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香典こうでん

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香典返こうでんがえから転送てんそう
香典こうでんぶくろ

香典こうでん(こうでん。香奠こうでんとも表記ひょうき)とは、仏式ぶっしきとう葬儀そうぎ死者ししゃ霊前れいぜんとうそなえる金品きんぴんをいう。香料こうりょうともいう。「こう」のもちいられるのは、こう線香せんこうわりにそなえるという意味いみであり、「奠」とは霊前れいぜんそなえる金品きんぴん意味いみである。通例つうれい香典こうでんは、香典こうでんぶくろ不祝儀ぶしゅうぎぶくろ)にれて葬儀そうぎ通夜つやあるいは告別こくべつしき)のさい遺族いぞくたいして手渡てわたされる。

香典こうでんぶくろ

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香典こうでんぶくろは、葬儀そうぎ宗教しゅうきょう相手あいて宗旨しゅうし宗派しゅうはわせて使つかける。

仏式ぶっしき香典こうでんぶくろは、しろ無地むじはちすはな絵柄えがらはいったつつみに、「霊前れいぜん」・「香料こうりょう」・「香奠こうでん香典こうでん)」と表書おもてがきし、白黒しろくろあるいはそうぎんぎん一色いっしょく)のむすりの水引みずひきをかける。「佛前ぶつぜん仏前ぶつぜん)」は、よんじゅうきゅうにちななななにち以後いご法要ほうようもちいるのが一般いっぱんてき葬儀そうぎわって故人こじん霊魂れいこん成仏じょうぶつしたのちは「佛前ぶつぜん」、それまでは「霊前れいぜん」とのかんがかた。ただし、浄土真宗じょうどしんしゅう場合ばあいひと死後しごすぐにふつになるという思想しそうつため、香典こうでんであっても「佛前ぶつぜん」とく。また、京都きょうとでは宗派しゅうはかぎらず「佛前ぶつぜん」とし黄白こうはく水引みずひきむすり(あわじむすび)にする。なお、「てん」や「ふつ」は略字りゃくじのため、基本きほんてきには「奠」や「ふつ」とく。

神式しんしきでは、こうもちいないため香典こうでんばない。しろ無地むじつつみに、「霊前れいぜん」・「玉串たまぐしりょう」・「さかきりょう」と表書おもてがきし、白黒しろくろあるいはそうしろ白一色はくいっしょく)のむす水引みずひきあさいとぐち(あさお)のむすりをかける。

キリスト教きりすときょうしきでは、教派きょうはによって多少たしょうことなるが、しろ無地むじ封筒ふうとうか「はなりょう」の表書おもてがきやしろひゃくごう十字架じゅうじかなどが印刷いんさつされた市販しはん封筒ふうとうもちいる。水引みずひきはかけないもしくはそうぎんむすりにする。カトリック場合ばあいには「ミサりょうわたる撒料)」とかれる、という記述きじゅつ書籍しょせきとうられるが、これはまったあやまりで、実際じっさいにはカトリックの通夜つや葬儀そうぎ信者しんじゃおももちいるのはけっして「ミサりょう」などではなく、プロテスタントなどと同様どうようの「おはなりょうはなりょう)」である。カトリックの修道しゅうどうかいとうでは「おはなりょう」の文字もじ印刷いんさつされた封筒ふうとう販売はんばいされているが、「ミサりょう」なる封筒ふうとう販売はんばいされていない[1]。カトリック信者しんじゃ以外いがい一般いっぱん参列さんれつしゃも「はなりょう」とくのがのぞましいとされるが、「霊前れいぜん」や「香典こうでん」といてもとく失礼しつれいにあたるとかんがえられることはほとんどい。なお、「ミサりょう」とは本来ほんらい遺族いぞく追悼ついとうミサひとし依頼いらいしてそのおれいとして司祭しさい謝意しゃいひょうするさいもちいられるものだが、ミサには料金りょうきん発生はっせいするものではないとの理由りゆうから、この場合ばあい「ミサ御礼おれい」などの表書おもてがきが一般いっぱんてきもちいられている[1]

キリスト教きりすときょうプロテスタントの福音ふくいんでは、異教いきょう偶像ぐうぞう崇拝すうはい関係かんけいがあるとみなされるため「香典こうでん」・「霊前れいぜん」といてはならず、「はなりょう」とかれる[2][3][4][5][6]。「葬儀そうぎだい」と立場たちばもある[7]

