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ほね伝導でんどう

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』

ほね伝導でんどう(こつでんどう)とは、生体せいたい内部ないぶ伝播でんぱするおとくこと、またはその方法ほうほうこえなどの生体せいたい内部ないぶから発生はっせいするおと生体せいたい表面ひょうめん計測けいそくする方法ほうほうすこともある。

概要がいよう

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通常つうじょう動物どうぶつおとかんじる仕組しくみは空気くうきつたって鼓膜こまく中耳ちゅうじ)を振動しんどうさせ聴覚ちょうかく神経しんけい内耳ないじ)につたわっているが(しるべおん)、ほね伝導でんどうとはおと振動しんどうほね導体どうたいとして直接ちょくせつ聴覚ちょうかく神経しんけいつたわる(ほねしるべおん)ものである。このほね伝導でんどう意図いとてきこさずとも日常にちじょうつねこっており、自分じぶん自分じぶんこえしるべおんほねしるべおんわさったものである。録音ろくおんした自分じぶんこえはじめてくとつよ違和感いわかんおぼえるのは、録音ろくおん機器ききマイク空気くうき伝導でんどうによってつたわるおとのみを録音ろくおんするからである。

なお、一部いちぶ生物せいぶつからだ表面ひょうめん耳殻じかくたず、そのような生物せいぶつほね伝導でんどうによって外部がいぶおと検知けんちしている。たとえばクジラは、水圧すいあつ影響えいきょうけるために聴覚ちょうかく器官きかんすべ体内たいないにあるが、しもあごほねみず震動しんどうをとらえてみみこつつたえることでおとかんっている。

発見はっけん研究けんきゅう

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ほね伝導でんどうによっておとつたわることを人々ひとびとがいつ認識にんしきしたのかをしめすものはない。ただし、かたいものを咀嚼そしゃくしたおと自分じぶんにだけつたわることを人々ひとびと体験たいけんてき理解りかいしていたはずである。

16世紀せいき

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この現象げんしょう解剖かいぼうがくてき研究けんきゅうしたのは、16世紀せいきアンドレアス・ヴェサリウスガブリエレ・ファロッピオバルトロメオ・エウスタキウスらによるものが最初さいしょとされる[1]

また、数学すうがくしゃであり医師いしでもあったジェロラモ・カルダーノは、著書ちょしょ「De Subtilitate(1550)」のなかで、ぼうなどをはさむことでおとみみつたえる方法ほうほうについて解説かいせつしている。ただし、カルダーノの著述ちょじゅつには、ヴェサリウスのおしでありあぶみこつ発見はっけんしゃでもあるイングラシア影響えいきょうけているとのせつもある。

歴史れきしじょうはじめてほね伝導でんどうによる聴覚ちょうかく伝達でんたつ重要じゅうようせい認識にんしきし、臨床りんしょう試験しけんをしたのはイタリアの医師いし、ヒエロニムス・カピバッチである。かれは、難聴なんちょう患者かんじゃやく2フィートのてつつるもちいておとつたわるか診断しんだんした。現代げんだい聴覚ちょうかく学的がくてきにはただしいとはいえない方法ほうほうではあるが、ほね伝導でんどうによる聴覚ちょうかく伝達でんたつ歴史れきしにおいておおきないちである。なお、カピバッチがこの方法ほうほう独自どくじ発見はっけんしたのか、カルダーノの著作ちょさくなどの影響えいきょうけたのかはさだかではない。

17世紀せいき

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フランスの医師いしジャン・イタール聴覚ちょうかく障害しょうがいしゃへのほね伝導でんどうによるおと伝達でんたつ研究けんきゅうした。イギリスの医師いしジョン・ブルワー英語えいごばんかいしたほね伝導でんどうにより、楽器がっき振動しんどうくことについて研究けんきゅうしている。

18世紀せいき

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ドイツの作曲さっきょくベートーヴェンは20だい後半こうはん難聴なんちょうわずらい、ほとんどなにこえないほどの状態じょうたいになったが、このときかれ指揮棒しきぼうピアノけてほね伝導でんどうおとをききとることで、作曲さっきょくつづけることができたとわれている[2]

19世紀せいき

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アメリカの発明はつめいリチャード・ローズは、「オーディフォン(Audiphone)」とばれる補聴器ほちょうき特許とっきょ取得しゅとく[3]。これはかたいゴム素材そざいつくられたファンで構成こうせいされており、オペレータのあごほね使用しようしておと振動しんどう伝導でんどうし、聴覚ちょうかく改善かいぜんするとされるもの。これはほね伝導でんどうにおける最初さいしょ特許とっきょといわれている。

20世紀せいき

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スウェーデンのコクレア英語えいごばんしゃほねしるべ聴力ちょうりょく活用かつようがたインプラント(Bone Anchored Hearing Aid : Baha)を開発かいはつ実用じつよう成功せいこうした。

ほね伝導でんどう利用りよう

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広帯域こうたいいき多目的たもくてき無線むせん携帯けいたいようIがたほね伝導でんどうスピーカ


