逃亡とうぼう犯罪はんざいじん引渡ほう

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逃亡とうぼう犯罪はんざいじん引渡ほう
日本国政府国章(準)
日本にっぽん法令ほうれい
法令ほうれい番号ばんごう 昭和しょうわ28ねん法律ほうりつだい68ごう
種類しゅるい 刑事けいじ訴訟そしょうほう
効力こうりょく 現行げんこうほう
成立せいりつ 1953ねん7がつ17にち
公布こうふ 1953ねん7がつ21にち
施行しこう 1953ねん7がつ22にち
おも内容ないよう 外国がいこくから請求せいきゅうのあった犯罪はんざいじん引渡ひきわた
関連かんれん法令ほうれい 刑事けいじ訴訟そしょうほう国際こくさい捜査そうさ共助きょうじょほう
条文じょうぶんリンク 逃亡とうぼう犯罪はんざいじん引渡ほう - e-Gov法令ほうれい検索けんさく
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逃亡とうぼう犯罪はんざいじん引渡ほう(とうぼうはんざいにんひきわたしほう、英語えいご: Act of Extradition[1])は、日本にっぽん法律ほうりつひとつで、犯罪はんざいじん引渡ひきわた条約じょうやく整備せいび国内こくないほうである。外国がいこく請求せいきゅうこく)から犯罪はんざいしゃ逃亡とうぼう犯罪はんざいひと)の引渡ひきわた請求せいきゅうけたさい国内こくないにおける手続てつづき処理しょりなどにつき規定きていする。

沿革えんかく[編集へんしゅう]

1953ねん昭和しょうわ28ねん)7がつ22にちから施行しこうされ、これ以前いぜん存在そんざいした逃亡とうぼう犯罪はんざいじん引渡条例じょうれい明治めいじ20ねんみことのりれいだい42ごう)は廃止はいしとなった。

内容ないよう[編集へんしゅう]

本則ほんそくだい1じょうからだい35じょうる。

定義ていぎだいいちじょう[編集へんしゅう]

  • だいいちこう「この法律ほうりつにおいて「締約ていやくこく」とは、日本にっぽんこくとのあいだ犯罪はんざいじんの引渡にかんする条約じょうやく締結ていけつした外国がいこくをいう。」(締約ていやくこく定義ていぎ犯罪はんざいじんの引渡にかんする条約じょうやくくにむすばれた場合ばあい、この法案ほうあんのっとって引渡ひきわたしがおこなわれることをしめす。現在げんざい条約じょうやくむすんでいないくにから逃亡とうぼう犯罪はんざいじん引渡ひきわたしの要求ようきゅうがあった場合ばあいは、だいさんじょうごうにより「請求せいきゅうこくから日本にっぽんこくおこなう同種どうしゅ請求せいきゅうおうずべきむね保証ほしょう」が条件じょうけんとなる。
  • だいこう「この法律ほうりつにおいて「引渡犯罪はんざい」とは、引渡条約じょうやくにおいて締約ていやくこく日本にっぽんこくたい犯罪はんざいじんの引渡を請求せいきゅうすることができるものとしてかかげる犯罪はんざいをいう。」は内容ないよう条約じょうやくゆずるものとすることをあらわす。
  • だいさんこう「この法律ほうりつにおいて「逃亡とうぼう犯罪はんざいじん」とは、引渡犯罪はんざいおかし、その犯罪はんざいについて締約ていやくこく刑事けいじかんする手続てつづきおこなわれたものであって、引渡条約じょうやくにより締約ていやくこく日本にっぽんこくたいし引渡を請求せいきゅうすることができるものをいう。」は、逃亡とうぼう犯罪はんざいじん定義ていぎ

なお、「刑事けいじかんする手続てつづきおこなわれたもの」は、従来じゅうらい条文じょうぶんが「有罪ゆうざい宣告せんこくわかクハ告訴こくそ告発こくはつヲ受ケタルしゃ」だったが、刑事けいじかんする諸般しょはん手続てつづきおこなわれたらわたすことができるとして、範囲はんいひろげた。

引渡ひきわた拒絶きょぜつだいじょう) [編集へんしゅう]

