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職務しょくむじょう請求せいきゅう

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職務しょくむじょう請求せいきゅう(しょくむじょうせいきゅう)とは、弁護士べんごしとう一定いってい国家こっか資格しかくゆうするものが、その受任じゅにんした職務しょくむ遂行すいこうするために必要ひつよう範囲はんいで、第三者だいさんしゃ住民じゅうみんひょう戸籍こせき謄本とうほんとう請求せいきゅうすることができる制度せいどである[1]

根拠こんきょ規定きていは、戸籍こせきほうだい10じょうの2だい3こうからだい5こう住民じゅうみん基本きほん台帳だいちょうほうだい12じょうの3だい2こうとうかれている[2]

概要がいよう[編集へんしゅう]

請求せいきゅう主体しゅたい[編集へんしゅう]

法律ほうりつじょう職務しょくむじょう請求せいきゅうおこなうことができるのは以下いかの8つの国家こっか資格しかくである。これらを総称そうしょうしてはちぎょう[3]

請求せいきゅう可能かのう書類しょるい[編集へんしゅう]

職務しょくむじょう請求せいきゅうにより交付こうふ請求せいきゅうとう可能かのう書類しょるいにはつぎのようなものがある[4]

  1. 戸籍こせき関係かんけい
    1. 戸籍こせき謄本とうほん
    2. 除籍じょせき謄本とうほん
    3. あらためせいげん戸籍こせき謄本とうほんあらためせいげん戸籍こせき抄本しょうほん
  2. 住民じゅうみんひょう関係かんけい
    1. 住民じゅうみんひょう
    2. 住民じゅうみんひょう記載きさい事項じこう証明しょうめいしょ
    3. 戸籍こせきひょううつ
    4. 住民じゅうみんひょうじょひょううつ
    5. 住民じゅうみん基本きほん台帳だいちょう閲覧えつらん

弁護士べんごしによる職務しょくむじょう請求せいきゅう[編集へんしゅう]

弁護士べんごしによる職務しょくむじょう請求せいきゅう制度せいど趣旨しゅし[編集へんしゅう]

弁護士べんごしによる職務しょくむじょう請求せいきゅう制度せいど趣旨しゅしつぎのとおりである。

個人こじん情報じょうほうプライバシー尊重そんちょう機運きうんなか、こうした情報じょうほう原則げんそくとして本人ほんにん委任いにんじょうがなければ第三者だいさんしゃ取得しゅとくすることはできない。弁護士べんごしがその職務しょくむ遂行すいこうするにたっては、事実じじつ関係かんけい確認かくにんのためや、各種かくしゅ法的ほうてき申立もうしたてをおこなうにさいして添付てんぷ資料しりょうとする目的もくてきなどのため、依頼いらいしゃ関係かんけいしゃ住民じゅうみんひょう戸籍こせき謄本とうほん取得しゅとくすることが度々たびたび必要ひつようとなるのであり、依頼いらいしゃ以外いがいもの委任いにんじょうもとめるという不可能ふかのう強制きょうせいしていては弁護士べんごし制度せいどそのものがりたない。そのため、弁護士べんごしという職業しょくぎょうたいする公的こうてき信頼しんらい基礎きそとして、法定ほうてい要件ようけんたした場合ばあいかぎり、委任いにんじょうがなくとも取得しゅとくゆる制度せいどもうけられたのである[2]

弁護士べんごしによる職務しょくむじょう請求せいきゅう要件ようけんおよび手続てつづき[編集へんしゅう]

弁護士べんごし職務しょくむじょう請求せいきゅうおこなうためには、所属しょぞくする弁護士べんごしかい購入こうにゅうした専用せんよう用紙ようしもちいる必要ひつようがある。この用紙ようしにはとお番号ばんごうられており、どのとお番号ばんごう用紙ようしをどの弁護士べんごし購入こうにゅうしたかは弁護士べんごしかい記録きろくしており、購入こうにゅうした弁護士べんごし以外いがい譲渡じょうと貸与たいよとうけて使用しようすることはみとめられていない。申請しんせいさき窓口まどぐちへの提出ていしゅつ[注釈ちゅうしゃく 1]さいしては弁護士べんごし記章きしょうなどの提示ていじによる厳格げんかく本人ほんにん確認かくにん要求ようきゅうされる。また、請求せいきゅうしようとする書類しょるい種類しゅるいによってことなる用紙ようし[注釈ちゅうしゃく 2]用意よういされており、対応たいおうする用紙ようし使用しようする必要ひつようがある[6]

