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DVA動体どうたい視力しりょく

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』

DVA動体どうたい視力しりょく(ディーブイエーどうたいしりょく、略称りゃくしょう:DVA)とは、自分じぶん一定いってい距離きょりたもって移動いどうしている目標もくひょうぶつをどの程度ていど明視めいしできるかという能力のうりょく距離きょり前後ぜんごうごKVA動体どうたい視力しりょくたいになる概念がいねん測定そくていにおいては、水平すいへい方向ほうこう移動いどう使つかった検査けんさ一般いっぱんてき

動体どうたい視力しりょく概念がいねん

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うご対象たいしょう明視めいしする能力のうりょく動体どうたい視力しりょくばれる[1]通常つうじょう視力しりょく検査けんさでは静止せいししている対象たいしょうランドルトたまき)の分解能ぶんかいのう測定そくていしており、いわばフォーカスの程度ていど測定そくていするものである。静止せいし視力しりょくたいし、対象たいしょううごかしたときそれをどの程度ていど明視めいしできるかという概念がいねん動体どうたい視力しりょくである[2]

じつ世界せかいにおける物体ぶったいのほとんどは3次元じげん空間くうかん移動いどうしているため、動体どうたい視力しりょく概念がいねん自分じぶん等距離とうきょりたも移動いどうと、距離きょり前後ぜんごする移動いどうとで2種類しゅるいけられている。

  • DVA動体どうたい視力しりょく(DVA:Dynamic Visual Acuity)

おおくの測定そくてい検査けんさでは、等距離とうきょりたもって左右さゆうへとよこ移動いどうする目標もくひょう認識にんしきする動体どうたい視力しりょく厳密げんみつには、等距離とうきょりたもって左右さゆう上下じょうげななめもふくめたぜん方向ほうこう移動いどうする目標もくひょう対象たいしょうとなる[注釈ちゅうしゃく 1]通常つうじょうは、水平すいへい方向ほうこううごくランドルトたまきもちいて計測けいそくおこなう。

  • KVA動体どうたい視力しりょく(KVA:Kinetic Visual Acuity)

距離きょり前後ぜんご方向ほうこう移動いどうする目標もくひょうぶつ認識にんしきする動体どうたい視力しりょくとおくから前方ぜんぽうちかづいてくるランドルトたまきもちいて計測けいそくおこな[4]

欧米おうべいでは被験者ひけんしゃから等距離とうきょりにあるしるべ水平すいへいうごかす方法ほうほう採用さいようし、1950ねんころより研究けんきゅうはじめられた。DVAのパラメータとして、最小さいしょう分離ぶんり閾値、あるいは識別しきべつできる最高さいこう速度そくどのどちらかがもちいられることがおおいが、欧米おうべいでは統一とういつてき測定そくてい方法ほうほう確立かくりつされていない。

日本にっぽんでは指標しひょう近接きんせつする、すなわち遠方えんぽうから眼前がんぜんけて直進ちょくしんしてくる方向ほうこう採用さいようし、1970ねんころより研究けんきゅうはじめられた。しかし、KVAは日本にっぽん独自どくじ概念がいねんであり、欧米おうべいではほとんどられていない。また、KVAは静止せいし視力しりょくとの相関そうかん非常ひじょうたかいため、動体どうたい視力しりょくではなく、静止せいし視力しりょくそのものを測定そくていしているのではないかという異論いろんされている。[だれによって?]

DVA測定そくてい装置そうち

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水平すいへい方向ほうこうかんしては、石垣いしがき宮尾みやお論文ろんぶんもと[2]開発かいはつされたよこ方向ほうこうのDVA動体どうたい視力しりょくけい、HI-10が国内こくない市販しはんされている。この装置そうち半球はんきゅうかたスクリーンじょうをランドルトたまきひだりからみぎ任意にんい速度そくど移動いどうするもので、被験者ひけんしゃはスクリーンより80cmの距離きょりから眼球がんきゅう運動うんどうのみでこのランドルトたまき追跡ついせきする。DVAのパラメータは、ランドルトたまき方向ほうこう判別はんべつできたときの回転かいてんすう(rpm)、すなわち識別しきべつできる最高さいこう速度そくどをもって成績せいせきとする。現在げんざい日本にっぽんではこの方式ほうしき採用さいようされている。ただし、この装置そうちでは左右さゆう方向ほうこうのDVAは測定そくていできるが、上下じょうげなな方向ほうこう測定そくてい簡単かんたんにはできない。

バレーボールバスケットボールなどは、左右さゆうくわえて上下じょうげ方向ほうこうのDVA動体どうたい視力しりょく重要じゅうよう距離きょり変化へんかするKVA動体どうたい視力しりょく重要じゅうよう)とされる競技きょうぎであるため、それらのスポーツ選手せんしゅ上下動じょうげどうそなわった計器けいきでDVA数値すうち測定そくていするほうが有用ゆうようである。

アシックスしゃは2001ねん愛知工業大学あいちこうぎょうだいがく石垣いしがき尚男ひさお監修かんしゅうのもと関西かんさいしん技術ぎじゅつ研究所けんきゅうじょ共同きょうどう開発かいはつすすめ、パーソナルコンピュータモニタうえでDVA動体どうたい視力しりょく測定そくていおよびトレーニングができるソフトウェア販売はんばいしている[5]。これにかんして、1週間しゅうかん程度ていど短期間たんきかんでは動体どうたい視力しりょく瞬間しゅんかんがほとんどわらなかった(眼球がんきゅう運動うんどう周辺しゅうへん視野しや向上こうじょうられた)との実践じっせん報告ほうこく論文ろんぶんが、早稲田大学わせだだいがくスポーツよりされている[6]

