骨肉こつにく腫しゅ

毛細血管もうさいけっかん拡張かくちょう型がたのレントゲン画像がぞう

骨肉こつにく腫しゅ（こつにくしゅ、英語えいご: osteosarcoma）とは、肉腫にくしゅの組織そしき型がたの1つで、悪性あくせいの間あいだ葉は性せい腫瘍しゅようのうち造みやつこ骨こつ細胞さいぼうへの分化ぶんかポテンシャルをわずかでも有ゆうし、腫瘍しゅよう骨こつを形成けいせいする能力のうりょくを持もつものである。別名べつめいは悪性あくせい骨こつ形成けいせい性せい腫瘍しゅよう（あくせいこつけいせいせいしゅよう）。ほとんどが骨ほねに生しょうじるが、稀まれに骨ほねとは離はなれた軟部組織そしきからも生しょうじることがあり、これは骨ほね外がい性せい骨肉こつにく腫しゅ と呼よばれる。

解説かいせつ

骨肉こつにく腫しゅは多発たはつ性せい骨髄腫こつづいしゅと悪性あくせいリンパ腫りんぱしゅを除のぞく骨ほねの悪性あくせい腫瘍しゅようのうち、最もっとも発症はっしょう頻度ひんどが高たかい原発げんぱつ性せい骨こつ腫瘍しゅようである。

単一たんいつの病変びょうへんではなく、いくつもの亜あ型がたを含ふくむ。その中なかで最もっとも頻度ひんどが高たかいものが骨ほね内ない通常つうじょう型がた骨肉こつにく腫しゅであり、予よ後ごが悪わるいものの1つである。長ちょう管かん骨こつの骨幹こっかん端はしが好こう発はつ部位ぶいであり、50%が膝ひざ周辺しゅうへんに発生はっせいする。以下いか、特とくに断ことわりのない限かぎり、ここでは「骨ほね内ない通常つうじょう型がた骨肉こつにく腫しゅ」について記しるす。

罹患りかん率りつ

小児しょうに期きの腫瘍しゅようの5%であると言いわれている。二に峰みね性せいの分布ぶんぷを持もち、75%が20歳さい未満みまんの患者かんじゃで起おこる。2番目ばんめのピークは初老しょろう期きにあり、骨ほねパジェット病びょう、骨髄こつづい梗塞こうそくの様ような骨ほねの症状しょうじょうや以前いぜんの被曝ひばくに関係かんけいすることが多おおい。

病態びょうたい

骨肉こつにく腫しゅ osteoblastic osteosarcoma 病理びょうり組織そしき像ぞう

傍はた骨こつ性せい骨肉こつにく腫しゅ parosteal aoteosarcoma 病理びょうり組織そしき像ぞう

血管けっかん拡張かくちょう性せい骨肉こつにく腫しゅ Telangiectatic osteosarcoma 病理びょうり組織そしき像ぞう

長ちょう幹みき骨こつ、特とくに脛骨けいこつや上腕じょうわん骨こつの近きん位い側がわおよび大腿だいたい骨ほね遠とお位くらい側がわの、骨幹こっかん端はしが好こう発はつ部ぶである。X線せん検査けんさでは、骨膜こつまく反応はんのう＝骨ほね表面ひょうめんから垂直すいちょくに外側そとがわへ伸のびている、濃こい不規則ふきそくな陰影いんえいを認みとめる。

組織そしき病理びょうり学がく的まとには、腫瘍しゅよう細胞さいぼうは多た形かたち性せいの強つよい核かくを有ゆうし、しばしば巨きょ細胞さいぼうを交まじえ、異常いじょう有ゆう糸いと分裂ぶんれつ像ぞうに富とむ。細胞さいぼう間あいだに、不整ふせいな＝不定ふてい形がたで好こう酸性さんせいに染そまる骨ほね梁はり即すなわち腫瘍しゅよう骨こつ（好こう塩基えんき性せい顆粒かりゅう状じょうに染そまる中心ちゅうしん石灰せっかい化かは、あるときもないときもある）や、類るい骨こつ基質きしつを形成けいせいする。軟骨なんこつ基質きしつが混在こんざいしている場合ばあいもある。

未熟みじゅくな血管けっかんが存在そんざいすることもあり、この場合ばあい血行けっこう性せい転移てんいを起おこしやすい。

徴候ちょうこう

持続じぞくする痛いたみではあるが、激はげしいものではない。スポーツをしている年代ねんだいならば、筋肉きんにく痛つうと間違まちがう場合ばあいもある。スポーツ中ちゅうの病的びょうてき骨折こっせつで発見はっけんされる場合ばあいもある。小児しょうにの場合ばあいは「痛いたい」とは言いわず、運動うんどうを嫌いやがる、手足てあしを持もたれたり、特定とくていの手足てあしを動うごかされることを嫌きらう（腕うでを上あげたがらない、足あしを曲まげたがらない、その他た）、理由りゆうも無なく患部かんぶをかばいながら動うごく場合ばあいもある。初期しょきの場合ばあいレントゲンでの所見しょけんで異常いじょうが見みつからず、痛やめがらないため、精神せいしん的てきなものとされる場合ばあいもあるが、次第しだいに患部かんぶが膨ふくらんでくることにより異常いじょうが発見はっけんされることがある。

