ディープドリーム

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア（Wikipedia）』
（DeepDreamから転送てんそう）
元もとの画像がぞう
ディープドリームの適用てきよう、10回かいの繰くり返かえし
ディープドリームの適用てきよう、50回かいの繰くり返かえし

ディープドリーム（英語えいご: DeepDream）は、 GoogleのエンジニアであるAlexander Mordvintsevによって作成さくせいされたコンピュータービジョンプログラムである。このソフトウェアは、畳たたみ込こみニューラルネットワークを使用しようし、アルゴリズムのパレイドリアを介かいして画像がぞうの中なかにパターンを検出けんしゅつおよび強化きょうかし、意図いと的てきに過剰かじょう処理しょりすることで、夢ゆめのような幻覚げんかく的てきな画像がぞうを生成せいせいする[1][2][3]。

このGoogleのプログラムは、「深ふかく夢見ゆめみる（deep dreaming）」という用語ようごを普及ふきゅうさせ、訓練くんれんされたディープネットワークにより望のぞみの活性かっせい化か処理しょりを施ほどこし、画像がぞうを生成せいせいすることを指さすようになった。この用語ようごは、今いまや、関連かんれんした画像がぞう生成せいせい手法しゅほうのプログラムを指さすまでになっている。

歴史れきし[編集へんしゅう]

ディープドリームは、『インセプション』という映画えいがと同名どうめいのコードネームがつけられた[1][2][3]深化しんか畳たたみ込こみネットワークを端緒たんしょとし、2014年ねんにImageNet Large-Scale Visual Recognition Challenge（ILSVRC）のために開発かいはつされ、2015年ねん7月がつにリリースされた。

Googleのディープドリームプログラムのおかげで、2015年ねんに「夢ゆめを見みる」というアイデアと名前なまえが、インターネットで人気にんきを博はくした。このアイデアはニューラルネットワークの歴史れきしの初期しょきからあり[4]、同様どうようの方法ほうほうが視覚しかく的てきテクスチャの合成ごうせいに使用しようされている[5]。関連かんれんする視覚しかく化かのアイデアは、Googleの研究けんきゅうの前まえに、いくつかの研究けんきゅうグループによって開発かいはつされた[6][7]。

Googleが技術ぎじゅつを公開こうかいし、プログラムコードをオープンソース化か[8]した後のち、ユーザーが自分じぶんの写真しゃしんを変換へんかんできるように、Webサービス、モバイルアプリケーション、デスクトップソフトウェアといった多おおくのツールが市場いちばに登場とうじょうした。

プロセス[編集へんしゅう]

ディープドリームは、画像がぞうを自動的じどうてきに分類ぶんるいする目的もくてきで、画像がぞう内ないに顔かおやその他たのパターンを検出けんしゅつするように設計せっけいされている[9]。ただし、学習がくしゅう後ご、ネットワークを逆ぎゃく方向ほうこうに実行じっこうして、元もとの画像がぞうをわずかに調整ちょうせいして、特定とくていの出力しゅつりょくニューロン（たとえば、顔かおや特定とくていの動物どうぶつ）の信頼しんらい性せいスコアが高たかくなるように仕向しむけることもできる。これは、ニューラルネットワークの出現しゅつげん構造こうぞうをよく理解りかいするための視覚しかく化かに使用しようでき、ディープドリームの基礎きそ概念がいねんとなっている。ただし、十分じゅうぶんな反復はんぷくを行おこなった後のちには、最初さいしょは取とり立たてて特徴とくちょうがない画像がぞうでさえ、 パレイドリアの形成けいせいが十分じゅうぶんに調整ちょうせいされることで、サイケデリックでシュールな画像がぞうがアルゴリズムにより生成せいせいされる。最適さいてき化かはバックプロパゲーションに似にているが、ネットワークの重おもみを調整ちょうせいする代かわりに、重おもみは固定こていして入力にゅうりょくが調整ちょうせいされる。

たとえば、既存きそんの画像がぞうを変更へんこうして、「猫ねこのように」見みえるようにすることができる。また、結果けっかとして得えられる強化きょうかされた画像がぞうを再ふたたび処理しょりの手続てつづきに入力にゅうりょくできる[2]。この方法ほうほうは、雲くもの中なかに動物どうぶつや他たのパターンを探さがす活動かつどうに似にている。

