西川にしかわ如見じょけん

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西川にしかわ 如見じょけん（にしかわ じょけん、慶安けいあん元年がんねん（1648年ねん） - 享とおる保ほ9年ねん8月がつ10日とおか（1724年ねん9月26日にち））は、江戸えど時代じだい中期ちゅうきの天文学てんもんがく者しゃ。父ちちは同おなじく天文学てんもんがく者しゃの西川にしかわ忠ただし益えき。母ははは石山いしやま宗はじめ林りんの娘むすめ。肥前ひぜん長崎ながさきの商家しょうかに生うまれ育そだった。名なは、忠英ただひで、通称つうしょうは次郎じろう右みぎ衛門えもん。別名べつめいは恕軒じょけん、恕じょ見み。居きょ号ごうは求もとめ林はやし斎ひとし、金きむ梅うめ庵あん、淵ふち梅軒ばいけん。

略歴りゃくれき[編集へんしゅう]

1672年ねん（寛文ひろふみ12年ねん）25歳さいの頃ころ、和漢わかんを儒学じゅがく者しゃの南部なんぶ草くさ寿ことぶき（1680年ねん没ぼつ）に、次ついで天文てんもん・暦こよみ算さん・測量そくりょう学がくを林はやし吉右衛門きちえもん門下もんかの小林こばやし義信よしのぶ（謙けん貞さだ、樋口ひぐち権右衛門ごんうえもん）に学まなんだ。1695年ねん（元禄げんろく8年ねん）48歳さいの時ときに日本にっぽんで初はじめての世界せかい地誌ちし『華はな夷えびす通商つうしょう考こう』[注釈ちゅうしゃく 1]を著あらわした[注釈ちゅうしゃく 2][注釈ちゅうしゃく 3]。

如見じょけんは自然しぜん摂理せつりと人間にんげん社会しゃかいを対象たいしょうとした己おのれの学問がくもんを「天てん学がく」と命名めいめいした。

元禄げんろく10年ねん（1697年ねん）に隠居いんきょして著述ちょじゅつに専念せんねんした。1708年ねん（宝永ほうえい5年ねん）61歳さいの時ときに『増補ぞうほ華はな夷えびす通商つうしょう考こう』を刊行かんこうした[注釈ちゅうしゃく 4]。これにより、南北なんぼくアメリカが日本にっぽんで初はじめて紹介しょうかいされた[1]。

天文てんもん・地理ちり学がく上じょうの著述ちょじゅつでは有名ゆうめい中国ちゅうごく天文学てんもんがく説せつを主おもとし、ヨーロッパ天文学てんもんがく説せつの特徴とくちょうを十分じゅうぶん承知しょうちしながら享とおる保ほ3年ねん（1718年ねん）に江戸えどへ赴おもむき、翌よく享とおる保ほ4年ねん（1719年ねん）に8代だい将軍しょうぐん徳川とくがわ吉宗よしむねから天文てんもんに関かんする下問かもんを受うけた。暫しばらく江戸えどに滞在たいざいし、長崎ながさきに帰かえった。

享とおる保ほ9年ねん（1724年ねん）に死去しきょした。享年きょうねん77。

墓はかは長崎ながさき長ちょう照寺しょうじ照山てるやま。

大正たいしょう5年ねん（1916年ねん）、正せい五ご位いを追贈ついぞうされた[3]。

子孫しそん[編集へんしゅう]

息子むすこの西川にしかわ正ただし休きゅう（忠次郎ちゅうじろう）は、ティコ・ブラーエなどの西洋せいよう天文学てんもんがくを初はじめて一般いっぱん書しょとして紹介しょうかいした游ゆう子こ六ろくの『天てん経けい或ある問とい』にさらに訓点くんてんをほどこして1730年ねんに出版しゅっぱんした[4][5]。延のべ享とおる4年ねん（1747年ねん）、または宝たから暦れき年間ねんかんの改暦かいれき（宝たから暦れきの改暦かいれき）の際さい（吉宗よしむねが没ぼっした1751年ねん）に天文てんもん方かたに任命にんめいされている。

子孫しそんに東京とうきょう築地つきじ活版かっぱん製造せいぞう所しょの株主かぶぬしで役員やくいんを務つとめた西川にしかわ忠ただし亮あきらがいる[6]。初代しょだい西川にしかわ忠ただし亮あきら（友三郎ともさぶろう、1855－1912）は長崎ながさき市し麹屋こうじや町まちの西川にしかわ三四郎さんしろうの四よん男なんに生うまれ、丸山まるやま作楽さくらのもとで和漢わかん学がくを修おさめ、1871年ねんに上京じょうきょうし外務省がいむしょう語学ごがく学校がっこうでロシア語ごを学まなび、横浜よこはまの洋館ようかんに8年間ねんかん奉公ほうこうして貿易ぼうえき業ぎょうを身みに着つけ、1882年ねん東京とうきょうで雑貨ざっか商しょう「西川にしかわ求もとむ林堂はやしどう」をおこして印刷いんさつ用ようインキ・機器ききの輸入ゆにゅう業ぎょうを営いとなみ、1889年ねん印刷いんさつインキの国産こくさん化かに成功せいこうし、これを商あきなった[7][8]。東京とうきょう築地つきじ活版かっぱん製造せいぞう所しょ会長かいちょう、東京とうきょう印刷いんさつ監査かんさ役やくなども兼任けんにんした[9]。

