WinFS

WinFS（Windows File System、以前いぜんはWindows Future Storageの略りゃくとされていた）はWindows Vistaで採用さいようされる予定よていであった統合とうごうファイルシステム。

概要がいよう

WinFSの実態じったいは、Windows上じょうに存在そんざいする全すべてのファイルを統合とうごう的てきに管理かんりするデータベースエンジンで、NTFSファイルシステム上じょうに構築こうちくされるサービスの一ひとつである。当初とうしょは、完全かんぜんな新規しんきファイルシステムとして実装じっそうされる事ことが計画けいかくされていたが、後のちにNTFS上じょうに構築こうちくされるデータベースエンジンとなった。その後ご、開発かいはつの難航なんこうにより中止ちゅうしが決定けっていされた。

特徴とくちょう

このファイルシステムは、マイクロソフトのMicrosoft SQL Server 2005の基幹きかんエンジンであるYukon（開発かいはつコードネーム）の技術ぎじゅつを基もとにしている。WinFSは単たんにファイルやフォルダ（ディレクトリ）を管理かんりするに留とまらず、ファイルシステム自体じたいが検索けんさく機能きのうを持もち、様々さまざまなタイプのデータを瞬時しゅんじに取とり出だすことができる。 また、WinFSでは、各かくファイルの属性ぞくせいを示しめすメタデータを管理かんりすることによりファイルシステム自体じたいが個々ここのファイルの持もつ意味いみや属性ぞくせいを把握はあくできる仕様しようとなっていた。この機能きのうを利用りようすることによって、個々ここのファイルの持もつ様々さまざまな情報じょうほうを、OSのサービスとしてAPIを通つうじて各かくアプリケーションに提供ていきょうできるはずだった。

動作どうさ例れいとメタデータ

WinFSの機能きのうを利用りようすることにより、例たとえばOutlookで入力にゅうりょくしたスケジュールやメモの内容ないようを、年賀状ねんがじょう印刷いんさつソフトから利用りようするといった事ことが可能かのうである。この時とき、年賀状ねんがじょう印刷いんさつソフトで「過去かこ、1年ねんの間あいだに会議かいぎを行おこなった相手あいての住所じゅうしょ」と指定していすれば、自動的じどうてきに該当がいとうする人物じんぶつの住所じゅうしょのみピックアップされる、といった動作どうさを実現じつげんできる仕様しようとなっていた。

ここで重要じゅうようなのは、上記じょうきのような動作どうさを行おこなうにあたり、クライアント側がわ（この場合ばあいは年賀状ねんがじょうソフト）が特別とくべつな実装じっそうを行おこなわなくても、WinFSのAPIを呼よび出だすだけでサーバ側がわ（この場合ばあいはOutlook）のデータ形式けいしきを一切いっさい気きにする事ことなく、上記じょうきのような動作どうさを実現じつげんできる点てんであった。開発かいはつ者しゃの負担ふたんは下さがり利用りよう者しゃの利便りべん性せいは大幅おおはばに向上こうじょうする事ことが期待きたいされていた。上記じょうきの動作どうさ例れいでは、年賀状ねんがじょうソフトを例れいに出だしたが、このような機能きのうは、文書ぶんしょデータのみならず、画像がぞうファイルや映像えいぞうファイル等とう、あらゆるデータファイルに適用てきよう可能かのうとなっていた。ただし、アプリケーション側がわがWinFSに完全かんぜん対応たいおうしている必要ひつようがある。

上記じょうきの例れいのような動作どうさを実現じつげんするため、WinFSには様々さまざまなデータファイルを扱あつかうためにメタデータのテンプレートを規定きていしており、文書ぶんしょファイル、アドレス帳ちょう、スケジュール表ひょう、画像がぞう、デジタルカメラ写真しゃしん、音楽おんがく、映像えいぞうなど、主要しゅような用途ようとに対応たいおうしたメタデータのテンプレートが用意よういされていた。また、このテンプレートにはXML技術ぎじゅつが用もちいられており、サードパーティが後こうから拡張かくちょうしたり、新規しんきテンプレートを作成さくせいする事ことも可能かのうとされていた。メタデータの作成さくせいは基本きほん的てきにデータ作成さくせい時じにアプリケーション側がわで行おこなわれ、ユーザーはメタデータの存在そんざいを特とくに意識いしきする必要ひつようは無ない。

開発かいはつの経緯けいい

WinFSの技術ぎじゅつの源流げんりゅうは、90年代ねんだい中頃なかごろに Windows NT 4として企画きかくされたCairoプロジェクトにさかのぼる。Cairoプロジェクトは、コンピュータのOSそのものをオブジェクト化かし、全すべてのデータをオブジェクト指向しこうで扱あつかう事ことの出来できるOSを完成かんせいさせるという、非常ひじょうに野心やしん的てきな計画けいかくであったが、あまりにも壮大そうだいな構想こうそうであったため頓挫とんざ。以後いご、ファイル情報じょうほうをオブジェクト指向しこう技術ぎじゅつで取とり扱あつかおうとするプロジェクトは、マイクロソフト社内しゃないで何なん度どか進行しんこうするが、そのたび中止ちゅうし中断ちゅうだんを余儀よぎなくされている。ビル・ゲイツは同どう技術ぎじゅつを「情報じょうほう技術ぎじゅつの聖ひじり杯はい」と呼よび、長年ながねんにわたる最終さいしゅう目標もくひょうとしてきたが、未いまだに実現じつげんはなされていない。WinFSの開発かいはつにあたって、ついに同どう技術ぎじゅつの実用じつよう化かが実現じつげんされることが期待きたいされたが、2006年ねん6月がつ23日にちに開発かいはつの中止ちゅうしが決定けっていされた。

