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犯罪はんざいじん引渡ひきわた

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コロンビアからアメリカに引渡ひきわたされるカリ・カルテルのミゲル・ロドリゲス。

犯罪はんざいじん引渡ひきわた(はんざいにんひきわたし)は、他国たこくからのわた請求せいきゅうおうじて自国じこく領域りょういきない所在しょざいする犯罪はんざいじん訴追そつい処罰しょばつのために相手あいてこくわたすことである[1]

逃亡とうぼう犯罪はんざいじん引渡ひきわたともいう[2]

概要がいよう[編集へんしゅう]

基本きほんてき他国たこくからのわた請求せいきゅうおうじる義務ぎむはなく[1]請求せいきゅうけたくに自国じこく管轄かんかつけん放棄ほうきして請求せいきゅうこく刑事けいじ管轄かんかつけん協力きょうりょくすることとなるというてんで、司法しほう共助きょうじょ側面そくめんのひとつである[3]

請求せいきゅうこくとのあいだ締結ていけつされた犯罪はんざいじん引渡ひきわた条約じょうやくや、相手あいてこくたいして同様どうよう請求せいきゅうができる保証ほしょうることを条件じょうけんとした相互そうご主義しゅぎによる国内こくないほう国際こくさい礼譲れいじょうなどによりおこなわれる[1]

引渡ひきわたしにあたっては、引渡ひきわた請求せいきゅう対象たいしょうとなる行為こうい双方そうほうくににおいて重大じゅうだい犯罪はんざいとされていなければならず(双方そうほうばっせい原則げんそく)、なおかつ請求せいきゅうこくわたされた犯罪はんざいじんたいして相手あいてこく同意どういがないかぎわた請求せいきゅう理由りゆうとした犯罪はんざい以外いがい理由りゆう訴追そついしてはならない(特定とくていせい原則げんそく)、という2てん各国かっこく条約じょうやく国内こくないほうにおいて一般いっぱんてきみとめられている引渡ひきわたしの要件ようけんである[4]

引渡ひきわた対象たいしょうしゃ国民こくみんであったり、わた請求せいきゅう理由りゆうとされる犯罪はんざい政治せいじはんである場合ばあいや、人権じんけん保護ほご観点かんてんから引渡ひきわたしが拒否きょひされることもある[4]

引渡ひきわた要件ようけん[編集へんしゅう]

犯罪はんざいじん引渡ひきわた理由りゆうとなる犯罪はんざいが、その行為こういがなされた時点じてん引渡ひきわた請求せいきゅうこく請求せいきゅうこく双方そうほう刑法けいほう同等どうとう刑罰けいばつされる重大じゅうだい犯罪はんざい殺人さつじん放火ほうか窃盗せっとう文書ぶんしょ偽造ぎぞうなど)であることが要件ようけんとされる[3]。これを双方そうほうばっせい原則げんそくという[3]。ただし、すでに訴追そついけた犯罪はんざい行為こういかんしての引渡ひきわた請求せいきゅうは、双方そうほうばっせいたすとしても拒否きょひされる(自由じゆうけん規約きやくだい14じょうだい7こう[3]

また、請求せいきゅうこく引渡ひきわたされた犯罪はんざいじんたいして、相手あいてこく同意どういがないかぎ引渡ひきわた理由りゆうとした犯罪はんざい以外いがい理由りゆう訴追そついしてはならず、また請求せいきゅう時点じてんさだめられていた請求せいきゅうこく法令ほうれい以上いじょうおも刑罰けいばつしてはならない[3]。これを特定とくていせい原則げんそくという[3]

引渡ひきわた拒否きょひ[編集へんしゅう]

犯罪はんざいじん引渡ひきわた請求せいきゅうけたくに自国じこく管轄かんかつけん放棄ほうきして請求せいきゅうこく刑事けいじ管轄かんかつけん協力きょうりょくするのであって[3]基本きほんてき他国たこくからのわた請求せいきゅうおうじる義務ぎむはない[1]引渡ひきわた拒否きょひ理由りゆうとしておもなものを以下いかげる。

国民こくみん引渡ひきわた[編集へんしゅう]

