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心(ココロ)とは? 意味や使い方 - コトバンク

しんみ)ココロ

デジタル大辞泉だいじせんしん」の意味いみみ・例文れいぶん類語るいご

こころ【しん

人間にんげん理性りせい知識ちしき感情かんじょう意志いしなどのはたらきのもとになるもの。また、はたらきそのものをひっくるめていう。精神せいしん心情しんじょう。「しんゆたかなひと」「しんかぶおもい」「しんしんい」「しんいためる」「しんれるときもない」
いつわりやかざりのない本当ほんとう気持きもち。本心ほんしん。「しんかおあらわれる」「しんから感謝かんしゃする」「しんにもないほめ言葉ことば」「くちしんちがひと
についたかんかたかんがかた傾向けいこう性分しょうぶん性根しょうこん。「まれついてのしんわらない」「ねじけたしん」「しんえる」
物事ものごとについてかんがえ、判断はんだんするはたらき。かんがえ。思慮しりょ分別ふんべつ。「しんめたらまよわずすすむ」「会社かいしゃ再建さいけんしんくだく」
他人たにん状況じょうきょうさっしていたわる気持きもち。おもいやり。なさけ。人情味にんじょうみ。「しんのこもったおくもの」「しんをこめてんだセーター
㋔あることをしようとする気持きもち。意志いし。「やるしかないとしんめる」「こうというしんこらない」
物事ものごとたいする関心かんしん興味きょうみ。「あそびにしんうばわれる」
自分じぶんことなるものをみとれる余裕よゆう度量どりょう。「ひろしんぬし」「しんせまひと
物事ものごとうつくしさやおもしろさのわかる感覚かんかく風流ふうりゅうしん。「しんにふれる」「もとめるしん
おぼえていること。記憶きおく。「しんふかきざまれたいたみ」「しんのこ名演技めいえんぎ
をつけること。注意ちゅうい留意りゅうい。「しんとどく」「隅々すみずみにまでしんくばる」

物事ものごと本質ほんしつをなす意味いみ。また、芸術げいじゅつじょう理念りねん。「演技えんぎしん会得えとくする」「のうしん幽玄ゆうげんにある」
㋑なぞきなどで、その理由りゆう。わけ。「田舎いなか便だよりとかけて豆腐とうふととく。しんはまめ(まめ)でかせいでいる」
まったことなるほか物事ものごと見立みたてること。つもり。
「まだ蓬莱ほうらいほうらいかざらねども、まづ正月しょうがつの―」〈きよし阿波あわ鳴門なると
おもしろくないおもい。また、へだてする気持きもち。
「かくしたしきなからひにて、―あるやうならむも便びんなくて」〈みなもと若菜わかなじょう
[しもせっ]しんくちくちしんしん犬馬けんばしんたびなさじんしん千里せんりそとほか故人こじんしんひと見目けんもくみめよりただこころ
[せつ]書名しょめい別項べっこう。→こころ
[類語るいご]精神せいしん内面ないめんハート良心りょうしん意味いみ神経しんけいむね意義いぎよし概念がいねんいいいい語意ごい語義ごぎ字義じぎ文意ぶんい含意がんいふく意味合いみあむねニュアンス語感ごかん本義ほんぎ広義こうぎ狭義きょうぎ

しん【しん】[漢字かんじ項目こうもく

おとシン)(かん) [くんこころ
学習がくしゅう漢字かんじ]2ねん
〈シン〉
五臓ごぞういち心臓しんぞう。「心悸しんき心筋しんきん心室しんしつ腹心ふくしん狭心症きょうしんしょう
こころ。精神せいしん。「心境しんきょう心魂しんこん心情しんじょう心身しんしん心配しんぱい心理しんり安心あんしん一心いっしん改心かいしん感心かんしん疑心ぎしん苦心くしん細心さいしん執心しゅうしん小心しょうしん傷心しょうしん専心せんしん童心どうしん内心ないしん熱心ねっしん変心へんしん放心ほうしん発心ほっしんほっしん本心ほんしん民心みんしん無心むしん野心やしん用心ようじんようじん良心りょうしん
まんなか物事ものごとのかなめ。「心棒しんぼう核心かくしん湖心こしん重心じゅうしん中心ちゅうしん天心てんしん都心としん灯心とうしん
〈こころ(ごころ)〉「心得こころえ気心きごころ下心したごころ真心まごころ
のり]うち・きよ・ご・ごり・さね・なか・み・むね・もと
難読なんどく心地ここちここち心算しんさんつもり灯心とうしんとうしみ心太ところてんところてん稈心みご

しん【しん

精神せいしん。こころ。また、こころの奥底おくそこ。「しんわざからだのそろった力士りきし」「しんつよひと」→しんしんから
おおく「しん」とく)もののなか。中央ちゅうおう中心ちゅうしん
内部ないぶ奥深おくふかいところ。「からだのしんまでえる」
中央ちゅうおうにあって、重要じゅうよう役割やくわりをになう部分ぶぶん。「鉛筆えんぴつしん」「蝋燭ろうそくろうそくしん」「一家いっかしんとなってはたらく」
かよっていない飯粒めしつぶめんの、中央ちゅうおうかた部分ぶぶん。「しんのある御飯ごはん
ぶつ形状けいじょうたもつために、その内部ないぶれるもの。「えりしんれる」
1宿やどるとされたところから》しんの臓。心臓しんぞう。「しん不全ふぜん
二十八宿にじゅうはっしゅくいち東方とうほうだい宿しゅくさそりさそりざアンタレスほかほしをさす。なかごぼし。こころ宿やど
しんしん7
仲間なかまともだち。
「おいらも―にれねえな」〈すべり浮世うきよ風呂ふろまえ
[類語るいご]中心ちゅうしんなか中央ちゅうおうまんなかなかただなかまっただなか正中せいちゅうせいちゅう中点ちゅうてんセンターあいだ目玉めだまかく核心かくしん基軸きじく心臓しんぞうずい