中断ちゅうだん時じ、WinFSエンジンはベータ段階だんかいにありテクノロジプレビュー版ばんが開発かいはつ者しゃ向むけに公開こうかいされていた。

Windows Vista と WinFS

開発かいはつの中止ちゅうしと搭載とうさい断念だんねん

当初とうしょWindows Vista（当時とうじは開発かいはつコードLonghorn）に搭載とうさいされる予定よていだったが、開発かいはつの難航なんこうにより延期えんき。同どう製品せいひん版ばんへの搭載とうさいは断念だんねんされサービスパックと同時どうじに提供ていきょうされると予告よこくされた。しかし、その後ご、2006年ねん6月23日にちに開発かいはつの中止ちゅうしが決定けってい。Windows Vistaへの搭載とうさいが無なくなるとともに開発かいはつも停止ていしされた。

2007年ねん1月がつ30日にちに発売はつばいされたWindows Vistaにも、OSの標準ひょうじゅん機能きのうとして「スタートメニュー」や「エクスプローラ」に検索けんさく窓まどを利用りようしたサーチ機能きのうが実装じっそうされている。当初とうしょ、同どう機能きのうはWinFSのAPIによって高度こうどな機能きのうが実現じつげんされサードパーティのアプリケーションからもアクセスが可能かのうであると予告よこくされていた。しかし、開発かいはつ中止ちゅうしに伴ともない、現在げんざいではシェルの固有こゆうの機能きのうとして実装じっそうされ、技術ぎじゅつも一般いっぱん的てきなファイルのインデックスサービスが使つかわれている。

バーチャルフォルダ機能きのう

WinFSの技術ぎじゅつを用もちいて、Windows Vista（開発かいはつコード名めいLonghorn）で実現じつげんされるとされていた機能きのうである。ユーザーは、従来じゅうらいのフォルダ（ディレクトリ）を意識いしきする事ことなく、その目的もくてきに応おうじて様々さまざまなファイルを自在じざいに扱あつかう事ことができるとされていた。

ユーザーは、デスクトップ上じょうに用意よういされたバーチャルフォルダにアクセスすれば、バーチャルフォルダ内ないにユーザーが指定していしたデータが全すべて表示ひょうじされる。これによって、これまでのように、目的もくてきのファイル目指めざして階層かいそう化かされたツリーを辿たどる作業さぎょうから、ユーザーは解放かいほうされるとされていた。また、バーチャルフォルダは必要ひつように応おうじて、ユーザーが自由じゆうに作成さくせいする事ことが出来できたため、目的もくてきに応おうじた様々さまざまなバーチャルフォルダを用意よういすることが可能かのうだった。

バーチャルフォルダの内容ないようは全すべてWinFSが管理かんりしており、ファイルのデータ単位たんいで内容ないようを表示ひょうじするため、従来じゅうらいのように同おなじアドレス帳ちょうのデータであっても、データの形式けいしき（拡張子かくちょうし）が異ことなるとそれがアドレス帳ちょうとして認識にんしきされないといった不ふ整合せいごうとは無縁むえんである。また、バーチャルフォルダ上じょうで行おこなった、ファイルのコピーや削除さくじょといった操作そうさも、全すべてWinFSによってファイルシステムに反映はんえいされるため、ユーザーがファイルの所在しょざいや位置いち関係かんけいを意識いしきする必要ひつようは無なくなるとされた。（もちろん、ユーザーがフォルダやファイルを直接ちょくせつ動うごかしたり、内容ないようを改変かいへんしても、それは自動的じどうてきにバーチャルフォルダにも反映はんえいされる）

バーチャルフォルダ機能きのうは、開発かいはつコード名めいLonghornの概要がいようが発表はっぴょうされた2003年ねんのPDC2003年ねんイベントで配布はいふされた、Longhornテクノロジプレビュー版ばん（ベータ版ばんの前ぜん段階だんかい）のデスクトップ上じょうに用意よういされていたが、その後ご、WinFSの開発かいはつ後退こうたいとともにデスクトップから削除さくじょされ、さらにLonghornのベータ版ばんからは姿すがたを消けしている。

2007年ねん1月がつ30日にちに発売はつばいされたWindows Vistaにも、「検索けんさくフォルダ」というバーチャルフォルダ的てきな機能きのうが用意よういされているが、これはあくまでも従来じゅうらいの拡張子かくちょうしや日時にちじ単位たんいでのファイル検索けんさくの一覧いちらんのみを表示ひょうじする機能きのうであり、バーチャルフォルダがWinFSによって実現じつげんするとしていた高度こうどな機能きのうは搭載とうさいされていない。