ジアステレオマー

酒石酸しゅせきさんには 3 つの立体りったい異性いせい体たいがあり、このうち D 体からだとメソ体たい、L 体からだとメソ体たいがそれぞれジアステレオマーの関係かんけいにある。

シクロアルカン類るいでは、ジアステレオマーはシス-トランス異性いせい体たいとして分類ぶんるいできる。

ジアステレオマー (Diastereomer) は化学かがく物質ぶっしつの異性いせい体たいのひとつ。立体りったい異性いせい体たいのうち、鏡かがみ像ぞう異性いせい体たい（エナンチオマー）でないものをいう。幾何きか異性いせい体たい（シス-トランス異性いせい体たい）もジアステレオマーに含ふくまれる。偏へん左右さゆう異性いせい体たいという訳語やくごが稀まれに用もちいられる。

化合かごう物ぶつ A が化合かごう物ぶつ B のジアステレオマーである場合ばあい、A と B の分子ぶんし式しきや化学かがく結合けつごうの様式ようしきは等ひとしいが、平行へいこう移動いどうや回転かいてん操作そうさを施ほどこしてもぴったりと重かさね合あわせることはできない。また、A の鏡かがみ像ぞうも B とは重かさならない。

解説かいせつ

一般いっぱんに、複数ふくすうのキラル中心ちゅうしんがある化合かごう物ぶつはジアステレオマーを持もつ。例たとえば、酒石酸しゅせきさんには 2 つの不ふ斉ひとし炭素たんそがあり、それぞれ R/S の 2 種類しゅるいの立体りったい配置はいちを取とりうるため、分子ぶんし全体ぜんたいでは RR・RS・SR・SS の 4 つの立体りったい配置はいちをとる。このうち、RS と SR は重かさね合あわせることができる完全かんぜんに等価とうかな化合かごう物ぶつである（メソ化合かごう物ぶつ）。したがって、酒石酸しゅせきさんには合計ごうけい 3 つの立体りったい異性いせい体たいがある。このうち、RR と SS は互たがいに鏡かがみ像ぞうであるエナンチオマーの関係かんけいにあり、RR と RS および SS と RS はそれぞれジアステレオマーの関係かんけいにある。

性質せいしつ

エナンチオマー同士どうしは旋光性せい以外いがいの物理ぶつり的てき性質せいしつが等ひとしいため、キラルカラムを用もちいたクロマトグラフィーや、酵素こうそや不ふ斉ひとし触媒しょくばいを用もちいた化学かがく反応はんのうなど、元々もともとキラリティーを有ゆうする物質ぶっしつを作用さようさせる手法しゅほうでなければ分離ぶんりすることができない。一方いっぽう、ジアステレオマー同士どうしは沸点ふってん・溶解ようかい度ど・極性きょくせいなどが互たがいに異ことなるため、蒸留じょうりゅうや再さい結晶けっしょうなど、キラリティーのない（アキラルな）方法ほうほうでも分離ぶんりが可能かのうである。この性質せいしつを利用りようして、アミノ酸あみのさんや糖とうの誘導体ゆうどうたいなど天然てんねんから容易よういに得えられるキラル化合かごう物ぶつを分離ぶんりしたいラセミ体たいに結合けつごうさせ、ジアステレオマーとしてから分離ぶんりする光学こうがく分割ぶんかつが広ひろく行おこなわれている。

エリトロとトレオ

ジアステレオマーを区別くべつするときに用もちいられる接頭せっとう辞じにエリトロ (erythro) とトレオ (threo) がある。フィッシャー投影とうえい式しきを用もちいてジアステレオマーを表あらわす時とき、エリトロ型がたは同おなじ側がわに 2 つの同一どういつの置換ちかん基もとを持もつ。これに対たいし、トレオ型がたは両側りょうがわに 1 つずつ同一どういつの置換ちかん基もとを持もつ。この呼よび方かたはエリトロースとトレオースに由来ゆらいする。

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  エリトロースは 2 つのヒドロキシル基もとが同どう方向ほうこうになる。
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  トレオースは 2 つのヒドロキシル基もとが逆ぎゃく方向ほうこうになる。