音圧おんあつ

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音圧おんあつ(おんあつ、えい: sound pressure)とは、音波おんぱによってしょうじる媒質ばいしつせいあつからの変動へんどうぶん[1]である。大気たいきちゅうにおいては大気たいきあつからの変動へんどうぶんである[2][3]媒質ばいしつちゅうのあるてん瞬間しゅんかん圧力あつりょくしずかあつから変化へんかしたぶん瞬時しゅんじ音圧おんあつといい、ある時間じかんない瞬時しゅんじ音圧おんあつ実効じっこう実効じっこう音圧おんあつという[4][5]通常つうじょう実効じっこう音圧おんあつたん音圧おんあつという[4][6]音圧おんあつのSI単位たんいパスカル(Pa = N/m2)[7]

概要がいよう[編集へんしゅう]

音波おんぱは、一般いっぱんてきには、固体こたい液体えきたい気体きたいなどの媒質ばいしつちゅうつたわる密度みつど変化へんかなみである[8]液体えきたいみずである場合ばあいとく水中すいちゅうおんばれ、水中すいちゅう音響おんきょうがくという研究けんきゅう分野ぶんやもある。また、固体こたい場合ばあいは、気体きたい液体えきたいのような伸縮しんしゅくたいする弾性だんせいだけでなく、ねじり変形へんけい変形へんけいたいする弾性だんせいもあり、ねじりなみ伝搬でんぱんされる[9]

空気くうきちゅう微粒子びりゅうし密度みつどについてみると、粒子りゅうしみつになった部分ぶぶんでは圧力あつりょく増加ぞうかし、うとになった部分ぶぶんでは圧力あつりょく低下ていかする。このような圧力あつりょく変化へんか伝播でんぱしていくのが、空気くうきちゅう音波おんぱであり、音波おんぱによる大気たいきあつからの圧力あつりょく変化へんか音圧おんあつである。こうした空気くうきちゅう音圧おんあつ変化へんかみみたっすると、おとがするという感覚かんかくられる。[8]

空気くうきちゅう音波おんぱ疎密そみつであり、音圧おんあつ粒子りゅうしみつ部分ぶぶんではせいうと部分ぶぶんではまけをとる。音響おんきょうがくでは、電気でんき分野ぶんやにおいて交流こうりゅう電圧でんあつ実効じっこうしめすのと同様どうように、特段とくだん明示めいじがない場合ばあいでも音圧おんあつ実効じっこうとしてあつかうことがある[8]

単位たんい体積たいせきごと媒質ばいしつふくまれるなみエネルギーであるエネルギー密度みつどは、音圧おんあつ実効じっこう音圧おんあつ)の2じょう比例ひれいする。これはまた、1秒間びょうかん単位たんい面積めんせき通過つうかするおとのエネルギーとして定義ていぎされるおとつよ単位たんい:W/m2)に比例ひれいする[8]

定義ていぎ[編集へんしゅう]

くわえられたちからたいしてもともどろうとするちからはたらくという性質せいしつ弾性だんせい)をゆうする媒質ばいしつ弾性だんせい媒質ばいしつ)にくわえられた外力がいりょくが、弾性だんせい慣性かんせいはたらきによって、媒質ばいしつちゅう密度みつど変化へんか圧力あつりょく変動へんどう)として伝搬でんぱんされる弾性だんせい音波おんぱであり[10]弾性だんせい媒質ばいしつである空気くうきちゅうつたわる音波おんぱみみという器官きかんたっしてられる感覚かんかくおとである[11]

音圧おんあつ説明せつめい
(1) しずかあつ状態じょうたい
(2) おとくわわった状態じょうたい圧力あつりょく
(a) ある時点じてん媒質ばいしつ圧力あつりょく分布ぶんぷ
(b) あるてんx0圧力あつりょく時間じかんてき変化へんか