ほねしるべおんは、振動しんどうする物体ぶったい頭部とうぶや頸部(ちちさま突起とっきもちいられることがおおい)に接触せっしょくさせることでおと一部いちぶ外耳がいじ中耳ちゅうじかいさずに直接ちょくせつ内耳ないじ到達とうたつする。これを利用りようし、外耳がいじ中耳ちゅうじ障害しょうがいのあるタイプのつておんせい難聴なんちょうよう補聴器ほちょうき活用かつようされている。

外部がいぶ騒音そうおん妨害ぼうがいされずにおとをききとることが出来できたり、ぎゃくほね伝導でんどうおときながらみみからはいってくるおとくことも出来できるため、空気くうき伝導でんどう利用りようした音響おんきょう機器ききことなりみみ開放かいほうしておくことが出来できる。そのため、みみ開放かいほうしておかなければ危険きけん状況じょうきょうはたらひと消防しょうぼう兵士へいしなど)の通信つうしん機器きき利用りようされている。さらに長時間ちょうじかん空気くうき伝導でんどう利用りようした音響おんきょう機器きき使用しようすると、疲労ひろう聴覚ちょうかく機能きのう低下ていかさせる可能かのうせいがあるが、ほね伝導でんどうならばその可能かのうせいすくないとされる。

ほね伝導でんどう電話機でんわき

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日本にっぽん国内こくないでの嚆矢こうしえる製品せいひんは、三洋電機さんようでんきが2002ねん2がつ1にちにリリースした「ほね伝導でんどう電話機でんわき きにくかったこえこえちゃう」(TEL-KU1)[4]。そのツーカーげんKDDI)が世界せかいはつほね伝導でんどう対応たいおう携帯けいたい電話でんわ「TS41」をリリース[5]

ほね伝導でんどうヘッドホン

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2006ねんにはゴールデンダンスがAUDIO BONE[6]、2009ねんにサンコーがカナルがたこつ伝導でんどうイヤホンVONIA EMP-708LITE[7]をリリース。ほね伝導でんどう技術ぎじゅつ利用りようしたスピーカーヘッドホン各社かくしゃから発売はつばいされている。

ジョギングやマラソンなどのスポーツシーン[8]通勤つうきん通学つうがくでの使用しようなど、外出がいしゅつさきでの使用しようおも用途ようととされていたが、2020ねん緊急きんきゅう事態じたい宣言せんげん発令はつれい、リモートワークが推奨すいしょうされたことからビジネスでの利用りようえている[9]

そのほね伝導でんどう機器きき

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ほね伝導でんどうトランスデューサ内蔵ないぞうブラシ[10]ヘルメット装着そうちゃくがた[11]サングラスかた[12]など、その形状けいじょう製品せいひんスタイルも多様たようしている。

ほねみちびけちょう音波おんぱ

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ほねみちびけちょう音波おんぱ(こつどうちょうおんぱ)とは、ほね伝導でんどう呈示ていじされたちょう音波おんぱのこと。通常つうじょう、ヒトはちょう音波おんぱ知覚ちかくできないが、ほね伝導でんどう呈示ていじされた場合ばあい聴覚ちょうかく健常けんじょうものだけでなく、一部いちぶ重度じゅうどかんおんせい難聴なんちょうものにも聴覚ちょうかくとして知覚ちかくされる。(ヒトには知覚ちかくできないとかんがえられていた)ちょう音波おんぱであるのに明瞭めいりょう知覚ちかくされるということ、重度じゅうどかんおとせいなん聴者ちょうしゃにも比較的ひかくてき容易ようい知覚ちかくされるということから、通常つうじょう聴覚ちょうかくとはことなる知覚ちかくメカニズムにっている可能かのうせいがあるとかんがえられている。産業さんぎょう技術ぎじゅつ総合そうごう研究所けんきゅうじょらによって知覚ちかくメカニズムの解明かいめい新型しんがた補聴器ほちょうきへの応用おうようすすめられている。

おと計測けいそくほうとしてのほね伝導でんどう

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こえなどの生体せいたい内部ないぶから発生はっせいするおとを、生体せいたい表面ひょうめん計測けいそくする方法ほうほうほねしるべ(こつどう)ともう。かならずしもほねかいしていない場合ばあいであっても一般いっぱんほね伝導でんどうわれるが、区別くべつして“筋肉きんにく伝導でんどう”とばれることもある。

軟骨なんこつ伝導でんどう

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ほね伝導でんどうは、頭蓋骨ずがいこつおと情報じょうほうふく振動しんどうあたえると、その振動しんどう内耳ないじ蝸牛かぎゅう)にたっし、おと感覚かんかくこす伝導でんどう経路けいろであるのにたいし,軟骨なんこつ伝導でんどうみみ軟骨なんこつでの振動しんどう鼓膜こまく付近ふきんおと生成せいせいする伝導でんどう経路けいろで,頭蓋骨ずがいこつ振動しんどう必要ひつようとしない[13][14][15]奈良県立医科大学ならけんりついかだいがく細井ほそい裕司ゆうじ教授きょうじゅ軟骨なんこつ伝導でんどう聴覚ちょうかく発見はっけん企業きぎょう合同ごうどうで、これを利用りようした補聴器ほちょうきなど機器きき開発かいはつ改善かいぜんすすめている[16][17][18][19]

