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うんゆび

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』
きらきらほし』の仮想かそうてきチェロうんゆびじょすうのポジション英語えいごばん数字すうじゆびローマ数字すうじつる指示しじされている。AはDのように開放かいほうくことができ、また全体ぜんたいだい1ポジションでくことができる。

音楽おんがくにおいて、うんゆび(うんし、えい: Fingeringフィンガリングゆび使づか)は、特定とくてい楽器がっき演奏えんそうするときにどのゆびポジション使つかうかの選択せんたくである。うんゆび典型てんけいてきにはきょく全体ぜんたいにわたって変化へんかする。きょくのためのよいうんゆび選択せんたくとは、のポジションをあまり頻繁ひんぱんえることなく、できるかぎうごきを快適かいてきにすることである。うんゆび作曲さっきょくしゃかんがえて稿こう記載きさいすることもあれば、編集へんしゅうしゃかんがえて印刷いんさつされた楽譜がくふ追加ついかされることもあれば、演奏えんそうしゃかんがえて楽譜がくふ自身じしんうんゆび記入きにゅうするまたはたん演奏えんそうすることもある。

代用だいよううんゆび指示しじされたうんゆびわるものである。楽器がっきによっては、すべてのゆび使つかうわけではない。たとえば、サクソフォーン奏者そうしゃ右手みぎて親指おやゆび使つかわず、弦楽器げんがっきは(大抵たいていは)人差ひとさゆびから小指こゆびだけを使つかう。

楽器がっき

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金管楽器きんかんがっき

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うんゆびは、おおくの金管楽器きんかんがっき利用りようされているロータリーバルブおよびピストンバルブ適用てきようされる。普通ふつうのバルブ金管楽器きんかんがっきは3つまたは4つのバルブをち、それらは1ばんから4ばんまで番号ばんごうけされる。3ほんのバルブをトランペットれいにとると、バルブのわせのかずから23 = 8種類しゅるいうんゆび存在そんざいする。ただし、「1ばん+2ばん」と「3ばん」はどちらもバルブをさないおとから半音はんおん3つぶんひくおとる(ピッチは3ばんほうひくい)。また、だい5倍音ばいおん以上いじょうおとでは倍音ばいおんあいだ間隔かんかくせまくなるため、おおくの代替だいたいうんゆびゆび)が存在そんざいする。

バルブをたないトロンボーンは、うんゆびではなくスライドポジションのための番号ばんごうけされた表記ひょうきほう(1ばんから7ばん)を使用しようする。

鍵盤けんばん楽器がっき

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鍵盤けんばん楽器がっきたいする表記ひょうきほうでは、数字すうじ鍵盤けんばんじょうのポジションではなく、ゆび自身じしんむすいて使つかわれる。現代げんだい楽譜がくふでは、ゆびはそれぞれのについて1から5まで番号ばんごうけされる。親指おやゆびが1、人差ひとさゆびが2、中指なかゆびが3、薬指くすりゆびが4、小指こゆびが5である。過去かこ用法ようほう地域ちいきによってがある。19世紀せいきのイギリスでは、親指おやゆび十字じゅうじ(+)でしめされ、人差ひとさゆびから小指こゆびが1から4と番号ばんごうけされた。これは「英国えいこくしきうんゆび」とばれた。それにたいして、親指おやゆびから小指こゆびに1から5を番号ばんごうけするうんゆびは「大陸たいりくしきうんゆび」とばれた。しかしながら、20世紀せいきはじまりから、イギリスでも大陸たいりくしきうんゆび採用さいようされ、現在げんざいすべての地域ちいき大陸たいりくしきうんゆび使つかわれている[1]

クリストフォリが1700ねんチェンバロからピアノフォルテ発明はつめいしたのち、そしてそのすうじゅうねんにピアノが人気にんきとなりチェンバロを実質じっしつてきえたのち、ピアノの技術ぎじゅつ飛躍ひやくてき発展はってんした(これはピアノ製作せいさくしゃとピアノ教育きょういくがく進歩しんぽ並行へいこうしており、その一環いっかんとしてピアノのうんゆび変化へんかした)。