  • だいいちごうは、国家こっかあいだ原則げんそくとして政治せいじはん引渡ひきわたさない。政治せいじはん判定はんてい引渡ひきわた請求せいきゅうこくにおいて判断はんだんする。
  • だいごう罪名ざいめいでも政治せいじはんへの弾圧だんあつ看做みなせるなら、わたさない。
  • だいさんごう日本にっぽん刑罰けいばつ法規ほうきてらして処罰しょばつできないような場合ばあいわたさない。
  • だいよんごう犯罪はんざい証明しょうめい嫌疑けんぎ薄弱はくじゃく場合ばあい拒絶きょぜつる。
  • だいごうは、すでに日本にっぽんこく裁判所さいばんしょ係属けいぞくし、すでに確定かくてい判決はんけつがある場合ばあい
  • ろくごうつみおかしているが、逃亡とうぼう犯罪はんざいじんとして引渡ひきわたすについては、まだ日本にっぽんでは事件じけんになっていない場合ばあいは、日本にっぽん刑事けいじ裁判さいばん手続てつづきおわるまではわたさない。
  • ななごう逃亡とうぼう犯罪はんざいじん日本にっぽん国民こくみんであるとき」ただし、条約じょうやく別段べつだんさだめがある場合ばあい引渡ひきわた可能かのう現在げんざい日本にっぽん締結ていけつしている日米にちべいにちかん条約じょうやくはともに国民こくみんについて裁量さいりょうてき引渡ひきわたしが可能かのうとしている。

逃亡とうぼう犯罪はんざいじん引渡ひきわた手続てつづ[編集へんしゅう]

だい3じょうからだい21じょうまでにおいて、犯罪はんざいじん引渡ひきわた手続てつづきのながれが規定きていされている。

だいさんじょうは、外務がいむ大臣だいじんが引渡の要求ようきゅう外国がいこくからけた場合ばあい手続てつづき規定きてい

だいよんじょうは、法務大臣ほうむだいじん外務がいむ大臣だいじんからその書類しょるいけたときどうするかについて

  • いちごうごうの「あきらかに逃亡とうぼう犯罪はんざいじんわたすことができない場合ばあい該当がいとうする」じょう各号かくごう該当がいとうする場合ばあいあるいはじょうろくごうななごう場合ばあいはそこで拒絶きょぜつすることができる。
  • その場合ばあいについては東京とうきょう高等こうとう裁判所さいばんしょ判断はんだんあおがせるために、検事けんじちょうにこれを下命かめいする。

だいじょうは、引渡ひきわたしの手続てつづきおこな場合ばあいに、身柄みがら拘束こうそく規定きてい。「東京とうきょう高等こうとう裁判所さいばんしょ裁判官さいばんかんかのあらかじめはっする拘禁こうきん許可きょかじょう」という令状れいじょう要件ようけんとして、身柄みがら拘禁こうきんができる。拘禁こうきん許可きょかじょう手続てつづきあるいは記載きさい事項じこうとうこうさんこうとうにおいて規定きていされている。

だいろくじょうは、その執行しっこう手続てつづき

だいななじょうは、執行しっこうした場合ばあい東京とうきょう高等こうとう検察庁けんさつちょう検察官けんさつかん手続てつづき身柄みがら受取うけとった場合ばあい人違ひとちがいであるかどうかを調しらべ、人違ひとちがいでないときはこれを指定してい監獄かんごくれるという手続てつづき

だいはちじょうでは、収監しゅうかん手続てつづきとして、あらためて正式せいしき審査しんさ請求せいきゅうがある。じゅうよんあいだないおこなう。

だいきゅうじょうでは、東京とうきょう高等こうとう裁判所さいばんしょにおける審査しんさ手続てつづき箇月かげつ以内いない決定けっていをする。なお、審査しんさについての関係かんけい証人しょうにん尋問じんもん鑑定かんてい通訳つうやく翻訳ほんやくとう手続てつづきなどは、刑事けいじ訴訟そしょうほう規定きていがそのまま準用じゅんようされる。

だいじゅうじょう東京とうきょう高等こうとう裁判所さいばんしょでの決定けってい種類しゅるい内容ないようとう。「請求せいきゅう適法てきほうであるときは、これを却下きゃっかする決定けってい」「わたすことができない場合ばあい」など、実質じっしつてき内容ないようてきにできない場合ばあいわたすべき場合ばあいにはそのむね決定けってい。この決定けっていについては不服ふふく申立もうしたてはできない[2]。ただ、その決定けっていもとづいて法務大臣ほうむだいじん行政ぎょうせい処分しょぶんをした場合ばあいには、これは一般いっぱん行政ぎょうせい手続てつづきしたがえつて不服ふふく申立もうしたてがある。

だいじゅういちじょう審査しんさ請求せいきゅう命令めいれい取消とりけし規定きてい。たとえば、締約ていやくこくからそういうような犯罪はんざいじんの引渡の請求せいきゅう撤回てっかいするという場合ばあいなど。

