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自己じこ盗用とうよう

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』

自己じこ盗用とうよう(じことうよう、えい: Self-plagiarism)とは、自分じぶん文書ぶんしょ学術がくじゅつ出版しゅっぱん論文ろんぶん書籍しょせきレポート申請しんせいしょなど)やデータひょうまったおなじもの、あるいは、すこ改変かいへんしたものを、原典げんてん引用いんようなしに、自分じぶんさい使用しようし、発表はっぴょう文書ぶんしょする行為こういである。原則げんそくてきには盗用とうようとみなされ、研究けんきゅう公正こうせい研究けんきゅう倫理りんり違反いはんとされる。しかし、違反いはんとしないひと機関きかんもあり、問題もんだいてんおおい。

用語ようご

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自己じこ盗用とうようは、英語えいごで「self-plagiarism」とく。「盗用とうよう」は文字通もじどおりの意味いみでは「ぬすむ」行為こういである。となると、自分じぶんのものを自分じぶんが「ぬすむ」というのは撞着どうちゃく語法ごほうへんである[1] [2]概念がいねんりたない。「さい発表はっぴょう」が適切てきせつ用語ようごにもおもえるが、ほん記事きじでは、英語えいごの「self-plagiarism」に対応たいおうさせ、「自己じこ盗用とうよう」をもちいた。

規定きてい米国べいこく

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以下いかは、ことわらないかぎり、米国べいこく中心ちゅうしんとした英語えいごけん状況じょうきょうである。

学術がくじゅつかいでの規定きてい米国べいこく

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学術がくじゅつさかいでは、だい多数たすう大学だいがく教員きょういん研究けんきゅうしゃは、通常つうじょう自分じぶん研究けんきゅう成果せいかをいいかえ、なおし、すこあたらしい知見ちけんくわえ、あちこちの学術がくじゅつなん発表はっぴょうし、出版しゅっぱんする。自分じぶんアイデア研究けんきゅう成果せいか可能かのうなかぎりひろつたえたいからである。おなじアイデアを10ねん以上いじょうさい発表はっぴょうし、すこちが局面きょくめん検討けんとうくわえ、あたらしくられたほんのすこしの知見ちけんくわえ、あたらしい原著げんちょ論文ろんぶん(オリジナル論文ろんぶん)として発表はっぴょうする。ゴッホが、ヒマワリを7まいえがいているのとおなじで、研究けんきゅうしゃも、おなモチーフ(アイデア)で、なんども類似るいじ論文ろんぶん[よう出典しゅってん]

米国べいこく研究けんきゅう公正こうせいきょく(ORI、Office of Research Integrity)は、過去かこ自分じぶん学術がくじゅつ出版しゅっぱん論文ろんぶん書籍しょせき使つかったアイデア・文章ぶんしょう図表ずひょう結果けっか引用いんようしないで自分じぶんさい発表はっぴょうしても、研究けんきゅう不正ふせいの「盗用とうようあつかいをしない。著者ちょしゃ以外いがいひと引用いんようしないで使用しようしたときだけを盗用とうようとしている。もちろん、自己じこ盗用とうよう問題もんだいないという意味いみではない。自己じこ盗用とうようなんさい発表はっぴょうするのは、オーサーシップや研究けんきゅう功績こうせき帰属きぞくかんする問題もんだいであって、研究けんきゅう公正こうせいきょくとしては、それらを不正ふせい対象たいしょうがいとするということである[3]

しかし、学術がくじゅつさかいでは、過去かこ自分じぶん学術がくじゅつ出版しゅっぱん論文ろんぶん書籍しょせき使つかったアイデア・文章ぶんしょう図表ずひょう結果けっか引用いんようしないでさい発表はっぴょうする場合ばあい自分じぶんいた文書ぶんしょなのに、基本きほんてきには、倫理りんり違反いはん盗用とうようまたはじゅう投稿とうこうとみなされることがおお[よう出典しゅってん]おな内容ないよう学術がくじゅつ出版しゅっぱん論文ろんぶん書籍しょせきをそれとらずに出版しゅっぱんする出版しゅっぱんしゃい・読者どくしゃ水増みずま業績ぎょうせきらずに評価ひょうかする研究けんきゅう審査しんさいん人事じんじ審査しんさいんにとっては損害そんがいだからである。

ただ、倫理りんり違反いはんではなく、許容きょようされる場合ばあいもある。程度ていど問題もんだいである。ある程度ていどしつ加工かこう)とりょうさい発表はっぴょうするのはほうてきフェアユース日本にっぽんでは適用てきようされない)にも、倫理りんりてきにも許容きょようされている[4]。では、どの程度ていどしつ加工かこう)とりょう許容きょようされるのか?

