ライオンズマンションから「THE LIONS」へ--2050年ねんをイメージしたリブランド

　大京だいきょうは2023年ねん4月がつ、分譲ぶんじょうマンションブランド「ライオンズマンション」を、「THE LIONS」にリブランドすると発表はっぴょうした。同社どうしゃは1968年ねんの「ライオンズマンション赤坂あかさか」の分譲ぶんじょう以降いこう、ファミリー層そうを中心ちゅうしんに38万まん戸こ以上いじょうのマンションを供給きょうきゅうしてきたが、リブランドの背景はいけいとして、家族かぞくの形態けいたいや顧客こきゃくの価値かち観かんの多様たよう化かなど、事業じぎょう環境かんきょうの変化へんかをあげる。

　ブランドイメージを刷新さっしんし、「マンションをつくる会社かいしゃから、次つぎの価値かちをつくる会社かいしゃへと進化しんかする」ことを目指めざす大京だいきょう。リブランドはどのように始はじまり、展開てんかいしていったのか。大京だいきょうでブランドPJ統括とうかつリーダーを務つとめる外山とやま裕ひろし氏しと、ブランド構築こうちくのためのプロジェクト「DAIKYO NEXT ONE PROJECT」を推進すいしんしたFuture Vision Studio代表だいひょうの榊さかき良りょう祐ゆう氏しに、話はなしを聞きいた。

左ひだりから、Future Vision Studio代表だいひょうの榊さかき良りょう祐ゆう氏し、大京だいきょうブランドPJ統括とうかつリーダーの外山とやま裕ひろし氏し

「バックキャスティング」で未来みらいの住すまいを考かんがえる

　リブランドにあたって、「コロナ禍かのような大おおきな社会しゃかいの変化へんかに、いいものをただ作つくるだけではもう対応たいおうできないと考かんがえた」と、外山とやま氏しは語かたる。5年ねん後ご、10年ねん後ご、30年ねん後ごの生活せいかつは、今いまとは全まったく異ことなるものになっているかもしれない。そこで、最初さいしょに未来みらいの生活せいかつを思おもい描えがき、そこから現在げんざいへの道筋みちすじをさかのぼる「バックキャスティング」の考かんがえ方かたを採用さいよう。いいマンション、デザイン性せいの高たかいマンションを超こえた、住すむ人ひとの人生じんせいの価値かちを高たかめるマンションとは何なにかを考かんがえるワークショップを開催かいさいし、社員しゃいんや外部がいぶの専門せんもん家かがこれに参加さんかした。

　「まずは専門せんもん家かによるインプットセッションから始はじめた。起点きてんとしたのは2050年ねん。未来みらいの社会しゃかいや経済けいざいがどう変化へんかしていくか、建築けんちくや都市とし開発かいはつがどのようになっていくか、人ひとは何なにを豊ゆたかだと感かんじるのか。それらのインプットを踏ふまえてワークショップを行おこない、今回こんかいの『THE LIONS JOURNEY』という未来みらいのマンションコンセプトにたどり着ついた」と、榊さかき氏しは振ふり返かえる。

　榊さかき氏しによると、ワークショップでは最初さいしょに、ウェルビーイング研究けんきゅう者しゃの石川いしかわ善よし樹じゅ氏しをゲストに招まねき、人生じんせいの価値かちを高たかめる3つの要素ようそを定義ていぎしたという。1つは、人生じんせいの中なかに何なにかわからない、未知みちのものがあり続つづけること。2つは、家庭かていや会社かいしゃだけではない、多様たようなコミュニティに所属しょぞくし役割やくわりを持もつこと。3つは、自然しぜんとの共生きょうせいだ。

　このコンセプトを、noizを主催しゅさいする建築けんちく家かの豊田とよだ啓介けいすけ氏しとも共有きょうゆう。20～30代だいの若手わかて社員しゃいんを中心ちゅうしんに30名めい程度ていどのメンバーとワークショップを行おこない、未来みらいのマンションでどのように活動かつどうし、どのような時間じかんを過すごせばより人生じんせいの価値かちが高たかまるかをディスカッションした。飛躍ひやく的てきとも言いえるアイデアをインプットするところから始はじめたおかげか、ワークショップはさまざまなアイデアが飛とび交かい、非常ひじょうな盛もり上あがりを見みせたという。ワークショップで出でたアイデアの共通きょうつう点てんを探さぐり、導みちびき出だされたのが「旅たびをするマンション」だった。

大京だいきょうが発信はっしんする、2050年ねんのウェルビーイングな住すまい

　「住すまいの中なかに未知みちのものがあり続つづけるために、海うみの上うえを移動いどうし続つづけるような、定住ていじゅうしないマンションを考かんがえた。朝あさ起おきると窓まどの外そとの景色けしきが変かわっていたり、立たち寄よる港みなとごとに新あたらしい出会であいがあったりすれば、常つねに新あたらしい発見はっけんがあるはず。また、居場所いばしょをたくさん持もち多様たようなコミュニティに所属しょぞくするために、積極せっきょく的てきに外そとに出でる機会きかいがあるマンションを考かんがえた。建物たてものの屋上おくじょうが共有きょうゆうスペースになっていたり、マンションの中なかに公園こうえんやカフェやスポーツジムがあったりすれば、そこにいる人ひとと会話かいわが生うまれる。さらに、それらの共有きょうゆうスペースに豊ゆたかな自然しぜんがあれば、住すむ人ひとの人生じんせいの価値かちを高たかめるマンションができるのではないかと想像そうぞうした」（榊さかき氏し）

