　平成へいせい15年ねん6月がつ11日にち）」に基もとづき、「歯科しか医師いし卒そつ前ぜん臨床りんしょう実習じっしゅうについては、患者かんじゃの同意どういの下もとで、歯科しか医師いしとしての資質ししつ向上こうじょうを目的もくてきとして卒そつ前ぜん教育きょういくの一環いっかんとして行おこなわれるものであり、侵おかせ襲かさね性せいが相対そうたい的てきに小ちいさいことや指導しどう医いの指導しどう・監督かんとくの下したに行おこなわれることなど、適正てきせいな体制たいせいの下したに相当そうとうな手段しゅだんで実施じっしされる場合ばあいには、社会しゃかい通念つうねんから見みて相当そうとうであり、歯科しか医師いし法ほう上じょうの違法いほう性せいは阻却されるものと考かんがえられること」との考かんがえのもと、歯学部しがくぶ・歯科しか大学だいがくの附属ふぞく医療いりょう機関きかん内ない等とうで指導しどう者しゃの指導しどう・監督かんとくの下したに臨床りんしょう実習じっしゅう生せい（歯学部しがくぶ学生がくせい）が歯科しか医業いぎょうの一部いちぶを実施じっしすることが許容きょようされている。しかし、それだけでは不十分ふじゅうぶんであるため、診療しんりょうに従事じゅうじしようとする医師いし・歯科しか医師いしに対たいし、免許めんきょ取得しゅとくの後のちに、臨床りんしょう研修けんしゅうの名なで指導しどう医い（指導しどう歯科しか医い）・上級じょうきゅう医い（上級じょうきゅう歯科しか医い）の指導しどうの下したに臨床りんしょう経験けいけんを積つむ卒そつ後ご教育きょういくが制度せいど化かされた。臨床りんしょう研修けんしゅうを受うけることは以前いぜんは努力どりょく規定きていであったが、医科いかでは2004年ねんから義務ぎむ化かされ、歯科しかでは2006年ねんより義務ぎむ化かされた。

研修けんしゅう先さきと研修けんしゅうプログラム

研修けんしゅう医い・研修けんしゅう歯科しか医いが研修けんしゅうできる施設しせつは指定していされており、医学部いがくぶや歯学部しがくぶに附属ふぞくする大学だいがく病院びょういん^[2]。または厚生こうせい労働ろうどう大臣だいじん指定していの臨床りんしょう研修けんしゅう施設しせつ（病院びょういん・診療しんりょう所しょ等とう）でのみ実施じっしすることが定さだめられている^[3]^[4]。臨床りんしょう研修けんしゅう施設しせつとして指定していを受うける病院びょういんには、様々さまざまな基準きじゅんが求もとめられ、その基準きじゅんを満みたせない場合ばあいは指定していが取とり消けされ研修けんしゅう医いを招聘しょうへいすることが出来できない。研修けんしゅうは研修けんしゅうプログラム責任せきにん者しゃが作成さくせいし厚生こうせい労働省ろうどうしょうによって認可にんかされたプログラムに沿そって行おこなわれ、臨床りんしょう研修けんしゅう協力きょうりょく施設しせつとしてへき地ち・離島りとう診療しんりょう所しょ、中小ちゅうしょう病院びょういん・診療しんりょう所しょ、保健所ほけんじょ、介護かいご老人ろうじん保健ほけん施設しせつ、社会しゃかい福祉ふくし施設しせつ、赤十字せきじゅうじ社しゃ血液けつえきセンター、各種かくしゅ検診けんしん・健診けんしんの実施じっし施設しせつ等とうも含ふくめることができる^[5]。