だいじゅうじょう逃亡とうぼう犯罪はんざいじん釈放しゃくほうする場合ばあい東京とうきょう高等こうとう裁判所さいばんしょだいじゅうじょういちこういちごうごうのつまり却下きゃっかする決定けっていあるいはわたすことができないむね決定けっていをした場合ばあいまた前条ぜんじょう規定きていによつて審査しんさ請求せいきゅう命令めいれい結局けっきょく取消とりけしになつた場合ばあい、これは拘禁こうきん必要ひつようになるので、逃亡とうぼう犯罪はんざいじん釈放しゃくほうする。

だいじゅうさんじょうは、裁判さいばんされた場合ばあい裁判さいばんしょ謄本とうほん法務大臣ほうむだいじん提出ていしゅつする場合ばあい規定きてい

だいじゅうよんじょう法務大臣ほうむだいじんが引渡にかんする命令めいれいをする場合ばあい規定きてい。「法務大臣ほうむだいじんは、だいじゅうじょうだいいちこうさんごう決定けっていがあつた場合ばあい」、つまりわたしてよいとの東京とうきょう高裁こうさい決定けっていがあった場合ばあいには、「逃亡とうぼう犯罪はんざいじんわたすことができ、つ、わたすことが相当そうとうであるとみとめるときは、東京とうきょう高等こうとう検察庁けんさつちょう検事けんじちょうたい逃亡とうぼう犯罪はんざいじんの引渡をめいずるとともに、逃亡とうぼう犯罪はんざいじんにそのむね通知つうちし、逃亡とうぼう犯罪はんざいじんわたすことができず、またわたすことが相当そうとうでないとみとめるときは、ただちに、東京とうきょう高等こうとう検察庁けんさつちょう検事けんじちょうおよ逃亡とうぼう犯罪はんざいじんにそのむね通知つうちするとともに、東京とうきょう高等こうとう検察庁けんさつちょう検事けんじちょうたい拘禁こうきん許可きょかじょうにより拘禁こうきんされている逃亡とうぼう犯罪はんざいじん釈放しゃくほうめいじなければならない。」。ここではじめて法務大臣ほうむだいじん東京とうきょう高等こうとう裁判所さいばんしょ決定けっていもとづいて行政ぎょうせい処分しょぶんをなす。

だいじゅうじょう、引渡命令めいれいもとづいて、引渡命令めいれいから起算きさんしてさんじゅうにちまでのあいだに、相手方あいてがたわたす。締約ていやくこくたいし、引渡の命令めいれいたから受取うけとりにるように通達つうたつする。

だいじゅうろくじょう措置そちについての規定きてい。「引渡の命令めいれいは、引渡じょうはっしておこなう。」さんこうよんこう規定きていは、引渡じょう検事けんじちょう交付こうふする。締約ていやくこくのほうに、受取うけとりの書面しょめんとして、受領じゅりょう許可きょかじょう外務がいむ大臣だいじんとおして交付こうふする。

だいじゅうななじょうわたさい手続てつづき。「東京とうきょう高等こうとう検察庁けんさつちょう検事けんじちょうは、法務大臣ほうむだいじんから引渡じょう交付こうふけた場合ばあいにおいて、逃亡とうぼう犯罪はんざいじん拘禁こうきん許可きょかじょうにより拘禁こうきんされ、またはその拘禁こうきん停止ていしされているときは、逃亡とうぼう犯罪はんざいじん拘禁こうきんされ、また停止ていしされるまで拘禁こうきんされていた監獄かんごくながたいし、引渡じょう交付こうふして逃亡とうぼう犯罪はんざいじんの引渡を指揮しきしなければならない。」つまり、監獄かんごくながたいし、引渡の命令めいれいし、指揮しきをする。

だいじゅうはちじょう法務大臣ほうむだいじん手続てつづきのうえ必要ひつようなことがすべ終了しゅうりょうしたら、外務がいむ大臣だいじんたいしいつなんにちどういう場所ばしょ引渡ひきわたしたい、あるいはいつまでにこれをりにいとの通知つうちをする。

だいじゅうきゅうじょう外務がいむ大臣だいじんわたがわ正式せいしき通知つうちおこなう。

だいじゅうじょうによつて、はじめて引渡がおこなわれる。

だいじゅういちじょうには、身柄みがらりまでの期限きげんしめされている。

逃亡とうぼう犯罪はんざいじん拘禁こうきん停止ていしかり拘禁こうきん手続てつづき [編集へんしゅう]

だいじゅうじょうは、特殊とくしゅ場合ばあいとして拘禁こうきん停止ていしとく必要ひつようがあるとみとめるときは、拘禁こうきん許可きょかじょうですでに拘禁こうきんされているものを、親族しんぞくその適当てきとうもの委託いたくして、あるいは住居じゅうきょ制限せいげんして、拘禁こうきん停止ていしをすることができる。なお、拘禁こうきん停止ていし取消とりけしてまた収容しゅうようする場合ばあい手続てつづきとうさんこう以下いかとう規定きてい

