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バイタルパート

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バイタルパート(Vital part)とは、軍艦ぐんかんにおける「重要じゅうよう防御ぼうぎょ区画くかく」という概念がいねんのこと。VPとりゃくされることがある。破壊はかいされた場合ばあい致命ちめいてきであることからてんじて、軍艦ぐんかん設備せつびでなくとも使つかわれることがある。

海外かいがいではVital partというかたり使つかわれることはすくなく、こうした部位ぶい優先ゆうせん設定せっていする防御ぼうぎょ様式ようしきを「All or nothing英語えいごばん」ということがおおい。これを意訳いやくして「集中しゅうちゅう防御ぼうぎょ方式ほうしき」という。

また排水はいすいりょうちいさかったぜんいしゆみきゅう戦艦せんかんより以前いぜんにも類似るいじ発想はっそうはあり、そちらは「増設ぞうせつ装甲そうこうたい英語えいごばん」(シタデル(Citadel)、もとフランス語ふらんすご城塞じょうさいのこと)とばれる。

概要がいよう

[編集へんしゅう]

14世紀せいきちゅうごろからはじまったかんほうによる砲撃ほうげきせん発展はってんしていくにつれ、艦載かんさいほうだい口径こうけい一途いっと辿たどり、てき砲弾ほうだんふせぐための装甲そうこう重厚じゅうこうしていった。水上すいじょうにあり重量じゅうりょう船底ふなそこ全面ぜんめん分散ぶんさんさせている艦船かんせんは、走行そうこう装置そうち部品ぶひん荷重かじゅう集中しゅうちゅうする戦車せんしゃのような重量じゅうりょう制約せいやくきびしくなく、純粋じゅんすい装甲そうこうばんあつくすることでてき砲弾ほうだんから船体せんたい防御ぼうぎょしていた。

しかしだいいち世界せかい大戦たいせんころには、船体せんたいすべてを装甲そうこうばんおおうことに限界げんかいえてきた一方いっぽうで、かんほうだい口径こうけいおさまらず被弾ひだん脅威きょうい増大ぞうだいしていった。そこでされたのがバイタルパートである。これは軍艦ぐんかんいて直接的ちょくせつてきつぎせん能力のうりょくかかわる、主砲しゅほうとうだん火薬かやく機関きかんといった重要じゅうよう区画くかく出来できかぎ集約しゅうやくし、そこだけを集中しゅうちゅうてき防御ぼうぎょすることで、装甲そうこう重量じゅうりょう増加ぞうかによる排水はいすいりょう増加ぞうかおさえつつ、被弾ひだんしても最低限さいていげん戦闘せんとう能力のうりょく維持いじしようという概念がいねんである。この集中しゅうちゅう防御ぼうぎょされた箇所かしょ重要じゅうよう防御ぼうぎょ区画くかく」をバイタルパートという。バイタルパートの装甲そうこうやぶられると多大ただい損害そんがいこうむるが、ミサイル存在そんざいしないだい大戦たいせんまでは、敵艦てきかんのバイタルパートをねらちするのは事実じじつじょう不可能ふかのうであった。

装甲そうこう箇所かしょ必要ひつよう最小限さいしょうげんとしたことで排水はいすいりょう増加ぞうかおさえつつ防御ぼうぎょりょくたかめられるほん概念がいねんは、だい世界せかい大戦たいせんなか戦艦せんかん巡洋艦じゅんようかん適用てきようされ、大艦だいかんきょほう主義しゅぎ実現じつげんするじょう必要ひつよう不可欠ふかけつとなった。たとえば大和やまとがた戦艦せんかんについて「たい46cmほう装甲そうこうそなえていた」というのは、このバイタルパート装甲そうこうすのであり、船体せんたいすべてが装甲そうこう防御ぼうぎょされているわけではない。基本きほんてき装甲そうこうほどこされるのは誘爆ゆうばくによって轟沈ごうちんおそれがあるたま火薬かやくおよ主砲しゅほうとう破壊はかいされると航行こうこう不能ふのうになる舵取かじとり機械きかいしゅ機関きかんかん首脳しゅのう位置いちする司令塔しれいとうなどである。大和やまとがた戦艦せんかんれいると、バイタルパートはだい1主砲しゅほうとうからだい3主砲しゅほうとうあいだ集中しゅうちゅうされており、装甲そうこうじゅうせんから防御ぼうぎょしている。このバイタルパートのなかに、たま火薬かやく機械きかいしつかんしつ発電はつでんしつ水圧すいあつしつ変圧へんあつしつ発令はつれいしょ通信つうしんしつちゅう排水はいすい指揮しきしょとうをまとめている。バイタルパートの側壁そくへきどういち箇所かしょへの魚雷ぎょらい3はつ直撃ちょくげき想定そうていし、410mm(平面へいめん200mm)の装甲そうこうは46cm主砲しゅほうだん直撃ちょくげき高度こうど2200mから投下とうかされた2トンばくだんえることができた。

船体せんたいちょうとく比重ひじゅうおおきいバイタルパートちょう)の縮減しゅくげんは、被弾ひだんかくりつ低減ていげん排水はいすいりょうげんによる建造けんぞう縮減しゅくげんあるいはおな予算よさんでよりじゅう武装ぶそうかん実現じつげんなど恩恵おんけいおおく、とくワシントン海軍かいぐん軍縮ぐんしゅく条約じょうやく以後いご艦船かんせん排水はいすいりょう規制きせいくわわると、各国かっこくはさまざまな工夫くふうらした。

日本にっぽん海軍かいぐんかん武装ぶそう速力そくりょく重視じゅうしし、上部じょうぶ構造こうぞうぶつ周辺しゅうへん短縮たんしゅくしようとする傾向けいこうがある。他国たこく戦艦せんかんでは前後ぜんごならぶことがおお艦橋かんきょう装甲そうこう司令塔しれいとう射撃しゃげき指揮しきしょマストを、日本にっぽん戦艦せんかん一体化いったいかしたパゴダマスト英語えいごばんとしたり、高雄たかおがたじゅう巡洋艦じゅんようかんでもおおきく後方こうほう湾曲わんきょくした煙突えんとつをまたぐかたち艦橋かんきょう構造こうぞうぶつもうけるといったれいがある。一方いっぽうでこの志向しこう浸水しんすいたいせいたか機関きかんシフト配置はいち導入どうにゅうを、機関きかん部長ぶちょうてんでためらうめんももたらした。

アメリカ戦艦せんかん伝統でんとうてき近海きんかい防衛ぼうえいでの決戦けっせん主眼しゅがんに、速力そくりょく妥協だきょうして船体せんたいみじか設計せっけいする防御ぼうぎょ重視じゅうし志向しこうである。同様どうよう理由りゆう砲塔ほうとうまわりの短縮たんしゅくはか段式だんしき砲塔ほうとうなど試行錯誤しこうさくごてワールドスタンダードとなる背負せおいしき砲塔ほうとう配置はいち考案こうあんするにいたった。フランス戦艦せんかんもんすうでの砲塔ほうとうすうらす多連装たれんそうめたよん連装れんそう砲塔ほうとう開発かいはつ採用さいようすすめた。