こころ【しん/こゝろ】[書名しょめい

しん)《原題げんだいKokoro小泉こいずみ八雲やくも著作ちょさく明治めいじ29ねん(1896)かん副題ふくだいは「日本にっぽん内面ないめん生活せいかつ暗示あんじ影響えいきょう」。
(こゝろ)夏目なつめ漱石そうせき小説しょうせつ大正たいしょう3ねん(1914)発表はっぴょう罪悪ざいあくかん孤独こどくかん人間にんげん憎悪ぞうおねんがついには自己じこ否定ひていいたるという、個人こじん主義しゅぎ思想しそう極致きょくちえがく。

うら【しん

《「うら」とどう語源ごげんで、ひょうえないもののから》
こころ。おもい。内心ないしん。→しんうらもなし
形容詞けいようし動詞どうしいて、しんなかで、しんそこからのあらわし、さらにそのよわまって、なにということなく、なにとはわからず、おのずからそのようにかんじられるのあらわす。「しんかなしい」「しんさびしい」「しんあらぶ」

けけれ【しん

こころ」のおと変化へんか東国とうごく方言ほうげん
甲斐かいみねをさやにもしが―なくよこほりせる小夜さよさや中山ちゅうざん」〈古今ここん東歌あずまうた

ここり【しん

「こころ」の上代じょうだい東国とうごく方言ほうげんという。
ぐんだまのくるにくぎくさりかためとしいもうといもが―はどうあよくなめかも」〈まんよんさんきゅう〇〉
[せつ]れい原文げんぶんさと」の「さと」は「ろ」のおつるい仮名かめいにももちいるので、「こころ」の誤読ごどくとするせつがある。

