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ころがり抵抗ていこう

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』

ころがり抵抗ていこう(ころがりていこう、えい: Rolling resistance)は、ボールタイヤなどのたま円盤えんばん円筒えんとうじょうものころがるときに、進行しんこう方向ほうこうぎゃくきにしょうじる抵抗ていこうりょくころがり抗力こうりょく(Rolling drag)ともいう。

概要がいよう[編集へんしゅう]

ある物体ぶったい地面じめん壁面へきめんなどにささえられてころがるさいころがる物体ぶったいとそれをささえている物体ぶったい変形へんけい復元ふくげん連続れんぞくてきかえす。このさい、それぞれの物体ぶったい変形へんけいともな減衰げんすいたがいの変形へんけいりょうちがいは物体ぶったい同士どうし接触せっしょくめん摩擦まさつしょうじさせる。この摩擦まさつ運動うんどうエネルギー散逸さんいつさせる。したがって、ころがり抵抗ていこうころがる物体ぶったいとそれをささえている物体ぶったい構造こうぞう材質ざいしつ表面ひょうめんあら物体ぶったいあいだ垂直すいちょく抗力こうりょくおおきく依存いぞんする。

たとえば、てつだま鉄板てっぱんうえころがす場合ばあいばんうえころがす場合ばあいころがり抵抗ていこうばんほう鉄板てっぱんよりおおきくなる。べつれいとして、台車だいしゃうえことなるおもおもりをそれぞれせてころがり抵抗ていこう比較ひかくする場合ばあいころがり抵抗ていこうおおきいのは台車だいしゃ車輪しゃりん変形へんけいおおきくなるおもいおもりのほうである。

ころがり抵抗ていこう係数けいすう(RRC)[編集へんしゅう]

物体ぶったい材質ざいしつ形状けいじょうなどの条件じょうけんおなじならば、ころがり抵抗ていこうおおきさは垂直すいちょく抗力こうりょくおおきさに比例ひれいする。ころがり抵抗ていこうことなる条件じょうけん比較ひかくする場合ばあいには比例ひれい係数けいすう比較ひかくし、このときの比例ひれい係数けいすうころがり抵抗ていこう係数けいすう(Rolling Resistance Coefficient, RRC)とぶ。

荷重かじゅうWころがり抵抗ていこう係数けいすうとすれば、ころがり抵抗ていこう F

である。たとえば、1t(1000kg)の自動車じどうしゃ砂地すなじはしつづけるためにはやく3000ニュートン (1000 kg × 9.8 m/s2 × 0.3 = 2940 N、300kgじゅう)のちから必要ひつようとする。

ころがり摩擦まさつ係数けいすうは、静止せいし摩擦まさつ係数けいすうどう摩擦まさつ係数けいすう(すべり摩擦まさつ係数けいすう)よりも、はるかにちいさい。たとえば、鉄板てっぱんじょうにおける鉄鋼てっこう静止せいし摩擦まさつ係数けいすうが0.3 - 0.5、すべり摩擦まさつ係数けいすうが0.2程度ていどであるのにたいし、はがねだまころがり摩擦まさつ係数けいすうは0.00002 - 0.0001程度ていどにすぎない。おも車輪しゃりん路面ろめんにおけるころがり抵抗ていこう係数けいすう以下いかしめす。

ころがり抵抗ていこう係数けいすう
車輪しゃりん路面ろめん種類しゅるい ころがり抵抗ていこう係数けいすう(10-3
鉄道てつどう車輪しゃりん/レール 0.2 - 1
自転車じてんしゃようタイヤ(内圧ないあつやく8気圧きあつ、50km/h) 2.2 - 5
ソーラーカー・エコマラソンよう特製とくせいタイヤ 2.5
BMXタイヤ 5.5
自動車じどうしゃようタイヤ/SAE J1269で計測けいそく 6.2 - 15
自動車じどうしゃようタイヤ/コンクリート舗装ほそう 10 - 15
自動車じどうしゃようタイヤ/砂地すなじ 300

タイヤのころがり抵抗ていこう[編集へんしゅう]