音波おんぱ媒質ばいしつ構成こうせいする粒子りゅうし疎密そみつ状態じょうたい進行しんこう方向ほうこうおな方向ほうこう振幅しんぷくにより伝搬でんぱんするたてであり[10]の(1)(2)については、それぞれ(1)音波おんぱのないとき(せいあつ状態じょうたい(Static pressure))と、(2)音波おんぱのあるとき((1)にたいしておとによる圧力あつりょく変化へんかくわわったもの(Sound pressure))の、ある瞬間しゅんかんにおける音波おんぱすす方向ほうこうにおける媒質ばいしつ疎密そみつ状態じょうたいしきてきしめしたものである。

この音波おんぱによる媒質ばいしつ疎密そみつ状態じょうたいの(2))に対応たいおうして、媒質ばいしつ圧力あつりょくたてじくに、音波おんぱ進行しんこう方向ほうこうよこじくにとりグラフにあらわしたものが(a)である。せん間隔かんかくせまいほど(みつなほど)圧力あつりょくたかく、ぎゃくせん間隔かんかくひろいほど(うとなほど)圧力あつりょくひくい。

ここで、変動へんどうする媒質ばいしつ圧力あつりょくpとしずあつ状態じょうたいp0

であるδでるたpが音圧おんあつ瞬時しゅんじ音圧おんあつ)のであり、圧力あつりょくpがしずかあつ状態じょうたいp0よりもたかときδでるたpがまさに、圧力あつりょくpがしずかあつ状態じょうたいp0よりもひくいときにまけとなる。この波形はけい波長はちょうλらむだ (m)である。

この音波おんぱによる媒質ばいしつ疎密そみつ状況じょうきょうは、先述せんじゅつのとおり、弾性だんせい慣性かんせいはたらきにより進行しんこう方向ほうこうおとはやさ(音速おんそく)で伝搬でんぱんしていく。これをあるてん x0着目ちゃくもくしてその時間じかん変化へんかる、すなわちたてじく媒質ばいしつ圧力あつりょく音圧おんあつ)、よこじく時間じかんってあらわしたものが(b)である。

(b)にしめされるような、あるてん圧力あつりょく時間じかんてき変化へんか周期しゅうきてきおとについて、その周期しゅうきが T (s)であるとき、音圧おんあつ実効じっこう実効じっこう音圧おんあつ) prms瞬時しゅんじ音圧おんあつ δでるたp の周期しゅうき T における自乗じじょう平均へいきん平方根へいほうこんであり以下いかしきあらわされる[7]

さて、あらわされるような周期しゅうきてき圧力あつりょく変動へんどうしめおとは、一定いってい調子ちょうしをもつおととしてかんじられる楽音がくおんばれる[12]。こうした楽音がくおん瞬時しゅんじ音圧おんあつについて、その波形はけい基本きほん周波数しゅうはすう整数せいすうばい周波数しゅうはすうのみをもつ正弦せいげんじゅんおと[注釈ちゅうしゃく 1]合成ごうせいとしてあらわされる[12]たとえば、一定いってい周期しゅうき三角さんかく波形はけいかえされる三角波さんかくなみのパワースペクトルをると、基本きほん周波数しゅうはすうの3ばい、5ばい…と奇数きすう高調こうちょうにより構成こうせいされている[13]

周期しゅうきてきおと波形はけいは、上述じょうじゅつのとおりその周期しゅうきTの整数せいすうばいじゅんおと正弦せいげん)の合成ごうせいにより構成こうせいされるが、もとの周期しゅうきてきおと音圧おんあつ実効じっこうは、そのおと構成こうせいするじゅんおとそれぞれの実効じっこう音圧おんあつの2じょう平均へいきん(パワー平均へいきん)の平方根へいほうこんひとしいという性質せいしつ[14]

音圧おんあつ実効じっこう[編集へんしゅう]

音圧おんあつ交流こうりゅう電圧でんあつのような、時間じかんてき正負せいふあいだ変動へんどうするりょうでは、単純たんじゅん時間じかん平均へいきんは0または0にちかとなり、変動へんどうおおきさをあらわすことができない。そういったりょう変動へんどうおおきさを表現ひょうげんするの1つが実効じっこうである。実効じっこうとは、時間じかんてきおおきさの変化へんかするりょうの2じょう時間じかん平均へいきん平方根へいほうこんである。しきくと、音圧おんあつp実効じっこう実効じっこう音圧おんあつprms[注釈ちゅうしゃく 2]は、平均へいきんするときあいだTとして、