脚注きゃくちゅう

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  1. ^ Origins of Bone Conduction Hearing” (英語えいご). Wayne's World (2012ねん3がつ26にち). 2021ねん3がつ28にち閲覧えつらん
  2. ^ 滝川たきがわ洋二ようじ発展はってんコラムしき 中学ちゅうがく理科りか教科書きょうかしょ だい1分野ぶんや(物理ぶつり化学かがく)』講談社こうだんしゃ〈ブルーバックス〉、2008ねん、55ぺーじISBN 978-4062575911 
  3. ^ Today in Engineering History: Audiphone Hearing Aid Patented” (英語えいご). Electrical Engineering News and Products (2015ねん9がつ23にち). 2021ねん3がつ28にち閲覧えつらん
  4. ^ News:速報そくほう通話つうわを“ほねく”電話機でんわき 三洋さんよう開発かいはつ”. www.itmedia.co.jp. 2021ねん2がつ7にち閲覧えつらん
  5. ^ ツーカー、世界せかいはつほね伝導でんどうケータイ「TS41」”. k-tai.watch.impress.co.jp. 2021ねん2がつ7にち閲覧えつらん
  6. ^ AUDIO BONE(オーディオボーン)|ほね伝導でんどう製品せいひん開発かいはつほね伝導でんどう専門せんもんメーカーゴールデンダンス”. www.goldendance.co.jp. 2021ねん2がつ7にち閲覧えつらん
  7. ^ サンコー、カナルがたこつ伝導でんどうイヤホン“VONIA”「EMP-708LITE」を発売はつばい”. PHILE WEB. 2021ねん2がつ7にち閲覧えつらん
  8. ^ AfterShokzの「ほね伝導でんどうヘッドホン」でスポーツをもっと快適かいてきに! みみふさがない自由じゆう音楽おんがく体験たいけんができる2モデルをレビュー (1/2)”. Phile-web. 2021ねん2がつ7にち閲覧えつらん
  9. ^ 株式会社かぶしきがいしゃインプレス (2021ねん1がつ25にち). “[スタパ齋藤さいとうの「スタパトロニクスMobile」 テレワークの「みみつう問題もんだいほね伝導でんどうイヤフォンで解消かいしょうだゼ!!!]”. ケータイ Watch. 2021ねん2がつ7にち閲覧えつらん
  10. ^ ほね伝導でんどう音楽おんがくたのしみながら歯磨はみがきができる※1どもの仕上しあみが専用せんようブラシ「Possi(ポッシ)」事業じぎょうおよび一般いっぱん販売はんばい開始かいしについて”. www.atpress.ne.jp. 2021ねん2がつ7にち閲覧えつらん
  11. ^ 振動しんどうによりおとつたえるしん世代せだいヘルメットスピーカー「addSound」が先行せんこう予約よやく受付うけつけちゅう”. モーサイ. 2021ねん2がつ7にち閲覧えつらん
  12. ^ ほね伝導でんどうスピーカー内蔵ないぞう!サングラスとしても使用しよう可能かのう&オシャレなデザインで普段ふだん使づかいに最適さいてきなスマートグラス”. プレスリリース・ニュースリリース配信はいしんシェアNo.1|PR TIMES. 2021ねん2がつ7にち閲覧えつらん
  13. ^ Hosoi H, Nishimura T, Shimokura R, et al. (2019). “Cartilage conduction as the third pathway for sound transmission”. Auris Nasus Larynx 46: 151-159. 
  14. ^ 細井ほそい裕司ゆうじ西村にしむらただしおのれ下倉したくら良太りょうた (2020). “ほねしるべ時代じだいから軟骨なんこつ伝導でんどう時代じだいへ -軟骨なんこつ伝導でんどう基礎きそ応用おうよう軟骨なんこつ伝導でんどう補聴器ほちょうき-”. Audiology Japan 63: 217-225. 
  15. ^ したくら良太りょうた細井ほそい裕司ゆうじ西村にしむらただしおのれ (2018). “軟骨なんこつ伝導でんどう聴覚ちょうかくのメカニズムと応用おうようみみくちほどにものをいう-”. 日本にっぽん音響おんきょう学会がっかい 74: 649-654. 
  16. ^ リオン、軟骨なんこつ伝導でんどう補聴器ほちょうき開発かいはつ成功せいこう
  17. ^ 軟骨なんこつ伝導でんどう技術ぎじゅつ」を利用りようしたスピーカー技術ぎじゅつ京都きょうとのメーカーが発表はっぴょう
  18. ^ 軟骨なんこつく! ちょう音波おんぱこえる!? あたらしい聴覚ちょうかくひろげるおと可能かのうせい
  19. ^ 軟骨なんこつ伝導でんどう適用てきようしたスマートフォンをしん提案ていあん すみ(かど)の振動しんどうによって、騒音そうおん環境かんきょうでも快適かいてき通話つうわ実現じつげん

関連かんれん項目こうもく

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外部がいぶリンク

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