西条さいじょう層そう

西条さいじょう層そう
読よみ方かた	さいじょうそう
英えい称しょう	Saijo Formation
地質ちしつ時代じだい	第だい四よん紀き中期ちゅうき更新こうしん世よ
岩いわ相しょう	南部なんぶ西条さいじょう盆地ぼんちと黒瀬くろせ盆地ぼんちでは砂岩さがんとシルト岩がんが主おも、北部ほくぶ西条さいじょう盆地ぼんちではほぼ砂礫されき
傾斜けいしゃ	ほぼ水平すいへい
産出さんしゅつ化石かせき	草本そうほん植物しょくぶつと針葉樹しんようじゅを主おもとする植物しょくぶつ

西条さいじょう層そう（さいじょうそう、英えい:Saijo Formation）は、日本にっぽんの広島ひろしま県けん東広島ひがしひろしま市しに分布ぶんぷする地層ちそう。丘陵きゅうりょう地ちの比較的ひかくてき低地ていちに堆積たいせきしており、大おおきく分わけて黒瀬くろせ盆地ぼんち・南部なんぶ西条さいじょう盆地ぼんち・北部ほくぶ西条さいじょう盆地ぼんちの3地域ちいきに分布ぶんぷし、西条さいじょう盆地ぼんち東方とうほうの高屋たかや町まちにも分布ぶんぷする。約やく70万まん年ねん前まえから約やく50万まん年ねん前まえに堆積たいせきした第だい四よん系けい中部ちゅうぶ更新こうしん統すべ（チバニアン階かい）と見みられており、層そう厚あつは約やく30メートルから約やく50メートル。固かた結むすぶ度どはやや低ひくい。河川かせん堆積たいせき物ぶつを主しゅとしており、複ふく数すう枚まいの火山灰かざんばい層そうが挟はさみ在ましまし、またスゲ属ぞくやスミレ属ぞくやトウヒ属ぞくといった植物しょくぶつの化石かせきが多産たさんする。

別称べっしょうとして「西条さいじょう湖こ成層せいそう」「西条さいじょう砂礫されき層そう」があるが、本ほん項こうでは「西条さいじょう層そう」表記ひょうきを採用さいようする。

岩いわ相しょう

水野みずの・平川ひらかわ (1993)によれば、西条さいじょう層そうは岩いわ相しょうの垂直すいちょく方向ほうこうと水平すいへい方向ほうこうの岩いわ相しょうの変化へんかが顕著けんちょであるため、層そう序じょ区分くぶんを細分さいぶんすることが不可能ふかのうである。大おおまかな構造こうぞうも盆地ぼんち間あいだで差異さいがある。黒瀬くろせ盆地ぼんちと南部なんぶ西条さいじょう盆地ぼんちでは主おもに砂すなとシルトから構成こうせいされ、礫つぶてと亜炭あたんを伴ともない、広範囲こうはんいに7枚まい以上いじょうの火山灰かざんばい層そうを挟はさみ在ましまさせている。北部ほくぶ西条さいじょう盆地ぼんちでは砂礫されきが大だい部分ぶぶんを占しめ、一部いちぶに火山灰かざんばい層そうを含ふくむ。これら3地域ちいきの堆積たいせき期間きかんは完全かんぜんには一致いっちしておらず、南部なんぶ西条さいじょう盆地ぼんちは中部ちゅうぶから下部かぶ、黒瀬くろせ盆地ぼんちは同どう層そう中部ちゅうぶから上部じょうぶが保存ほぞんされている。北部ほくぶ西条さいじょう盆地ぼんちの堆積たいせき期間きかんは不明ふめいであるが、南部なんぶ西条さいじょう盆地ぼんちに近ちかい年代ねんだいであったと予想よそうされている。