どの宗教しゅうきょうによるものか不明ふめい場合ばあいは、しろ無地むじつつみに、「はなりょう」「霊前れいぜん」と表書おもてがきし、白黒しろくろあるいはそうぎんむす水引みずひきをかけるのが無難ぶなんであるとする見解けんかいもある。

香典こうでん所有しょゆうけん

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香典こうでんは、相続そうぞくじん葬儀そうぎ関連かんれんする出費しゅっぴ充当じゅうとうすることしゅたる目的もくてきとして、葬儀そうぎ主宰しゅさいしゃ喪主もしゅ)になされた贈与ぞうよ性質せいしつゆう金員きんいんであって遺産いさんにはぞくさないとほぐされる(東京とうきょう家裁かさい昭和しょうわ44ねん5がつ10日とおか 判例はんれいタイムズ248ごう311こう

葬儀そうぎだい祭祀さいし継承けいしょうしゃ喪主もしゅ)が負担ふたんする。一方いっぽう葬儀そうぎだいいてのこった香典こうでん喪主もしゅ財産ざいさんとなる。

香典返こうでんがえ

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現在げんざいでは、忌明きあけに遺族いぞく香典返こうでんがえしをおくることもおおい。忌明きあけとは、仏式ぶっしきならばよんじゅうきゅうにち法要ほうよう神式しんしきならばじゅうにちさいえたのちである。キリストきょうでは忌中きちゅうという概念がいねんはないが、死後しご1ヶ月かげつ昇天しょうてん(召天)記念きねんのあとに仏式ぶっしきなどにならって香典返こうでんがえしをおくる。

香典返こうでんがえしの金額きんがくは、香典こうでんの3わりから5わりであることがおおい。一律いちりつどうぶつおくることもあれば、香典こうでんがくおうじてえることもある。香典返こうでんがえしのしなは、食品しょくひん消耗しょうもうひんおおいが、ちゃコーヒー菓子かしのり砂糖さとうタオル寝具しんぐせっけん食器しょっきなど様々さまざまである。

香典返こうでんがえしには、仏式ぶっしきならば「こころざし」「あかりこころざし」と表書おもてがきし、白黒しろくろあるいは灰色はいいろむすりの水引みずひきをかける。関西かんさい地方ちほうでは、「まん中陰ちゅういんこころざし」と表書おもてがきし、黄白こうはく水引みずひきをかける。「中陰ちゅういん」とはよんじゅうきゅうにちのことである。神式しんしきでは「しのべそうしのくさ・しのびくさ)」または「こころざし」と表書おもてがきし、白黒しろくろあるいはそうぎんむす水引みずひきをかける。キリストきょうしきでは、「召天記念きねん」(プロテスタント)・「感謝かんしゃ」・「こころざし」と表書おもてがきする。水引みずひきはかけない。

香典返こうでんがえしには、会葬かいそう御礼おれい忌明きあけの報告ほうこくねた挨拶あいさつじょうどうこりする。挨拶あいさつじょうには故人こじん戒名かいみょうしるすこともおおい。仏式ぶっしき文中ぶんちゅうもちいられる「ななななにち」「なななな」とはよんじゅうきゅうにちのことである。なお、浄土真宗じょうどしんしゅう場合ばあいは、よんじゅうきゅうにちという概念がいねんがないため、いわゆる「忌明きあけ」は「さんじゅうにち」あるいは「ななにち」を以ってなされる場合ばあいがみられる。

ただし、北海道ほっかいどうでは、会葬かいそう御礼おれい挨拶あいさつじょうと、すうひゃくえん程度ていど品物しなもの香典こうでん領収りょうしゅうしょとも通夜つやときわたされ、忌明きあ香典返こうでんがえしをおこなうことはないことがおおい。

その伊勢いせ地方ちほうでは香典返こうでんがえしを「だい非時ひじ(だいひじ)」といい通夜つや会場かいじょうわたされる。 伊勢いせ地方ちほうはおちゃ産地さんちでもあることからおちゃをもらうことおおい。その奈良ならけん一部いちぶ地域ちいき和歌山わかやまけんでは香典返こうでんがえしの手間てまをはぶくため、その半額はんがくないし一部いちぶ金額きんがく返金へんきんされるところもある。その返金へんきんされる金額きんがくに、2000えん紙幣しへい使用しようされる場合ばあいおおい。

