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磁気じきテープ

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』
オーディオようコンパクトカセットソニーHF」(画像がぞう自社じしゃ製造せいぞう時代じだい製造せいぞう販売はんばいされたもの。現在げんざいすでにおわりうりみ)。スケルトン仕様しよう内装ないそうされた磁気じきテープがえる

磁気じきテープ(じきテープ)とは、粉末ふんまつじょう磁性じせいたいテープじょうフィルムにバインダー(接着せっちゃくざい)で塗布とふまたは蒸着じょうちゃくした記録きろく媒体ばいたいで、磁化じか変化へんかにより情報じょうほう記録きろく再生さいせいする磁気じき記録きろくメディアいち分類ぶんるいである。

オーディオもちいビデオもちいデータ/コンピュータようなどの用途ようともちいられる。

概説がいせつ

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用途ようとごとに後述こうじゅつ規格きかくしめ規格きかく存在そんざいする。またオーディオやビデオようにはアナログ記録きろく方式ほうしきデジタル記録きろく方式ほうしきがある。アメリカ発達はったつしたことからテープはばインチ、テープちょうフィート習慣しゅうかんがある(日本にっぽん企業きぎょう中心ちゅうしん規格きかくされたエルカセット8ミリビデオテープDATなどの例外れいがいもある)。

日本にっぽん法令ほうれいでは、「磁気じきテープ(これにじゅんずる方法ほうほうにより一定いってい事項じこう確実かくじつ記録きろくしてくことができるものふくむ。以下いかおなじ。)」[1]ひとしとして、CD-Rかみテープなど本義ほんぎ磁気じきテープとは関係かんけいのないメディア磁気じきテープにふくませる場合ばあいがある。

特徴とくちょう

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なが帯状おびじょうのテープをるなどして移動いどうさせることによってテープにまれた情報じょうほうっていくというその構造こうぞうじょうシーケンシャルアクセスいている記録きろく媒体ばいたいであり、ランダムアクセスにはいていない。

テープのうしろのほう記録きろくされたデータにたどりくまでに時間じかんがかかるものの、り/速度そくど自体じたいはそれほどおそいわけではい。たとえば、2021ねん現在げんざい磁気じきテープの最新さいしん規格きかくであるLTO Ultriumだい9世代せだい)の速度そくどひかりディスクメディアと比較ひかくした場合ばあい磁気じきテープの速度そくど最大さいだい1000MB/s・圧縮あっしゅくでも400MB/sと、2020ねん現在げんざい一般いっぱんてきひかりディスクメディアであるブルーレイディスク(12ばいそく)の54MB/sをはるかに上回うわまわり、ブルーレイの次世代じせだいメディアであるアーカイバルディスク(2020ねん現在げんざい策定さくていちゅうだい3世代せだい)の648MB/sに匹敵ひってきする。

体積たいせきたりの記録きろく密度みつどたかく、容量ようりょうたりの単価たんか比較的ひかくてき安価あんかであるため、放送ほうそう映像えいぞうのアーカイブ保存ほぞんいている。たとえば、2021ねん現在げんざい最新さいしん規格きかくであるLTO Ultrium(だい9世代せだい)だと、磁気じきテープのカートリッジ1ほんたりの記録きろく容量ようりょう最大さいだい45TB・圧縮あっしゅくで18TBとなっているため、2020年代ねんだい以降いこうの4K・8K時代じだいにおいても放送ほうそう業界ぎょうかいでは磁気じきテープでのアーカイブ保存ほぞん主流しゅりゅうである。一方いっぽうで、磁気じきテープ装置そうち価格かかく比較的ひかくてきたかい。

耐久たいきゅうせいにはややなんがあり、磁気じきによって情報じょうほう記録きろくする磁気じきメディアの一種いっしゅであるため、つよ磁界じかいちかづけてしまうと記録きろくした情報じょうほう破壊はかいされる。また、テープ経年けいねん劣化れっかによって磁性じせいよわまり情報じょうほう維持いじできなくなったり、びたり切断せつだんしたりで破壊はかいいたりやすい。

破損はそんした場合ばあいでも、テープの該当がいとう箇所かしょ以外いがい復旧ふっきゅうおこないやすい利点りてんがある。

磁気じきテープ、装填そうてん装置そうちテープドライブ)ともに、定期ていきてきメンテナンス必要ひつようである。テープのたるみの修正しゅうせいや、キャプスタンやピンチローラーとうのメカニカル部分ぶぶん清掃せいそう磁気じきヘッドの帯磁たいじ対策たいさくなどを適時てきじしていかないと、テープがまれて破壊はかいいたるなどの危険きけんがある。

