社会しゃかい保障ほしょう法ほう

社会しゃかい保障ほしょう法ほう（しゃかいほしょうほう）とは、保障ほしょうの必要ひつような者ものに対たいして、国くにや地方ちほう公共こうきょう団体だんたいなどが行おこなう給付きゅうふ行為こういをめぐる権利けんり・義務ぎむを中心ちゅうしんとして、その費用ひよう負担ふたんを定さだめた、社会しゃかい保障ほしょうに関かんする法ほうの総称そうしょうである。

広義こうぎには、強制きょうせい的てき社会しゃかい保険ほけん，一定いっていの任意にんい社会しゃかい保険ほけん，家族かぞく手当てあて制度せいど、公務員こうむいんの特別とくべつ制度せいどをはじめ、環境かんきょう衛生えいせい等とうの公共こうきょう保険ほけん事業じぎょうや公的こうてき扶助ふじょや恩給おんきゅう等ひとしの戦争せんそう犠牲ぎせい者しゃへの給付きゅうふ制度せいども含ふくむ。各国かっこくの比較ひかくや国際こくさい基準きじゅんを研究けんきゅうするための最大公約数さいだいこうやくすう的てきな定義ていぎである。

通常つうじょうは狭義きょうぎに解かいし、社会しゃかい保険ほけん、公的こうてき扶助ふじょ、社会しゃかい手当てあて、人的じんてき社会しゃかい福祉ふくしサービスを主要しゅような柱はしらとしているが、社会しゃかい保障ほしょう法ほうの体系たいけいの問題もんだいとして議論ぎろんがなされている。旧来きゅうらいは、被用者ひようしゃ保険ほけんを労働ろうどう者しゃ保護ほごの問題もんだいとする見解けんかいもあったが、現在げんざいは労働ろうどう法ほうの問題もんだいではなく社会しゃかい福祉ふくし法ほうの問題もんだいとするのが一般いっぱん的てきである。社会しゃかい福祉ふくし法ほうの体系たいけいとしては、1950年ねんの社会しゃかい保障ほしょう制度せいど審議しんぎ会かい勧告かんこくによる社会しゃかい保険ほけんと公的こうてき扶助ふじょを中心ちゅうしんに発展はってんしてきた歴史れきしから各かく制度せいどを並列へいれつ的てきにみる「制度せいど論ろん的てき体系たいけい論ろん」と、荒木あらき誠之せいし提唱ていしょうによる「要よう保証ほしょう事故じこ別べつによる体系たいけい論ろん」が大おおきく分わかれ、後者こうしゃの中なかに、清せい正寛まさひろ提唱ていしょうによる所得しょとく保障ほしょう、医療いりょう保障ほしょう、社会しゃかい福祉ふくしサービスの３みっつのカテゴリーに整理せいりする見解けんかいがある。

社会しゃかい保障ほしょう法ほうに関連かんれんする法律ほうりつとしては、以下いかのように非常ひじょうに数すう多おおくの法律ほうりつがある。 社会しゃかい保険ほけん関連かんれんでは、まず大おおきく職域しょくいき保険ほけんと地域ちいき保健ほけんに分わかれ、前者ぜんしゃのうち、一般いっぱん職域しょくいきとして、健康けんこう保険ほけん法ほう、厚生こうせい年金ねんきん保険ほけん法ほう、雇用こよう保険ほけん法ほう、労働ろうどう者しゃ災害さいがい補償ほしょう保険ほけん法ほう、労働ろうどう保険ほけんの保険ほけん料りょうの徴収ちょうしゅう等とうに関かんする法律ほうりつがあり、特定とくてい職域しょくいきとして、船員せんいん保険ほけん法ほう、国家こっか公務員こうむいん共済きょうさい組合くみあい法ほう、国家こっか公務員こうむいん退職たいしょく手当てあて法ほう、国家こっか公務員こうむいん災害さいがい補償ほしょう法ほう、地方ちほう公務員こうむいん等とう共済きょうさい組合くみあい法ほう、退職たいしょく手当てあてに関かんする条例じょうれい、地方ちほう公務員こうむいん災害さいがい補償ほしょう法ほう、私立しりつ学校がっこう教職員きょうしょくいん共済きょうさい法ほう、地域ちいきとして、国民こくみん健康けんこう保険ほけん法ほう、国民こくみん年金ねんきん法ほう、介護かいご保険ほけん法ほうがあり、老人ろうじん医療いりょうとして、高齢こうれい者しゃ医療いりょう確保かくほ法ほうがある。 公的こうてき扶助ふじょ関連かんれんでは生活せいかつ保護ほご法ほうがある。 社会しゃかい手当てあて関連かんれんでは、児童じどう手当てあて法ほう、児童じどう扶養ふよう手当てあて法ほう、特別とくべつ児童じどう扶養ふよう手当てあて等とうの支給しきゅうに関かんする法律ほうりつがある。 その他た、社会しゃかい福祉ふくし及および児童じどう福祉ふくし、公衆こうしゅう衛生えいせい及および環境かんきょう衛生えいせい、戦争せんそう犠牲ぎせい者しゃ援護えんご等とうに関連かんれんする法律ほうりつがあるだけでなく、各かく法律ほうりつに関かんする政令せいれい、通達つうたつ等ひとしを含ふくめるとその研究けんきゅう対象たいしょうは非常ひじょうに多岐たき複雑ふくざつに亘わたる。