請求せいきゅうみとめられるためには、利用りよう目的もくてき法定ほうていされた職務しょくむじょう必要ひつようせい要件ようけんたす必要ひつようがある。請求せいきゅうける役所やくしょ請求せいきゅう用紙ようし記載きさいされた利用りよう目的もくてき確認かくにんしていることがおおく、目的もくてきがい判断はんだんされれば交付こうふ拒否きょひされる[7]

ドメスティックバイオレンス被害ひがいしゃとう支援しえん措置そちもうれをおこなっている場合ばあい加害かがいしゃ本人ほんにんからの第三者だいさんしゃ請求せいきゅう拒否きょひされるのと同様どうよう加害かがいしゃ代理人だいりにん弁護士べんごしによる職務しょくむじょう請求せいきゅう拒否きょひされる[8][9]

類似るいじする制度せいど[編集へんしゅう]

弁護士べんごしは、破産はさん管財かんざいじん成年せいねん後見人こうけんにん相続そうぞく財産ざいさん清算せいさんじん不在ふざいしゃ財産ざいさん管理人かんりにん遺言ゆいごん執行しっこうしゃひとし特別とくべつ地位ちいもとづいて職務しょくむじょう請求せいきゅう同様どうよう方法ほうほう書類しょるい請求せいきゅうおこなうことがあるが、これは本人ほんにん請求せいきゅうまたは第三者だいさんしゃ請求せいきゅうというべつ制度せいどである[2]。また司法しほう書士しょし同様どうよう職務しょくむじょう請求せいきゅう同様どうよう統一とういつ用紙ようし利用りようした方法ほうほう書類しょるい請求せいきゅうおこなうことが出来できるようになっている。

そのぎょうによる職務しょくむじょう請求せいきゅう[編集へんしゅう]

行政ぎょうせい書士しょし他人たにん依頼いらいけて家系かけい作成さくせいのために職務しょくむじょう請求せいきゅうおこな場合ばあい行政ぎょうせい書士しょしほうだい1じょうだい1こうにいう「事実じじつ関係かんけいかんする書類しょるい作成さくせい業務ぎょうむ」として除籍じょせき抄本しょうほんとう請求せいきゅうおこなうことは、一部いちぶみとめられる範囲はんいもある。ただし、傍系ぼうけい血族けつぞく除籍じょせき謄本とうほんについては、正当せいとう利害りがい関係かんけいがなければ請求せいきゅうみとめられないため、家系かけい作成さくせい目的もくてきでは行政ぎょうせい書士しょしによる職務しょくむじょう請求せいきゅう要件ようけんたさず、請求せいきゅうみとめられない[10]

職務しょくむじょう請求せいきゅうかんする不祥事ふしょうじ対策たいさく[編集へんしゅう]

身辺しんぺん調査ちょうさなどに関連かんれんして戸籍こせき謄本とうほんとう不正ふせい請求せいきゅう不正ふせい取得しゅとくおこなわれる事案じあんは、1980年代ねんだい[注釈ちゅうしゃく 3]から相次あいついでおり、職務しょくむじょう請求せいきゅう制度せいど確立かくりつされてからも悪用あくようつづいた[11]

職務しょくむじょう請求せいきゅうにあたって請求せいきゅう目的もくてき明示めいじする必要ひつようはないとされていた時期じきもあったが、これが悪用あくようされる事態じたい相次あいついだため、戸籍こせきほうの2007ねん改正かいせいにより要件ようけん厳格げんかくされた[12]具体ぐたいてきには、法務省ほうむしょう集計しゅうけいによれば、2000ねんから2004ねんごろにかけて、職務しょくむじょう必要ひつようせい不正ふせい請求せいきゅうけい9けん行政ぎょうせい書士しょしによるもの6けん司法しほう書士しょしによるもの2けん弁護士べんごしによるもの1けん発生はっせいしたほか、弁護士べんごし調査ちょうさ会社かいしゃ職務しょくむじょう請求せいきゅう用紙ようし不正ふせい譲渡じょうとした事件じけんが1けん発生はっせいした[13]同様どうように、総務そうむしょう集計しゅうけいによれば、2003ねんから2005ねんにかけてけい7けん行政ぎょうせい書士しょしによるもの3けん司法しほう書士しょしによるもの2けん弁護士べんごしによるもの1けん法律ほうりつ事務所じむしょ職員しょくいんによるもの1けん)の不正ふせい取得しゅとく事件じけん発生はっせいした[14][注釈ちゅうしゃく 4]

