稲木いなぎ

稲木いなぎ（いなぎ、いなき、いのき）とは、イネなどの穀物こくもつや野菜やさいを刈かり取とった後のちに束たばねて天日てんじつに干ほせるよう、木材もくざいや竹たけなどで柱はしらを作つくり、横木よこぎを何なん本ほんか掛かけて作つくったもの。

概要がいよう[編集へんしゅう]

横木よこぎは最さい下段げだんでも作物さくもつが地面じめんにつかない程度ていどの高たかさになっている。地方ちほうによって稲掛いなかけ（いねかけ、いなかけ）、稲いね機き（いなばた）、稲架はさ（はさ、はざ、はせ、はぜ、はで）、牛うし（うし）など異称いしょうも多おおい。

稲穂いなほなどがかけやすい身長しんちょうより少すこし上うえ程度ていどのものがほとんどであるが、中なかには梯子はしごを使つかって掛かけるような大掛おおがかりなものも作つくられ、主おもに収穫しゅうかく後ごの田畑たはたに作つくられることが多おおい。地域ちいきによっては特殊とくしゅな形状けいじょうのものもある。例たとえば風かぜの強つよい島根しまね県けん石見いわみ地方ちほうでは「ヨズクハデ」（ヨズクはミミズクの意い）と呼よばれる特殊とくしゅな三さん角錐かくすいの形状けいじょうをした稲木いなぎが用もちいられる。

毎年まいとし作つくるのではなく近ちかくに備そなえ付つけしてある地方ちほうもある。稲木いなぎに干ほす作業さぎょう及およびその干ほした状態じょうたいは稲木いなぎ干ほし、または地域ちいきによっては稲架はさ掛かけ（はさかけ）などとも呼よばれる。

特殊とくしゅな例れいでは稲架はさ木き（はざぎ、はさぎ）と呼よばれるものがある。農地のうち近ちかくに等間隔とうかんかくに植うえられたハンノキなどの生木なまきの間あいだに挟はさみ込こむようにして稲いねを乾燥かんそうさせるものである。これは特とくに新潟にいがた県けんに多おおく見みられ、古ふるくは埼玉さいたま県けんなど関東かんとう地方ちほうにも見みられた。

干ほすことによってアミノ酸あみのさんと糖とうの含量が高たかくなり、また稲いねを逆さかさまに吊つるすことで、藁わらの油分ゆぶんや栄養分えいようぶん、甘あまみが最下さいか部ぶの米べい粒つぶへ降おりて栄養えいようとうま味みが増ますと言いわれている。太陽光たいようあきらという自然しぜんエネルギーを利用りようする古来こらいよりの方法ほうほうであったが、近年きんねんは乾燥かんそう機きにより乾燥かんそうすることが多おおく、収穫しゅうかくの季き節ぶしになっても天てん日干ひぼしは手間てまがかかるため減少げんしょう傾向けいこうにある。