→「日本にっぽんの福祉ふくし」も参照さんしょう

社会しゃかい保険ほけん

公的こうてき保険ほけんを総称そうしょうして社会しゃかい保険ほけん（広義こうぎ）という。労災ろうさい保険ほけんと雇用こよう保険ほけんを合あわせて労働ろうどう保険ほけんといい、これと区別くべつするため社会しゃかい保険ほけん（狭義きょうぎ）ということもある。社会しゃかい保険ほけんは保険ほけん事故じこの発生はっせいと受給じゅきゅう要件ようけんの充足じゅうそくにより保険ほけん給付きゅうふ請求せいきゅう権けんが発生はっせいするが、その給付きゅうふは金銭きんせん給付きゅうふ請求せいきゅう権けんの形かたちをとり通常つうじょう定型ていけい化かされているが、医療いりょう保険ほけんは現物げんぶつ給付きゅうふを原則げんそくとする。

医療いりょう保険ほけん

→詳細しょうさいは「日本にっぽんの医療いりょう」を参照さんしょう

年金ねんきん保険ほけん

→詳細しょうさいは「日本にっぽんの年金ねんきん」を参照さんしょう

労災ろうさい保険ほけん

労災ろうさい保険ほけんは、労働ろうどう者しゃの業務ぎょうむ上じょうの事由じゆう又または通勤つうきんによる負傷ふしょう、疾病しっぺい、傷害しょうがい、死亡しぼう等とうに対たいして保険ほけん給付きゅうふを行おこなう保険ほけんである。

労働ろうどう基準きじゅん法ほうは第だい８章しょうにおいて事業じぎょう主ぬしの災害さいがい補償ほしょう義務ぎむを定さだめているが、第だい84条じょうにおいて労働ろうどう者しゃ災害さいがい補償ほしょう保険ほけん法ほうに基もとづいて災害さいがい補償ほしょうに相当そうとうする給付きゅうふが行おこなわれるべきものである場合ばあいにおいては、使用しよう者しゃは労働ろうどう基準きじゅん法ほう及および民法みんぽう上じょうの補償ほしょうの責任せきにんを免まぬかれる旨むね規定きていし、事業じぎょう主ぬしの災害さいがい補償ほしょう義務ぎむの実効じっこう性せいを確保かくほしている。

労災ろうさい保険ほけんでは労働ろうどう者しゃを一人ひとりでも雇用こようしている事業じぎょうは原則げんそくとして適用てきよう事業じぎょうとされている。

雇用こよう保険ほけん

雇用こよう保険ほけん法ほうは、失業しつぎょうという保険ほけん事故じこに対たいする所得しょとく補償ほしょうのほか、失業しつぎょうの予防よぼう等とう関かんする、雇用こよう安定あんてい事業じぎょう及および能力のうりょく開発かいはつ事業じぎょうの雇用こよう保険ほけん二に事業じぎょうについて定さだめている。

雇用こよう保険ほけんでは労働ろうどう者しゃを一人ひとりでも雇用こようしている事業じぎょうは原則げんそくとして適用てきよう事業じぎょうとされている。

公的こうてき扶助ふじょ

生活せいかつ保護ほご法ほうが公的こうてき扶助ふじょを担になっている。

生活せいかつ保護ほごの基本きほん原理げんりには、無む差別さべつ平等びょうどうの原理げんり、最低さいてい生活せいかつ維持いじの原理げんり、補足ほそく性せいの原理げんり、自立じりつ助長じょちょうの原理げんりがある。

生活せいかつ保護ほごを実施じっしするあたっては、申請しんせい保護ほごの原則げんそく、基準きじゅん及および程度ていどの原則げんそく、必要ひつよう即応そくおうの原則げんそく、世帯せたい単位たんいの原則げんそくがある。

国際こくさい比較ひかく

アメリカにおける社会しゃかい保障ほしょう法ほう

アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくにおいては、1935年ねん8月がつ14日にちにフランクリン・ルーズベルト大統領だいとうりょうのSocial Security Actへの署名しょめいによって、ニューディール政策せいさくの一環いっかんとして制定せいていされている。

社会しゃかい保険ほけん制度せいど、公的こうてき扶助ふじょ、社会しゃかい福祉ふくし事業じぎょうの3つを骨格こっかくとし、管轄かんかつ機関きかんとして社会しゃかい保障ほしょう局きょくが設置せっちされている。

参考さんこう文献ぶんけん

• 加藤かとう智章ともあき、菊池きくち馨かおる実み、倉田くらた聡さとし、前田まえだ雅子まさこ著ちょ『社会しゃかい保障ほしょう法ほう〔第だい6版はん〕』有斐閣ゆうひかく〈有斐閣ゆうひかくアルマ〉（2015年ねん） ISBN 978-4-641-12382-3
• 西村にしむら健一郎けんいちろう著ちょ『社会しゃかい保障ほしょう法ほう入門にゅうもん〔第だい2版はん〕』有斐閣ゆうひかく（2014年ねん）

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