また、2011ねんには、偽造ぎぞう用紙ようしもちいただい規模きぼ不正ふせい請求せいきゅう事件じけん発生はっせいした。どう事件じけんにおいては、司法しほう書士しょしけん行政ぎょうせい書士しょし資格しかくゆうしていた探偵たんてい会社かいしゃ代表だいひょうしゃが、結婚けっこんまえ身辺しんぺん調査ちょうさ[注釈ちゅうしゃく 5]などのため、偽造ぎぞう職務しょくむじょう請求せいきゅう用紙ようし使用しようし、不正ふせい巨額きょがく利益りえきていたとされる。とお番号ばんごうや1かい購入こうにゅう枚数まいすう制限せいげんなどの不正ふせい使用しよう対策たいさく回避かいひして大量たいりょう不正ふせい請求せいきゅうおこなうため、デザイナーに依頼いらいして用紙ようし偽造ぎぞうおこなっていたという。また、もと弁護士べんごし[注釈ちゅうしゃく 6]関与かんよしていたとされるほか、現職げんしょく弁護士べんごしすうめい名義めいぎしをおこなっていたともいわれる。不正ふせい請求せいきゅう件数けんすうは、2008ねん以降いこう2まんけん以上いじょうのぼったという[15]

こうした事態じたいけ、地方自治体ちほうじちたいによっては、不正ふせい請求せいきゅう不正ふせい取得しゅとく発生はっせいした場合ばあい請求せいきゅうしゃ被害ひがい発生はっせい通知つうちする本人ほんにん通知つうち制度せいどもうけている。法令ほうれいもとづいた制度せいどではないため、運用うんよう詳細しょうさい地方自治体ちほうじちたいごとことなる[11]

脚注きゃくちゅう[編集へんしゅう]

注釈ちゅうしゃく[編集へんしゅう]

  1. ^ 購入こうにゅうした弁護士べんごし本人ほんにん現実げんじつ窓口まどぐちおもむ必要ひつようはなく、郵送ゆうそうや、当該とうがい弁護士べんごし指示しじけた法律ほうりつ事務所じむしょ事務じむ職員しょくいんとう使者ししゃとして提出ていしゅつすることもみとめられているが、弁護士べんごしかい発行はっこう身分みぶん証明しょうめいしょなどをもちいて、弁護士べんごし本人ほんにんによる提出ていしゅつ場合ばあい同等どうとう厳格げんかく本人ほんにん確認かくにんおこなわれる[5]
  2. ^ 用紙ようしいろもそれぞれことなる。
  3. ^ 1976ねんまでは戸籍こせきだれでも取得しゅとくできた。
  4. ^ 法務省ほうむしょう総務そうむしょう集計しゅうけいはそれぞれことなるほう改正かいせいのための資料しりょうとしてりまとめられたものであるため、部分ぶぶんてき重複じゅうふくして計上けいじょうしている可能かのうせいがある。
  5. ^ 司法しほう書士しょしとしても行政ぎょうせい書士しょしとしても職務しょくむじょう必要ひつようせいみとめられない依頼いらい目的もくてきである。
  6. ^ 2008ねん4がつ除名じょめいされ資格しかく喪失そうしつした。

出典しゅってん[編集へんしゅう]