診療しんりょうアルバイト禁止きんし

研修けんしゅう期間きかん中ちゅうに他た医療いりょう機関きかんなどでの診療しんりょうアルバイトは禁止きんしされている^[6]。医師いし法ほう第だい16条じょうの5に「臨床りんしょう研修けんしゅうを受うけている医師いしは、臨床りんしょう研修けんしゅうに専念せんねんし、その資質ししつの向上こうじょうを図はかるように努つとめなければならない。」と規定きていされており、明文化めいぶんかされていないものの、これを根拠こんきょに厚生こうせい労働省ろうどうしょうは2年間ねんかんの初期しょき研修けんしゅう期間きかんにおいては、研修けんしゅう先さきの関連かんれん施設しせつであっても定さだめられたプログラム外がいの診療しんりょう業務ぎょうむに関かかわることを禁止きんししている^[6]。しかし2004年ねん以降いこうも研修けんしゅう医いが医療いりょう機関きかんでアルバイトをしていたという案件あんけんは数多かずおおく報告ほうこくされており、厚労省こうろうしょうはアルバイトのあった研修けんしゅう先さきに対たいして管理かんり徹底てっていを指導しどうしている^[7]。なお診療しんりょう外がいの非ひ医療いりょう分野ぶんやのアルバイトは禁止きんしについて言及げんきゅうされていない^[6]。

変遷へんせん

臨床りんしょう実地じっち研修けんしゅう制度せいど

戦後せんご、日本にっぽんの臨床りんしょう研修けんしゅうは臨床りんしょう実地じっち研修けんしゅう制度せいど（一般いっぱんに米国べいこくのインターンに準なぞらえてインターン制度せいどで知しられている）で始はじまった。これは大学だいがく卒業そつぎょう後ご、1年間ねんかんの「臨床りんしょう実地じっち研修けんしゅう」をした後のちに医師いし国家こっか試験しけんの受験じゅけん資格しかくを得えられるというものであった。すなわち研修けんしゅうの期間きかん中ちゅうは学生がくせいでも医師いしでもなく、不安定ふあんていな身分みぶんでの診療しんりょうを強しいられた。また給与きゅうよの保障ほしょうもほとんどなかったため、学生がくせいによる反対はんたい運動うんどうが起おこった。

1954年ねん11月12日にちに東大とうだい医学部いがくぶ一いち号館ごうかんで全日本ぜんにほん医い学生がくせい連合れんごう結成けっせい大会たいかいが開催かいさいされ、46大学だいがく医学部いがくぶ中ちゅう39校こうが出席しゅっせきして「全日本ぜんにほん医い学生がくせい連合れんごう」が結成けっせいされた。初代しょだい委員いいん長ちょうは遠藤えんどう幸孝ゆきたか。
1967年ねん最大さいだい時じには36大学だいがく2400人にん加盟かめいした青あお医い連れんなどの組織そしきが誕生たんじょうして大だい規模きぼな学生がくせい闘争とうそうが繰くり広ひろげられた。
1967年ねん3月12日にちインターン制度せいど完全かんぜん廃止はいしを叫さけぶ医師いし国こく試ためし阻止そし闘争とうそうが行おこなわれ、この年としの医師いし国家こっか試験しけんは受験生じゅけんせい3150人にんのうち405人にんしか受験じゅけんしないという結果けっかになった。
1968年ねんまでに医師いし法ほうが改正かいせいされ、従来じゅうらいのインターン制度せいどは廃止はいしされたが、代かわりに医師いし国家こっか試験しけんに合格ごうかく後ご2年ねん以上いじょう、大学だいがく病院びょういんなどで臨床りんしょう研修けんしゅうするよう「努つとめる」規定きていが盛もり込こまれた。この新しん研修けんしゅう制度せいどに反対はんたいし、この年としの春はるの医師いし国家こっか試験しけんも有ゆう資格しかく者しゃの半数はんすう以上いじょうが受験じゅけんをボイコットした^[8]。
1969年ねん以降いこうも日大にちだい医学部いがくぶ闘争とうそう委員いいん会かいが闘争とうそうを続つづけるが、幹部かんぶ18人にんが逮捕たいほされ27人にんが大学だいがくから追放ついほうされると闘争とうそうは急速きゅうそくに沈静ちんせい化かしていった。その後ごも各かく学校がっこうで闘争とうそうへの参加さんか者しゃを退学たいがく処分しょぶんにするレッドパージと呼よばれた処分しょぶんが行おこなわれ、最終さいしゅう的てきには200人にん以上いじょうに及およんだと言いわれている^{[要よう出典しゅってん]}。
1971年ねん以降いこうも処分しょぶん者しゃたちが復権ふっけんを求もとめて闘争とうそうを続つづけるも、このころには完全かんぜんに一部いちぶの人間にんげんのみとなり事実じじつ上じょう、消滅しょうめつしていた。