ピアノうんゆびかんしてはわずかな文献ぶんけんしか存在そんざいしない。

カール・フィリップ・エマヌエル・バッハヨハン・セバスティアン・バッハ息子むすこ)は著書ちょしょただしいクラヴィーア奏法そうほうについての試論しろん(Versuch über die wahre Art, das Clavier zu spielen)[2]』において、ピアノのうんゆびかんしてすう段落だんらくいている。

イギリスのピアニスト、トバイアス・マッセイは1900ねんに『うんゆび原理げんり(Principles of Fingering)[3]』を出版しゅっぱんした。

1971ねんジュリアン・ムサフィア英語えいごばん著書ちょしょ『ピアノうんゆびほう(The Art of Fingering in Piano Playing)[4][5]』を出版しゅっぱんした。このほんベートーヴェンのヴァイオリンソナタとピアノソナタ、ショスタコーヴィッチのプレリュードとフーガからほとんどのれい引用いんようしている。

2012ねんラミ・バー=ニヴ英語えいごばん著書ちょしょ『The Art of Piano Fingering -- Traditional, Advanced, and Innovative(ピアノうんゆびほう -- 伝統でんとうてき先進せんしんてき革新かくしんてき[6]』を出版しゅっぱんした。このほんは、きょくれい写真しゃしん使つかったピアノうんゆび技能ぎのう準備じゅんび運動うんどう怪我けがをしない技術ぎじゅつ解説かいせつしている。

弦楽器げんがっき

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チェロのだい1ポジションのうんゆび
ギターのうんゆび楽譜がくふ: 数字すうじ1から4さえるゆび0開放かいほうまる数字すうじつる、ダッシュ記号きごうきの数字すうじゆびすべらせることをそれぞれしめしている。

弦楽器げんがっきでは、ゆびは1から4と番号ばんごうけされる(1は人差ひとさゆび)。親指おやゆび通常つうじょうつるさえるのに使用しようされないため番号ばんごうけられず、0は開放かいほうつるしめしている。親指おやゆび演奏えんそう使用しようする場合ばあいたとえばチェロの親指おやゆびポジション英語えいごばん高音こうおん)、した垂直すいちょく細長ほそなが部分ぶぶんいたO字形じけい記号きごうあらわされる(たとえば、Ǫ またはϙにいくらかている)[7]。ギター親指おやゆびを 'T' を使つかってあらわす(親指おやゆびひくいEつるさえるのに時折ときおり使つかわれる)。ポジションは 序数詞じょすうしれい: 3rd)あるいはローマ数字すうじしめされるかもしれない。つるもローマ数字すうじ(I-IV)あるいはその開放かいほうおとしめされるかもしれない。 ポジションをえることをシフトという。ギターはポジションをローマ数字すうじで、つるまる数字すうじしめす。

クラシック・ギター爪弾つまびほうについてpima(あるいはクラシック・ギターpimac)とばれるうんゆび記法きほうつ。これは、スペイン略称りゃくしょうであり、p=pulgar親指おやゆび)、i=índice人差ひとさゆび)、m=medio中指なかゆび)、a=anular薬指くすりゆび)、そして非常ひじょうまれではあるがc=chico小指こゆび)を意味いみする[8]大抵たいていは、パッセージがとくむずかしいとき、あるいは特別とくべつうんゆび必要ひつようとするときにのみ、楽譜がくふうんゆび記載きさいされる。それ以外いがいは、うんゆび一般いっぱんてきにギタリストの裁量さいりょうゆだねられている。

木管もっかん楽器がっき

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木管もっかん楽器がっきうんゆびつね単純たんじゅんあるいは直感ちょっかんてきではなく、ボア音響おんきょうインピーダンスがいかにそのながさに沿った開口かいこう分布ぶんぷおおきさによって影響えいきょうされるかに依存いぞんする。これにより、のぞおとだか定常波ていじょうは形成けいせいされる。任意にんいおとだかたいしていくつかの代替だいたいフィンガリングが存在そんざいしうる。