出典しゅってん 小学館しょうがくかんデジタル大辞泉だいじせんについて 情報じょうほう | 凡例はんれい

精選せいせんばん 日本にっぽん国語こくごだい辞典じてんしん」の意味いみみ・例文れいぶん類語るいご

こころ【しんじょう

  1. [ 1 ] 名詞めいし 人間にんげん理知的りちてき情意じょういてき精神せいしん機能きのうをつかさどる器官きかん、また、そのはたらき。「からだ」や「もの」と対立たいりつする概念がいねんとしてもちいられ、また、比喩ひゆてきに、いろいろな事物じぶつの、人間にんげんしん相当そうとうするものにももちいられる。精神せいしんたましい
    1. [ いち ] 人間にんげん精神せいしん活動かつどう総合そうごうしていう。
      1. 人間にんげん理性りせい知識ちしき感情かんじょう意志いしなど、あらゆる精神せいしん活動かつどうのもとになるもの。また、そうした精神せいしん活動かつどう総称そうしょう
        1. [初出しょしゅつ実例じつれい]「大君おおきみもともとりょ(ココロ)をゆらみ しん(おみ)はちじゅう柴垣しばがき たずあり」(出典しゅってん古事記こじき(712)した歌謡かよう)
        2. 大夫たいふ(ますらを)さと(さと)しん(こころ)いまこいやつ(やつこ)にあれはぬべし」(出典しゅってん万葉集まんようしゅう(8Cいちきゅうなな)
      2. 表面ひょうめんからはわからない本当ほんとう気持きもち精神せいしん気持きもちのありのままの状態じょうたい本心ほんしん
        1. [初出しょしゅつ実例じつれい]「しからばなんじ(いまし)しんきよきはなに(いかに)してらむ」(出典しゅってん古事記こじき(712)じょう)
        2. ひとはいさしんもしらずふるさとははなぞむかしのこうににほひける〈紀貫之きのつらゆき〉」(出典しゅってん古今ここん和歌集わかしゅう(905‐914)はるじょうよん)
      3. 先天的せんてんてき、または習慣しゅうかんてきにそなわっている精神せいしん活動かつどう傾向けいこう性格せいかく性分しょうぶん気立きだて。
        1. [初出しょしゅつ実例じつれい]「高麗こうらいけん(こまつるぎ)おのれ(わ)けい(こころ)からよそのみにつつやくんこいわたりなむ」(出典しゅってん万葉集まんようしゅう(8Cいちきゅうはちさん)
        2. 「そのひと、かたちよりはしんなんまさりたりける」(出典しゅってん伊勢物語いせものがたり(10Cまえ)
      4. 人知ひとしれずかんがえや感情かんじょうなどをいだくところ。しんなか内心ないしん
        1. [初出しょしゅつ実例じつれい]「なおねがいはてさむと、睠(かへり)みてつねふところ(こころ)に愁ふ〈真福寺しんふくじほんくんしゃく ふところ こころ也〉」(出典しゅってん日本にっぽん霊異れいい(810‐824)した)
        2. ひとほうくだりに、発句ほっくしん行事ぎょうじり」(出典しゅってん俳諧はいかいさん冊子さっし(1702)わすれすい)
    2. [ ] 人間にんげん精神せいしん活動かつどうのうち、じょうのいずれかの方面ほうめんとくにとりしていう。
      1. 物事ものごと秩序ちつじょだててかんがえ、行動こうどう決定けっていする精神せいしん活動かつどう思慮しりょ分別ふんべつ。また、こまかなところまできとどいたくばり。周到しゅうとう配慮はいりょ
        1. [初出しょしゅつ実例じつれい]「まとおくのにも逢はなむおのれもとりょ(ココロ)なくさとのみなかに逢へるなかも」(出典しゅってん万葉集まんようしゅう(8Cいちよんさんよんろくさん)
        2. しんいたかぎりは、おろかならずおもきゅうふるに」(出典しゅってん源氏物語げんじものがたり(1001‐14ごろうすくも)
      2. とっさのくばり。また、ことのぞんで物事ものごと処理しょりしてゆく能力のうりょく機転きてん気働きばたらき。臨機応変りんきおうへんしん
        1. [初出しょしゅつ実例じつれい]「さらば、かくなんときこえよとはべりしかども、よもきさせきゅうはじとてふしはべりにきとかたる。しんもなのことや、とほどに」(出典しゅってん枕草子まくらのそうし(10Cおわりはちさん)
      3. 自分じぶん気持きもちことなったものをれるときの精神せいしんてき許容きょようせい度量どりょう
        1. [初出しょしゅつ実例じつれい]「わががいとよく思ひ寄おもいよりぬべかりしことを、ゆずきこえて、こころひろさよ」(出典しゅってん源氏物語げんじものがたり(1001‐14ごろ夕顔ゆうがお)
      4. 感情かんじょう気分きぶんなど、外界がいかい条件じょうけんなどに反応はんのうして心理しんりない微妙びみょうにゆれうごくもの。情緒じょうちょ
        1. [初出しょしゅつ実例じつれい]「いわだい野中のなかてるむすまつじょう(こころ)けずいにしへおもえほゆ」(出典しゅってん万葉集まんようしゅう(8Cいちよんよん)
        2. なかにたえてさくらのなかりせばはるしんはのどけからまし〈在原業平ありわらのなりひら〉」(出典しゅってん古今ここん和歌集わかしゅう(905‐914)はるじょうさん)
      5. たいするおもいやり。他人たにんたいしてあたたかく反応はんのうする気持きもちなさけ。人情味にんじょうみ情愛じょうあい
        1. [初出しょしゅつ実例じつれい]「三輪山みわやまをしかもかくすかくもだにもじょう(こころ)らなもかくれさふべしや」(出典しゅってん万葉集まんようしゅう(8Cいちいちはち)
      6. 詩歌しか文学ぶんがく芸術げいじゅつ情趣じょうしゅ、もののあわれなどを理解りかいし、それをすことのできる感性かんせい風流ふうりゅうしん
        1. [初出しょしゅつ実例じつれい]「このざいつぎくんりゃくこころあるものにて、ひとくにのあはれに心細こころぼそ所々しょしょにてはうたよみてきつけなどしける」(出典しゅってん大和やまと物語ものがたり(947‐957ごろいちよんよん)
        2. 「こころなきにもあいはしられけりしぎたつさわあき夕暮ゆうぐれ」(出典しゅってん山家やまがしゅう(12Cじょう)
      7. ことばの発想はっそうのもとになる、人間にんげん意識いしき感情かんじょう言語げんご表現ひょうげんささえる精神せいしん活動かつどう
        1. [初出しょしゅつ実例じつれい]「上古じょうこときげん(ことば)(こころ)ならびにほお(すなほ)にして、ぶんを構ふること、きてすなわかたし。すでくんりてべたるは(ことば)しんに逮ばず」(出典しゅってん古事記こじき(712)じょ)
        2. 「やまとうたは、ひとのこころをたねとして、よろづのことのとぞなれりける」(出典しゅってん古今ここん和歌集わかしゅう(905‐914)仮名かめいじょ)
      8. ある物事ものごと意図いとし、その実現じつげんのぞ気持きもちかんがくわだてること。また、そのかんがえ。くわだて。意向いこう意志いし
        1. [初出しょしゅつ実例じつれい]「むすびてし げん(こと)はたさず おもえへりし しんげず」(出典しゅってん万葉集まんようしゅう(8Cさんよんはちいち)
      9. 気持きもちかた心構こころがまえ。また、意図いと実現じつげんさせるのに必要ひつよう意気いきごみや精神せいしんりょく
        1. [初出しょしゅつ実例じつれい]「しんによりなん、ひとはともかくもある」(出典しゅってん源氏物語げんじものがたり(1001‐14ごろ若菜わかな)