学会がっかい学術がくじゅつ出版しゅっぱんでの規定きてい米国べいこく

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一部いちぶ学会がっかい学術がくじゅつ出版しゅっぱんにはさい発表はっぴょうかんする倫理りんり規定きていがある。

定評ていひょうある経営けいえいがく国際こくさい「Journal of International Business Studies」は、「文章ぶんしょうえたり、引用いんようかこってしめさなくても、自分じぶん先行せんこう研究けんきゅうやアイデアをさい発表はっぴょうするときは、かなら引用いんようしなければならない。」[5]規定きていしている。

計算けいさん科学かがく分野ぶんやおおきな影響えいきょうりょく国際こくさい学会がっかい・「Association for Computing Machinery 」(ACM) は盗用とうよう規定きていなか自己じこ盗用とうようについても解説かいせつし、「自分じぶん先行せんこう論文ろんぶん引用いんようしないで、かなりのりょう文章ぶんしょういちいちあるいはほぼいちいち使つかうことを自己じこ盗用とうよう定義ていぎする」[6]としている。

しかし、おおくの学会がっかい学術がくじゅつ出版しゅっぱんには自己じこ盗用とうようかんする倫理りんり規定きていもうけていない。

アメリカ政治せいじ学会がっかいは、1903ねん設立せつりつされた国際こくさいてき政治せいじ学者がくしゃ学会がっかいだが、倫理りんり規定きていなかで、盗用とうようについてつぎのように記述きじゅつしている。「7じょう1こう 盗用とうよう他人たにん成果せいか意図いとてき自分じぶんのものすること。21じょう 学位がくい論文ろんぶん一部いちぶまたは全部ぜんぶ出版しゅっぱんするときは、以下いか規則きそく適用てきようする。21じょう1こう かならずしも出典しゅってん感謝かんしゃ表明ひょうめいをする倫理りんり義務ぎむはない。」[7]。つまり、盗用とうよう規定きていはあるが、自分じぶん成果せいかさい発表はっぴょうする自己じこ盗用とうようにはなにれていない。ただ、学位がくい論文ろんぶん出版しゅっぱんするときは、学位がくい論文ろんぶん引用いんようする必要ひつようはないと記述きじゅつしているので、自己じこ盗用とうよう違反いはんしていない。

アメリカ行政ぎょうせい学会がっかいの「American Society for Public Administration」(ASPA)は、倫理りんり規定きてい盗用とうよう言葉ことばはあるが解説かいせつもしていなければ、自分じぶん成果せいかさい発表はっぴょうする自己じこ盗用とうようにはなにれていない[8]

許容きょよう要件ようけん米国べいこく

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カリフォルニア大学だいがくバークレーこうのパメラ・サムエルソン(en:Pamela Samuelson教授きょうじゅ。2005ねん学会がっかい講演こうえん

カリフォルニア大学だいがくバークレーこう法律ほうりつ情報じょうほうマネージメント教授きょうじゅのパメラ・サムエルソン(en:Pamela Samuelson)は、知的ちてき財産ざいさん専門せんもんとし、盗用とうよう自己じこ盗用とうようかんする法的ほうてき倫理りんりてき規制きせい権威けんいである。彼女かのじょは、1994ねんに、自己じこ盗用とうようさい発表はっぴょうするさい許容きょようされる要件ようけん以下いかとおりだとべている[4]

  1. 先行せんこう成果せいかは、あたらしい文書ぶんしょなかしん発見はっけん土台どだいになっていなければならない。
  2. 先行せんこう成果せいかは あたらしい文書ぶんしょあたらしい証拠しょうこ議論ぎろんのためにさい記述きじゅつされなければならない。 
  3. あらたな読者どくしゃ聴衆ちょうしゅうは、以前いぜん先行せんこう成果せいかつたえた読者どくしゃ聴衆ちょうしゅうとはおおきくことなり、おな内容ないよう研究けんきゅう結果けっかつたえても、重複じゅうふくせず、また、あらたな読者どくしゃ聴衆ちょうしゅうつたえるためには、おな内容ないよう文書ぶんしょべつ雑誌ざっし発表はっぴょうをしなければならない場合ばあい
  4. 最初さいしょ文章ぶんしょうがとてもけていて、次回じかい文書ぶんしょで、文章ぶんしょうおおきくえる意味いみがない場合ばあい

脚注きゃくちゅう文献ぶんけん

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  1. ^ Broome, M (November 2004). “Self-plagiarism: Oxymoron, fair use, or scientific misconduct?”. Nursing Outlook 52 (6): 273-4. doi:10.1016/j.outlook.2004.10.001. PMID 15614263. 
  2. ^ Andreescu, Liviu (November 2012). “Self-Plagiarism in Academic Publishing: The Anatomy of a Misnomer”. Science and Engineering Ethics. doi:10.1007/s11948-012-9416-1. 
  3. ^ Alan R. Price (2006). “Cases of Plagiarism Handled by the United States Office of Research Integrity 1992-2005”. Ann Arbor, MI: MPublishing, University of Michigan Library 1. https://hdl.handle.net/2027/spo.5240451.0001.001. 
  4. ^ a b Samuelson, Pamela (August 1994). “Self-plagiarism or fair use?”. Communications of the ACM 37 (8): 21-5. doi:10.1145/179606.179731. http://people.ischool.berkeley.edu/~pam/papers/SelfPlagiarism.pdf. 
  5. ^ Lorraine Eden. “JIBS Code of Ethics”. Journal of International Business Studies. 2014ねん4がつ19にち閲覧えつらん
  6. ^ ACM Policy and Procedures on Plagiarism” (June 2010). 2014ねん4がつ19にち閲覧えつらん
  7. ^ American Political Science Association (2008). "A Guide to Professional Ethics in Political Science". Second Edition. Section 21.1. ISBN 1-878147-05-6. 2014ねん4がつ19にち閲覧えつらん
  8. ^ "ASPA's Code of Ethics (revised March 2013)". 2014ねん4がつ19にち閲覧えつらん

全体ぜんたい参考さんこう文献ぶんけん

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関連かんれん項目こうもく

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外部がいぶリンク

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