立体りったい配置はいち

立体りったい配置はいち（りったいはいち、英えい: configuration）とは、化合かごう物ぶつの分子ぶんしに固有こゆうな原子げんしの空間くうかん的てきな配置はいちのことである。単たん結合けつごうまわりの回転かいてんなどで生しょうじる空間くうかん的てきな配置はいちの違ちがいのように、通常つうじょうの条件じょうけんで相互そうご変換へんかん可能かのうな空間くうかん的てきな配置はいち、すなわち通常つうじょうの条件じょうけんでは異性いせい体たいとして単たん離はなされない配置はいちは立体りったい配はい座ざと呼よばれ、立体りったい配置はいちとは分わけて考かんがえる。

原子げんしの結合けつごうの順番じゅんばんが同おなじでありながら立体りったい配置はいちが異ことなる2つの化合かごう物ぶつは立体りったい異性いせい体たいと呼よばれる。立体りったい配置はいちを表記ひょうきする方法ほうほうとしてはE/Z表示法ひょうじほう、R/S表示法ひょうじほう、D/L表示法ひょうじほうなどがある。

二に重じゅう結合けつごうに関かんする立体りったい配置はいち

二に重じゅう結合けつごうにおいては結合けつごう回まわりの回転かいてんが通常つうじょうの条件じょうけんでは不可能ふかのうなため、二に重じゅう結合けつごうの一方いっぽうの原子げんしに結合けつごうした置換ちかん基もとXともう一方いっぽうの原子げんしに結合けつごうした置換ちかん基もとYがその二に重じゅう結合けつごうについて同おなじ側がわにあるか、異ことなる側がわにあるかで立体りったい異性いせい体たいとなる。このような異性いせい体たいは幾何きか異性いせい体たいと呼よばれる(ただし幾何きか異性いせいの呼称こしょうはIUPAC Gold Bookでは非ひ推奨すいしょうであり、cis-trans異性いせいと呼よぶことが推奨すいしょうされている)。

原子げんしに関かんする立体りったい配置はいち

sp³炭素たんそ原子げんしに結合けつごうしている4つの異ことなる原子げんし団だんX、Y、Z、Wはちょうど炭素たんそ原子げんしを中心ちゅうしんとした四よん面体めんていの各かく頂点ちょうてんを占しめるような配置はいちをとっている。ある一ひとつの配置はいちに対たいして、XとYを固定こていしZとWを入いれ替かえたように配置はいちしたとき、これらの配置はいちは通常つうじょうの条件じょうけんでは相互そうご変換へんかん不可能ふかのうである。この2つの配置はいちをした化合かごう物ぶつはお互たがいの鏡かがみ像ぞうにあたることから鏡かがみ像ぞう異性いせい体たい（エナンチオマー、光学こうがく異性いせい体たい:ただし光学こうがく異性いせい体たいの語かたりはIUPAC Gold Bookでは非ひ推奨すいしょう）という。このとき、この炭素たんそ原子げんしを不ふ斉ひとし炭素たんそ原子げんしと呼よぶ。

複数ふくすうの原子げんしに関かんする立体りったい配置はいち

4つの異ことなる原子げんし団だんが結合けつごうした炭素たんそ原子げんしが2つ以上いじょう存在そんざいする場合ばあい、それぞれの炭素たんそ原子げんしについて上記じょうきの2つの立体りったい異性いせい体たいが考かんがえられる。その結果けっか、そのような炭素たんそ原子げんしの数かずをn個ことすれば一般いっぱん的てきには2ⁿの立体りったい異性いせい体たい（2^n-1対たいの鏡かがみ像ぞう異性いせい体たい）がある。このような立体りったい異性いせい体たいの中なかで自身じしんの鏡かがみ像ぞう異性いせい体たい以外いがいの異性いせい体たいはジアステレオマーという。

それぞれの光学こうがく異性いせい体たいを区別くべつせず、ジアステレオマー間あいだの違ちがいを立体りったい配置はいちとして示しめす場合ばあい、これを相対そうたい配置はいちあるいは相対そうたい立体りったい配置はいちという。このような場合ばあい、化合かごう物ぶつ中ちゅうの一ひとつの立体りったい配置はいちを仮定かていして、他たの立体りったい配置はいちを表示ひょうじする。例たとえば(1R^*,2R^*,3S^*)のように1位いがR配置はいちである場合ばあいには2位いはR配置はいち、3位いはS配置はいちというように記述きじゅつする。この記述きじゅつは(1R,2R,3S)-体からだとその鏡かがみ像ぞう異性いせい体たいの(1S,2S,3R)-体からだを合あわせたものである。他たに環たまき式しき化合かごう物ぶつでは1-r,2-c,3-t(1位いの置換ちかん基もとを基準きじゅんとして、2位いの置換ちかん基もとはcis、3位いの置換ちかん基もとはtrans)のような表記ひょうき法ほうもある。キラル中心ちゅうしんとの結合けつごうが開ひらけ裂きれしない反はん応おうを用もちいれば、相対そうたい配置はいちが同おなじである事ことが証明しょうめいできる。