香典こうでん泥棒どろぼう

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起源きげん不明ふめいだが、香典こうでん金銭きんせん使つかうようになって以降いこう葬式そうしきあつまった香典こうでんぬす香典こうでん泥棒どろぼう存在そんざいする。香典こうでん泥棒どろぼうこる背景はいけいとして

  • 大金たいきんあつまりやすい
  • 参列さんれつしゃ全員ぜんいん喪服もふく着用ちゃくようしているため見分みわけがつきにくい。
  • 受付うけつけなどを葬儀そうぎ業者ぎょうしゃ親族しんぞく友人ゆうじんまかせる遺族いぞくおおいこと

など多数たすう背景はいけい存在そんざいする。

浄土真宗じょうどしんしゅう僧籍そうせきっている俳優はいゆう植木うえきひとし主役しゅやくえんじたニッポン無責任むせきにん時代じだいにおいて「香典こうでん泥棒どろぼう」という設定せっていえられなかったのか、『香典こうでん泥棒どろぼうかぎりなくちか人物じんぶつ』という設定せってい変更へんこうしている[8]

香典こうでん意義いぎ

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香典こうでんふるくは「奠」のもちいるのが一般いっぱんてきであったが、奠とはそなもの意味いみであり「香典こうでん香奠こうでん)」とは、故人こじんたいする供物くもつであるとともに、不意ふい事態じたい遭遇そうぐうした故人こじん家族かぞくへの支援しえん意味いみもある。そのため、ふるくは農村のうそん中心ちゅうしん食料しょくりょうおくってそれを僧侶そうりょ葬儀そうぎ参加さんかしゃ食事しょくじてることがおおかった。また、けが思想しそうつよかった時代じだい葬儀そうぎたずさわる故人こじん親族しんぞく人々ひとびと接触せっしょくしてけがれをひろめないようにするために故人こじん家族かぞく親族しんぞく食料しょくりょうあらかじ用意よういしておくという配慮はいりょがあったともわれている。

また、これとはべつ葬儀そうぎ準備じゅんび参加さんかあるいは参列さんれつする地域ちいき知人ちじん友人ゆうじんは、けがれと接触せっしょくするのを最低限さいていげんにするために地域ちいき宿屋やどやあるいは食堂しょくどうりて食事しょくじり、その食料しょくりょう故人こじんあるいはそれ以外いがい一般人いっぱんじんべつもの用意よういしてそれは地域ちいき負担ふたんとして住民じゅうみん用意よういした。これを「むら香奠こうでん」などとしょうした。のちけがれの観念かんねん希薄きはくとなると、親族しんぞく友人ゆうじん知人ちじん食事しょくじ一緒いっしょおこなわれ、地域ちいきによっては地域ちいき全体ぜんたい葬儀そうぎおこなうようになった。このため、親族しんぞく以外いがい香典こうでんすべてが故人こじん家族かぞくわたされるようになったとかんがえられている。また、故人こじんとの親疎しんそによって香典こうでんりょうちがい、喪主もしゅつとめない故人こじん実子じっしべいむぎを1ひょうまるごとし、さらさけ1たるける慣習かんしゅうひろおこなわれていた。これを「いちひょう香奠こうでん」とんだ。

香典こうでん金銭きんせんわり、食料しょくりょうがそのふくものとして簡単かんたん供物くもつわっていくのは、武士ぶし階層かいそうでは室町むろまち時代ときよ一般いっぱん庶民しょみんでは明治めいじ時代じだい以後いご一部いちぶ農村のうそんでは戦後せんごはいってからのこととかんがえられている。

えだ義理ぎり

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えだ義理ぎり(えだぎり)とは香典こうでんわたさい喪主もしゅとはことなる(そうがいの)親族しんぞくたいしててた香典こうでんである[9]たんえだ(えだ)ともばれ、故人こじん長男ちょうなん家督かとくいでいると仮定かていした場合ばあいとつさきはいった長女ちょうじょ次女じじょとう分家ぶんけした次男じなん三男さんなんとうたいしてわたされる。いえ子息しそくたいしてもおやくしたことにたいするおやみの気持きもちをめたものである[10]