入力にゅうりょく画像がぞうの各かくピクセルに個別こべつに勾配こうばい降下こうかを適用てきようすると、隣接りんせつするピクセルに関係かんけい性せいがほとんどない画像がぞうが生成せいせいされるため、画像がぞうは過剰かじょうに高たかい周波数しゅうはすう情報じょうほうを示しめす。生成せいせい画像がぞうは、前ぜん処理しょりまたは正則せいそく化か処理しょりにより大幅おおはばに改善かいぜんされる。その処理しょりとは、自然しぜんな画像がぞう統計とうけい（特定とくていの画像がぞうを優先ゆうせんしない）または単純たんじゅんな平滑へいかつ化かを持もつ入力にゅうりょくを優先ゆうせんするものである[7][10][11]。例たとえば、マヘンドランらは、画像がぞうを区分くぶん的てきに定値ていち化かする全ぜん変化へんかの正則せいそく化かを使用しようした。いろいろな正則せいそく化か技術ぎじゅつが詳くわしく討議とうぎされている。特徴とくちょうの視覚しかく化かと正則せいそく化か技術ぎじゅつの深層しんそう的てきかつ視覚しかく的てきな研究けんきゅうが2017年ねんに発表はっぴょうされている[12]。

ディープドリームで処理しょりされた画像がぞうは、LSDおよびサイロシビンが誘発ゆうはつする幻覚げんかくに似にており、人工じんこう神経しんけい回路かいろ網もうと視覚しかく野のの特定とくてい部位ぶいとの間あいだの機能きのうとの類似るいじ性せいを暗示あんじしている[13]。

使用しよう法ほう[編集へんしゅう]

プールの3人にんの男性だんせいの写真しゃしんに対たいし、ディープドリーム処理しょり（後期こうき段階だんかい）した例れい

「夢ゆめを見みる」アイデアは、出力しゅつりょく内ないのニューロン以外いがいの隠かくされた（内部ないぶ）ニューロンに適用てきようできる。これにより、ネットワークのさまざまな部分ぶぶんの役割やくわりと表現ひょうげんを調査ちょうさできる[11]。また、単一たんいつのニューロン（この使用しよう法ほうはアクティビティ最大さいだい化かと呼よばれることもある）[14]またはニューロンの層そう全体ぜんたいを満みたすように入力にゅうりょくを最適さいてき化かすることもできる。

夢ゆめはネットワークの視覚しかく化かやコンピューターアートの作成さくせいに最もっともよく使用しようされるが、訓練くんれんのメニューに「睡眠すいみん時じの夢ゆめ」の入力にゅうりょくを追加ついかすると、コンピューターサイエンスの抽象ちゅうしょう化かの訓練くんれん時間じかんが改善かいぜんされることが最近さいきん報告ほうこくされている[15]。

ディープドリームモデルは、美術びじゅつ史しの分野ぶんやにも応用おうようできることが実証じっしょうされている[16]。

ディープドリームは、Foster the Peopleの『Doing It for the Money（英語えいご版ばん）』のミュージックビデオに使用しようされた[17]。

最近さいきん、サセックス大学だいがくの研究けんきゅうグループが幻覚げんかく機械きかいを作成さくせいし、ディープドリームアルゴリズムを事前じぜんに記録きろくされたパノラマビデオに適用てきようして、ユーザーが仮想かそう現実げんじつ環境かんきょうを探索たんさくして精神せいしん活性かっせい物質ぶっしつや精神病せいしんびょう理学りがく的てき状態じょうたいの体験たいけんを模倣もほうできるようにした[18]。彼かれらは、幻覚げんかく機械きかいによって誘発ゆうはつされる主観しゅかん的てき体験たいけんが、サイケデリック状態じょうたい（サイロシビンの投与とうよ後ご）と現象げんしょう学がく的てきに類似るいじしている一方いっぽうで、比較ひかく対象たいしょうのビデオ（非ひ「ハルシノゲン」）とは著いちじるしく異ことなることを実証じっしょうすることができた。

出典しゅってん[編集へんしゅう]