単純たんじゅんふえリコーダーなど)やバグパイプチャンター英語えいごばんひらいたあなち、これは奏者そうしゃ指先ゆびさきはらによってじられる。いくつかのこういった楽器がっきは1つあるいは2つのおとのために奏者そうしゃゆびとど距離きょり拡張かくちょうするため、単純たんじゅんなキイ装置そうち使用しようする。現代げんだいフルートクラリネット、またはオーボエといった楽器がっきのキイ装置そうち精巧せいこうで、変化へんかんでいる。現代げんだいフルートは典型てんけいてきにはベームしきのキイ装置そうち使用しようする。クラリネットは典型てんけいてきにはイアサント・クローゼ英語えいごばんによって発明はつめいされた名称めいしょうのシステム使用しようする。クラリネットのべつのキイ装置そうちのシステムにエーラー・システムがあり、これはおもにドイツとオーストリアで使用しようされる。

通常つうじょう音域おんいきたいするサクソフォーンうんゆび

クロスフィンガリング

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クロスフィンガリングは、ひらいたあなよりしたじた(1つあるいは複数ふくすうの)あな必要ひつようとするあらゆるフィンガリングのことである[9]木管もっかん楽器がっきでは、連続れんぞくしたおとあなひらくと、ボアない定常波ていじょうはみじかくなる。しかし、定常波ていじょうはは1つひらいたあなえて伝播でんぱするので、さらに下流かりゅうほかおとあなじることで、その周波数しゅうはすう影響えいきょうる。これはクロスフィンガリングとばれ、一部いちぶ楽器がっきでははその楽器がっき自然しぜん音階おんかいけている「シャープとフラット」をすために使つかわれる[10]。バロックにクロスフィンガリングが改良かいりょうされ、様々さまざま調しらべせい音楽おんがく演奏えんそうすることが可能かのうになったが、古典こてんおよびロマンのフルートの設計せっけい変更へんこう(よりおおきなおとあななど)によりクロスフィンガリングはあまり実際じっさい役立やくだたなくなり、キイ装置そうち段々だんだんとクロスフィンガリングなしに半音はんおん演奏えんそうする簡単かんたん代替だいたい手段しゅだん提供ていきょうするようになった[11]。ベーム・システムは部分ぶぶんてきにはクロスフィンガリングをえるために開発かいはつされた[9]。フルートに追加ついかされた最初さいしょのキイであるショートFキイ[9]はフルートの本体ほんたい横断おうだん(クロス)し、うんゆびじたあなよりうえひらいたあなえた。これがおそらくこういった「クロス」フィンガリングという名称めいしょう起源きげんである。

フォークフィンガリング中央ちゅうおうあなおおわず、その両側りょうがわあなおおったままにするフィンガリングのことである。ジョルジ・フルートひとつの利点りてんは、半音はんおん演奏えんそうするためのフォーク・フィンガリングの必要ひつようせい排除はいじょしたことであった[12]

フォルスフィンガリングと代替だいたいフィンガリング

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「フォルスフィンガリング(false fingering)」という用語ようごは、木管もっかん楽器がっき金管楽器きんかんがっき、および弦楽器げんがっきといったことなるうんゆびおなおんすことができるが、音色ねいろたがいに明確めいかくことなっている楽器がっき使用しようされる。たとえば、ギターでは、まきつるいたおなおんは、ワイヤーつるいたおととは顕著けんちょことなる。そのため、おなおんべつつるみじか連続れんぞくしてくことで、実際じっさいにはおとえずに音色ねいろちがいを強調きょうちょうすることができる。期待きたいされる音色ねいろもとめられる音色ねいろはパッセージにおおきく依存いぞんする)とことなる音色ねいろでそのおと演奏えんそうされるとき、それはしばしば「フォルスフィンガリング」とばれる。 この技法ぎほうはジャズの文脈ぶんみゃくでは、とくにサクソフォーンといった管楽器かんがっきでよくられる。 2つのおとあいだ音色ねいろ明確めいかくちがいがない場合ばあいは、「代替だいたい(オルタネート)フィンガリング」という用語ようごがしばしばわりに使つかわれる[13]