あらわされる[15]。 ここで、日本にっぽん産業さんぎょう規格きかく JIS Z 8106:2000「音響おんきょう用語ようご」では、対象たいしょうとする瞬間しゅんかん音圧おんあつp(t)瞬時しゅんじ音圧おんあつ定義ていぎし、また、とく指定していしないかぎり、ある時間じかんない瞬時しゅんじ音圧おんあつ実効じっこうprms音圧おんあつであると定義ていぎする[16]

波形はけい正弦せいげんあらわされるじゅんおとなど瞬時しゅんじ音圧おんあつ周期しゅうきてき変化へんかするおと音圧おんあつ実効じっこうについては、上述じょうじゅつのとおり、平均へいきんする時間じかんTとして変化へんかの1周期しゅうきをとる[6]。 これにより、どの時点じてんから算定さんていしても実効じっこうおなとなる。また、変化へんか周期しゅうき整数せいすうばい時間じかん無限むげん時間じかんでも1周期しゅうきおなとなる。

一方いっぽう周期しゅうきの(ランダムな)なみであれば、以下いかしき定義ていぎされる[17]

実際じっさいには、有限ゆうげんちょう時間じかん平均へいきんして近似きんじする[18]

測定そくていによりもとめる場合ばあい瞬時しゅんじ音圧おんあつ周期しゅうきてき変動へんどうするおとについては、その間隔かんかく周期しゅうき整数せいすうばい、または、周期しゅうきくらべてなが間隔かんかくとし、周期しゅうきてき変動へんどうするおとについては、その間隔かんかくもとめられた数値すうち音圧おんあつ実効じっこう)が、その時間じかん範囲はんいちゅうしょう変化へんか実質じっしつてき独立どくりつであるようにするだけながくなければならないとされる[19]

実効じっこう時間じかん変化へんか[編集へんしゅう]

おとをサンプリングしてられた時間じかん波形はけいについて、時間じかん波形はけい全体ぜんたい平均へいきんをとることにより全体ぜんたい実効じっこう算定さんていすることができるが、実効じっこう時間じかん変化へんか算定さんていすることはできない。時間じかん変化へんか方法ほうほうとしては、時間じかん波形はけい分割ぶんかつしてそれぞれ実効じっこうもとめる方法ほうほうのほか、実効じっこう検波けんぱどう特性とくせい回路かいろによる方法ほうほうがある[20]

実効じっこう検波けんぱどう特性とくせい回路かいろは、(瞬時しゅんじ音圧おんあつ変換へんかんした電気でんき信号しんごう時間じかん波形はけいを、2じょうしてRC直列ちょくれつ回路かいろにより交直変換へんかんするものであり、アナログ回路かいろ容易ようい実現じつげんすることができ、またひと感覚かんかく聴覚ちょうかく時間じかん応答おうとう)ともよくうことから、近似きんじてき方法ほうほうであるもののひろ使つかわれている。RC直列ちょくれつ回路かいろにおけるτたう=RCτたうがこの回路かいろ特性とくせいさだめるパラメータでこれを「とき定数ていすう」という[20][21]

このとき、実効じっこう検波けんぱどう特性とくせい回路かいろとき定数ていすうτたうであるサウンドレベルメータが出力しゅつりょくする音圧おんあつレベル(後述こうじゅつ)は、時間じかんt関数かんすうとして、以下いかのようにしめされる[22]

すなわち、音圧おんあつレベル(騒音そうおんレベル)の測定そくていにおいては、ある時間じかんtにおける音圧おんあつ実効じっこうについて、実効じっこう検波けんぱどう特性とくせい回路かいろとき定数ていすうτたうとして あらわされるもちいられていることになる。

サウンドレベルメータ(騒音そうおんけい)の測定そくてい信号しんごうはその実効じっこうがF、Sの2しゅ速度そくど指示しじされ、回路かいろとき定数ていすうはそれぞれ0.125 s,1 sであり[21]、JIS C 1509-1:2017「電気でんき音響おんきょう−サウンドレベルメータ(騒音そうおんけい)」において時間じかんおも特性とくせいとしてさだめられている[23]。(Fはfast(はやい),Sはslow(おそい)を意味いみする。)