  1. ^ 山岡やまおか裕明ひろあき, 杉本すぎもと賢太けんた & 千葉ちば哲也てつや 2020, p. 67.
  2. ^ a b c 民事みんじ証拠しょうこ収集しゅうしゅう実務じつむ研究けんきゅうかい 2019, p. 36.
  3. ^ "はちぎょう". デジタル大辞泉だいじせん. コトバンクより2021ねん12月27にち閲覧えつらん
  4. ^ 民事みんじ証拠しょうこ収集しゅうしゅう実務じつむ研究けんきゅうかい 2019, pp. 38–40.
  5. ^ 民事みんじ証拠しょうこ収集しゅうしゅう実務じつむ研究けんきゅうかい 2019, p. 41.
  6. ^ 民事みんじ証拠しょうこ収集しゅうしゅう実務じつむ研究けんきゅうかい 2019, pp. 40–41.
  7. ^ 民事みんじ証拠しょうこ収集しゅうしゅう実務じつむ研究けんきゅうかい 2019, pp. 41, 47.
  8. ^ 民事みんじ証拠しょうこ収集しゅうしゅう実務じつむ研究けんきゅうかい 2019, p. 48.
  9. ^ 総務そうむしょう自治じちきょく住民じゅうみん制度せいど課長かちょう (2018ねん3がつ28にち). “ドメスティック・バイオレンス、ストーカー行為こういとう児童じどう虐待ぎゃくたいおよびこれにじゅんずる行為こうい被害ひがいしゃ保護ほごのための住民じゅうみん基本きほん台帳だいちょう事務じむにおける支援しえん措置そちかんする取扱とりあつかいについて” (pdf). 2021ねん12月27にち閲覧えつらん
  10. ^ 法務省ほうむしょう民事局みんじきょく. “家系かけい作成さくせい依頼いらいけた行政ぎょうせい書士しょしからの傍系ぼうけい血族けつぞく除籍じょせき謄本とうほん交付こうふ請求せいきゅうが、戸籍こせきほう施行しこう規則きそくだい11じょうの2だい2こうにいう職務しょくむじょう必要ひつようとする場合ばあい該当がいとうしないとされた事例じれい平成へいせい9ねん6がつ3にちみんだい970ごう回答かいとう行政ぎょうせい書士しょしからの除籍じょせき謄本とうほん交付こうふ請求せいきゅうについて” (pdf). 2021ねん12月27にち閲覧えつらん
  11. ^ a b 「STOP! 個人こじん情報じょうほうろうえい・登録とうろくしよう本人ほんにん通知つうち制度せいど市民しみんネットワーク. “本人ほんにん通知つうち制度せいどとは”. 2021ねん12月27にち閲覧えつらん
  12. ^ ゆかたに文雄ふみお 2016, p. 55.
  13. ^ 法務省ほうむしょう (2005ねん). “戸籍こせき謄本とうほんとうかか不正ふせい事件じけん過去かこ3ねんぶん” (pdf). 2021ねん12月27にち閲覧えつらん
  14. ^ 総務そうむしょう. “職務しょくむじょう請求せいきゅう」にかか住民じゅうみんひょううつとう不正ふせい請求せいきゅう事件じけん” (pdf). 2021ねん12月27にち閲覧えつらん
  15. ^ 安田やすだ茂樹しげき (2012ねん). “戸籍こせき謄本とうほんとう大量たいりょう不正ふせい取得しゅとく事件じけんについて”. 全日本ぜんにほん自治じち団体だんたい労働ろうどう組合くみあい. 2021ねん12月27にち閲覧えつらん

参考さんこう文献ぶんけん[編集へんしゅう]

  • ゆかたに文雄ふみお戸籍こせきほう立法りっぽうてき課題かだい (特集とくしゅう 民法みんぽう戸籍こせき制度せいど)」『法律ほうりつ時報じほうだい88かんだい11ごう、2016ねん10がつ、52-58ぺーじNAID 40020938846 
  • 民事みんじ証拠しょうこ収集しゅうしゅう実務じつむ研究けんきゅうかい民事みんじ証拠しょうこ収集しゅうしゅう』勁草書房しょぼう、2019ねんISBN 978-4-326-40364-6 
  • 山岡やまおか裕明ひろあき杉本すぎもと賢太けんた千葉ちば哲也てつや ちょ八雲やくも法律ほうりつ事務所じむしょ へん『インターネット権利けんり侵害しんがいしゃ調査ちょうさマニュアル―SNS投稿とうこうしゃから海賊版かいぞくばんサイト管理かんりしゃ特定とくていまで』中央経済社ちゅうおうけいざいしゃ、2020ねんISBN 978-4-502-35371-0 

関連かんれん項目こうもく[編集へんしゅう]

外部がいぶリンク[編集へんしゅう]