腎虚じんきょ

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腎虚じんきょ(じんきょ)とは、

  1. 漢方かんぽう医学いがく内分泌ないぶんぴつけい免疫めんえき機能きのうなど全般ぜんぱん機能きのう低下ていかによりおこる症状しょうじょうう。
  2. 古典こてん文学ぶんがく近世きんせい落語らくご小咄こばなし)でいう、交合こうごう過多かた原因げんいんとして「じんすい」(精液せいえき腎臓じんぞうつくられるとかんがえられていた)が欠乏けつぼうすることによってこされる衰弱すいじゃく

概要がいよう[編集へんしゅう]

漢方かんぽう医学いがく[編集へんしゅう]

漢方かんぽう医学いがくではろくのうちじんぎょう思想しそうみずつかさど機能きのうし、六腑ろっぷえば膀胱ぼうこう五官ごかんえばみみ五体ごたいえばほね相当そうとうするためじん機能きのう低下ていかは(西欧せいおう医学いがく腎臓じんぞう機能きのう障害しょうがいとはことなる)しき尿にょう性欲せいよく精力せいりょく減衰げんすい耳鳴みみな身体しんたいのだるさ、手足てあしのむくみなどがあらわれるとされる。漢方かんぽう医学いがくではじん人間にんげん精気せいきのうち生殖せいしょく能力のうりょくかかわるものをめるとされているためにじん機能きのう不全ふぜんすなわち腎虚じんきょひろ精力せいりょく減退げんたい言葉ことばとしてもちいられている。

漢方かんぽうにおける腎虚じんきょかんがかたは、老化ろうか限定げんていされず、じんはたらきがわるければ、子供こども成長せいちょうおくれにつながるとかんがえたり、不妊症ふにんしょう夫婦ふうふじんはたらきがよくないとかんがえる。五臓ごぞうかんがかたは、精神せいしんにも関係かんけいし、じんはたらきがちると、目的もくてき行動こうどうすることが困難こんなんとなり、意志いしちからよわくなるとかんがえる。さらには、無気力むきりょく状態じょうたいとなり、この状態じょうたいながつづくと、きこもりパニック障害しょうがいなどの発症はっしょう原因げんいんともなるとかんがえられる。さらに、じんほねつかさどり、ずいしょうずというかんがかたがありじんはたらきは、中枢ちゅうすう神経しんけいけいにも関与かんよしているとかんがえられている[1]

対処たいしょとしてはかしわ地黄じおうまるはちあじ地黄じおうまる六味ろくみまる牛車うしぐるまじんまるなどのじんざいもちいられる。漢方かんぽう復興ふっこう尽力じんりょくした大塚おおつかたかしぶしは、『漢方かんぽう診療しんりょう30 ねん』に、歩行ほこう不能ふのう下肢かし麻痺まひ若年じゃくねん男性だんせいに、はちあじまるが、劇的げきてき奏功そうこうした症例しょうれいきしている[1]

サルコペニアなどの筋力きんりょく低下ていかたいして、従来じゅうらい漢方かんぽうかんがかたでは、腎虚じんきょ概念がいねんふくまなかったが、大阪大学おおさかだいがく大学院だいがくいん先進せんしん融合ゆうごう医学いがく共同きょうどう研究けんきゅう講座こうざでは、サルコペニアを腎虚じんきょいち症状しょうじょうかんがえ、認知にんち記憶きおく障害しょうがいのモデルマウスとしてられる老化ろうか促進そくしんマウスであるSAMP8使つかって、牛車うしぐるまじんまる骨格こっかくすじへの薬理やくり効果こうかあきらかにした[1]

鍼灸しんきゅうにおいてはぎょう東洋とうよう医学いがく治療ちりょう方針ほうしん関係かんけいからぎょうではけいきょすれば、そのははおぎなうとされており、この場合ばあいみずであるじんきょすればかねであるはははいおぎなえるとされており、じんけいふくためあなはいけいけいみぞあなもちいられる。

古典こてん文学ぶんがく[編集へんしゅう]

古典こてん文学ぶんがくでは、じんすいつまり精液せいえき腎臓じんぞう生成せいせいされるとかんがえられていた。

近世きんせいでは、艶笑えんしょうたん(バレばなし)で「腎虚じんきょ」をネタにした小咄こばなし演目えんもく多数たすう成立せいりつした。

俗説ぞくせつ[編集へんしゅう]

精力せいりょく減退げんたいとして有名ゆうめい腎虚じんきょは、一部いちぶ男性だんせい機能きのうわりという意味いみもちいられることがある。ふるくから男性だんせい射精しゃせい回数かいすうまっているという迷信めいしんがあり、一生いっしょうのうちにめられたりょう精液せいえきくすと男性だんせい死亡しぼうするとされていた。この死因しいん腎虚じんきょしょうした。俗説ぞくせつ以下いかのとおり。

  • 男性だんせい射精しゃせいしすぎると最後さいごにはあかたまて、それ以上いじょう射精しゃせい不可能ふかのうになる。
  • 男性だんせい一生いっしょう一升瓶いっしょうびん2ほんぶん(または10リットル)の精液せいえきすことができる。

これらの俗説ぞくせつ決定的けっていてきえる根拠こんきょいが、自慰じいへの禁忌きんきとして過剰かじょう自慰じい体力たいりょく減衰げんすい老化ろうか早死はやじににつながるとまことしやかにかたられることがおおい。

古典こてん文学ぶんがく(近世きんせい落語らくご小咄こばなし)[編集へんしゅう]

  • 大名だいみょう道具どうぐ神罰しんばつにより殿様とのさま家来けらいの「槍持やりも河内かわち」の「道具どうぐ」(=男根だんこん)がわる。殿様とのさまが「道具どうぐ」を酷使こくしすると河内かわうちが「腎虚じんきょ」でたおれる)
    • 大名だいみょうのお道具どうぐ紛失ふんしつ」『軽口かるくちだん』(明和めいわ9ねん(1772)かん所収しょしゅう
    • もの」『まめだん』(明和めいわ9ねん(1772)かん所収しょしゅう
  • 短命たんめい(「伊勢屋いせや婿むこたち」の死因しいんとして説明せつめいされる。)
  • おかふい(「万屋よろずやみぎ兵衛ひょうえ宇兵衛うへえとも)」が罹患りかん。)

脚注きゃくちゅう[編集へんしゅう]

  1. ^ a b c 大阪大学おおさかだいがく大学院だいがくいん先進せんしん融合ゆうごう医学いがく共同きょうどう研究けんきゅう講座こうざ - 腎虚じんきょとは”. 2020ねん11月11にち閲覧えつらん

関連かんれん項目こうもく[編集へんしゅう]

東洋とうよう医学いがく

古典こてん文学ぶんがく