音圧おんあつとエネルギー[編集へんしゅう]

おとエネルギーあらわりょうは、以下いかしめすとおり音圧おんあつ実効じっこう)の2じょう比例ひれいする。

単位たんい時間じかん単位たんい面積めんせき通過つうかするおとのエネルギーとして定義ていぎされるおとつよ I [W/m2]は、媒質ばいしつちゅう単位たんい体積たいせきふくまれる音波おんぱのエネルギーであるエネルギー密度みつど D (=prms2/ρろーc2)から、実効じっこう音圧おんあつprms [Pa]、媒質ばいしつ密度みつどρろー [kg/m3]、媒質ばいしつちゅう音波おんぱ速度そくどc [m/s]をもちいて、

あらわされる[24]うえしきから、おとつよIは、音圧おんあつ実効じっこうprmsの2じょう比例ひれいすることがわかる。

おと場内じょうないのあるめんS [m2]を単位たんい時間じかんない通過つうかする音響おんきょうエネルギーを音響おんきょうパワーび、音響おんきょうパワーW [W]は音響おんきょうインテンシティ(おとつよさ)Iもちいて

定義ていぎされ、音源おんげんかこむ閉曲めん通過つうかする音響おんきょうパワーを音響おんきょう出力しゅつりょく[25]

自由じゆう空間くうかん自由じゆうおんじょう)にあるてん音源おんげんから音響おんきょう出力しゅつりょくW球面きゅうめん伝搬でんぱんするとき、音源おんげんからr [m]はなれた場所ばしょおとつよ [W/m2]は音源おんげんからの距離きょりの2じょう反比例はんぴれいし、音圧おんあつ [Pa]は音源おんげんからの距離きょり反比例はんぴれいする。[26][27]

このようにおとつよさや音圧おんあつ音源おんげんからはなれていくにしたがちいさくなることを、距離きょり減衰げんすい(あるいは幾何きか減衰げんすい)という[28]

音圧おんあつおとおおきさ[編集へんしゅう]

空気くうきちゅう音圧おんあつ変化へんかみみたっすると、おとがするという感覚かんかくられる。みみでは音圧おんあつ振幅しんぷく大小だいしょうにより基底きていまく振幅しんぷくさだまり、それにおうじたかずのインパルスをコルチ器官きかんはっして大脳だいのうつたえることで、知覚ちかくされるおとおおきさの大小だいしょうさだまる。一方いっぽうで、基底きていまく振動しんどう部位ぶいおと周波数しゅうはすうによってことなるため、おとおおきさは周波しゅうはすうによっても左右さゆうされる[8]

こうしたおと知覚ちかくてきおおきさをあらわおとおおきさラウドネス)は、感覚かんかくりょうであり、物理ぶつりてき直接ちょくせつ測定そくていすることはできないが、基本きほんてきにはおとのエネルギーと対応たいおうしており、おとつよさがせばおとおおきくかんじられる。おとおおきさは、おとつよさのほかにおと時間じかん構造こうぞう、また後述こうじゅつのとおり周波数しゅうはすうスペクトル構成こうせいにも依存いぞんする[29][30]

可聴かちょういき[編集へんしゅう]

一般いっぱんてき人間にんげん聴覚ちょうかくおととしてとらえられる音圧おんあつは、最小さいしょうで20μみゅーPa程度ていど最大さいだいで20Pa程度ていどとされ、この範囲はんい(2.0✕10-5~2.0✕101[Pa]、後述こうじゅつ音圧おんあつレベルで0~120[dB])の音圧おんあつ可聴かちょういきぶ。可聴かちょういき上回うわまわおおきさの圧力あつりょく変化へんかでは鼓膜こまく空気くうき振動しんどうによりきずつけられ、いたみがかんじられる[31]

大気たいきあつ音圧おんあつ[編集へんしゅう]

大気たいきあつはおよそ 105(Pa)[注釈ちゅうしゃく 3]であるが、人間にんげんおとは、上述じょうじゅつのとおり、おおきな場合ばあいでも 102(Pa)程度ていどであり、大気たいきあつくらべれば音圧おんあつ非常ひじょうちいさいである[3]

