順じゅん性せい院いん

順じゅん性せい院いん（じゅんしょういん、元和がんわ8年ねん（1622年ねん） - 天和てんわ3年ねん7月がつ29日にち（1683年ねん 9月19日にち））は、江戸えど幕府ばくふ3代だい将軍しょうぐん徳川とくがわ家光いえみつの側室そくしつ。甲府こうふ宰相さいしょう・徳川とくがわ綱重つなしげの生母せいぼ。6代だい将軍しょうぐん徳川とくがわ家宣いえのぶの祖母そぼ。通称つうしょうは夏なつ。父ちちは京都きょうとの町人ちょうにんの弥市やいち郎ろう^[1]と言いい、娘むすめの夏なつが家いえ光こうの子こを出産しゅっさんしたことで士分しぶんに出世しゅっせ、はじめ岡部おかべ八はち左衛門さえもん重じゅう家か、のち藤枝ふじえだ重しげる家かと改名かいめいした。弟おとうとは藤枝ふじえだ方ほう孝たかし。

生涯しょうがい

夏なつは元々もともと徳川とくがわ家光いえみつの正室せいしつ・鷹司たかつかさ孝子たかこ付づけの女中じょちゅうで「御末おすえ」という将軍しょうぐんお目見めみえ以下いかの役職やくしょくだったが、将軍しょうぐんが大奥おおおくで入浴にゅうよくする際さいに世話せわをする「御ご湯殿ゆどの」を任まかせられ、その際さい家光いえみつの手てがつき懐妊かいにんする。

だが、夏なつが懐妊かいにんした年としはちょうど家光いえみつの厄年やくどしで、家光いえみつは産うまれてくる子こに災厄さいやくがかからないようにと姉あねの天樹院てんじゅいん（千姫せんひめ）と相談そうだんし、天樹院てんじゅいんを夏なつの子この養母ようぼとすることを決きめた。やがて夏なつは天樹院てんじゅいんの住居じゅうきょである竹橋たけばし御殿ごてんへと移うつり、正保まさやす元年がんねん5月24日にち（1644年ねん 6月28日にち）、竹橋たけばし御殿ごてんにて男児だんじを出産しゅっさんした。幼名ようみょうは長松ながまつ（祖父そふ・秀忠ひでただの幼名ようみょう）と名付なづけられた。後ごの甲府こうふ宰相さいしょう徳川とくがわ綱重つなしげである。慶安けいあん4年ねん4月がつ20日はつか（1651年ねん 6月8日にち）、家光いえみつが死去しきょすると、夏なつは落飾らくしょくして順じゅん性せい院いんと名乗なのるようになった。順じゅん性せい院いんは天和てんわ3年ねん7月がつ29日にち（1683年ねん9月がつ19日にち）、この世よを去さった。同おなじく家光いえみつ側室そくしつだった桂かつら昌あきら院いんとは犬猿けんえんの仲なかだったと言いわれる。^[2]

順じゅん性せい院いんの死しから26年ねん経たって5代だい将軍しょうぐん綱吉つなよしが嗣子しし無なく没ぼっし、徳川とくがわ綱重つなしげの子こである家宣いえのぶが将軍しょうぐんになった。また、家宣いえのぶの子こで順じゅん性せい院いんの曾孫そうそんに当あたる徳川とくがわ家継いえつぐも7代だい将軍しょうぐんに就任しゅうにんしている。家宣いえのぶの実弟じってい・松平まつだいら清武きよたけは後年こうねん、館林たてばやし藩主はんしゅとなり甥おいの家継いえつぐを補佐ほさすることになる。

実家じっかの藤枝ふじえだ家かは4,500石せきの旗本はたもととして順じゅん性せい院いんの死後しごも存続そんぞくしたが、天明てんめい5年ねん（1785年ねん）に藤枝ふじえだ教きょう行ぎょう（藤枝ふじえだ外がい記き）が遊女ゆうじょ・綾衣あやぎと餌指えさしの家いえで心中しんちゅうのした事ことが露見ろけんし、改易かいえき処分しょぶんとなった。