1960年代ねんだいまではテープがられたリールをはだか保管ほかんするオープンリールしき一般いっぱんてきだったが、1970年代ねんだい以降いこうはリールがカートリッジにおさめられたカートリッジしき一般いっぱんてきとなっている。カートリッジしき搬性、たい衝撃しょうげきせい保管ほかんせいすぐれる。磁気じきテープに記録きろくしたデータを遠隔えんかく保管ほかん倉庫そうこ定期ていきてき輸送ゆそうする「テープ保管ほかんサービス」を利用りようすれば、ローカルのシステムがローカルバックアップごとうしなわれるようなだい災害さいがいきても復旧ふっきゅう可能かのうである。

記録きろく媒体ばいたい駆動くどう装置そうちからはずした状態じょうたい保管ほかんすることを前提ぜんていとするリムーバブルメディア一種いっしゅであり、データのみ/みのさいはその都度つどテープライブラリからカートリッジを1つして装置そうち装填そうてんして、使用しようわったのち保管ほかんする必要ひつようがある。そのためそれほど頻繁ひんぱん参照さんしょうしないデータを保存ほぞんするための「コールドストレージ」としての用途ようといている。家庭かてい小規模しょうきぼ事業じぎょうしょではテープの交換こうかん人手ひとでおこなっているところもあるが、だい規模きぼデータセンターではロボットがテープを交換こうかんするオートチェンジャーが普及ふきゅうしている。

前述ぜんじゅつのオートチェンジャーを使つかっていない場合ばあい記録きろく媒体ばいたいオンラインではない、つまり稼働かどうちゅうのシステムから物理ぶつりてき隔離かくりしている前提ぜんていのストレージなので、ネットワークをつうじた不正ふせいアクセスやクラッキングこる心配しんぱいがなく、コンピューターウィルスなどにネットワークにつながったシステムをすべ破壊はかいされてしまっても復旧ふっきゅう可能かのうである。(このような特徴とくちょうを、セキュリティ業界ぎょうかいでは「エアギャップ」とう。)。オートチェンジャーで任意にんいのテープを交換こうかんできる場合ばあい不正ふせいアクセスによるクラッキングがおこなえる可能かのうせいはある。

歴史れきし

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せんじょうびた磁性じせいたい情報じょうほう記録きろくする方式ほうしき原型げんけいは、オバリン・スミスによる針金はりがねへの録音ろくおん技術ぎじゅつ(1888ねん)、ヴォルデマール・ポールセンがワイヤーのまき機構きこうくわえたワイヤーレコーダー(1898ねん)にもとめることができる。 記録きろく媒体ばいたい磁性じせいたい塗布とふしたテープをもちいる方式ほうしきはドイツで開発かいはつされた。1928ねんにフロメイルが酸化さんかてつかみやプラスチックせいのシートに塗布とふした記録きろく媒体ばいたい発明はつめいし、1933ねんにシューラーがリングじょう磁気じきヘッドを発明はつめい化学かがくメーカーのBASFはテープにもちいるアセテート樹脂じゅしのフィルムを開発かいはつした。これらの成果せいかもとに1935ねん電機でんきメーカーのAEGマグネトフォン開発かいはつした。 ピエール・シェフェール磁気じきテープをはじめて音楽おんがくもちいた。ノイズのすくない音楽おんがく演説えんぜつのラジオ放送ほうそう興味津々きょうみしんしんだった連合れんごうこくがわ終戦しゅうせんによってはじめてその技術ぎじゅつ実態じったいり、一挙いっきょ世界中せかいじゅうひろまった。録音ろくおん用途ようとにおいてもレコードや放送ほうそうにおいてだけでなく、一般いっぱん家庭かていでの録音ろくおんようとしても次第しだい普及ふきゅう開発かいはつされたのがはじまりとされる。当初とうしょ巨大きょだいなオープンリールであったがその小型こがたすすみ、カセットタイプのものも開発かいはつされた。あわせて録音ろくおんようだけでない、音楽おんがくソフトのパッケージとしてもレコードと並行へいこうして次第しだい普及ふきゅう。オープンリールタイプのソフトは1970年代ねんだいまで、カセットタイプのソフトは2020年代ねんだいいたっても発売はつばいされつづけている。