その長男ちょうなんの2代目だいめ西川にしかわ忠ただし亮あきら（亮一りょういち、 1880年生ねんせい）は東京とうきょう外国がいこく語ご学校がっこうスペイン語ご科か、フランス語ふらんすご科かで経済けいざい学がく、国際こくさい法ほうを学まなび、1906年ねんに卒業そつぎょうして家業かぎょうに就つき、京橋きょうばし築地つきじ郵便ゆうびん局長きょくちょう、東京とうきょう築地つきじ活版かっぱん製造せいぞう所しょ役員やくいんを兼任けんにんした[9]。岳父がくふは松永まつなが安彦やすひこ、弟おとうと・西川にしかわ忠雄ただおの妻つまは男爵だんしゃく大鳥おおとり圭介けいすけの孫まご、妹いもうと・ちかの舅しゅうとは子爵ししゃく伊東いとう巳代治みよじ。

主おもな著作ちょさく[編集へんしゅう]

  • 華はな夷えびす通商つうしょう考こう
  • 両りょう儀ぎ集しゅう説せつ - 正徳しょうとく2年ねん（1712年ねん）刊行かんこう。全ぜん8冊さつ。天文学てんもんがく入門にゅうもん書しょ。8巻かんに西洋せいよう天文学てんもんがくと中国ちゅうごく天文学てんもんがくの比較ひかくがある。
  • 両りょう儀ぎ集しゅう説せつ外がい記き 天文てんもん義ぎ論ろん - 正徳しょうとく2年ねん（1712年ねん）著ちょ。全ぜん二に冊さつ。西洋せいよう天文学てんもんがくと中国ちゅうごく天文学てんもんがくの比較ひかく評論ひょうろんに、自じ論ろんを記しるしている。
  • 四よん十じゅう二に国こく人物じんぶつ図ず - 全ぜん2巻かん。享とおる保ほ5年ねん(1720年ねん)刊かん。輸入ゆにゅうされた欧州おうしゅう製せいの絵えを長崎ながさきの絵師えしが描えがき写うつしたものに、解説かいせつを書かいた。幕末ばくまつに至いたるまで、外国がいこく理解りかいの基本きほんとなり、人物じんぶつ集しゅうの手本てほんとされた。天保てんぽう14年ねん(1843年ねん)に『萬国ばんこく人物じんぶつ図ず』と改題かいだいして再刊さいかんされた。
  • 教きょう童わらわ暦れき談だん - 正徳しょうとく4年ねん（1714年ねん）出版しゅっぱん。のち増補ぞうほして1716年ねんに『和漢わかん運気うんき暦れき説せつ』『和漢わかん運気うんき指南しなん後編こうへん』出版しゅっぱん。運気うんき論ろんが含ふくまれる天文てんもん暦学れきがく書しょ。
  • 町人ちょうにん嚢 - 享とおる保ほ4年ねん（1719年ねん）刊かん。全ぜん5巻かんに補遺ほいとして『町人ちょうにん嚢底のうてい払はらい(そこばらい)』2巻かん。庶民しょみんとしての町民ちょうみんの心得こころえや教訓きょうくん、迷信めいしんの否定ひていなどの教育きょういく啓蒙けいもう本ほん。
  • 百姓ひゃくしょう嚢 - 享とおる保ほ6年ねん（1721年ねん）著ちょ。全ぜん5巻かん。上記じょうきの『町人ちょうにん嚢』と同様どうように、「百姓ひゃくしょう」という言葉ことばの意味いみの解説かいせつから始はじまる、農民のうみん（百姓ひゃくしょう）への生活せいかつ心得こころえなどの啓蒙けいもう本ほん。
  • 日本にっぽん水すい土ど考こう - 元禄げんろく13年ねん（1700年ねん）刊行かんこう。日本にっぽん国内こくないおよび世界せかいにおける日本にっぽんの位置いち、などの地理ちり本ほん。
  • 水みず土ど解かい弁べん
  • 長崎ながさき夜話やわ草そう - 長崎ながさきの地誌ちし。如見じょけんの談話だんわを子この正せい休きゅう（忠次郎ちゅうじろう）が筆ふで録ろくしたもの。