2010ねん1がつから日本にっぽん自動車じどうしゃタイヤ協会きょうかい(JATMA)による等級とうきゅう制度せいど導入どうにゅうされており、上述じょうじゅつのRRCのもとづいて「AAA」から「C」までの等級とうきゅう表示ひょうじおこなっている。

自動車じどうしゃ全体ぜんたいのエネルギー・ロスの構造こうぞう走行そうこう条件じょうけんおおきく変化へんかする。たとえば、トラック・バスようタイヤの場合ばあい、モード走行そうこうではタイヤのころがり抵抗ていこう燃費ねんぴめる割合わりあいは2わり程度ていどであるが、80km/hじょう走行そうこうでは、これが4わり程度ていどたっする。このため、高速こうそく走行そうこう主体しゅたい場合ばあいには、空気くうき抵抗ていこう低減ていげんとともに、ころがり抵抗ていこう低減ていげん燃費ねんぴ向上こうじょう有意ゆうい寄与きよする [1]

タイヤのころがり抵抗ていこう影響えいきょうあたえる要因よういんにはつぎのようなものがある [2]

変形へんけいによるエネルギー損失そんしつ[編集へんしゅう]

タイヤのころがり抵抗ていこうは、タイヤを構成こうせいしているゴムがかえ変形へんけいするさいきるエネルギー損失そんしつ(ヒステリシス・ロス)が、ころがり抵抗ていこうの9わり程度ていどめる [3]。 ゴムは、弾性だんせい粘性ねんせい両方りょうほう性質せいしつねば弾性だんせいたいであり、とく粘性ねんせい変形へんけい運動うんどうエネルギーをねつエネルギーえて散逸さんいつさせる性質せいしつつよい。タイヤは、部位ぶいによって、様々さまざまなゴムをはじめ、カーボンブラックひとし充填じゅうてんざい有機ゆうき繊維せんいとう補強ほきょう材料ざいりょうわせて構成こうせいされており、走行そうこうちゅうのひずみも部位ぶいによってことなる。このため、かく部位ぶいのひずみエネルギーとヒステリシス・ロスを解析かいせきして、安全あんぜんせい耐久たいきゅうせいてい燃費ねんぴ追求ついきゅうするみがおこなわれてきた。たとえば、1990年代ねんだい以降いこうには、ヒステリシス・ロスがぜんころがり抵抗ていこう半分はんぶん以上いじょうめているトレッドについて、カーボンブラックの一部いちぶこう比率ひりつシリカ代替だいたいすることによりロスを低減ていげんし、機能きのう犠牲ぎせいにすることなくころがり抵抗ていこう低減ていげんさせるようになった。

タイヤの変形へんけいおおきさは空気圧くうきあつにもおおきく依存いぞんし、タイヤの空気圧くうきあつひくいところがり抵抗ていこうおおきくなり、燃費ねんぴ悪化あっかさせることになる。極端きょくたん空気圧くうきあつひく場合ばあいは、変形へんけいによって発生はっせいしたねつエネルギーがサイドウォール過度かど温度おんど上昇じょうしょうをもたらし、タイヤの寿命じゅみょうをもみじかくする。

タイヤで発生はっせいするねつころがり抵抗ていこう低減ていげんさせる。これは、-10よりうえでは、ゴムのエネルギー損失そんしつ係数けいすう温度おんど上昇じょうしょうまけ相関そうかんしめすため、温度おんど上昇じょうしょうするほどヒステリシス・ロスが低減ていげんするからである。タイヤの種類しゅるいによるが、温度おんどが10℃上昇じょうしょうするところがり抵抗ていこうを5 - 10%低減ていげんさせるといわれている。

ぜんころがり抵抗ていこう半分はんぶん以上いじょうめているトレッドのあつさは、ころがり抵抗ていこうおおきな関係かんけいがあり、トレッドがあついほどころがり抵抗ていこうたかくなる[1]。したがって、耐久たいきゅうせい安全あんぜんせいべつにすれば、自動車じどうしゃはタイヤがこするのにおうじて燃費ねんぴ向上こうじょうし、トレッドがすりれた時点じてん最高さいこう燃費ねんぴることになる。また、経時きょうじ変化へんかによってゴムの損失そんしつ係数けいすうちいさくなるが、このことはころがり抵抗ていこう軽減けいげんによる燃費ねんぴ向上こうじょう寄与きよする一方いっぽう、トレッドめんのしなやかさの低下ていかによりへん摩耗まもう促進そくしんされる。