      10. かまえて、そういう気持きもちになること。わざと、そのものとはちがった見立みたてをすること。つもり。
        1. [初出しょしゅつ実例じつれい]「これかかまだ蓬莱ほうらいはかざらねともさき正月しょうがつしんさんばうかざってもっておじゃ」(出典しゅってん浄瑠璃じょうるりゆうきり阿波あわ鳴渡なりわた(1712ごろじょう)
      11. あらかじめことりゆきを想定そうていまたは予定よていしておくこと。また、その予想よそう予期よき想像そうぞう覚悟かくご常識じょうしきてき想定そうてい
        1. [初出しょしゅつ実例じつれい]「ようかくきたりとおもひしを、しんよりほかにこそでにけれ」(出典しゅってん枕草子まくらのそうし(10Cおわりさんいちきゅう)
        2. 「われこころありてたれども、ついさくず。こんしんなくしてづるるこそうれしけれ」(出典しゅってん読本とくほん椿つばきせつ弓張月ゆみはりづき(1807‐11)まえ)
    3. [ さん ] 人間にんげんにある特定とくてい分野ぶんやかかわりのふか精神せいしん活動かつどうとくにとりしていう。
      1. 相手あいてさからうような気持きもちをひそかにいだくこと、また、その気持きもち相手あいて反逆はんぎゃくしたり、へだてをするような気持きもちみずくさいしん二心ふたごころこと(こと)しん。あだししん隔意かくい
        1. [初出しょしゅつ実例じつれい]「ひとげんしげみこちたみ逢はざりきこころあるごとなおも背子せこ」(出典しゅってん万葉集まんようしゅう(8Cよんさんはち)
      2. 宗教しゅうきょう方面ほうめんすすんでいる気持きもち道心どうしん宗教しゅうきょうしん信仰しんこうしん信心しんじん
        1. [初出しょしゅつ実例じつれい]「などて、このつきごろもうでですごしつらんと、まづしんもおこる」(出典しゅってん枕草子まくらのそうし(10Cおわりいち〇)
        2. 「さばかり道心どうしんなきしゃの、はじめてしんおこことこそこうはざりしか」(出典しゅってんだいかがみ(12Cまえろく)
      3. 世俗せぞくてきなものに執着しゅうちゃくする気持きもちまよいのままでさとれないしん雑念ざつねん妄念もうねん我執がしゅう煩悩ぼんのうぞくじょう
        1. [初出しょしゅつ実例じつれい]「ひとへに放埒ほうらつさきとして、かるくなすうた人世じんせいおおし。しんてたるにんにまぎれはべるべし」(出典しゅってん:ささめごと(1463‐64ごろした)
    4. [ よん ] 事物じぶつについて、人間にんげんの「しん」に相当そうとうするものを比喩ひゆてきにいう。
      1. ひと美的びてき感興かんきょうなどをこさせるもの。事物じぶつ情趣じょうしゅ風情ふぜい。おもむき。
        1. [初出しょしゅつ実例じつれい]「たちばなくあをきに、はなのいとしろきたるが、あめうちりたるつとめてなどは、になうこころあるさまにをかし」(出典しゅってん枕草子まくらのそうし(10Cおわりさんなな)
      2. あまりおおやけにされていない事情じじょう。また、くわしいいきさつ。内情ないじょう実情じつじょう
        1. [初出しょしゅつ実例じつれい]「もんうちたたかせきゅうへば、こころらぬものけたるに」(出典しゅってん源氏物語げんじものがたり(1001‐14ごろ若紫わかむらさき)
      3. 物事ものごと本質ほんしつてきなありかた中心ちゅうしんてきなすじみち。物事ものごと道理どうり
        1. [初出しょしゅつ実例じつれい]「ここに、いにしえへのことをも、うたのこころをもれるひと、わづかにひとりふたりなりき」(出典しゅってん古今ここん和歌集わかしゅう(905‐914)仮名かめいじょ)
      4. 内々うちうちでたくまれた、物事ものごと趣向しゅこう。くふう。
        1. [初出しょしゅつ実例じつれい]「九日ここのかうたげにまづかたしんおもひめぐらし、いとまなきをりに」(出典しゅってん源氏物語げんじものがたり(1001‐14ごろ)帚木)
      5. ことばの意味いみ。わけ。語義ごぎ。また、詩歌しか文章ぶんしょうなどのふくんでいる意味いみ内容ないよう
        1. [初出しょしゅつ実例じつれい]「ちはやぶるかみには、うた文字もじさだまらず、すなほにして、げんしんわきがたかりけらし」(出典しゅってん古今ここん和歌集わかしゅう(905‐914)仮名かめいじょ)
        2. 「たとへば、此の朗詠ろうえいしんは、むかし、堯の御門みかどにん姫宮ひめみやましましき」(出典しゅってん平家ひらか物語ものがたり(13Cまえろく)
      6. 事柄ことがらりたせている根拠こんきょ物事ものごと理由りゆう。また、なぞときなどの根拠こんきょ。わけ。
        1. [初出しょしゅつ実例じつれい]「法師ほうしまいらずとけば、しんひろぬるに」(出典しゅってん海道かいどう(1223ごろ逆川さかがわより鎌倉かまくら)
      7. 歌論かろん連歌れんがろん用語ようご
        1. (イ) 和歌わか連歌れんが主題しゅだい表現ひょうげん意図いと意味いみ内容ないよう
          1. [初出しょしゅつ実例じつれい]「このうた、いかにいへるにかあらん、そのしん、えがたし」(出典しゅってん古今ここん和歌集わかしゅう(905‐914)仮名かめいじょ)
        2. (ロ) 和歌わか連歌れんが情趣じょうしゅ感動かんどう余情よじょうなどをいう。
          1. [初出しょしゅつ実例じつれい]「おようたしんふかく、姿すがたきよげに、こころにをかしきところあるをすぐれたりといふべし」(出典しゅってん新撰しんせんずいのう(11Cはつ))
        3. (ハ) 和歌わか連歌れんが表現ひょうげんうえにみられる、すぐれた感覚かんかく美的びてきなセンス。
          1. [初出しょしゅつ実例じつれい]「まついまめかしく、こころありなどはべるは、ゆかぬことにぞ」(出典しゅってんひさしうけたまわねん女御にょうご延子のぶこ絵合えあわせ(1050))
    5. [ ] 人体じんたいまたは事物じぶつについて「しん」にかかわりのある部位ぶいや「しん」に相当そうとうする位置いちをいう。
      1. もの中心ちゅうしんもの中央ちゅうおうとくいけについていうことがおおい。まんなか。なかご。
        1. [初出しょしゅつ実例じつれい]「りぬともかげをやとめぬふじ花池はないけのこころのあるかひもなき」(出典しゅってん:躬恒しゅう(924ごろ))
      2. 人体じんたいで、しん宿やどるとかんがえられたところ。心臓しんぞうむねのあたり。むねさき。
        1. [初出しょしゅつ実例じつれい]「だい猪子いのこはらにある きもこうもともとりょ(ココロ)をだにか 相思そうしはずあらむ」(出典しゅってん古事記こじき(712)した歌謡かよう)
        2. 「こころときめきするもの。すずめ子飼こがいひ。ちごゆうばするところまえわたる」(出典しゅってん枕草子まくらのそうし(10Cおわりきゅう)
  2. [ 2 ] ( こゝろ ) 小説しょうせつ夏目なつめ漱石そうせきさく大正たいしょうさんねんいちきゅういちよん発表はっぴょう友人ゆうじんKをいやった「先生せんせい」の心理しんりてき過程かていを、学生がくせいである「わたし」のと、「先生せんせい」の遺書いしょとおしてえがく。近代きんだい知識ちしきじんエゴイズム問題もんだい追究ついきゅうした作品さくひん