周期しゅうき性せい堆積たいせき相しょう

黒瀬くろせ盆地ぼんちと南部なんぶ西条さいじょう盆地ぼんちでは、上方かみがたほど細ほそ粒つぶ化かする傾向けいこうを示しめす、上下じょうげを明あきらかな浸食しんしょく面めんに区切くぎられた周期しゅうき性せい堆積たいせき相しょうが特徴とくちょう的てきである。かつて西条さいじょう層そうは主おもに河川かせん堆積たいせき物ぶつと湖沼こしょう堆積たいせき物ぶつのいずれかからなるとされていたが、水野みずの・平川ひらかわ (1993)は周期しゅうき性せい堆積たいせき相しょうの記載きさいを通とおし、周期しゅうき性せいを示しめす典型てんけい的てきな河川かせん堆積たいせき相しょうとした。水野みずの・平川ひらかわ (1993)は、かつて西条さいじょう層そうが湖沼こしょう堆積たいせき相しょうとされた原因げんいんをシルト層そうや粘土ねんど層そうの卓越たくえつする堆積たいせきユニットの発達はったつに求もとめている。

水中すいちゅう土石流どせきりゅう堆積たいせき物ぶつのユニットをはじめとする例外れいがいを除のぞけば、各かく堆積たいせきユニットの上部じょうぶ、特とくに最さい上部じょうぶに亜炭あたん層そうや火山灰かざんばい層そうが存在そんざいする場合ばあいがある。

厚あつ層そう砂すな-砂礫されき相しょう

北部ほくぶ西条さいじょう盆地ぼんちでは層そう厚あつ5メートル以上いじょうの厚あつ層そう砂すな-砂礫されき相しょうが特徴とくちょう的てきである。基質きしつ支持しじの砂礫されきあるいは礫つぶてと、中ちゅう粒つぶから粗あら粒つぶの砂すなから構成こうせいされており、一部いちぶで細ほそ粒つぶ砂すなと互層を形成けいせいするものの泥どろ質物しちもつがほぼ含ふくまれていない。上方かみがた細ほそ粒つぶ化かの傾向けいこうが認みとめられるものの、前述ぜんじゅつした周期しゅうき性せい堆積たいせき相しょうほど顕著けんちょでない。砂すな質しつ部ぶや砂礫されき/礫つぶて部ぶには不明瞭ふめいりょうな葉は理りが認みとめられるが、連続れんぞくした明瞭めいりょうな層そう理りは認みとめられていない。

火山灰かざんばい層そう

西条さいじょう層そうは水野みずの・南みなみ木き (1986)で5枚まい以上いじょう、水野みずの・平川ひらかわ (1993)で7枚まい以上いじょうの火山灰かざんばい層そうが挟はさみ在ざいすることが報告ほうこくされている。このうち比較的ひかくてき連続れんぞくする火山灰かざんばい層そうが今田いまだ火山灰かざんばい層そうと岡郷おかごう火山灰かざんばい層そうであり、黒瀬くろせ盆地ぼんちと南部なんぶ西条さいじょう盆地ぼんちの対比たいひの鍵かぎ層そうにも用もちいられている。

今田いまだ火山灰かざんばい層そう

南部なんぶ西条さいじょう盆地ぼんちにおいて西条さいじょう層そうの中部ちゅうぶからやや上部じょうぶに位置いちする。層そう厚あつは10センチメートルから60センチメートル、色調しきちょうは灰白色かいはくしょくから黄き褐色かっしょくを示しめす。最さい下部かぶと中部ちゅうぶは結晶けっしょう粒つぶが比較的ひかくてき多おおい中なか粒つぶ火山灰かざんばい層そうであり、角すみ閃石を中心ちゅうしんとする重じゅう鉱物こうぶつが点在てんざいする。下部かぶと上部じょうぶは扁平へんぺい型がたから中間なかま型がたを主おもとする火山かざんガラスが主体しゅたいの細ほそ粒つぶ火山灰かざんばい層そうである。

岡郷おかごう火山灰かざんばい層そう

今田いまだ火山灰かざんばい層そうの6m前後ぜんご上位じょういに位置いちする。層そう厚あつは30センチメートルから90センチメートル、色調しきちょうは灰白色かいはくしょくを示しめす。層そう厚あつ数すうセンチメートルの中なか粒つぶ層そうと細ほそ粒つぶ層そうの互層で形成けいせいされており、中間なかま型がたから粒状りゅうじょうガラスを中心ちゅうしんとする（ただし褐色かっしょく塊状かいじょうガラスを多分たぶんに含ふくむ）火山かざんガラスが主体しゅたいである。

