黄鉄鉱おうてっこう

黄鉄鉱おうてっこう pyrite
	黄鉄鉱おうてっこう
分類ぶんるい	硫化りゅうか鉱物こうぶつ
化学かがく式しき	FeS2
結晶けっしょう系けい	等とう軸じく晶あきら系けい
へき開かい	なし
断だん口こう	貝殻かいがら状じょう
モース硬度こうど	6 - 6.5
光沢こうたく	金属きんぞく光沢こうたく
色いろ	黄銅こうどう色しょく
条じょう痕こん	緑みどり黒色こくしょく
比重ひじゅう	5.0
蛍光けいこう	なし
	プロジェクト:鉱物こうぶつ／Portal:地球ちきゅう科学かがく
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黄鉄鉱おうてっこう（おうてっこう、英えい: pyrite、パイライト）は硫化りゅうか鉱物こうぶつの一種いっしゅ。

概要がいよう

鉄てつと硫黄いおうからなり、化学かがく組成そせいはFeS₂で表あらわされる。理想りそう的てきな質量しつりょう比ひは、硫黄いおう53.4%、鉄てつ46.6%である。

等とう軸じく晶あきら系けいで、一般いっぱん的てきには六面体ろくめんたいだが、八はち面体めんてい、五ご角かく十じゅう二に面体めんていの結晶けっしょう形がたを示しめすこともある^[1]。

英名えいめいである「パイライト」は、ギリシャ語ごの「火ひ」を意味いみする「pyr」に由来ゆらいする。これは、黄鉄鉱おうてっこうをハンマーなどで叩たたくと火花ひばなを散ちらすことから名付なづけられた^[1]。

色いろは真鍮しんちゅう色いろで金属きんぞく光沢こうたくを持もつ。条じょう痕こん色いろは緑みどり黒色こくしょく。外見がいけんは黄銅こうどう鉱こうと似にるが、条じょう痕こん色しょくにより区別くべつできる。その淡あわ黄色きいろの色調しきちょうにより金きむと間違まちがえられることが多おおいことから、「愚者ぐしゃの黄金おうごん」とも呼よばれる^[2]。

モース硬度こうどは6-6.5、比重ひじゅうは4.95-5.10。鉄てつよりも硬かたいということでも知しられ、硫化りゅうか鉱物こうぶつとしては硬かたい。しかし湿気しっけには弱よわく、非常ひじょうに脆もろくなる。風化ふうかなどの原因げんいんで表面ひょうめんが酸化さんか分解ぶんかいされて褐鉄鉱かってっこうなどに変化へんかしやすく、特とくに黄鉄鉱おうてっこうの結晶けっしょうの形かたちをそのまま残のこして褐鉄鉱かってっこうとなった仮かり晶あきらは「武石たけいし（ぶせき）」、あるいは「升ます石せき（ますいし）」と呼よばれる。

用途ようと・加工かこう法ほう

様々さまざまな鉱山こうざんで産出さんしゅつされるありふれた鉱物こうぶつではあるが、硫酸りゅうさんの原料げんりょうとして使用しようされなくなってからは工業こうぎょう的てき価値かちが大おおきく下さがった。加熱かねつすると亜硫酸ありゅうさんガスが出でるのと、硫黄いおうを完全かんぜんに除去じょきょするのが困難こんなんであるために、製鉄せいてつの材料ざいりょうとしては適てきしていない。