コンピューターにおけるデータ記録きろく用途ようとでは、1951ねんにUNIVACが世界せかいはつ商用しょうようコンピューターであるUNIVAC Iの入出力にゅうしゅつりょく装置そうちとしてテープストレージをリリースしたのが世界せかいはつである。その大手おおて市場いちばシェアがあったIBMもテープストレージを製品せいひんくわえ、その1980年代ねんだいにかけてコンピューターの主要しゅよう記録きろく媒体ばいたいであった。しかし1980年代ねんだいはいってハードディスクの技術ぎじゅつ革新かくしんにより容量ようりょう拡大かくだいしたことで、どう製品せいひんによる常時じょうじ接続せつぞくがたのストレージが隆盛りゅうせいとなった。しかしそのテープストレージにおけるだい容量ようりょう技術ぎじゅつ開発かいはつ一般いっぱんクラウドストレージサービスの増加ぞうかによるバックアップへの需要じゅようにより、磁気じきテープによる情報じょうほうストレージのていコストせい注目ちゅうもくされるようになり、2010ねんごろからデータようテープの生産せいさんりょう増加ぞうかしている[2]。また東日本ひがしにっぽん大震災だいしんさい以降いこうは、ハードディスクドライブたいするコストめんでの優位ゆういせいから予算よさん余裕よゆうのない自治体じちたいがバックアップようとして新規しんき導入どうにゅうする事例じれいや、テープ保管ほかんサービスの利用りようえているという[3]。また、磁気じきテープの利用りよう増加ぞうか日本にっぽん国外こくがいほう日本にっぽんよりも先行せんこうしている[4]。その容量ようりょう増大ぞうだいなどの研究けんきゅう開発かいはつすすんでいる[5][6]

2014ねんにTDKが磁気じきテープから撤退てったい。そのため、2014ねん時点じてんにおいて富士ふじフイルムソニー日立ひたちマクセル以下いか、およびげんマクセル)の3しゃでLTOメディアの世界せかいシェアのほぼ100%をめていたが[4]、2014ねんにマクセルがLTOメディアの生産せいさん終了しゅうりょうした。市場いちばにはソニーと富士ふじフイルムがのこったが、LTO-7世代せだい以降いこうでは必須ひっすとなるBaFe磁性じせいたい特許とっきょ富士ふじフイルムがソニーおよびソニーストレージメディアマニュファクチャリングにたいして強気つよき特許とっきょ紛争ふんそう仕掛しかけ、2018ねん販売はんばいめの判決はんけつくだったため、ソニーはメディアを発売はつばいできない状態じょうたいつづいている。そのため、2022ねん現在げんざいでは唯一ゆいいつ富士ふじフイルムだけがLTOメディアを継続けいぞく製造せいぞう販売はんばいしている。

2020ねん富士通ふじつう従来じゅうらいのBaFe磁性じせいたいわるSrFe磁性じせいたい開発かいはつ。1かんたり580TBの容量ようりょう見込みこめる[7]

製造せいぞう方法ほうほう

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はば3 - 4mのフィルムの片面かためん磁性じせいそうなりまく裁断さいだん。リールとばれるボビンにり、プラスチック容器ようきとう装着そうちゃくする。

磁性じせいそうなりまくには、塗布とふ蒸着じょうちゃく、スパッタなどの方法ほうほうがある。一般いっぱんてきには片面かためんだけだが両面りょうめんなりまくした製品せいひんられる。

なりまく、リールへのまえにサーボトラッキングのための情報じょうほう記録きろくされる場合ばあいもある。

規格きかく

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磁気じきテープを利用りようしたメディア規格きかくとしては、以下いかのようなものがある。

コンピュータよう

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記録きろく装置そうち高価こうかであるが、のメディアにくらべて容量ようりょうおおきく、テープの容量ようりょうたりの単価たんか安価あんかである。しかしながら、ランダムアクセスはできない。こうした特徴とくちょうから、企業きぎょう保有ほゆうするだい規模きぼサーバなどのバックアップ[8][2][9]や、参照さんしょう頻度ひんどひくいデータのアーカイブようのメディアとして利用りようされる。

アメリカでは、個人こじんよう安価あんか装置そうち一定いってい普及ふきゅう時期じきもあった。

データのあたましに時間じかんようするが、LTO規格きかくられるように連続れんぞくしたデータのみは非常ひじょう高速こうそくである。また、DDS/DLT/LTOなどであれば「オートローダ」もしくは「テープライブラリ」とばれる装置そうちもちいることで、マガジンに装填そうてんされたテープを自動的じどうてき交換こうかんできる。テープ1ほんでは容量ようりょう不足ふそくする場合ばあい自動じどうのときなどにもちいられる。