弾性だんせいたい物質ぶっしつころがり抵抗ていこう速度そくど影響えいきょうをあまりけないが、ねば弾性だんせいたいであるゴムのエネルギー損失そんしつ係数けいすうすう100Hzへるつ最大さいだいになるような周波数しゅうはすう特性とくせいつため、そのころがり抵抗ていこう速度そくどともぞうし、臨界りんかい速度そくどえると急速きゅうそく増加ぞうかする。これは、スタンディング・ウェーブ現象げんしょうによるひずみエネルギー急増きゅうぞうによるものであり、この臨界りんかい速度そくどしゅとしてタイヤ構造こうぞう(タイヤの速度そくど記号きごう反映はんえい)や空気圧くうきあつ高低こうていによってまる。

摩擦まさつによるエネルギー損失そんしつ[編集へんしゅう]

全体ぜんたいくらべるとわずかではあるが、路面ろめん表面ひょうめん状態じょうたいにも影響えいきょうける。たとえばおなじアスファルト舗装ほそうであっても、表面ひょうめんなめらかで摩擦まさつちいさい状態じょうたい敷設ふせつしたばかりで摩擦まさつおおきい場合ばあいとではころがり抵抗ていこう差異さいしょうじる。したがって、タイヤのころがり抵抗ていこう測定機そくていき国際こくさい規格きかく(ISO28580)によって規定きていされ、タイヤにせっするドラムについてもさだめている。

空気くうき抵抗ていこう[編集へんしゅう]

物体ぶったい空気くうきちゅう回転かいてんするとき、その表面ひょうめんには境界きょうかいそう効果こうかにより物体ぶったい表面ひょうめん速度そくどじょう比例ひれいする空気くうき抵抗ていこうける。一般いっぱんに、空気くうき抵抗ていこうころがり抵抗ていこうとはことなる現象げんしょうとしてあつかわれるが、じつ世界せかい真空しんくうちゅう空気くうきりタイヤを回転かいてんさせることは不可能ふかのうであることから、空気くうき抵抗ていこうころがり抵抗ていこう寄生きせい損失そんしつとしてつね存在そんざいする。ころがり抵抗ていこう測定そくていさだめる国際こくさい規格きかくでは空気くうき抵抗ていこう除外じょがいした測定そくてい規定きていしている。自転車じてんしゃ競技きょうぎ車輪しゃりん回転かいてんしょうじる空気くうき抵抗ていこうとくスポーク発生はっせいするらんりゅうによる抵抗ていこう影響えいきょうつよけるので、回転かいてん質量しつりょうがあまり操舵そうだ影響えいきょうあたえないのちにはカバーをつけたりディスクホイール使用しようして抵抗ていこうらす工夫くふうがなされている。

参考さんこう文献ぶんけん[編集へんしゅう]

  1. ^ a b 株式会社かぶしきがいしゃブリヂストン へん自動車じどうしゃようタイヤの基礎きそ実際じっさい山海さんかいどう、2006ねんISBN 4-381-08856-5 
  2. ^ 横浜よこはまゴム株式会社かぶしきがいしゃ へん自動車じどうしゃようタイヤの研究けんきゅう山海さんかいどう、1995ねん、pp.151-176ぺーじISBN 4-381-10072-7 
  3. ^ JATMA (2009ねん1がつ26にち), “タイヤが自動車じどうしゃ燃費ねんぴあたえる影響えいきょうについて”, てい燃費ねんぴタイヤとう普及ふきゅう促進そくしん協議きょうぎかい だいいちかい 配付はいふ資料しりょう, http://www.meti.go.jp/committee/materials2/downloadfiles/g90126b04j.pdf 

関連かんれん項目こうもく[編集へんしゅう]