しん【しん

  1. [ 1 ] 名詞めいし
    1. こころ。精神せいしん
      1. [初出しょしゅつ実例じつれい]「たとひ衆生しゅじょうといふとも、心意しんい別称べっしょう也。しんすぐれたりとして、おとれりとすることなかれ」(出典しゅってんでんひかりろく(1299‐1302ごろふくみつ尊者そんじゃ)
      2. 「扨(さて)も扨もあの猟師りょうしといふものは、うたぐひのしんのふかいものぢゃなあ」(出典しゅってん集成しゅうせいほん狂言きょうげんつりきつね室町むろまちまつ近世きんせいはつ))
      3. [その文献ぶんけん]〔孟子もうしつげうえ
    2. 心臓しんぞうしんの臓。〔じゅうかんほん和名わみょうしょう(934ごろ)〕 〔れいしょう
    3. 胸部きょうぶ。むね。〔そう天運てんうんへん
    4. ( 「しん」ともく ) ぶつ中央ちゅうおう、また、中心ちゅうしん構成こうせいする部分ぶぶん
      1. (イ) まんなかにあるもの。もの中心ちゅうしん。〔にち葡辞しょ(1603‐04)〕
        1. [初出しょしゅつ実例じつれい]「もものさねを もものみまたしん」(出典しゅってんおんな重宝ちょうほう元祿げんろくねん)(1692)いち)
        2. [その文献ぶんけん]〔みなみ孝義たかよしでんじょうこう泌〕
      2. (ロ) ばなで、中心ちゅうしんになるえだはな
        1. [初出しょしゅつ実例じつれい]「ふじをしんにたてべからず」(出典しゅってんせんでんしょう(1445))
      3. (ハ) えりおび、また、屏風びょうぶふすま(ふすま)などにれてかたちととのえるもの。
        1. [初出しょしゅつ実例じつれい]「おむすさんのお聞(きき)下帯したおび(さげおび)といふのはネ。こころ(シン)あつ這入はいいた」(出典しゅってん滑稽本こっけいぼん浮世うきよ風呂ふろ(1809‐13)さん)
      4. (ニ) めしなどのえきらないでかた部分ぶぶん
        1. [初出しょしゅつ実例じつれい]「もっと薩摩芋さつまいもだけは、たしかに鈴江すずえくん手際てぎわみるへてだい(おほい)しん(シン)があった」(出典しゅってんおもえ(1900‐01)〈徳富とくとみ蘆花ろかきゅう)
    5. 中心ちゅうしんとなって活動かつどうするもの。一群いちぐんなかでの主要しゅようなもの。
      1. (イ) 行動こうどう中心ちゅうしんとなるもの。しゅのう
        1. [初出しょしゅつ実例じつれい]「おまへを今夜こんやのしんにして、あそぶのだ」(出典しゅってん洒落本しゃれぼんけいあまり宇辞(1780))
      2. (ロ)しん(しん
    6. 根拠こんきょ基礎きそ
  2. [ 2 ] 二十八宿にじゅうはっしゅく東方とうほうだい宿しゅくさそり中央ちゅうおうにあたるしゅほしアンタレスほかほしをいう。こころ宿やど(しんしゅく)しょうぼし。なかごぼし。〔文明ぶんめい本節ほんぶしようしゅう室町むろまちちゅう)〕 〔史記しきてんかんしょ

うら【しん

  1. [ 1 ] 名詞めいし ( 「うら」「うら」とどう語源ごげん上代じょうだいでは、「うらもなし」という慣用かんようてき表現ひょうげんなかられるにすぎず、おおくはかたりもととしての用法ようほうである ) こころしんのうち。
  2. [ 2 ] 造語ぞうご要素ようそ 形容詞けいようしおよびその語幹ごかん動詞どうしうえいて「しんなかで」「しんから」「しんそこからしみじみと」のえる。「うらあう」「うらがなし」「うらぐわし」「うらごい」「うらさびし」「うらどい」「うらなき」「うらまつ」「うらもう」「うらやす」など。

しんかたり

( 1 )上代じょうだいにおいておなじく「しん」のをもつ「うら」と「した」のちがいは、「うら」が、意識いしきしてかくすつもりはなくても表面ひょうめんにはあらわれずかくれているしんであるのにたいし、「した」は、表面ひょうめんにあらわすまいとしてこらえかくしているしんであるという。
( 2 )かたりもととしての「うら」の結合けつごう範囲はんいは、中古ちゅうこ以後いごほとんど形容詞けいようしかぎられ、「うら」の意味いみよわまって「おのずとしんのうちにそのような感情かんじょうがわいてくる」となる。その結果けっか「ものがなしい」などの「もの」と類似るいじした意味いみにとれるが、「もの」は情意じょうい状態じょうたい対象たいしょう漠然ばくぜんしめして外的がいてきであるのにたいし、「うら」は内面ないめんてきである。
( 3 )古今ここんしゅう」をはじめ、和歌わかでは、「うら」が「しん」のと「うら」や「うら」の意味いみけて使つかわれることがあるが、すでに「古事記こじきうえ歌謡かよう」の「わがしんうらなぎさ(うらす)とりぞ」や「まんようさんさんさんろく」の「いさなとりうみ浜辺はまべうらくふしたるひとは」などでも、「うら」に「しん」と「うら」がけられている。