劣悪れつあくな研修けんしゅう環境かんきょうが社会しゃかい問題もんだい化か

この法ほう改正かいせいにより、大学だいがく卒業そつぎょう後ごすぐに医師いし国家こっか試験しけんを受うけて医師いし免許めんきょを得えることが可能かのうになった。臨床りんしょう研修けんしゅう制度せいども改正かいせいされ、医師いし免許めんきょ取得しゅとく後ごに2年ねん以上いじょうの臨床りんしょう研修けんしゅうを行おこなうよう努つとめるものと定さだめられた（努力どりょく規定きてい）。こうして研修けんしゅう医いは医師いしとしての身分みぶんの保障ほしょうはなされたものの、依然いぜんとして労働ろうどう面めんや給与きゅうよ面めんでの処遇しょぐうには問題もんだいも多おおかった。特とくに私立しりつ大学だいがく病院びょういんの大半たいはんでは労働ろうどう者しゃとしての扱あつかいすらされておらず、社会しゃかい保険ほけんにも加入かにゅうできなかった。研修けんしゅう医いには長時間ちょうじかんの過酷かこくな労働ろうどうの対価たいかとして月額げつがく数すう万まん円えん程度ていどの「奨学しょうがく金きん」が支払しはらわれるに過すぎず、生活せいかつ費ひを当直とうちょくなどのアルバイトに依存いぞんせざるを得えなかったのである（実際じっさい、大阪おおさか・兵庫ひょうご両りょう府県ふけんの大学だいがく病院びょういんなどで働はたらく研修けんしゅう医いのうち、98人にんもの多数たすうが、別べつの病院びょういんなどでアルバイト診療しんりょうをしていたことが、厚生こうせい労働省ろうどうしょう近畿きんき厚生こうせい局きょくが2008年ねんに行いった実態じったい調査ちょうさで発覚はっかくしている^[9]）。

大学だいがく病院びょういんにおける専門せんもん分野ぶんやに偏かたよった研修けんしゅうの弊害へいがいも指摘してきされるようになり、36年ねんぶりに臨床りんしょう研修けんしゅう制度せいどが改正かいせいされるに至いたった。

なお、2005年ねん6月がつ、最高裁さいこうさいにて「研修けんしゅう医いは、教育きょういく的てきな側面そくめんがあるとはいえ、病院びょういんの開設かいせつ者しゃのために患者かんじゃの医療いりょう行為こういに従事じゅうじすることもあり、労働ろうどう基準きじゅん法ほうに定さだめる労働ろうどう者しゃにあたる」とした判断はんだんが下くだされ、最低さいてい賃金ちんぎんの保障ほしょうなど待遇たいぐうの向上こうじょうが期待きたいされる。（詳細しょうさいは関西医科大学かんさいいかだいがく研修けんしゅう医い過労かろう死し事件じけんを参照さんしょう）

新あたらしい臨床りんしょう研修けんしゅう制度せいど

新あたらしい臨床りんしょう研修けんしゅう制度せいど（スーパーローテート）は2004年ねん 4月がつ1日にちにスタートした^[10]。プライマリ・ケアを中心ちゅうしんとした幅広はばひろい診療しんりょう能力のうりょくの習得しゅうとくを目的もくてきとして、2年間ねんかんの臨床りんしょう研修けんしゅうを義務ぎむ化かするとともに、適正てきせいな給与きゅうよの支給しきゅうと研修けんしゅう中ちゅうのアルバイトの禁止きんしなどが定さだめられた。2004年度ねんどの研修けんしゅう医いの平均へいきん給与きゅうよ（年収ねんしゅう）は365万まん円えんとなり2003年度ねんどの265万まん円えんから約やく100万まんの増加ぞうかを見みせ、なかでも大学だいがく附属ふぞく病院びょういんで204万まん円えんから318万まん円えんへと114万まん円えんの大幅おおはば増ぞうとなった（臨床りんしょう研修けんしゅう病院びょういんでは424万まん円えんから422万まん円えんへと約やく2万まん円えんの減げん）^[11]。マッチング制度せいどが導入どうにゅうされており、自身じしんで研修けんしゅう先さきを選択せんたくする^[12]。例外れいがいとして、卒業生そつぎょうせいと行政ぎょうせいの間あいだに特別とくべつな関係かんけい性せいのある防衛医科大ぼうえいいかだい学校がっこうと自治医科大学じちいかだいがくでは、マッチングには参加さんかしないこととなっている。防衛医科大ぼうえいいかだい学校がっこうでは全員ぜんいんが防衛医科大ぼうえいいかだい学校がっこうと自衛隊じえいたい中央ちゅうおう病院びょういんで臨床りんしょう研修けんしゅうを受うける。自治医科大学じちいかだいがくでは各かく都道府県とどうふけんの指定していする病院びょういんにて研修けんしゅうを受うける。

