青葉あおば学園がくえん物語ものがたり

青葉あおば学園がくえん物語ものがたり（あおばがくえんものがたり）は吉本よしもと直志ただし郎ろう作さくの児童じどう文学ぶんがく作品さくひん。著者ちょしゃの吉本よしもとが11歳さいから18歳さいまでを過すごした原爆げんばく孤児こじのための養護ようご施設しせつ「広島ひろしま戦災せんさい孤児こじ育成いくせい所しょ」（広島ひろしま県けん佐伯さいき郡ぐん五日市いつかいち町まち吉見園よしみえん、現げん・広島ひろしま市し佐伯さいき区く）を舞台ぶたいにした物語ものがたりでベストセラーとなった。

概要がいよう

主おもになつめ寮りょうの子供こどもたちを中心ちゅうしんに、シリーズ通とおしておよそ1年ねん半はんに渡わたる物語ものがたりが綴つづられる。学園がくえんで出会であった弘明ひろあきと恵子けいことの幸しあわせな未来みらいを予感よかんさせて（「まっちくれ、涙なみだ」）物語ものがたりは完結かんけつする。

コンビーフの缶詰かんづめを学園がくえんの倉庫そうこから盗ぬすみ出だしたものの、開あけてみるとその大半たいはんがコーンスターチの缶詰かんづめであった（「さよならは半分はんぶんだけ」）などの爆笑ばくしょうエピソードに混まじり、行方ゆくえをくらませていた進すすむの母親ははおやがひょっこり学園がくえんを訪たずねて来くる（「右みぎむけ、左ひだり！」）、新あたらしく入はいってきた幸子さちこと真治しんじの母親ははおやが亡なくなってしまう（「さよならは半分はんぶんだけ」）、原爆げんばくですべての家族かぞくを失うしなったうどん屋やの老ろう夫婦ふうふと出会であう（「翔とぶんだったら、いま！」）、中学ちゅうがくを卒業そつぎょうして就職しゅうしょくした透とおるが社会しゃかいの厳きびしさを知しる（「空色そらいろの空そらの下したで」）などシビアな部分ぶぶんもある。

しかしながら、戦争せんそうものにありがちなお涙なみだちょうだいや説教せっきょう臭くささがなく、爆笑ばくしょうエピソードとシリアスなエピソードとのバランスが絶妙ぜつみょう^{[独自どくじ研究けんきゅう?]}であり、世代せだいを越こえて多おおくの読者どくしゃ^[誰だれ?]から熱あつい支持しじを受うけている。

主おもな登場とうじょう人物じんぶつ

以下いかに記しるした学年がくねんは、第だい1作さく当時とうじのものである。

今井いまい和彦かずひこ（小しょう6）

なつめ寮りょうに所属しょぞく。やや自己じこ中心ちゅうしん的てきな性格せいかく。新あたらしく入はいってきた幸子こうじに思おもいを寄よせる。原爆げんばくで身寄みよりを亡なくした。

野崎のさき進すすむ（小しょう6）

楓かえで寮りょうに所属しょぞく。母ははが家いえを飛とび出だし、その後ご父ちちが他界たかいしたため、青葉あおば学園がくえんに引ひき取とられる。あだ名なは「スッさん」。陽気ようきで6年生ねんせいのムードメーカー的てきな存在そんざい。

ボータン（小しょう5）

なつめ寮りょうに所属しょぞく。本名ほんみょうは久保田くぼた修おさむ。利発りはつで機転きてんがきく。和彦かずひこの女房にょうぼう役やく的てき存在そんざい。原爆げんばくで身寄みよりを亡なくした。

清きよし（小しょう5）

なつめ寮りょうに所属しょぞく。やや気きが弱よわくとろくさい。原爆げんばく以外いがいの理由りゆうで学園がくえんへやってきた。

まこと（小しょう3）

なつめ寮りょうに所属しょぞく。鼻はなが悪わるい。原爆げんばく以外いがいの理由りゆうで学園がくえんへやってきた。

森山もりやま真治しんじ（小しょう3）

なつめ寮りょうに所属しょぞく。母ははが病気びょうきになり、育そだててくれた祖母そぼも他界たかいしたため、姉あねの幸子こうじとともに青葉あおば学園がくえんにやってきた。おとなしいが歌うたが得意とくい。

タダシ（小しょう1）

なつめ寮りょうに所属しょぞく。原爆げんばく以外いがいの理由りゆうで学園がくえんへやってきた。最年少さいねんしょうなので皆みなに可愛かわいがられている。学年がくねんを聞きかれると「1年ねん1組くみ」と答こたえる。

川口かわぐち耕一こういち（中ちゅう2）

なつめ寮りょうに所属しょぞく。寮長りょうちょうの佐久間さくま透とおるを支ささえるしっかり者しゃ。

島田しまだ弘明ひろあき（高こう1）

青葉あおば学園がくえん内ないの寺てらの庫裏くりを勉強べんきょう部屋へやとして与あたえられ、大学だいがく進学しんがくを目指めざして勉強べんきょうしている。学園がくえんのリーダー的てき存在そんざい。最終巻さいしゅうかんの「まっちくれ、涙なみだ」では話はなしの中心ちゅうしんとなり、山やまの木きの切きり出だしのアルバイトを通とおして社会しゃかいを知しる。