知見ちけん

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石垣いしがき宮尾みやお論文ろんぶんから[2]動体どうたい視力しりょくよわい影響えいきょうかんしてDVAは5さい?10さいにかけて急速きゅうそく発達はったつし、20さいごろにピークとなり、そのよわいとともに低下ていかすることがあきらかとなっている。鹿児島かごしまけんむ40さい以上いじょう地域ちいき住民じゅうみん321めい対象たいしょうにした調査ちょうさでは、前後ぜんごのKVA動体どうたい視力しりょく中年ちゅうねん後期こうき(55~64さい)から低下ていかするのにたいし、よこ方向ほうこうのDVA動体どうたい視力しりょく老年ろうねん前期ぜんき(65 - 74さい)から低下ていかする傾向けいこうがあることが指摘してきされている[7]

また、上下じょうげ方向ほうこうのDVAは左右さゆう方向ほうこうのDVAよりもおとるという報告ほうこく[8]がある。愛知工業大学あいちこうぎょうだいがく石垣いしがき研究けんきゅうしつにおけるパーソナルコンピュータによるDVA研究けんきゅうから、上下じょうげ方向ほうこうのDVAは左右さゆう方向ほうこうやく8わりとなり、なな方向ほうこうのDVAは、左右さゆう方向ほうこう上下じょうげ方向ほうこうのちょうどちゅうあいだ程度ていどになることが発見はっけん[よう出典しゅってん]されている。コントラスト感度かんどなど、のヒトの視覚しかく機能きのうは、なな方向ほうこう能力のうりょくもっとおと[よう出典しゅってん]というものがおおい。そのてんにおいて、なな方向ほうこうのDVAが左右さゆう上下じょうげなかあいだであるというこの知見ちけんかんして、さらなる研究けんきゅう必要ひつようである。

このほか、視力しりょく矯正きょうせいレーシック手術しゅじゅつがDVA動体どうたい視力しりょくおよぼす影響えいきょうについては、奈良県立医科大学ならけんりついかだいがく付属ふぞく病院びょういんで22めい患者かんじゃ(と疑似ぎじレーシックのコンタクトレンズ装着そうちゃくによるスポーツ選手せんしゅ8めい)を対象たいしょう測定そくていおこない、「じゅつ前後ぜんこうのDVA数値すうちには有意ゆういかった」との報告ほうこくている[9]。このことからDVA動体どうたい視力しりょく角膜かくまく網膜もうまくのピント調整ちょうせい起因きいんするのではなく、はや移動いどうする対象たいしょうぶつ眼球がんきゅう運動うんどうによって正確せいかく網膜もうまくまだら保持ほじする能力のうりょく中心ちゅうしんではないかとかんがえられている。

注釈ちゅうしゃく

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  1. ^ スポーツビジョン研究けんきゅうかいげん:日本にっぽんスポーツビジョン協会きょうかい)の真下ました一策いっさくは、上下じょうげ方向ほうこうのDVA動体どうたい視力しりょくにも言及げんきゅうしている。「うえからしたと、したからうえ両方向りょうほうこうのDVA動体どうたい視力しりょく検査けんさした。(中略ちゅうりゃくじょうからした動体どうたい視力しりょく日本人にっぽんじんほう外国がいこくじんより優秀ゆうしゅうで、したからうえうごくものをるのはバレーボール選手せんしゅ得意とくいであった。[3]

脚注きゃくちゅう

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  1. ^ 静止せいし視力しりょく動体どうたい視力しりょく」WEBLIO辞書じしょ、『事典じてん』の解説かいせつより。
  2. ^ a b c 石垣いしがき尚男ひさお, 宮尾みやおかつ, あたらしい動体どうたい視力しりょくけい開発かいはつ」『産業さんぎょう医学いがく』 1994ねん 36かん 3ごう p.181-182,A44, doi:10.1539/joh1959.36.3_181
  3. ^ 動体どうたい視力しりょく(1)」、株式会社かぶしきがいしゃエスエスケイHP、真下ましも一策いっさくの「忙中ぼうちゅう閑話かんわ」より。2006ねん3がつ3にち。2018ねん8がつ25にち閲覧えつらん
  4. ^ スポーツを科学かがくする 視力しりょく検査けんささい認識にんしき スポーツ選手せんしゅは「いのち日本経済新聞にほんけいざいしんぶん、2015ねん2がつ6にち。2018ねん8がつ25にち閲覧えつらん
  5. ^ 石垣いしがき尚男ひさおスポーツビジョンと測定そくていほう愛知工業大学あいちこうぎょうだいがく、2007ねん11月22にち、3ぺーじ
  6. ^ 伊藤いとうたくしんサッカー選手せんしゅにおけるスポーツビジョンのトレーニング効果こうか内田うちだただし主査しゅさ石井いしい昌幸まさゆきふく査)、早稲田大学わせだだいがく、2008ねん
  7. ^ 丹羽にわさよ、ほか「地域ちいき在住ざいじゅう高齢こうれいしゃ機能きのう関連かんれん要因よういん検討けんとう」『鹿児島大学かごしまだいがく医学いがく雑誌ざっしだい65かん だい2-3ごう、2014ねん3がつ、37-47ぺーじ, NAID 120005549921
  8. ^ せい圭介けいすけ上下じょうげうごきにたいする動体どうたい視力しりょく フィジーク Vol.110 pp.33-35 (1999)
  9. ^ 竹谷たけたにふとし高次こうじ収差しゅうさがスポーツビジョンにあたえる影響えいきょう奈良県立医科大学ならけんりついかだいがく、2008ねん、1-20ぺーじ

外部がいぶリンク

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