歯科しか医師いしの場合ばあいは、2006年ねん4月がつより、1年ねん以上いじょうの臨床りんしょう研修けんしゅうが義務ぎむ化かされることになっているが、多おおくの歯学部しがくぶでは既すでに2年間ねんかんを中心ちゅうしんとした臨床りんしょう研修けんしゅう制度せいどを行おこなっている。

「新あらたな医師いし臨床りんしょう研修けんしゅう制度せいど」のホームページ（厚生こうせい労働省ろうどうしょう）

問題もんだい点てん

地域ちいき医療いりょうへの影響えいきょう

マッチング制度せいどの導入どうにゅうによって、研修けんしゅう先さきを自由じゆうに選えらべるようになった結果けっか、研修けんしゅう医いは都市とし部ぶへ集中しゅうちゅうし、地方ちほうの医師いし数すうは（病院びょういん数すうおよび患者かんじゃ数すうに対たいして）決定的けっていてきに不足ふそくしている^[12]。さらに、研修けんしゅう医いのアルバイトが禁きんじられることで、夜間やかんおよび休日きゅうじつの当直とうちょく業務ぎょうむを行おこなう医師いしの確保かくほが非常ひじょうに困難こんなんとなっている。また、労働ろうどう力りょくとしての研修けんしゅう医いを多おおく抱かかえることのできなくなった大学だいがく病院びょういんが人手ひとで確保かくほのため関連かんれん病院びょういんへ派遣はけんした医師いしを引ひき上あげ始はじめており、人口じんこう過疎かそ地ちでは医療いりょうそのものが成なりたなくなるなどの問題もんだいも出で始はじめている。このため、2009年ねん4月がつより、大学だいがく病院びょういんに限かぎり、地域ちいき医療いりょうに影響えいきょうを及およぼしている診療しんりょう科かについて、特別とくべつコースに基もとづいた研修けんしゅうプログラムを実施じっしできるようになった。また、2010年ねん4月がつからは臨床りんしょう研修けんしゅうの必修ひっしゅう科目かもくを内科ないかや救急きゅうきゅうなど数すう科目かもくに絞しぼり、期間きかんを実質じっしつ1年間ねんかんに短縮たんしゅくし、2年ねん目めから志望しぼう科かで研修けんしゅうさせることで医師いし不足ふそくに対応たいおうするプログラムも実施じっし可能かのうとなった。

もっとも今いままでの医局いきょく人事じんじが崩壊ほうかいしつつあることで、病院びょういんの経営けいえい者しゃである医療いりょう法人ほうじんや地方自治体ちほうじちたいは地元じもと医学部いがくぶに気きを使つかうことなく採用さいよう活動かつどうを行おこなうことが可能かのうになり、特とくに地方ちほうの病院びょういんは新人しんじん研修けんしゅう医いに対たいして各かく大学だいがくで説明せつめい会かいを開ひらいたり、病院びょういん見学けんがく会かいを行おこなうなど積極せっきょく的てきな求人きゅうじん活動かつどうを行おこなうようになった。今いままでのブラックボックス的てき医局いきょく人事じんじを捨すて、病院びょういん経営けいえい者しゃによる自主じしゅ的てきな人事じんじ権けんの行使こうしによる公正こうせいな病院びょういん作づくりが可能かのうとなるか、注目ちゅうもくされている。