地域ちいきむすびつきがつよかった近世きんせいにおいて全国ぜんこく山村さんそん一部いちぶ限定げんていてき散逸さんいつてきにみられたが(前述ぜんじゅつ香典こうでん意義いぎ参照さんしょう)、現在げんざい風習ふうしゅうとして色濃いろこのこっているのは長野ながのけん上伊那かみいなぐん上伊那かみいな地域ちいき)の8市町村しちょうそん伊那いな駒ヶ根こまがね辰野たつのまち箕輪みのわまち飯島いいじままち南箕輪みなみみのわむら宮田みやたむら中川なかがわむら)だけである[10]

この地域ちいきでは、故人こじんおよび喪主もしゅとは直接ちょくせつえんのないもののこされた子息しそくたいしてわたすことが一般いっぱんてきであり、おおくの場合ばあい、その子息しそく友人ゆうじん所属しょぞくする職場しょくばがその子息しそく本人ほんにんてて香典こうでんわたす。そう家内かないであっても喪主もしゅ以外いがい成人せいじんした兄弟きょうだい姉妹しまい同居どうきょしている場合ばあい友人ゆうじん職場しょくばからあえてその兄弟きょうだい姉妹しまいててわたされる場合ばあいおおい。故人こじんまごにあたる成人せいじんしゃそう家内かないいる場合ばあい同様どうようである。また、故人こじん兄弟きょうだい姉妹しまいたいしてわた場合ばあいもある[10]

えだ義理ぎりたいしてわたされた香典こうでん喪主もしゅ財産ざいさんとはならず、えだかれた親族しんぞく財産ざいさんとなる。このため香典こうでんちょうへの記載きさいあとえだきをけて明確めいかく区別くべつされたり、あえて記載きさいされずべつにまとめられることもある。親族しんぞくごとに香典こうでんちょうをしたためる場合ばあいもある。しかし近年きんねんではこの慣習かんしゅうらない世代せだい家族かぞくそう増加ぞうかもあり、あえてえだ義理ぎり区別くべつしない場合ばあいおおい。

えだ義理ぎりかたは、香典こうでんぶくろひょうみぎ上隅うえすみに「○○さま」とてる親族しんぞく氏名しめい黒字くろじしるす。薄墨うすずみふでである必要ひつようはなく、あくまでもえだわかればよい。なお、えだ義理ぎりとなる親族しんぞくへのめいしるすことを「えだく」とぶ。

えだ義理ぎりたいしてわたされた香典こうでん返礼へんれい香典返こうでんがえし)は、えだ義理ぎりかれたものおこなうのが慣例かんれいであるが、事前じぜん喪主もしゅそう)とえだ義理ぎりとなるものとでめをする場合ばあいもある。

脚注きゃくちゅう

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  1. ^ a b 女子じょしパウロかいオンラインショッピング 封筒ふうとう(おはなりょう、おい、お見舞みまい、おれい 女子じょしパウロかい
  2. ^ 勝本かつもと正實まさみ日本にっぽん宗教しゅうきょう行事ぎょうじにどう対応たいおうするか』いのちのことばしゃ
  3. ^ 橋本はしもとたつみ日本人にっぽんじん祖先そせん崇拝すうはい』いのちのことばしゃ
  4. ^ たき元明もとあき千代ちよいた祝福しゅくふくCLC出版しゅっぱん
  5. ^ 教会きょうかい成長せいちょうシンポジウム』新生しんせい運動うんどう
  6. ^ きょう会員かいいん必携ひっけいひつじぐんしゃ
  7. ^ 『クリスチャンと仏教ぶっきょうのお葬式そうしきICM出版しゅっぱん
  8. ^ 小林こばやし信彦のぶひこ喜劇きげきじん花束はなたばを』新潮しんちょう文庫ぶんこ
  9. ^ 株式会社かぶしきがいしゃグレース - よくあるご質問しつもん
  10. ^ a b c 上伊那かみいな編纂へんさんかい 編著へんちょだいよんしょう じん一生いっしょう だいよんせつ そうせい」『長野ながのけん上伊那かみいなだい5かん民俗みんぞくへん(うえ)、上伊那かみいな刊行かんこうかい、1980ねん、596-636ぺーじ 

関連かんれん項目こうもく

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