[脚注きゃくちゅうの使つかい方かた]
  1. ^ a b Mordvintsev (2015年ねん). “DeepDream - a code example for visualizing Neural Networks”. Google Research. 2015年ねん7月がつ8日にち時点じてんのオリジナルよりアーカイブ。2020年ねん2月がつ29日にち閲覧えつらん。
  2. ^ a b c Mordvintsev (2015年ねん). “Inceptionism: Going Deeper into Neural Networks”. Google Research. 2015年ねん7月がつ3日にち時点じてんのオリジナルよりアーカイブ。2020年ねん2月がつ29日にち閲覧えつらん。
  3. ^ a b Szegedy, Christian; Liu, Wei; Jia, Yangqing; Sermanet, Pierre; Reed, Scott; Anguelov, Dragomir; Erhan, Dumitru; Vanhoucke, Vincent et al. (2014). “Going Deeper with Convolutions”. Computing Research Repository. arXiv:1409.4842. Bibcode: 2014arXiv1409.4842S. 
  4. ^ Lewis, J.P. (1988). Creation by refinement: a creativity paradigm for gradient descent learning networks. IEEE International Conference on Neural Networks. doi:10.1109/ICNN.1988.23933。
  5. ^ Portilla, J; Simoncelli, Eero (2000). “A parametric texture model based on joint statistics of complex wavelet coefficients”. International Journal of Computer Vision 40: 49–70. doi:10.1023/A:1026553619983. 
  6. ^ Erhan, Dumitru. (2009). Visualizing Higher-Layer Features of a Deep Network (PDF). International Conference on Machine Learning Workshop on Learning Feature Hierarchies.
  7. ^ a b Simonyan, Karen; Vedaldi, Andrea; Zisserman, Andrew (2014). Deep Inside Convolutional Networks: Visualising Image Classification Models and Saliency Maps. International Conference on Learning Representations Workshop.
  8. ^ deepdream - GitHub
  9. ^ Rich McCormick (2015年ねん7月がつ7日にち). “Fear and Loathing in Las Vegas is terrifying through the eyes of a computer”. The Verge. 2015年ねん7月がつ25日にち閲覧えつらん。
  10. ^ Mahendran, Aravindh; Vedaldi, Andrea (2015). Understanding Deep Image Representations by Inverting Them. IEEE Conference on Computer Vision and Pattern Recognition. doi:10.1109/CVPR.2015.7299155。
  11. ^ a b Yosinski, Jason; Clune, Jeff; Nguyen, Anh; Fuchs, Thomas (2015). Understanding Neural Networks Through Deep Visualization. Deep Learning Workshop, International Conference on Machine Learning (ICML) Deep Learning Workshop.
  12. ^ Olah, Chris; Mordvintsev, Alexander; Schubert, Ludwig (2017-11-07). “Feature Visualization” (英語えいご). Distill 2 (11). arXiv:1409.4842. doi:10.23915/distill.00007. ISSN 2476-0757. 
  13. ^ LaFrance (2015年ねん9月がつ3日にち). “When Robots Hallucinate”. The Atlantic. 2015年ねん9月がつ24日にち閲覧えつらん。
  14. ^ Nguyen, Anh; Dosovitskiy, Alexey; Yosinski, Jason; Brox, Thomas (2016). Synthesizing the preferred inputs for neurons in neural networks via deep generator networks. arxiv. Bibcode:2016arXiv160509304N。
  15. ^ Arora, Sanjeev; Liang, Yingyu; Tengyu, Ma (2016). Why are deep nets reversible: A simple theory, with implications for training. arxiv. Bibcode:2015arXiv151105653A。
  16. ^ Spratt, Emily L. (2017). “Dream Formulations and Deep Neural Networks: Humanistic Themes in the Iconology of the Machine-Learned Image”. Kunsttexte (Humboldt-Universität zu Berlin) 4. arXiv:1802.01274. Bibcode: 2018arXiv180201274S. https://edoc.hu-berlin.de/bitstream/handle/18452/19403/Spratt%20-%20final.pdf. 
  17. ^ fosterthepeopleVEVO (2017-08-11), Foster The People - Doing It for the Money, https://www.youtube.com/watch?v=dJ1VorN9Cl0 2017年ねん8月がつ15日にち閲覧えつらん。 
  18. ^ Suzuki, Keisuke (22 November 2017). “A Deep-Dream Virtual Reality Platform for Studying Altered Perceptual Phenomenology”. Sci Rep 7 (1): 15982. Bibcode: 2017NatSR...715982S. doi:10.1038/s41598-017-16316-2. PMC 5700081. PMID 29167538. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5700081/. 

関連かんれん項目こうもく[編集へんしゅう]

外部がいぶリンク[編集へんしゅう]

「https://ja.wikipedia.org/w/index.php?title=ディープドリーム&oldid=88185199」から取得しゅとく