だいじゅうさんじょう以下いかは、かり拘禁こうきん手続てつづきについて。事件じけんきわめて明白めいはく場合ばあいには、一応いちおうかり拘禁こうきんするという手続てつづき規定きてい。「外務がいむ大臣だいじんは、引渡条約じょうやくもとづき、締約ていやくこくから逃亡とうぼう犯罪はんざいじんおかした引渡犯罪はんざいについてそのもの逮捕たいほすべきむね令状れいじょうはっせられたことの通知つうちがあり、」つまり引渡ひきわたしをけるくに正式せいしき令状れいじょうはっせられた通知つうちがあり、「つ、当該とうがい締約ていやくこく外交がいこうかん締約ていやくこくにおいて引渡条約じょうやくしたがえつて逃亡とうぼう犯罪はんざいじんの引渡の請求せいきゅうをすべきむね保証ほしょうしたときは、」外交がいこうかんからこれはたしかにちよつとおくれるが自分じぶんのほうで引渡の請求せいきゅうをするという保証ほしょうをした場合ばあいには、「その通知つうちおよ保証ほしょうがあつたことを証明しょうめいする書面しょめん作成さくせいし、これを法務大臣ほうむだいじん送付そうふしなければならない。」ということにはじまり、じゅうよんじょう以下いかかり拘禁こうきん手続てつづき規定きてい。このかり拘禁こうきん性質せいしつ期限きげん、その執行しっこう問題もんだいとうさんじゅうじょうまでのあいだ規定きていしてあり、おおむね拘禁こうきん許可きょかじょう手続てつづきじゅんずる。

その[編集へんしゅう]

だい31じょうからだい35じょうにおいて、管轄かんかつ条約じょうやくあらたな締結ていけつほう適用てきよう関係かんけい拘禁こうきんにちて算入さんにゅう期間きかんなどについて規定きていされている。

だいさんじゅういちじょう東京とうきょう高等こうとう裁判所さいばんしょ審査しんさかんする手続てつづきおよ拘禁こうきん許可きょかじょうまたかり拘禁こうきん許可きょかじょうはつづけかんする手続てつづきについて必要ひつよう事項じこうは、最高裁判所さいこうさいばんしょさだめる。

だいさんじゅうじょう この法律ほうりつでは東京とうきょう高等こうとう裁判所さいばんしょ東京とうきょう高等こうとう検察庁けんさつちょう検察官けんさつかん執行しっこうをする。

だいさんじゅうさんじょう 引渡条約じょうやく効力こうりょく発生はっせいまえおかされた犯罪はんざいにつきその効力こうりょく発生はっせいになされた引渡の請求せいきゅうかんしても、適用てきようされるものとする。

だいさんじゅうよんじょう 法務大臣ほうむだいじんは、外国がいこくから外交がいこう機関きかん経由けいゆして当該とうがい外国がいこく官憲かんけん外国がいこくから引渡ひきわたしをけたもの日本にっぽん国内こくない通過つうかして護送ごそうすることの承認しょうにん請求せいきゅうがあつたときは、つぎ各号かくごういち該当がいとうする場合ばあいのぞき、これを承認しょうにんすることができる。犯罪はんざい行為こうい日本にっぽん国内こくないおこなわれて、日本にっぽんこく犯罪はんざいとなるものでなくても、政治せいじ犯罪はんざいであるとき。 請求せいきゅうが引渡条約じょうやくもとづかないでおこなわれ、請求せいきゅうかかもの日本にっぽん国民こくみんであるとき。に該当がいとうする場合ばあい承認しょうにんできないが、それ以外いがいなら可能かのう法務大臣ほうむだいじんは、この承認しょうにんにつき外務がいむ大臣だいじん協議きょうぎしなければならない。

だいさんじゅうじょう  この法律ほうりつもとづいておこな処分しょぶんについては、行政ぎょうせい手続てつづきほう平成へいせいねん法律ほうりつだいはちじゅうはちごうだいさんしょう規定きていは、適用てきようしない。

逃亡とうぼう犯罪はんざいじん引渡条例じょうれいとの相違そういてん[編集へんしゅう]

  • 身柄みがら拘束こうそくする場合ばあいに、原則げんそくとして裁判官さいばんかんはっする令状れいじょうによること。
  • 引渡ひきわたすべきかどうかの判断はんだん行政ぎょうせい機関きかん判断はんだんのみにまかせることなしに、司法しほう機関きかん判断はんだんけさせる。

脚注きゃくちゅう[編集へんしゅう]

関連かんれん項目こうもく[編集へんしゅう]

外部がいぶリンク[編集へんしゅう]