こり【しん

  1. 名詞めいしこころ(しん

しん補助ほじょ注記ちゅうき

しょ神代かみよじょう水戸みとほんくん)」の「所生しょせい(う)まるるかみごう(なつ)けてこころひめ(たコリひめ)と曰ふ」は、かみめい一部いちぶとしてもちいられている。


ここり【しん

  1. 名詞めいし 誤読ごどくによって「こころ(しん)」の上代じょうだい東国とうごく方言ほうげんとされていたかたり

しん補助ほじょ注記ちゅうき

まんようよんさんきゅう〇」の「ぐんだまのくるにくぎさしかためとしまいさとはあよくなめかも」の「さと」を「ここり」とくんんだことによる。「さと」は、「ろ」のおつるい仮名かめいにももちいる。

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普及ふきゅうばん どおりしん」のみ・字形じけい画数かくすう意味いみ

しん
常用漢字じょうようかんじ 4かく

[字音じおん] シン
[字訓じくん] こころ・むね

[せつぶんかい]
[金文きんぶん]

[字形じけい] 象形しょうけい
心臓しんぞうかたちかたどる。〔せつぶんじゅうに「ひとしんなり。なかり。象形しょうけいに、もっす」とあり、くら)とは(臓)のぎょうせつによると、こんぶんせつではしん古文こぶんせつではである。金文きんぶんに「かつ(よ)く厥(そ)のしん(あき)らかにす」「乃(なんぢ)のしんにせよ」のように、すでに心性しんせいもちいている。

[くんよし]
1. しんの臓、しんぞう。
2. こころ、おもい。
3. むね。
4. もののしん。

[辞書じしょくん]
和名わみょうしょうこころ しんは奈加可知かち(なかこかち)とむ 〔名義めいぎしょうこころ ココロ・ナカヒダ・ナサケ・ムネ・ナカコ/しん ナカコカチ

[部首ぶしゅ]
せつぶん〕にしんひゃくろくじゅうさん重文じゅうぶんじゅう、〔新附しんぷ〕にじゅうさん、〔たま〕にはけいろくひゃくじゅう九字くじぞくする。しん金文きんぶんにもひがし周期しゅうきふくめてやくはちじゅうろくあり、形声けいせいれいおおい。六朝りくちょうには、心性しんせい問題もんだい複雑ふくざつともなって、字数じすう急増きゅうぞうしている。なお(ずい)は花弁はなびらぞうである。

[こえけい]
せつぶん〕にしんごえとして沁のいちおさめる。

[熟語じゅくご]
心意しんいこころころもしんざるこころとおこころこころひま心火しんかこころかいこころふところ心肝しんかんこころ心眼しんがん心願しんがん心気しんきしんいくこころおに心悸しんきしん心機しんきしんわざこころきょこころもとこころむねこころきょうしんきょうこころおどろき心境しんきょうこころしこりしんきょくこころごくこころえりこころこころちぎりしんがたしんけいこころけい心血しんけつこころけんこころまゆこころさとるこころあなこころこころこうこころこころほね心魂しんこんこころ心根こころねこころときしんさい心算しんさんこころさんこころこころおもえこころむねこころこころざし心耳しんじ心事しんじこころしんやましこころしつこころ心術しんじゅつ心緒しんしょこころたくみこころあきら心象しんしょうしんしょうしんじょう心情しんじょう心神しんしん心身しんしんこころちり心酔しんすい心髄しんずい心性しんせいしんごえこころせいこころあとこころおりこころもとこころこころそうこころこころからだ心胆しんたん心地ここちこころこころさとしこころはせ心中しんちゅうのこころこころちょう心痛しんつう心底しんそここころしんでん心頭しんとうこころ心得こころえこころとつ心肺しんぱいこころたまこころはんしんこころ心服しんぷく心腹しんぷくこころふくこころみつるしんこころゆうこころあずかこころものぐさ心理しんり心裏しんり心裡しんりしんりゃくこころりょこころ心慮しんりょ心力しんりょくこころるい心霊しんれいこころしんこころ心労しんろう
[しもせっ]
悪心あくしん安心あんしんしんたがえしん一心いっしんしんわざわいしん会心かいしんはいしんかいしん戒心かいしん改心かいしんそとしん害心がいしん核心かくしん隔心かくしん甘心かんしん肝心かんじんかんしん寒心かんしん感心かんしん関心かんしん歓心かんしんしん帰心きしんしん・羈心・義心ぎしん疑心ぎしんきゃくしんぎゃくしん休心きゅうしん求心きゅうしん虚心きょしんしんとげしんきんしん苦心くしんけいしんかたぶけしん決心けっしん湖心こしんたくみこころ恒心こうしんくだこころ細心さいしん私心ししんしんしん弐心ふたごころいろしん失心しっしん邪心じゃしん執心しゅうしん重心じゅうしん獣心じゅうしん宿やどしん・粛心・はるしんじゅんしん初心しょしん小心しょうしんしょうしん焦心しょうしん傷心しょうしんしょうしん身心しんしん信心しんじん真心まごころ人心じんしんじんしんつきしんちりしん水心みずごころ寸心すんしん誠心せいしんいししん赤心せきしん専心せんしん洗心せんしん潜心せんしん善心ぜんしんもとしんそうしん喪心そうしん・躁心・あししんぞくしんそんしんしん丹心たんしん池心ちしん中心ちゅうしん忠心ちゅうしん衷心ちゅうしんきよしこころ・雕心・痛心つうしん天心てんしん点心てんしん灯心とうしんしん同心どうしん童心どうしん道心どうしん得心とくしん・読心・しん内心ないしん二心ふたごころしのぶこころ熱心ねっしん婆心ばしんはんしん・悲心・こおりしんやまいしん腐心ふしん腹心ふくしん仏心ほとけごころひらしん・秉心・変心へんしん放心ほうしんしん発心ほっしん本心ほんしん慢心まんしん民心みんしん無心むしん野心やしん有心うしんゆうしん雄心ゆうしん用心ようじんやしなえしん欲心よくしん乱心らんしん・嬾心・とぎしんはなれしんとめしん旅心たびごころ良心りょうしんろうしんおおかみこころ