国民こくみん引渡ひきわたしをさだめた条約じょうやく国内こくないほうおお[1]たとえばブラジル憲法けんぽうにより国民こくみん引渡ひきわたしを禁止きんしし、国民こくみんたいする他国たこくからの引渡ひきわた請求せいきゅう拒否きょひした場合ばあい自国じこく代理だいり処罰しょばつをすることができる法律ほうりつさだめている[5]。しかし国民こくみん引渡ひきわたしはかならずしも一般いっぱんてきなものではなく引渡ひきわたしをみとめる有力ゆうりょく慣行かんこう存在そんざいし、たとえば日米にちべい犯罪はんざいじん引渡ひきわた条約じょうやくだい5じょうのように国民こくみんたいしての引渡ひきわた請求せいきゅうおうじる義務ぎむはないが、裁量さいりょうによりおうじることもできるとしている条約じょうやくもある[1]

一部いちぶくにでは、身柄みがらわたしがあった場合ばあい死刑しけいまたは拷問ごうもんける可能かのうせいがあるという理由りゆう身柄みがらわたしを拒否きょひしている。 オーストラリアカナダマカオニュージーランドみなみアフリカ、およびベラルーシのぞくほとんどのヨーロッパ諸国しょこくなどのおおくの管轄かんかつ区域くいきでは、容疑ようぎしゃ死刑しけいせられる可能かのうせいがある場合ばあいわたしは許可きょかされない。

政治せいじはん引渡ひきわた[編集へんしゅう]

政治せいじはん引渡ひきわたしは犯罪はんざいじん引渡ひきわた制度せいど例外れいがいえる[1]フランス革命かくめい以前いぜん犯罪はんざいじん引渡ひきわたしとえば政治せいじはんおも対象たいしょうとされていたが、革命かくめい個人こじん政治せいじてき思想しそう尊重そんちょうする風潮ふうちょうや、政治せいじはん引渡ひきわたしにより他国たこく政治せいじてき抗争こうそうまれることを回避かいひしようとする政策せいさくてき理由りゆうにより、政治せいじはんわた対象たいしょうから除外じょがいされるようになった[1]現代げんだいでは政治せいじはん引渡ひきわたしが慣習かんしゅう国際こくさいほううえ確立かくりつした原則げんそくであるのか、確立かくりつしているとすれば、引渡ひきわたしは国家こっか権能けんのうであるのか義務ぎむであるのか、見解けんかい相違そういがあるが、一般いっぱんてきには政治せいじはん引渡ひきわたしは国家こっか義務ぎむであるとする見解けんかい有力ゆうりょくである[1]

関連かんれん項目こうもく[編集へんしゅう]

出典しゅってん[編集へんしゅう]

  1. ^ a b c d e f g h i 杉原すぎはら(2008)、234-235ぺーじ
  2. ^ 犯罪はんざいじん引渡ひきわたし」、国際こくさいほう辞典じてん、286ぺーじ
  3. ^ a b c d e f g 山本やまもと(2003)、562-564ぺーじ
  4. ^ a b 小寺こでら(2006)、313-315ぺーじ
  5. ^ 太田おおた(2008)26-27ぺーじ

参考さんこう文献ぶんけん[編集へんしゅう]

  • 太田おおた達也たつや報告ほうこく1 : 来日らいにち外国がいこくじん犯罪はんざい現状げんじょう刑事けいじ法的ほうてき対応たいおう : 日系にっけいブラジルじん犯罪はんざい中心ちゅうしんとして」『法學ほうがく研究けんきゅう : 法律ほうりつ政治せいじ社会しゃかい (Journal of law, politics, and sociology)』だい81かんだい11ごう慶應義塾大学けいおうぎじゅくだいがく法学ほうがく研究けんきゅうかい、2008ねん、25-33ぺーじISSN 03890538 
  • 小寺こでらあきら岩沢いわさわ雄司ゆうじ森田もりた章夫あきお講義こうぎ国際こくさいほう有斐閣ゆうひかく、2006ねんISBN 4-641-04620-4 
  • 杉原すぎはら高嶺たかね水上すいじょうせんこれ臼杵うすきとも吉井よしいあつし加藤かとう信行のぶゆき高田たかだうつ現代げんだい国際こくさいほう講義こうぎ有斐閣ゆうひかく、2008ねんISBN 978-4-641-04640-5 
  • 筒井つつい若水じゃくすい国際こくさいほう辞典じてん有斐閣ゆうひかく、2002ねんISBN 4-641-00012-3 
  • 山本やまもとくさ国際こくさいほう新版しんぱん】』有斐閣ゆうひかく、2003ねんISBN 4-641-04593-3