大阪おおさか層そう群ぐんの栂つが火山灰かざんばい層そうと対比たいひされている。

水野みずの・南みなみ木き (1986)によると、東元ひがしもとほか (1985)はフィッショントラック法ほうを用もちいて岡郷おかごう火山灰かざんばい層そうの年代ねんだいを0.57±0.09Ma、その下位かいの楢原ならはら火山灰かざんばい層そうの年代ねんだいを0.61±0.11Maとした。大阪おおさか層そう群ぐんの火山灰かざんばい層そうとの対比たいひや、黒瀬くろせ盆地ぼんちの西条さいじょう層そうからメタセコイア群集ぐんしゅうの要素ようそが得えられなかったことなども踏ふまえ、西条さいじょう層そう全体ぜんたいの堆積たいせき年代ねんだいは約やく70万まん年ねん前まえから約やく50万まん年ねん前まえと推定すいていされた。

化石かせき

西条さいじょう層そうの亜炭あたん層そう・炭質たんしつ層そうからは植物しょくぶつ化石かせきが多産たさんする。水野みずの・南みなみ木き (1986)は南部なんぶ西条さいじょう盆地ぼんちの41層そう準じゅんから大型おおがた植物しょくぶつ化石かせきや堆積たいせき物ぶつを回収かいしゅうしている。寒冷かんれい気候きこうの指標しひょう種しゅであるミツガシワをはじめとする草本そうほん植物しょくぶつが保存ほぞんされており、草本そうほん類るいは種たねレベルでも個体こたいレベルでも豊富ほうふである。木本もくほん植物しょくぶつでは針葉樹しんようじゅが多おおく、トウヒ属ぞく、モミ属ぞく、チョウセンゴヨウ、アカマツ、サワラが多おおく見みられる。広葉樹こうようじゅではハンノキが多おおく、今田いまだ火山灰かざんばい層そうの下位かい層そうにタイワンブナ近似きんじ種しゅが集中しゅうちゅうするが、その他たの属ぞく種しゅは少すくない。なお水野みずの・南みなみ木き (1986)で報告ほうこくされた植物しょくぶつのうち、コウヨウザン属ぞく、タイワンブナ近似きんじ種しゅ、シキシママンサク近似きんじ種しゅは絶滅ぜつめつしているか現代げんだいの日本にっぽん列島れっとうから姿すがたを消けしている。

水野みずの・南みなみ木き (1986)によると、福原ふくはら (1977)は西条さいじょう層そうの6地点ちてんから採取さいしゅした花粉かふんを分析ぶんせきし、いずれの地点ちてんにおいても3～4回かいの寒冷かんれい期きと3回かいの温暖おんだん期きを推定すいていできるとした。また福原ふくはら (1977)は寒冷かんれい期きの層そうからミツガシワやチョウセンゴヨウの花粉かふん・大型おおがた化石かせきを回収かいしゅうしているという。同おなじく水野みずの・南みなみ木き (1986)によると、粉川こかわ (1962)は岡郷おかごう火山灰かざんばい層そうの上位じょういと思おもわれる層そう準じゅんからコウヤマキ属ぞくの葉は、今田いまだ火山灰かざんばい層そう付近ふきんと思おもわれる層そう準じゅんからキクロカリア属ぞくの1種しゅ、セツリミアサガラ属ぞくの1種しゅ、クルミ属ぞくの1種しゅを報告ほうこくしている。このうち前者ぜんしゃ2属ぞくは日本にっぽん列島れっとうにおける消滅しょうめつ属ぞくである。

文化ぶんか的てき利用りよう

西条さいじょう盆地ぼんちの中部ちゅうぶから南部なんぶにかけて粘土ねんど層そうの発達はったつが見みられたことから、西条さいじょう層そうの粘土ねんど（「西条さいじょう粘土ねんど」）は古ふるくから原料げんりょうとして利用りようされてきた。例れいとして、江戸えど時代じだいに焼やかれ始はじめた陶器とうきである宮島みやじま焼しょうに使用しようされている。西条さいじょう盆地ぼんち西部せいぶの昼ひる原はら地区ちくでは1960年代ねんだいの終おわりまで耐火たいか物ぶつや土管どかん用ように地元じもと農家のうかが粘土ねんどを採掘さいくつしていたほか、小滝こたき原げん地区ちくでは2003年ねん時点じてんで西条さいじょう陶すえ業ぎょう社しゃが粘土ねんどの露天ろてん採掘さいくつを実施じっししている。