「THE LIONS JOURNEY」で提示ていじされた海うみの上うえを移動いどうするマンション

　とはいえ、海うみの上うえを住すまいが移動いどうし続つづけるとなると、働はたらく場所ばしょや子供こどもの学校がっこうなどにアクセスすることが難むずかしくなる。そこで、マンション内ないにメタバース技術ぎじゅつを搭載とうさいした部屋へやを設置せっちし、世界中せかいじゅうの医療いりょう施設しせつ、学校がっこうなどに接続せつぞくできるようにするというアイデアが生うまれた。場所ばしょに縛しばられることなく、子供こどもがいても他た拠点きょてん生活せいかつを実現じつげんできるような住すまいをイメージしたという。

メタバースルーム

　マンションは、ともすると自然しぜんを破壊はかいし、建築けんちくするためにCO2を排出はいしゅつしなければならないイメージもあるが、THE LIONS JOURNEYはこれも覆くつがえす。自然しぜんのある屋上おくじょうの共有きょうゆうスペースには動植物どうしょくぶつが生息せいそくしていたり、渡わたり鳥どりがやってきたりして、生物せいぶつの多様たよう性せいが保たもたれている。また、海上かいじょうの運航うんこうや住人じゅうにんが使用しようする生活せいかつ電力でんりょくは、波浪はろう発電はつでん技術ぎじゅつによって波なみの力ちからをエネルギーに転換てんかん。さらに、移動いどう先さきの各地かくちに点在てんざいするポートやレジデンス同士どうしのドッキングによって、人ひと、文化ぶんか、経済けいざいが循環じゅんかんし、都市とし集中しゅうちゅうが緩和かんわされるような建物たてものにしたいというアイデアが出でた。自然しぜんを破壊はかいするのではなく、マンションがあることによって地球ちきゅう環境かんきょうが再生さいせいし、地域ちいき経済けいざいが活性かっせい化かするようなイメージだ。

屋上おくじょうの人ひとと自然しぜんの共有きょうゆう空間くうかん

ポートシステム

　建物たてものの設備せつびや間取まどりだけに留とまらない、人生じんせいの価値かちを高たかめる未来みらいの生活せいかつを考かんがえ、大京だいきょうが目指めざす住すまいの形かたちをメッセージとして発信はっしんしていく。そうすることで、この先さき30年間ねんかんでやるべきことも見みえてくるのではないかと外山とやま氏しは語かたる。

　「ライオンズマンションというブランドのこれまでのDNAを残のこしながら、次つぎのステップへ進すすみたい。そう考かんがえたとき、お客様きゃくさまが今いま、本当ほんとうに求もとめていることを深ふか掘ほりする必要ひつようがあると思おもった。たとえば今いま、パワーカップルと呼よばれているような夫婦ふうふがどのような価値かち観かんで人生じんせいを捉とらえているか、どういったことに興味きょうみを持もっているか。リブランドに関かかわる社員しゃいんがそれらをインプットし直なおし、意識いしきを変かえていった」（外山とやま氏し）

　重要じゅうようなのは、海うみの上うえを移動いどうし続つづけたり、窓まどの外そとの景色けしきが変かわったりといったアイデアそれ自体じたいよりも、「人生じんせいには価値かちがある」というコンセプトだと外山とやま氏しは強調きょうちょうする。2050年ねんに向むけて世よの中なかは変化へんかし続つづけ、人々ひとびとは現在げんざいからは考かんがえられないような生活せいかつを送おくることになるかもしれない。THE LIONS JOURNEYは、2050年ねんの住すまいのアイデアを出だして終おわりではなく、未来みらいの生活せいかつを考かんがえるきっかけのようなものにしたいと、外山とやま氏しはプロジェクトの今後こんごにも期待きたいを込こめた。

感度かんどの高たかい人々ひとびとへメッセージを届とどける

　THE LIONS JOURNEYは、「DESIGNART TOKYO 2023」にも出展しゅってんした。ファミリー層そう向むけのマンションを多おおく提供ていきょうしてきたライオンズマンションが飛躍ひやく的てきなビジョンを発信はっしんしたことの反響はんきょうは大おおきく、「人生じんせいには価値かちがある」というコンセプトにも、共感きょうかんする声こえが寄よせられたという。

　「海うみの上うえを移動いどうし続つづけるマンションというアイデアは、不動産ふどうさんの概念がいねんを覆くつがえす。ライオンズマンションがこのような尖とがったイメージを発信はっしんしたことに驚おどろいたという反応はんのうが多おおくあった。DESIGNART TOKYO 2023を通とおして、感度かんどの高たかい人々ひとびとにコンセプトが伝つたわった手応てごたえを感かんじた」と、榊さかき氏しは振ふり返かえる。

　「イメージしているのは2050年ねん。アイデアは尖とがっているし、今いますぐ実現じつげんできるものばかりではないが、生物せいぶつ多様たよう性せいや環境かんきょう問題もんだいなど、THE LIONS JOURNEYには今後こんごの社会しゃかいにおいて重要じゅうようなテーマが含ふくまれている。未来みらいからバックキャストして今いまできることを考かんがえ、これからも発信はっしんを続つづけていきたい」と、外山とやま氏しは今後こんごの展望てんぼうを語かたった。