また、和田わだ秀樹ひでき（精神せいしん科か医い・国際医療福祉大学こくさいいりょうふくしだいがく教授きょうじゅ）は「実じつは現行げんこうの臨床りんしょう研修けんしゅう制度せいどが始はじまってから、研修けんしゅう医いがいちばん増ふえたのは沖縄おきなわ県けん、2番ばんが岩手いわて県けん、3位いが島根しまね県けんで、むしろ東京とうきょうの研修けんしゅう医いは2割わりも減へっている」と主張しゅちょうしている^[13]。

財源ざいげん問題もんだい

新しん制度せいどでは研修けんしゅう医いに対たいする適切てきせつな処遇しょぐうの確保かくほを謳うたっているが、実際じっさいには国くには十分じゅうぶんな財源ざいげんの確保かくほをしておらず、それをうやむやにするために給与きゅうよも諸しょ経費けいひも一括いっかつして研修けんしゅう施設しせつに交付こうふし、その後ごの使つかい道みちは各かく施設しせつに丸まる投なげしてしまった。すなわち研修けんしゅう医いの給与きゅうよにどれだけ回まわすかに関かんして各かく施設しせつの裁量さいりょうを認みとめており、適切てきせつな処遇しょぐうがされない可能かのう性せいを残のこしている。実際じっさいには、国くには各かく研修けんしゅう施設しせつに月つき30万まん円えん程度ていどの給与きゅうよを支払しはらうよう求もとめる一方いっぽうで、補助ほじょされるのは経費けいひ込こみで月つき10数すう万まん程度ていどである。厚生こうせい労働省ろうどうしょうの調査ちょうさで全国ぜんこく平均へいきん30万まん円えんを達成たっせいしているとされているが、これは高こう待遇たいぐうの地方ちほうの民間みんかん病院びょういんと、給与きゅうよの低ひくい都市とし部ぶの大学だいがく病院びょういんやその関連かんれん施設しせつとの平均へいきんに過すぎず、実態じったいを反映はんえいしていない、との指摘してきがある。

研修けんしゅうの質しつの確保かくほ

幅広はばひろい診療しんりょう能力のうりょくの習得しゅうとくを目的もくてきに、内科ないか・外科げか・産婦人科さんふじんかなど複数ふくすうの科かで研修けんしゅうするカリキュラムを組くむこととされているが、こうした研修けんしゅうを初はじめて実施じっしする施設しせつも多おおく、研修けんしゅうの質しつの確保かくほが今後こんごの課題かだいとされる。また、短期間たんきかんローテーションしたところで本当ほんとうに基本きほん的てきな診療しんりょう能力のうりょくを習得しゅうとくできるのかといった根本こんぽん的てきな問題もんだい点てんや、ローテーションしたくない科かでも研修けんしゅうしなければならないことによる研修けんしゅう医い・指導しどう医い双方そうほうの意欲いよく低下ていかも指摘してきされている。

診療しんりょう科かの選別せんべつ

新しん臨床りんしょう研修けんしゅう制度せいどにより、新任しんにん医師いしは志望しぼう科かにかかわらず多おおくの科かをローテーションするようになった。しかし、特とくに外科げか系けいでは、長時間ちょうじかんに及およぶ手術しゅじゅつなど、本来ほんらいの目的もくてきである幅広はばひろい診療しんりょう能力のうりょくの習得しゅうとくとはかけ離はなれた内容ないようの研修けんしゅうが行おこなわれているのが現状げんじょうである。その結果けっか、現実げんじつを直視ちょくしし、過重かじゅうな専門せんもん科か・訴訟そしょうリスクの高たかい専門せんもん科か・QOMLの低ひくい専門せんもん科かを選択せんたくしなくなってきた。そのため、多忙たぼうな科かや、常つねに緊急きんきゅう対応たいおうの必要ひつような科かほど不人気ふにんきになり、人員じんいん不足ふそくに陥おちいる悪循環あくじゅんかんが発生はっせいしつつある。