音圧おんあつ音圧おんあつレベル[編集へんしゅう]

人間にんげん感覚かんかくりょう物理ぶつりりょうたいして対数たいすう比例ひれい増減ぞうげんすることがられている。音圧おんあつについては、人間にんげん聴覚ちょうかくではおと周波数しゅうはすうにも関係かんけいするが、おおよそ 2×10-5 から 20 (Pa)の音圧おんあつ範囲はんい可聴かちょういき(ダイナミックレンジ)であり非常ひじょうひろ[32]。このため、実効じっこう音圧おんあつ p にたいし、基準きじゅんとなる音圧おんあつを p0 としたときのたい数値すうちをとり、

(dB)

とし、Lp音圧おんあつレベル(Sound pressure level、SPL)(単位たんいはデシベル)という。

ここで基準きじゅんとなる音圧おんあつ p0 は、1 (kHz)においてききとれる最小さいしょうとされ、

(Pa)

である[33]

音響おんきょうインテンシティレベル(おとつよさのレベル)と音圧おんあつレベル[編集へんしゅう]

音圧おんあつレベルと同様どうように、音響おんきょうインテンシティ(おとつよさ)I[W/m2]をデシベルとしてあらわしたものを音響おんきょうインテンシティレベルおとつよさのレベル)といい、

[dB]

定義ていぎされる。ここで、基準きじゅんとなる音響おんきょうインテンシティI0は、

[W/m2]

である[34]

音響おんきょうインテンシティI[W/m2]は、実効じっこう音圧おんあつprms [Pa]、媒質ばいしつ密度みつどρろー [kg/m3]、媒質ばいしつちゅう音波おんぱ速度そくどc [m/s]をもちいて、

あらわされることから、音圧おんあつレベルLp

となる。ρろーcの温度おんど気圧きあつによりことなるが、常温じょうおんつねあつでは400にちかであり、をデシベルであらわすときには、実用じつようてきにはρろーc = 400とおいて

としてよいとされる[34]

音響おんきょうパワーレベルと音圧おんあつレベル[編集へんしゅう]

音響おんきょうパワーW[W]をデシベルとしてあらわしたものを音響おんきょうパワーレベルといい、

[dB]

定義ていぎされる。ここで、基準きじゅんとなる音響おんきょうパワーW0は、

[W]

である[34]

自由じゆう空間くうかん自由じゆうおんじょう)にかれた音響おんきょう出力しゅつりょく音響おんきょうパワー)W[W]の指向しこうせい音源おんげんからr[m]の場所ばしょの、音響おんきょうインテンシティ(おとつよさ)I[W/m2]は、であることから、音響おんきょうインテンシティ(おとつよさ)I[W/m2]は、実効じっこう音圧おんあつprms [Pa]、媒質ばいしつ密度みつどρろー [kg/m3]、媒質ばいしつちゅう音波おんぱ速度そくどc [m/s]をもちいて、あらわされることから、

である。この両辺りょうへん対数たいすうをとり、音圧おんあつレベルLp音響おんきょうパワーレベルLWによりあらわすと

[dB]

という関係かんけいがある[34]

音圧おんあつおとおおきさと周波数しゅうはすう[編集へんしゅう]

実際じっさいおとは、様々さまざま周波数しゅうはすう成分せいぶんふくふくごうおんであることがおおく、このようなふくごうおんについては、その周波数しゅうはすう成分せいぶんることが重要じゅうようとなる[35]

音圧おんあつ周波数しゅうはすうスペクトル[編集へんしゅう]

おと周波数しゅうはすう成分せいぶんについて、よこじく周波数しゅうはすう対数たいすうでとり、たてじくかく周波数しゅうはすう対応たいおうする音圧おんあつ実効じっこう音圧おんあつ)によりしめすと、じゅんおとであればそのじゅんおと構成こうせいする周波数しゅうはすうのみで、またじゅんおとわせによるふくごうおんについては、そのふくごうおん構成こうせいするじゅんおと周波数しゅうはすうごとに、それぞれの音圧おんあつ実効じっこうあらわれる離散りさんてきかたちせんスペクトル)としてあらわされる。一方いっぽう音圧おんあつ波形はけいがより複雑ふくざつになった場合ばあいには、離散りさんてきかたちとはならず、周波しゅうはすうたいして連続れんぞくてき分布ぶんぷ連続れんぞくスペクトル)となる[35]