オーディオ・ビデオようテープに記録きろくできるストレージもある。

固定こていヘッド

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ヘリカルスキャン

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オーディオよう

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アナログ

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デジタル

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  • 3/4インチデジタルオーディオカセットテープ - UマチックにPCMプロセッサをつないで使用しよう。19mmはばU規格きかくテープを使用しよう
  • DAT
  • デジタルマイクロカセット - ソニーが独自どくじ開発かいはつした規格きかく切手きってサイズのちょう小型こがたカセットテープがもちいられた。2.5mmはば会議かいぎ録音ろくおんよう想定そうていしていたがのち登場とうじょうするICレコーダー台頭たいとうによりほどなくすたれた。
  • DCC - フィリップスと松下電器産業まつしたでんきさんぎょう共同きょうどう開発かいはつした規格きかく。コンパクトカセットをデジタル記録きろくしたもので、現在げんざいすたれた。
  • オープンリール - 業務ぎょうむよう録音ろくおん機器きき使用しようされる。
  • ADAT(ALESIS DIGITAL AUDIO TAPE) - 業務ぎょうむようマルチトラックレコーダ。12.7mmはばVHSテープを使用しよう
  • DTRS(Digital Tape Recording System) - 業務ぎょうむようマルチトラックレコーダ。8mmはば8ミリビデオテープを使用しよう

ビデオよう

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デジタルとアナログで姉妹しまい規格きかくとなっているものがおおく、それゆえデジタルもアナログも記録きろくできる製品せいひん存在そんざいするため、デジタルとアナログはけずに記載きさいする。

オープンリール

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ビデオカセット

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テープの種類しゅるい

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オーディオカセットテープでは使用しようする磁性じせいたい種類しゅるいによって磁気じきテープの商品しょうひんとしての種類しゅるいちがいが存在そんざいする。またビデオテープでは商品しょうひんグレードが存在そんざいする。

オーディオカセットテープ

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ノーマルポジションテープ
塗布とふされている磁性じせいたい酸化さんかだいてつヘマタイト)で茶色ちゃいろである。メタルポジションテープに反転はんてんしたパターンを記録きろくしてバイアス磁界じかいちゅうかさねること転写てんしゃすることにより大量たいりょう複製ふくせい可能かのう。また、音楽おんがくよう最適さいてきされたノーマルポジションテープはちゅうていいきのMOLにすぐれる。
クロムポジション/ハイポジション/EEポジションテープ
クロム、およびコバルト酸化さんかぶつ塗布とふされており、S/N中高なかだか音域おんいき再現さいげんせいすぐれる反面はんめんちゅうてい音域おんいき再現さいげんせいやMOLにかんしては音楽おんがくようノーマルポジションテープにややおよばないめんもある。テープによっては”Cr-O2”の表示ひょうじがある。これは二酸化にさんかクロムのこと。なお、オープンリールようではEEポジションがコンパクトカセットようのハイポジション(クロムポジション)に相当そうとうする。
フェリクロムポジションテープ
ノーマルが得意とくいとするていちゅう音域おんいき、クロムやハイポジションが得意とくいとするこう音域おんいきを、そうりにすることで、双方そうほうすぐれた特性とくせい実現じつげんする。フェリクロムポジションに対応たいおうしていないレコーダーやプレーヤーではノーマルポジションようテープとして代用だいようすることも可能かのう。しかし、コンパクトカセットではそののノーマルポジションテープやハイポジションテープのさらなる高性能こうせいのう高音こうおんしつ実現じつげん後述こうじゅつするメタルポジションテープの登場とうじょう、また、オープンリールでは先述せんじゅつのEEポジションテープの登場とうじょうによりいずれも急速きゅうそくすたれた。表記ひょうきはFe-Cr。
メタルポジションテープ
磁力じりょくすぐれた酸化さんか金属きんぞく磁性じせいたい(オキサイド)が蒸着じょうちゃくされており高密度こうみつど記録きろくてきする。大量たいりょう複製ふくせいのマザーテープとしても使用しようされるがメタルポジションテープ自体じたい転写てんしゃほうによる大量たいりょう複製ふくせいにはてきさない。

ビデオテープ

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メーカーによるテープグレードの区分くぶん(ノーマル、ハイグレード、ハイファイ、プロなど)と、記録きろく方式ほうしき分類ぶんるい(VHSとS-VHSなど)による区分くぶんがある。

脚注きゃくちゅう

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参考さんこう文献ぶんけん

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関連かんれん項目こうもく

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外部がいぶリンク

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