歴史れきし

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ヨハン・セバスティアン・バッハはオルガンおよびクラヴィーアのためのうんゆび革新かくしんをもたらした(バッハの息子むすこカール・フィリップ・エマヌエル・バッハによればそれほど抜本ばっぽんてきではなかったものの同様どうよう革新かくしんが、おおよそおなごろの1716ねんフランソワ・クープランによってかれ著書ちょしょクラヴサン奏法そうほう英語えいごばん』でもたらされた)。バッハ以前いぜんは、演奏えんそう親指おやゆびはめったに使つかわれなかった。バッハのあたらしいうんゆびはその時点じてんまでの従来じゅうらいうんゆびおおくの特徴とくちょう(1ほんゆびべつゆびうえあるいはしたとおうんゆびなど。バッハの作品さくひんおおくはこういったうんゆび必要ひつようとする。とく中指なかゆび薬指くすりゆびうえ、あるいは薬指くすりゆび小指こゆびうえ通過つうかさせるうんゆびおおい)を保持ほじしていたが、親指おやゆびがはるかにおお使用しようされるようになった。現代げんだいうんゆび親指おやゆびゆびどう程度ていど使用しようし、親指おやゆびゆびしたとおうんゆびゆびくぐり)がふくまれるが、一般いっぱんてきにはバッハのような親指おやゆび以外いがいゆびあいだうえあるいはしたとおうんふくまれない[14]

1980年代ねんだいリンドリー英語えいごばんとBoxallは、上記じょうき内容ないようがC・P・E・バッハの証言しょうげんだけにっていることをしめした。J・S・バッハとかれのサークルから現存げんそんするすべてのゆび使づかいは、親指おやゆび使用しよう非常ひじょうかぎられている古代こだい方法ほうほう使用しようしている。最近さいきんでは、J・S・バッハのすべてのチェンバロ作品さくひんとほとんどのオルガン作品さくひんふるうんゆびほう演奏えんそう可能かのうであることがしめされている[15]

出典しゅってん

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  1. ^ "English fingering". Grove Music Online (英語えいご) (8th ed.). Oxford University Press. 2001.
  2. ^ ISBN 0-393-09716-1
  3. ^ ISBN 0900180420
  4. ^ Musafia, Julien. “The Art of Fingering in Piano Playing”. 2017ねん9がつ9にち閲覧えつらん
  5. ^ ジュリアン ムサフィアちょ ; 横谷よこたにあきらつかさやく『ピアノうんゆびほう全音楽譜出版社ぜんおんがくふしゅっぱんしゃ、1977ねんNCID BA30543574 
  6. ^ Lyn Bronson (Summer 2012). “Books & Recordings”. Piano Fingering and Establishing a Home Digital Recording Center (California Music Teacher): 24–25. 
  7. ^ Del Mar, Norman (1981). Anatomy of the Orchestra. Berkeley and Los Angeles: University of California Press. pp. 482–484 (1987 paperback edition). ISBN 0-520-05062-2 
  8. ^ Course of Study for Classical Guitar”. University of Santo Tomas Conservatory of Music Guitar Department. 2011ねん4がつ8にち閲覧えつらん
  9. ^ a b c Randel, Don Michael (2003). The Harvard Dictionary of Music, p.228. Harvard. ISBN 9780674011632.
  10. ^ Smith, John and Wolfe, Joe. International Congress on Acoustics, Rome, Session 8.09, pp.14-15 quoted in Larsen, Grey (2011). The Essential Guide to Irish Flute and Tin Whistle, p.42 n.VI Mel Bay. ISBN 9781610658898.
  11. ^ Larsen (2011), p.51.
  12. ^ Randel (2003), p.352.
  13. ^ False fingering”. Oxford Music Online. Oxford University Press. 2020ねん5がつ15にち閲覧えつらん
  14. ^ Schweitzer, Newman, Albert Schweitzer; C M Widor (1967). “IX. The Artist and Teacher”. J.S. Bach, Volume 1. Courier Dover Publications. pp. 206–209. ISBN 0-486-21631-4. https://archive.org/details/jsbach0000schw/page/206 
  15. ^ Mark Lindley and Maria Boxall. Early Keyboard Fingerings: an Anthology. Schott, London 1982. Revised and expanded 1991. ASIN B003AGJC7I.

関連かんれん項目こうもく

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