周波数しゅうはすうによるおとおおきさのちがい(とうラウドネスレベル曲線きょくせん[編集へんしゅう]

ISO 226:2003のとうラウドネス曲線きょくせん(Suzuki-Takeshima曲線きょくせん[36]

おな音圧おんあつおとであっても周波数しゅうはすうことなれば、そのおとおおきさ(おと知覚ちかくてきおおきさをあらわ感覚かんかくりょう)は、かならずしもおなじではなく[37]がいして、ひく周波数しゅうはすう領域りょういきでは、もっと感度かんどい1~5kHzきろへるつ付近ふきんくらべて、相対そうたいてきたか音圧おんあつレベルでないとおなおおきさにこえない[38]

この周波数しゅうはすうによるおとおおきさのちがいについて、基準きじゅんとなる周波数しゅうはすう(1,000Hzへるつ)のじゅんおと音圧おんあつレベルとおなおおきさにこえる、ある周波数しゅうはすうじゅんおと音圧おんあつレベル(ラウドネスレベル)をせんしめしたものがとうラウドネスレベル曲線きょくせんであり、フレッチャー=マンソンによるものが著名ちょめいである[37]とうラウドネスレベル曲線きょくせん測定そくていふるくから測定そくていかえされており、近年きんねんでは、鈴木すずき竹島たけしまによるものがISO 226:2003として規格きかくされている[38]

A特性とくせい音圧おんあつレベル[編集へんしゅう]

周波数しゅうはすうによる聴感補正ほせいグラフ
平坦へいたん特性とくせいをZ特性とくせいといい、A,C特性とくせいとうラウドネス曲線きょくせんのそれぞれ60,100phonに近似きんじしたおもみづけである。その中間ちゅうかんのB特性とくせいと、航空機こうくうき騒音そうおん評価ひょうかのために提案ていあんされたD特性とくせい音源おんげん改善かいぜんによりもちいられなくなった[39]

さまざまな周波しゅうはすうにより構成こうせいされるおとおおきさの評価ひょうかについて、周波数しゅうはすうによる感覚かんかくてきおとおおきさのちがいをまえて、周波数しゅうはすうによる聴感補正ほせいおこなった音圧おんあつもちいる。通常つうじょうもちいられるサウンドレベルメータ(騒音そうおんけい)には、このような周波数しゅうはすうによる聴感補正ほせいおこな周波数しゅうはすう補正ほせい回路かいろが、おとおおきさのレベルを近似きんじてき測定そくていする目的もくてき挿入そうにゅうされている[40]

騒音そうおん測定そくていもちいる聴感補正ほせいは、A特性とくせいによるものが一般いっぱんてきである。A特性とくせいは、フレッチャー=マンソンの40 phon[注釈ちゅうしゃく 4]におけるとうラウドネスレベル曲線きょくせんぎゃくにしたものに近似きんじされる。このA特性とくせいにより周波数しゅうはすうおもみづけをおこなった音圧おんあつpAもちいて算定さんていした音圧おんあつレベル(A特性とくせい音圧おんあつレベル)LAを、騒音そうおんレベルといい、騒音そうおんおおきさの評価ひょうかもちいられる[41]

音圧おんあつ用語ようご[編集へんしゅう]