佐久間さくま透とおる（中ちゅう3）

なつめ寮りょうに所属しょぞく。寮内りょうない最年長さいねんちょうなので寮長りょうちょうを務つとめている。子分こぶん思おもい。第だい四よん作さくの「空色そらいろの空そらの下したで」で中学ちゅうがくを卒業そつぎょうし雑貨ざっか店てんに就職しゅうしょくするが、社会しゃかいの厳きびしさを知しる。

竹田たけだみゆき（小しょう6）

楓かえで寮りょうに所属しょぞく。男子だんしたちからは「おおげつ」と呼よばれている。

今井いまい恵子けいこ（中ちゅう3）

なつめ寮りょうに所属しょぞく。和彦かずひこの姉あねでしっかり者しゃ。弘明ひろあきと恋仲こいなかである。

厚子あつし（中ちゅう1）

なつめ寮りょうに所属しょぞく。恵子えことともに洗濯せんたくなどの用事ようじをこなす。

のり子こ

みつあみの長ながい髪かみが自慢じまん。男子だんしからは「女おんなインディアン」と呼よばれている。

森山もりやま幸子さちこ（小しょう6）

なつめ寮りょうに所属しょぞく。真治しんじの姉あね。和彦かずひこいわく「親切しんせつで、勉強べんきょうがようできて、ちょっとまぶしい」女おんなの子こ。

ちい先生せんせい（佐伯さえき千鶴子ちづこ）

なつめ寮りょうの寮母りょうぼ。年齢ねんれいは20代だい後半こうはん。優やさしい先生せんせい。

園長えんちょう

痛やめ風かざよけのクルミをいつも持もち歩あるいている。講話こうわは要領ようりょうを得えないが、いざという時ときには厳きびしくもなる。

波多野はたの松三まつぞう先生せんせい

事務じむ長ちょう。年配ねんぱいの先生せんせい。将棋しょうぎが趣味しゅみ。

北村きたむら先生せんせい

若手わかての先生せんせい。子供こどもたちの兄貴あにき的てきな存在そんざい。

小川おがわ先生せんせい

保健ほけんの先生せんせい。女性じょせい。太ふとっていて口くちうるさい。

シリーズ一覧いちらん

いずれもポプラ社ぽぷらしゃの「こども文学ぶんがく館かんシリーズ」より刊行かんこう。単行本たんこうぼんの挿絵さしえを村上むらかみ豊ゆたかが担当たんとうし、ポプラ社ぽぷらしゃ文庫ぶんこ版はんの挿絵さしえを中島なかじま潔きよしが担当たんとうした。

右みぎむけ、左ひだり!（1978年ねん4月がつ、文庫ぶんこ1984年ねん2月がつ）
さよならは半分はんぶんだけ（1978年ねん12月、文庫ぶんこ1984年ねん3月がつ）
翔とぶんだったら、いま!（1979年ねん8月がつ、文庫ぶんこ1984年ねん7月がつ）
空色そらいろの空そらの下したで（1980年ねん4月がつ、文庫ぶんこ1984年ねん9月がつ）
まっちくれ、涙なみだ（1981年ねん5月がつ、文庫ぶんこ1984年ねん10月がつ）

シリーズ外がいの姉妹しまい編へんとして以下いかの作品さくひんがある。

北きたの天使てんし南みなみの天使てんし（1982年ねん1月がつ、文庫ぶんこ1985年ねん7月がつ） - 単行本たんこうぼんは遠藤えんどうてるよ、ポプラ社ぽぷらしゃ文庫ぶんこ版ばんはおおた慶けい文ぶんが挿絵さしえを担当たんとう。原爆げんばく投下とうか直後ちょくごから青葉あおば学園がくえん設立せつりつに至いたるまでの内容ないよう。主人公しゅじんこうの堤つつみ孝たかし太ふとしが被爆ひばく直後ちょくごから母ははを探さがし、浮浪ふろう児じとなり、青葉あおば学園がくえんに引ひき取とられるまでを描えがく。孝こう太ふとしは本編ほんぺんの「青葉あおば学園がくえん物語ものがたり」には登場とうじょうしない。逆ぎゃくに青葉あおば学園がくえん物語ものがたりと共通きょうつうする登場とうじょう人物じんぶつは和彦かずひことボータンであり、孝こう太ふとしと行動こうどうを共ともにし青葉あおば学園がくえんに引ひき取とられる。二人ふたりとも小学校しょうがっこう低てい学年がくねんの設定せっていである。

映画えいが版ばん

1981年ねん、市毛いちげ良枝よしえ主演しゅえんで映画えいが化かされた。日活にっかつ児童じどう映画えいがが制作せいさく・配給はいきゅうし、自主じしゅ配給はいきゅう・自主じしゅ上映じょうえいシステムにより公開こうかいされた。シリーズの「右みぎむけ、左ひだり！」「さよならは半分はんぶんだけ」「翔とぶんだったら、いま！」のストーリーが基本きほんになっている。主題歌しゅだいかは森田もりた公一こういちが歌うたう「君きみは一人ひとりじゃない」。

広島ひろしま市し内うち各所かくしょにてロケーション撮影さつえいが行おこなわれ、出演しゅつえんした子供こどもたちは地元じもとでのオーディションによる選抜せんばつ者しゃも含ふくまれていた。子こども達たちが福屋ふくやに出向でむくというシーンがあるが、福屋ふくやの店内てんないは時代じだい考証こうしょうが考慮こうりょされることなく、撮影さつえい当時とうじを反映はんえいしたものであった。