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改訂かいてい新版しんぱん 世界せかいだい百科ひゃっか事典じてんしん」の意味いみ・わかりやすい解説かいせつ

こころ (こころ)

じょうによって代表だいひょうされる人間にんげん精神せいしん作用さよう総体そうたい,もしくはその中心ちゅうしんにあるもの。〈精神せいしん〉と同義どうぎとされることもあるが,精神せいしんがロゴス(理性りせい)を体現たいげんする高次こうじしんてき能力のうりょくで,個人こじんえる意味いみをになうとすれば,〈しん〉はパトス(情念じょうねん)を体現たいげんし,よりおお個人こじんてき主観しゅかんてき意味合いみあいをもつ。もともとしんという概念がいねん未開みかい社会しゃかい霊魂れいこん不滅ふめつ信仰しんこうとむすびついてまれ,その延長えんちょうじょうに,霊魂れいこん本態ほんたいをめぐるさまざまな宗教しゅうきょうてき解釈かいしゃくや,霊魂れいこんあるいはしん肉体にくたいのどこに宿やどるかといったそく物的ぶってき疑問ぎもんこした。古来こらい素朴そぼく局在きょくざい論議ろんぎ通覧つうらんすると,インドや中国ちゅうごくをはじめとして,しん心臓しんぞうもとめたものがおおいが,これは,人間にんげんきているかぎり心臓しんぞう鼓動こどうつづけ,死亡しぼうするとその鼓動こどう停止ていしするという事実じじつをよく理解りかいしていたためで,〈しん〉という漢字かんじ心臓しんぞうかたちをかたどった象形しょうけい文字もじにほかならない。しん心臓しんぞうとほとんど同一どういつするというてんではヨーロッパでも同様どうようで,英語えいごのheart,ドイツのHerz,フランス語ふらんすごのcœurなどがすべてしん心臓しんぞう両方りょうほう意味いみするのも,そのなごりとおもわれる。ただし,医学いがく思想しそう発展はってんをみた古代こだいギリシア・ローマでは,ヒッポクラテスが〈のうによってわれわれは思考しこうし,見聞けんぶんし,美醜びしゅう区別くべつし,善悪ぜんあく判断はんだんし,かい不快ふかいおぼえる〉としるして以来いらいしんのうのうしつもとめるかんがえが支配しはいてきになり,この系譜けいふはルネサンスをへて19世紀せいき初頭しょとうのF.J.ガルの骨相こっそうがくにまでおよんでいる。

 しん問題もんだい身体しんたいてき局在きょくざいせつ迷路めいろからはなち,思惟しい本性ほんしょうとする固有こゆう精神せいしん現象げんしょうとして定立ていりつしたのはフランスのデカルトで,かれがいわゆるまつはてせん仮説かせつ提出ていしゅつしたのも,心身しんしん相関そうかんをそれで説明せつめいしようとしたものにほかならない。しん固有こゆう精神せいしん現象げんしょうであるなら,その成立なりたちや機能きのうあらためてかんがえる必要ひつようがあり,17世紀せいき後半こうはんからの哲学てつがくしゃでこの問題もんだい専念せんねんしたひとおおい。しんを〈どんなかれていず,どんな観念かんねんもない白紙はくし(タブラ・ラサtabula rasa)〉にたとえた経験けいけんろんのロック,こころないし自我じがを〈観念かんねんたば〉とみなした連合れんごうろんのD.ヒューム,あらゆる精神せいしん活動かつどうを〈変形へんけいされた感覚かんかく〉にすぎないとだんじた感覚かんかくろんのコンディヤックらが有名ゆうめいで,こういうながれのなかからしだいに〈しんがく〉すなわち心理しんりがくまれた。ただし,19世紀せいきまつまでの心理しんりがくはすべて〈意識いしきがく〉で,しん全体ぜんたい意識いしき現象げんしょう等価とうかとみなしてうたがわなかった。その,ヒステリーなどの神経症しんけいしょうで,意識いしきされていないしんのなかの傾向けいこう支配しはいされて行動こうどうすることがS.フロイトらによりたしかめられ,こうした臨床りんしょう観察かんさつゆめ分析ぶんせき契機けいきとしてしん範囲はんい無意識むいしき分野ぶんやにまで拡大かくだいされ,同時どうじに,エス(イド),自我じがちょう自我じがといったそう構造こうぞうや,エディプスコンプレクスなど各種かくしゅの〈観念かんねんふくあい〉,投影とうえい投射とうしゃ)や抑圧よくあつなどの防衛ぼうえいせいがつぎつぎといだされた。こういう視点してんつかぎり,現代げんだいしん概念がいねんはひじょうに複雑ふくざつしているといえるが,しんという素朴そぼく主観しゅかんてきイメージそのものは未開みかいじん文明ぶんめいじんとでそれほどちがっているともおもえない。
執筆しっぴつしゃ