全集ぜんしゅうとして『西川にしかわ如見じょけん遺書いしょ』全ぜん18巻かん（西川にしかわ忠ただし亮あきら編へん・刊かん、1898年ねん - 1907年ねん）がある。岩波いわなみ文庫ぶんこに『町人ちょうにん嚢・百姓ひゃくしょう嚢・長崎ながさき夜話やわ草そう』（飯島いいじま忠夫ただお・西川にしかわ忠幸ただゆき校訂こうてい、1942年ねん）、『日本にっぽん水すい土ど考こう・水みず土ど解かい弁べん・増補ぞうほ華はな夷えびす通商つうしょう考こう』（同どう校訂こうてい、1944年ねん）がある[10]。

脚注きゃくちゅう[編集へんしゅう]

[脚注きゃくちゅうの使つかい方かた]

注釈ちゅうしゃく[編集へんしゅう]

  1. ^ 上巻じょうかんでは「中華ちゅうか十じゅう五ご省しょう」について、下巻げかんでは「外国がいこく」（朝鮮ちょうせん・琉球りゅうきゅう・台湾たいわん・ベトナム中ちゅう北部ほくぶ）と「外そと夷えびす」（唐人とうじんと交易こうえき関係かんけいのある国くに（東南とうなんアジアの諸国しょこく））について、日本にっぽんからの道程どうてい、気候きこう、物産ぶっさん、風俗ふうぞくなどを記しるしている[1]。
  2. ^ 本書ほんしょの原本げんぽんとなったのは、長崎ながさき清きよし館かんの大だい通事つうじの林道りんどう栄さかえ『異国いこく風土記ふどき』（1688年ねん成立せいりつ）であった[1]。
  3. ^ 元禄げんろく8年ねん（1695年ねん）に刊行かんこうされた初版しょはん『華はな夷えびす通商つうしょう考こう』について、西川にしかわ如見じょけんは、草稿そうこうが自身じしんに無断むだんで出版しゅっぱんされたものだと主張しゅちょうし、宝永ほうえい5年ねん（1708年ねん）に自みずから刊行かんこうした『増補ぞうほ華はな夷えびす通商つうしょう考こう』を定本ていほんとしている[2]。
  4. ^ 増補ぞうほ部分ぶぶんで、横文字よこもじまたは、無む文字もじの国くに（ヨーロッパ・アフリカ・南北なんぼくアメリカなど）について述のべ、世界せかい地理ちり書しょとして体系たいけいを整ととのえた。増補ぞうほ内容ないようは、在ざい華はなイタリア人じん宣教師せんきょうしジュリオ・アレニの漢かん訳やく世界せかい地理ちり書しょ『職方しょくかた外がい記き（中国語ちゅうごくご版ばん、英語えいご版ばん）』（明代あきよ1623年刊ねんかん）に拠よっている。

出典しゅってん[編集へんしゅう]

  1. ^ a b c 岡田おかだ俊裕としひろ 2011年ねん 47ページ。
  2. ^ 有坂ありさか隆道たかみち. “華はな夷えびす通商つうしょう考こう”. 世界せかい大だい百科ひゃっか事典じてん 第だい2版はん. コトバンク. 2020年ねん11月8日にち閲覧えつらん。
  3. ^ 田尻たじり佐たすく 編へん『贈位ぞうい諸賢しょけん伝でん 増補ぞうほ版ばん 上じょう』（近藤こんどう出版しゅっぱん社しゃ、1975年ねん）特旨とくし贈位ぞうい年表ねんぴょう p.41
  4. ^ “８　天てん経けい或ある問とい”. 東京大学とうきょうだいがく附属ふぞく図書館としょかん. 2020年ねん12月13日にち閲覧えつらん。
  5. ^ “1-1 江戸えど時代じだいの天文学てんもんがく書しょ”. 神戸大学こうべだいがく附属ふぞく図書館としょかん. 2020年ねん12月13日にち閲覧えつらん。
  6. ^ 「崎さき友とも会かい」と「長崎ながさき人じん会かい」のこと長崎ながさき県けん文化ぶんか振興しんこう課か
  7. ^ 西川にしかわ忠ただし亮あきら『人事じんじ興信録こうしんろく』初版しょはん [明治めいじ36(1903)年ねん4月がつ]
  8. ^ 西川にしかわ忠ただし亮あきら（読よみ）にしかわ ちゅうりょうコトバンク
  9. ^ a b 西川にしかわ忠ただし亮あきら『人事じんじ興信録こうしんろく』第だい4版はん [大正たいしょう4(1915)年ねん1月がつ]
  10. ^ “西川にしかわ　如見じょけん”. 岩波書店いわなみしょてん. 2022年ねん9月がつ10日とおか閲覧えつらん。

参考さんこう文献ぶんけん[編集へんしゅう]

関連かんれん作品さくひん[編集へんしゅう]

テレビドラマ[編集へんしゅう]

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