硫酸りゅうさんの原料げんりょうとして: 以前いぜんは岡山おかやま県けん美咲みさき町まち（旧きゅう柵原やなはら町まち）の柵原やなはら鉱山こうざんなどで硫酸りゅうさんの原料げんりょうとして採掘さいくつされていたが、現在げんざいでは石油せきゆから抽出ちゅうしゅつされた硫黄いおうから硫酸りゅうさんを製造せいぞうする手法しゅほうが主流しゅりゅうとなり、SX-EW（溶媒ようばい抽出ちゅうしゅつ電気でんき採と銅どう法ほう）で銅どうを回収かいしゅうする鉱山こうざんを除のぞいて、黄鉄鉱おうてっこうを原料げんりょうとして用もちいることはなくなった。; また、地下水ちかすいと反応はんのうし硫酸りゅうさんを生成せいせいしてしまうため、付近ふきんの河川かせんが低ていpH化かするとともに鉄てつの酸化さんかに伴ともなう析出せきしゅつで赤あか濁にごし大だい規模きぼな汚染おせんを引ひき起おこすことがある（松尾まつお鉱山こうざん）。
半導体はんどうたいとして: 方ほう鉛なまり鉱こうなどと共ともに、半導体はんどうたい性せいがあり、鉱石こうせき検波けんぱ器きとして鉱石こうせきラジオなどに使用しようされたことがある。2009年ねん現在げんざいでは高性能こうせいのうな薄膜うすまく太陽たいよう電池でんちの材料ざいりょうとしての利用りようが注目ちゅうもくを集あつめており、工業こうぎょう的てき価値かちの見直みなおしが進すすんでいる。
黄鉄鉱おうてっこうに代かわった化石かせき: 化石かせきのうちいくつかは黄鉄鉱おうてっこうに置換ちかんされたものがあり、愛好あいこう家かに収集しゅうしゅうされている。アンモナイトではアンモナイトパイライトと呼よばれ、アクセサリーとしてペンダントトップなどに用もちいられている。; 一方いっぽう、イリノイ州しゅうの原生代げんせいだいから古生代こせいだいの頁岩けつがん中ちゅうから産出さんしゅつしている、いわゆるパイライト・サン（パイライト・ダラーとも）は、一時期いちじきは同どう時代じだいのウニ類るいの化石かせきが黄鉄鉱おうてっこう化かしたものと考かんがえられたことがあったが、ウニに特徴とくちょう的てきな五ご放射ほうしゃ相称そうしょうが見みられないことから否定ひていされ「偽にせ化石かせき」の扱あつかいとなっている。成分せいぶんには黄鉄鉱おうてっこうのほか白しろ鉄鉱てっこうを含ふくむことがある。珍めずらしい形状けいじょうからこれも愛好あいこう家かの収集しゅうしゅう対象たいしょうになっている。成因せいいんにはいまだ定説ていせつはなく、ウニ以外いがいの生物せいぶつを核かくとしたとするもの（骨格こっかくに含ふくむリン酸さんや硫黄いおう細菌さいきん由来ゆらいの硫黄いおうが鉄てつと反応はんのうして結晶けっしょう化かしたとする）、高こう圧あつの層状そうじょう中ちゅうで歪いがんで成長せいちょうした黄鉄鉱おうてっこうの結晶けっしょうだとするもの、近年きんねん深海しんかいで発見はっけんされたスケーリーフットのような黄鉄鉱おうてっこうを骨格こっかくとした生物せいぶつ化石かせきそのものとする説せつなどもある^[3]。
その他たの用途ようと: 鉄てつで叩たたくと火花ひばなが出でる性質せいしつを利用りようして、ホイールロック式しき銃じゅうの火打石ひうちいしに利用りようされていた。また、鉄鉱てっこう石せきとして採掘さいくつされていた。

かつて日本にっぽん国内こくないで採掘さいくつしていた鉱山こうざん

前述ぜんじゅつの岡山おかやま県けん柵原やなはら鉱山こうざん以外いがい

笹谷ささや鉱山こうざん（宮城みやぎ県けん柴田しばた郡ぐん川崎かわさき町まち）
田老たろう鉱山こうざん（岩手いわて県けん） - 燐酸りんさん肥料ひりょう製造せいぞうに必要ひつような硫酸りゅうさんの原料げんりょう確保かくほのために開発かいはつされた。
松尾まつお鉱山こうざん（岩手いわて郡ぐん八幡平やわただいら市し）
小坂鉱山こさかこうざん（秋田あきた県けん鹿角かづの郡ぐん小坂こさか町まち）
阿仁あに鉱山こうざん（秋田あきた県けん北秋田きたあきた郡ぐん阿仁あに町まち→現げん:北秋田きたあきた市し）
尾小屋おごや鉱山こうざん（石川いしかわ県けん小松こまつ市し）

など