治療ちりょう法ほう

基本きほん的てきな療法りょうほうでは外科げか手術しゅじゅつと化学かがく療法りょうほうを骨ほね軟部悪性あくせい腫瘍しゅよう（骨肉こつにく腫しゅ、悪性あくせい線維せんい性せい組織そしき球だま腫しゅ、滑すべり膜まく肉腫にくしゅ、明あきら細胞さいぼう肉腫にくしゅなど）では併用へいようする。骨膜こつまく性せい骨肉こつにく腫しゅ（通常つうじょう型がた骨肉こつにく腫しゅより異こと型がた度どの低ひくい細胞さいぼうから成なり、骨膜こつまくから骨ほね皮質ひしつ外方そっぽのみに成長せいちょうして骨ほね中心ちゅうしん側がわへはほとんど増殖ぞうしょくせず、比較的ひかくてき予よ後ごの良よい亜あ型がた） 等とうの場合ばあいは主おもに外科げか手術しゅじゅつが中心ちゅうしん。

悪性あくせいの場合ばあい、癌がんの進行しんこうは早はやいが、その分ぶん抗こうがん剤ざいの効果こうかも大おおきいため、基本きほん的てきには、多た剤ざい併用へいよう化学かがく療法りょうほう（抗こうがん剤ざい治療ちりょう）を行おこない、その後ご外科げか手術しゅじゅつで正常せいじょう細胞さいぼうで包つつむように原発げんぱつ巣すを広範こうはん切除せつじょし、引ひき続つづき化学かがく療法りょうほうを行おこなう。肺はいや骨ほねに転移てんいしやすいため、CT、MRI、骨ほねシンチの検査けんさが定期ていき的てきに行おこなわれる。

抗こうがん剤ざいとしては、シスプラチン、ドキソルビシン、イホスファミド、シクロホスファミド、ブレオマイシンなど。かつては四肢ししに発生はっせいした場合ばあいは四肢しし切断せつだんしたが、現在げんざいでは化学かがく療法りょうほうや補助ほじょ療法りょうほうの進歩しんぽもあり、切断せつだんせずに腫瘍しゅようを切除せつじょし、切除せつじょした骨ほね部ぶには人工じんこう骨こつを埋うめ込こむことも可能かのうとなり、患者かんじゃのクオリティ・オブ・ライフ (QOL) が大幅おおはばに改善かいぜんされた。

近年きんねんでは1999年ねんに金沢大学かなざわだいがくの土屋つちや弘行ひろゆきによる液体えきたい窒素ちっそにより凍結とうけつする『自家じか液体えきたい窒素ちっそ処理しょり骨こつ移植いしょく』により、QOLが向上こうじょうする。また、骨ほねを2カ所かしょで切断せつだんして腫瘍しゅよう骨こつを切きり取とる『遊離ゆうり処理しょり』と、1カ所かしょだけ切断せつだんして骨ほねを突つき出だす『有ゆう茎くき処理しょり』があり、『有ゆう茎くき処理しょり』の方ほうが回復かいふくが早はやい。この方法ほうほうは先進せんしん医療いりょうとして金沢大学かなざわだいがくにおいて行おこなわれてきたが、2020年ねんに保険ほけん承認しょうにんされた。2023年ねんからは、土屋つちやが病院びょういん長ちょうに就任しゅうにんした横浜よこはま栄さかえ共済きょうさい病院びょういんにおいても行おこなわれている。

予よ後ご

30年ねんほど前まえまでは、5年ねん生存せいぞん率りつ30%から40%だったが、今いまは60%から70%、補助ほじょ療法りょうほうの併用へいようで最大さいだい90%以上いじょう（転移てんいのない場合ばあいは最大さいだいで78%の完全かんぜん寛解かんかい complete response ・CR）に改善かいぜんしている。肺はいなどへの転移てんいがなく、適切てきせつな治療ちりょうが行おこなわれれば治癒ちゆの可能かのう性せいは高たかく、若干じゃっかんの転移てんいがあっても抗こうがん剤ざいへの薬剤やくざい耐たい性せいが生しょうじなければ治癒ちゆする例れいも多おおくなってきている。

動物どうぶつの骨肉こつにく腫しゅ

イヌの骨肉こつにく腫しゅのX線せん写真しゃしん

骨肉こつにく腫しゅはイヌにも発症はっしょうし、四肢ししの長ながい犬いぬ種しゅ（例たとえば、グレイハウンドやジャーマンシェパード）の、中年ちゅうねんの犬いぬに好こう発はっする。ヒトとイヌの骨肉こつにく腫しゅの一ひとつの大おおきな違ちがいは、イヌの場合ばあい、より肺はい転移てんいを起おこしやすいことである。ネコの骨肉こつにく腫しゅの発生はっせいは原発げんぱつ性せい悪性あくせい骨こつ腫瘍しゅようの中なかで最もっとも多おおく、発生はっせい年齢ねんれいは平均へいきんで10歳さいと老齢ろうれいのネコに多おおい。イヌの骨肉こつにく腫しゅとほぼ同様どうようであるが、転移てんいは遅おそく、少すくない。

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外部がいぶリンク

• 骨肉こつにく腫しゅ 骨こつ原発げんぱつ悪性あくせい線維せんい組織そしき球だま腫しゅ：がんInfo - 財団ざいだん法人ほうじん国際こくさい医学いがく情報じょうほうセンター