平戸ひらど藩はん（読よみ）ひらどはん

肥前ひぜん国こく（長崎ながさき県けん）北松浦きたまつうら郡ぐん平戸ひらどに藩はん庁ちょうを置おいた外様とざま中ちゅう藩はん。藩主はんしゅは松浦まつうら氏し。6万まん1700石せき。松浦まつうら党とうに系譜けいふをひく平戸ひらど松浦まつうら氏しは，党とうの単位たんい細胞さいぼうである平戸ひらど党とうの結束けっそくを通つうじて在地ざいち領主りょうしゅとして発展はってんし，隆信たかのぶ（道みち可か）の時代じだいには，北松浦きたまつうら郡ぐんと壱岐いき国こくを領有りょうゆうする戦国せんごく大名だいみょうに発展はってんした。1587年ねん（天正てんしょう15）豊臣とよとみ秀吉ひでよしの九州きゅうしゅう征伐せいばつ後ご，本領ほんりょうを安堵あんどされて近世きんせい大名だいみょうとなった。石高こくだかは6万まん3200石せきであったが，1664年ねん（寛文ひろふみ4）4代だい藩主はんしゅ鎮信（しげのぶ）（天てん祥さち）のとき，従弟じゅうてい信しんじ貞さだに今福いまふく1500石せきを分ぶん知ちした。初代しょだい藩主はんしゅ鎮信（法印ほういん）は，朝鮮ちょうせんの役やくやキリシタン禁制きんせいを通つうじて一門いちもん・譜代ふだいなどの有力ゆうりょく家臣かしんを排除はいじょしながら，家臣かしん団だんの統制とうせいを強化きょうかした。4代だい藩主はんしゅ鎮信（天てん祥さち）の41年ねん（寛永かんえい18），平戸ひらどのオランダ商館しょうかんが長崎ながさきに移転いてんされたため，藩はん財政ざいせいは大おおきな打撃だげきをうけた。そのため，鎮信は明あかり暦れき総そう検地けんちを実施じっしし，本ほん百姓ひゃくしょうの維持いじ・増大ぞうだい，商しょう・漁業ぎょぎょうの振興しんこうをはかり，87年ねん（貞享ていきょう4）には知行ちぎょう制せいを改革かいかくし，生産せいさん物ぶつ地代じだい原則げんそくの確立かくりつと財政ざいせい強化きょうかにつとめた。5代だい藩主はんしゅ棟とう（たかし）は，89年ねん（元禄げんろく2）弟おとうと昌あきら（まさし）に新田しんでん1万まん石せきを分封ぶんぽう（平戸ひらど新田にった藩はん）する一方いっぽう，外様とざま大名だいみょうながら91年ねん寺社じしゃ奉行ぶぎょうとなって幕政ばくせいに参画さんかくしたが，それにともなう臨時りんじ支出ししゅつで財政ざいせいは窮乏きゅうぼうし，8代だい藩主はんしゅ誠まこと信しんじ（さねのぶ）は倹約けんやく令れいと上うえ米べい制せいを命めいじて財政難ざいせいなんに対処たいしょした。9代だい藩主はんしゅ清きよし（静しず山さん）は平戸ひらど藩はん最大さいだいの藩政はんせい改革かいかく＝寛政かんせい改革かいかくを断行だんこうし，江戸えど，国元くにもとの財政ざいせい組織そしきを全面ぜんめん的てきに改正かいせいする一方いっぽう，都市とし，農のう漁村ぎょそんの再建さいけんにつとめ，晩年ばんねんには《甲子きのえね夜話やわ（かつしやわ）》の編纂へんさんにあたった。10代藩主はんしゅ熈（ひろむ）は防備ぼうび体制たいせいを強化きょうかし，11代だい藩主はんしゅ曜（てらす）は天保てんぽうから安政あんせいにかけて軍制ぐんせい・土地とち制度せいどの改革かいかくを行おこなった。12代だい藩主はんしゅ詮かい（あきら）は国事こくじ周旋しゅうせんと藩はん外がい活動かつどうを通つうじて自じ藩はんの進すすむ方向ほうこうを打うち立たて，戊辰戦争ぼしんせんそう勃発ぼっぱつ直後ちょくごに討幕とうばくの意志いしを表明ひょうめいした。ついで1868年ねん（明治めいじ1）の軍制ぐんせい改革かいかくで銃じゅう隊たいを編成へんせいし，同年どうねん8月がつ，奥羽おうう平定へいてい戦せんに諸しょ隊たいを派遣はけんした。明治維新めいじいしんの論功行賞ろんこうこうしょうにおいて3000石せき賜たまもの与あずかされた。71年ねん廃藩置県はいはんちけんによって平戸ひらど県けんとなり，のち長崎ながさき県けんに編入へんにゅうされた。
執筆しっぴつ者しゃ：藤野ふじの 保たもつ