まく分離ぶんり活性かっせい汚泥おでいほう

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まく分離ぶんり活性かっせい汚泥おでいほう(まくぶんりかっせいおでいほう)とは、下水げすい工場こうじょう排水はいすい浄化じょうかおこなう「活性かっせい汚泥おでいほう(かっせいおでいほう)」の一種いっしゅで、処理しょりされたみず処理しょりすい)と活性かっせい汚泥おでいとの分離ぶんりを、従来じゅうらい沈殿ちんでんいけえて精密せいみつまく(MFまく)または限外げんがいまく(UFまく)を使つかっておこな方法ほうほうである。英語えいごでMembrane Bioreactorとしょうすることから頭文字かしらもじをとってMBRほう、またはたんMBRばれることがおおい。またまくしき活性かっせい汚泥おでいほう(まくしき-)ともばれる。

概要がいよう[編集へんしゅう]

従来じゅうらいほうとの比較ひかくれい

活性かっせい汚泥おでいほうでは、排水はいすいちゅう有機物ゆうきぶつ中心ちゅうしんとした汚濁おだく物質ぶっしつを、反応はんのうタンクのなか大量たいりょう繁殖はんしょくさせた微生物びせいぶつ、すなわち活性かっせい汚泥おでいとらえさせ、これを代謝たいしゃまたは呼吸こきゅうによって消費しょうひさせるか、付着ふちゃくさせたまま汚泥おでいとして排出はいしゅつさせる(くわしくは活性かっせい汚泥おでいこう参照さんしょう)が、処理しょりすい活性かっせい汚泥おでいとの分離ぶんりについては、従来じゅうらい沈殿ちんでんほう、すなわち活性かっせい汚泥おでい最終さいしゅう沈殿ちんでん自然しぜん沈降ちんこうさせることでおこなわれてきた。

しかし、こうした従来じゅうらいほうでは活性かっせい汚泥おでいバルキング活性かっせい汚泥おでいきやすくなること)などの原因げんいんにより自然しぜん沈降ちんこう分離ぶんりしきれずに処理しょりすいがわ流失りゅうしつキャリーオーバーばれる)することがあり、またはんおうタンクに保持ほじできる活性かっせい汚泥おでい濃度のうどが、自然しぜん沈降ちんこうせい最終さいしゅう沈殿ちんでんおおきさに依存いぞんすることにもなる。

そこで、処理しょりすい活性かっせい汚泥おでい強制きょうせいてき分離ぶんりさせることで活性かっせい汚泥おでい流失りゅうしつふせぐとともに、反応はんのうタンクでの活性かっせい汚泥おでい濃度のうどげてその小型こがたはかり、最終さいしゅう沈殿ちんでんやそのすななどを使つかった、および消毒しょうどくなどの工程こうていくすことができる技術ぎじゅつとして開発かいはつされたのが「まく分離ぶんり活性かっせい汚泥おでいほう」である。

1960年代ねんだいアメリカ開発かいはつされ、分離ぶんりまく技術ぎじゅつ革新かくしんともなって1990ねんころから世界せかいてき普及ふきゅうすすはじめた。2009ねん現在げんざい欧米おうべい日本にっぽん中国ちゅうごく中心ちゅうしん普及ふきゅうすすんでおり、とく中国ちゅうごくでは排水はいすいさい利用りよう目的もくてきとした需要じゅようびがいちじるしい。

方法ほうほう[編集へんしゅう]

まく分離ぶんり活性かっせい汚泥おでいほうは、従来じゅうらい沈殿ちんでんわって精密せいみつまく限外げんがいまくなどの分離ぶんりまく処理しょりすい活性かっせい汚泥おでいとを分離ぶんりするが、通常つうじょうフィルターのように、処理しょりすいとして必要ひつようりょうだけを分離ぶんりまくとおしたのではすみやかに活性かっせい汚泥おでいまく表面ひょうめん被覆ひふくされ、またはまりしてしまう(ファウリング(Fouling)とばれる)ため、以下いかいずれかの方法ほうほうでこれをふせぎながら使つかう。

  1. 反応はんのうタンクない分離ぶんりまく露出ろしゅつさせてき(浸漬しんせきまく(「しんしまく」がただしいみであるが、業界ぎょうかいでは「しんせきまく」とまれることがおおい)ばれる)、したからつよく曝気することで、空気くうきあわとこれにともな上昇じょうしょうりゅう発生はっせいさせながら処理しょりすいポンプなどですこしずつ吸引きゅういんする。分離ぶんりまくには中空ちゅうくういと、またはたいらなもの(ひらまく)が使つかわれる。
  2. 比較ひかくのように、分離ぶんりまく反応はんのうタンクのそとき、まく表面ひょうめん大量たいりょう活性かっせい汚泥おでいをポンプなどで循環じゅんかんさせながら処理しょりすいすこしずつ吸引きゅういんする。分離ぶんりまくには中空ちゅうくういと、またはそれよりふといチューブがた(チューブラーとばれる)がもちいられる(たいらなものもあるが、設置せっち面積めんせきおおきいことから最近さいきんでは減少げんしょうしつつある)。
  3. 反応はんのうタンクないたいらな分離ぶんりまく露出ろしゅつさせてき、これに回転かいてん運動うんどう振動しんどうなどをあたえて分離ぶんりまくまりをふせぎながら使つか

特長とくちょう[編集へんしゅう]

  • 従来じゅうらいほう標準ひょうじゅん活性かっせい汚泥おでいほう沈殿ちんでんほう)にくらべて設備せつび小型こがたになる
  • 活性かっせい汚泥おでい処理しょりすい流失りゅうしつキャリーオーバー)する心配しんぱいがない
  • 処理しょりすい精密せいみつまく限外げんがいまくとおるため水質すいしつがよく、従来じゅうらいほうでのすななどによる不要ふようとなり、処理しょりすいさい利用りよう容易よういとなる
  • 大腸菌だいちょうきんなどおおきな微生物びせいぶつ除去じょきょできるため、通常つうじょう河川かせんなどに放流ほうりゅうする場合ばあい処理しょりすい消毒しょうどく不要ふようである(ウイルスなどの流失りゅうしつふせぐため消毒しょうどくおこな場合ばあいもある)

欠点けってん[編集へんしゅう]

  • 分離ぶんりまくのファウリングをふせぐため、これを定期ていきてきつぎ塩素えんそさんアルカリなどの薬品やくひん洗浄せんじょうする必要ひつようがある。
  • 分離ぶんりまく寿命じゅみょうまく素材そざい使用しようじょうきょうことなるが、1~5ねん程度ていどであり定期ていきてき交換こうかん必要ひつようである。
  • 分離ぶんりまく表面ひょうめんの曝気または活性かっせい汚泥おでい循環じゅんかん、および処理しょりすい吸引きゅういんのため、必要ひつよう電力でんりょくなどのエネルギー従来じゅうらいほうより増加ぞうかする。

参考さんこう文献ぶんけん[編集へんしゅう]

関連かんれん項目こうもく[編集へんしゅう]

外部がいぶリンク[編集へんしゅう]

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