音圧おんあつかたりふく用語ようごには、以下いかのようなものがある。

瞬時しゅんじ音圧おんあつ
空気くうきちゅう[注釈ちゅうしゃく 5]の1てんにおけるある瞬間しゅんかん圧力あつりょくにおいて、おと場合ばあい[注釈ちゅうしゃく 6]くらべて変化へんかしたぶん圧力あつりょく[42]。JISでの定義ていぎは「媒質ばいしつちゅうのあるてんで、対象たいしょうとする瞬間しゅんかん存在そんざいする圧力あつりょくからせいあついた」(えい: instantaneous sound pressure[43]
ピーク音圧おんあつ
瞬時しゅんじ音圧おんあつのうち、対象たいしょう時間じかんちゅう最大さいだい絶対ぜったい(=最大さいだい振幅しんぷく)をピーク音圧おんあつぶ。JISでの定義ていぎは「ある時間じかんない最大さいだい絶対ぜったい瞬時しゅんじ音圧おんあつ」(えい: peak sound pressure[43]
実効じっこう音圧おんあつ
周期しゅうきてき変化へんかするおとについては、変化へんかの1周期しゅうきにおける瞬時しゅんじ音圧おんあつ実効じっこう実効じっこう音圧おんあつといい、これも音圧おんあつ[6]。JISにおいては「音圧おんあつ」を「とく指定していしないかぎり、ある時間じかんない瞬時しゅんじ音圧おんあつ実効じっこう」と定義ていぎする[43]
基準きじゅん音圧おんあつ
JISでは「習慣しゅうかんてきえらばれた音圧おんあつで、気体きたい場合ばあいには20μみゅーPa、液体えきたいおよ固体こたい場合ばあいには1 Pa」と定義ていぎされる。(えい: reference sound pressure[43]
20μみゅーPaは非常ひじょう聴力ちょうりょくのよいひとがかろうじてきうる1kHzきろへるつじゅんおと音圧おんあつ実効じっこう)にほぼ相当そうとうする[8]

脚注きゃくちゅう[編集へんしゅう]

  1. ^ このような基本きほん周波数しゅうはすう整数せいすうばいじゅんおと成分せいぶん音楽おんがくてきには倍音ばいおんという。
  2. ^ ここで、添字そえじのrmsは、root mean squareのりゃくである。
  3. ^ 1000 ヘクトパスカル(hPa)。
  4. ^ 1000Hzへるつ、40dBでしべる音圧おんあつレベルのじゅんおとひとしいおとおおきさの、かく周波数しゅうはすうにおける音圧おんあつレベル(とうラウドネスレベル)
  5. ^ より一般いっぱんてきには弾性だんせい媒質ばいしつちゅうをいう。
  6. ^ 空気くうきちゅうでは大気たいきあつす。

出典しゅってん[編集へんしゅう]

  1. ^ 音響おんきょう用語ようご辞典じてん 2003, p. 45.
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  4. ^ a b 電気でんき音響おんきょう振動しんどうがく 1978, p. 6.
  5. ^ 音響おんきょう音声おんせい工学こうがく 1992, p. 7.
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  7. ^ a b 電気でんき音響おんきょう振動しんどうがく 1978, pp. 5–6.
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  10. ^ a b 阪上さかうえ建築けんちく音響おんきょう』 2019, p. 2.
  11. ^ 山本やまもと高木たかぎ環境かんきょう衛生えいせい工学こうがく』 1988, p. 75.
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参考さんこう文献ぶんけん[編集へんしゅう]

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  • 古井ふるいさだひろし音響おんきょう音声おんせい工学こうがく』 2かん近代きんだい科学かがくしゃ電子でんし情報じょうほう工学こうがく入門にゅうもんシリーズ〉、1992ねん9がつISBN 4-7649-0196-X 
  • 日本にっぽん音響おんきょう学会がっかい へん音響おんきょう用語ようご辞典じてん』(新版しんぱん)コロナしゃ、2003ねん7がつISBN 4-339-00755-2 
  • 阪上さかうえ公博きみひろ建築けんちく音響おんきょう』コロナしゃ、2019ねんISBN 978-4-339-01363-4 
  • 前川まえかわ純一じゅんいち森本もりもと正之まさゆき阪上さかうえ公博きみひろ建築けんちく環境かんきょう音響おんきょうがく』(だい3はん)、2011ねんISBN 978-4-320-07707-2 
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  • H.F.オルソン ちょ平岡ひらおか正徳まさのり やく音楽おんがく工学こうがくまことぶんどう新光しんこうしゃ、1969ねん8がつ 
  • JIS Z 8106 : 2000(音響おんきょう用語ようご

関連かんれん項目こうもく[編集へんしゅう]