各かく光学こうがく異性いせい体たいも区別くべつして立体りったい配置はいちを示しめす場合ばあい、これを絶対ぜったい配置はいちあるいは絶対ぜったい立体りったい配置はいちという（絶対ぜったい配置はいちと相対そうたい配置はいちには歴史れきし的てきな用語ようごとして別べつの意味いみがある。これについては下したの節ふしを参照さんしょうのこと）。なお、化合かごう物ぶつによっては特定とくていの立体りったい配置はいちでは分子ぶんし内ないに対称たいしょう面めんが生しょうじて自分じぶん自身じしんと鏡かがみ像ぞう異性いせい体たいが一致いっちしてしまうことがある。このような立体りったい異性いせい体たいはメソ化合かごう物ぶつと呼よばれる。

単たん結合けつごうに関かんする立体りったい配置はいち

化合かごう物ぶつによってはある単たん結合けつごう回まわりの回転かいてんが立体りったい障害しょうがいなどの理由りゆうにより不可能ふかのうである場合ばあいがある。この場合ばあい、単たん結合けつごう回まわりの回転かいてんによる立体りったい異性いせい体たいが分離ぶんり可能かのうとなる。このような立体りったい異性いせい体たいをアトロプ異性いせい体たいという。

絶対ぜったい配置はいちと相対そうたい配置はいち

これらの語かたりにはすでに述のべたのとは別べつの意味いみが歴史れきし的てきに存在そんざいする。エミール・フィッシャーは立体りったい配置はいちを論ろんじるにあたって、グリセルアルデヒドの不ふ斉ひとし炭素たんそがどのような立体りったい配置はいちをとっているかを仮定かていした（原子げんしの空間くうかん的てきな配置はいちを決定けっていするような手段しゅだんは当時とうじ存在そんざいしなかったので仮定かていするしかなかったのである）。この仮定かていによって、グリセルアルデヒドを出発しゅっぱつ物質ぶっしつとして化学かがく変換へんかんを行おこなっていけば、他たの化合かごう物ぶつの立体りったい配置はいちがどのようになっているかを論ろんじることができた。これによって立体りったい配置はいちが決定けっていされた化合かごう物ぶつの鏡かがみ像ぞう異性いせい体たいは立体りったい配置はいちがグリセルアルデヒドのD体からだとL体からだのどちらに対応たいおうするかに応おうじてDL表記ひょうき法ほうによって区別くべつがなされた。これらの立体りったい配置はいちはフィッシャーの仮定かていに依存いぞんしており、それと相対そうたい的てきに決定けっていされたという意味いみで相対そうたい配置はいちと呼よばれた。後のちにX線せん回折かいせつの異常いじょう分散ぶんさんの測定そくていからフィッシャーの仮定かていに依存いぞんせず直接的ちょくせつてきに立体りったい配置はいちを決定けっていする方法ほうほうが開発かいはつされた。この方法ほうほうで決定けっていされた立体りったい配置はいちを（他たの化合かごう物ぶつの立体りったい配置はいちに依存いぞんしていないので）絶対ぜったい配置はいちと呼よんだ。フィッシャーの仮定かてい（とそれから導みちびかれた相対そうたい配置はいち）が実際じっさいの原子げんしの空間くうかん的てきな配置はいちと一致いっちしていたことが確認かくにんされたので、ここで挙あげた意味いみの相対そうたい配置はいちと絶対ぜったい配置はいちは特とくに区別くべつして扱あつかう必要ひつようはないことが分わかった。もしフィッシャーの仮定かていが誤あやまりであったら、それまでに報告ほうこくされていた相対そうたい配置はいちはすべてその鏡かがみ像ぞうの配置はいちに読よみ替かえなくてはならなかった。この用法ようほうからの派生はせいとして、ある化合かごう物ぶつの不ふ斉ひとし点てん上じょうの置換ちかん基もとの1つを立体りったい保持ほじで変換へんかんして別べつの化合かごう物ぶつにできるとき、変換へんかん前後ぜんこうの化合かごう物ぶつでこの不ふ斉ひとし点てんの相対そうたい配置はいちは等ひとしいといわれる。

関連かんれん項目こうもく

• 異性いせい体たい
• 立体りったい化学かがく