コンセンサス（英語えいご表記ひょうき）consensus

政治せいじに対たいする認知にんちや態度たいどの基本きほん的てきな点てんに関かんして，人々ひとびとの間あいだに高度こうどの合意ごういが存在そんざいすることをいう。価値かちと利害りがいの多元たげん性せいを前提ぜんていとする社会しゃかいでは，人々ひとびとの間あいだに多様たような対立たいりつが存在そんざいするのが常態じょうたいである。こうした対立たいりつを調整ちょうせいして社会しゃかいの秩序ちつじょを安定あんていさせることが，政治せいじの機能きのうの一ひとつであるが，調整ちょうせいが効果こうか的てきに行おこなわれるためには，人々ひとびとの間あいだにある程度ていどの意見いけんの一致いっちがみられることが必要ひつようである。もちろん，こうした一致いっちが対立たいりつや紛争ふんそうを生うみ出だしている個々ここの争点そうてんに関かんして存在そんざいする必要ひつようはない。ただ，たとえば政権せいけんの平和へいわ的てき交代こうたい，多数決たすうけつによる決定けってい，少数しょうすう意見いけんの尊重そんちょうといった基本きほん的てきルールについては，人々ひとびとの間あいだに高度こうどの合意ごういがあることが必要ひつようであろう。また，何なにが現在げんざいの政治せいじにおける最もっとも重要じゅうような争点そうてんであるかといった判断はんだんについても，相当そうとうに高度こうどの合意ごういが必要ひつようとされる。こうした合意ごういがコンセンサスにほかならない。民主みんしゅ政治せいじにおいては，何なんらかの同質どうしつ性せいが不可欠ふかけつの前提ぜんていであるが，コンセンサスはこうした同質どうしつ性せいを調達ちょうたつする要因よういんの一ひとつと考かんがえられる。コンセンサスは，その量的りょうてき規模きぼにおいて合意ごういと区別くべつされる。すなわち，単たんなる合意ごういはわずかに半数はんすうをこえる人々ひとびとの意見いけんの一致いっちであってもよいが，コンセンサスは社会しゃかいの構成こうせい員いんの圧倒的あっとうてき多数たすうを含ふくむことを要求ようきゅうされる。また，コンセンサスは，その対象たいしょうに関かんしてコンフォミティ（同調どうちょう）とは異ことなる。コンフォミティは，人々ひとびとに同どう一いち歩調ほちょうをとらせるために，いかなる争そう点てんでも利用りようしようと試こころみるが，コンセンサスは，単たんに基本きほん的てきなルールに関かんして意見いけんの一致いっちを求もとめるにすぎない。
→合意ごうい
執筆しっぴつ者しゃ：阿部あべ 斉ひとし