ここではしゅとして哲学てつがく観点かんてんから〈しん〉の概念がいねん変遷へんせんと,この概念がいねんをめぐる今日きょう問題もんだい状況じょうきょうとを概観がいかんする。しんとはふつうもの対照たいしょうされる言葉ことばであるが,哲学てつがく世界せかいでも事情じじょうわらない。大観たいかんすれば古代こだい以来いらい西洋せいよう哲学てつがく展開てんかいつうじて,-こころあるいはもの-しん関係かんけいをめぐってふたつのかんがえかたが交錯こうさく対立たいりつしながら現代げんだいいたっている。ひとつの傾向けいこうしん身体しんたい物体ぶったいとの連続れんぞくあるいは親和しんわ関係かんけいでとらえ,他方たほうはそのあいだ連続れんぞく対立たいりつ関係かんけい強調きょうちょうし,身体しんたいてき感覚かんかくてき存在そんざい次元じげんえる理性りせいてき精神せいしん活動かつどうにもっぱら注目ちゅうもくする。発生はっせいてき順序じゅんじょではだい1の見方みかたふるく,こころあるいはたましい相当そうとうするギリシアの〈プシュケーpsychē〉(ラテン語らてんごではアニマanima)は,原義げんぎにおいては気息きそくいき)を意味いみし,きた人間にんげん身体しんたい宿やどってこれをうごかし,さいしてそのからはな生気せいきのごときものを言葉ことばであった。しかしアテナイ中心ちゅうしんとする古典こてんのギリシアでは,もうひとつべつ用法ようほうがすでに一般いっぱんしている。すなわち,感覚かんかく欲望よくぼう情念じょうねんのような感性かんせいてき機能きのうとはことなる,まったく理性りせいてき精神せいしん作用さよう主体しゅたい言葉ことばとしてもこれがもちいられた。この意味いみのプシュケーは理性りせいあらわすヌースnousにちかく,ラテン語らてんごでこれに対応たいおうするのはメンスmensあるいはアニムスanimusである。プラトンしょ対話たいわへんにはこのだい2のかた霊魂れいこんかん典型てんけいてき表現ひょうげんされており,理性りせいてき霊魂れいこん不滅ふめつ真剣しんけん哲学てつがくてき議論ぎろん主題しゅだいになっている。アリストテレスの《霊魂れいこんろん》も,プラトンとおなじく,しん理性りせいてき超越ちょうえつてき存在そんざい性格せいかく強調きょうちょうしたが,それと同時どうじ人間にんげん心的しんてき生活せいかつが,たとえば栄養えいよう摂取せっしゅ感覚かんかく-運動うんどう機能きのうかんして植物しょくぶつてき動物どうぶつてき生命せいめい活動かつどう連続れんぞくするといういちめん見逃みのがさず,総合そうごうてき調和ちょうわてき心理しんり学説がくせつをつくりげている。

 こういう古典こてんギリシアの哲学てつがくてき霊魂れいこんかんがやがて霊肉れいにくげんユダヤきょうキリスト教きりすときょうてき宗教しゅうきょう思想しそうむすびつき,西洋せいよう思想しそうてき中核ちゅうかく形成けいせいするにいたる。西洋せいよう近世きんせいにおける自然しぜん科学かがく勃興ぼっこうとその発展はってんは,アニミスティックな自然しぜんかん退しりぞけ,ぜん物質ぶっしつかい法則ほうそく認識にんしき対象たいしょうとして客観きゃっかんする認識にんしき態度たいどによってもたらされたが,そういう思考しこうほうつちかったのもこの霊肉れいにく分離ぶんり宗教しゅうきょうてき哲学てつがくてき伝統でんとうであったといわれる。この観点かんてんからるとき,17世紀せいき前半ぜんはん代表だいひょうてき体系たいけいであるデカルト哲学てつがく歴史れきしてき意義いぎおおきい。それは伝統でんとうてき存在そんざいろん物心ぶっしんげん枠組わくぐみによって,科学かがくてき世界せかいかん基本きほん構造こうぞう明確めいかく表現ひょうげんしている。ただしデカルトの場合ばあいも,感覚かんかく意志いし行為こうい考察こうさつする場面ばめんでは,心身しんしん分離ぶんりならぬ合一ごういつあきらかな経験けいけんてき事実じじつとしてみとめられていた。そこで分離ぶんり合一ごういつという,心身しんしん関係かんけいないし物心ぶっしん関係かんけい一見いっけん矛盾むじゅんする側面そくめん統一とういつてき説明せつめいすることがデカルトせつ継承けいしょうする人々ひとびと課題かだいとなり,ひいてはきん現代げんだいつうじての哲学てつがく重要じゅうよう問題もんだいとなった。そのあいだ注目ちゅうもくすべき展開てんかいとしてカントは,物質ぶっしつ現象げんしょう実在じつざいてき因果いんがてき関係かんけいつ〈経験けいけんてき〉な主観しゅかんと,物的ぶってき心的しんてきぜん現象げんしょうをおのれの対象たいしょうとする〈超越ちょうえつろんてき〉な主観しゅかんとを峻別しゅんべつし,これをもってかれ批判ひはん哲学てつがく基本きほん見解けんかいとした。この見解けんかいはもとより霊魂れいこんかんだい2の類型るいけいぞくするが,カントのあとをうけたドイツ観念論かんねんろん哲学てつがく精神せいしん主義しゅぎないし理性りせい主義しゅぎ傾向けいこうをさらに徹底てっていさせ,あらゆる現象げんしょう多様たよう超越ちょうえつろんてき主観しゅかんのうちに吸収きゅうしゅうし,あるいはこの源泉げんせんから発出はっしゅつさせる唯心ゆいしんろん形而上学けいじじょうがくとして展開てんかいした。

 しかししんかんする哲学てつがくせつだい1類型るいけいもまた根強ねづよ伝統でんとうとなって今日きょうおよんでいる。ことに19世紀せいき後半こうはんから20世紀せいきはじめにかけては,実証じっしょう主義しゅぎないし科学かがく主義しゅぎ立場たちばをとる人々ひとびとあいだ心理しんり現象げんしょう唯物ゆいぶつろんてき説明せつめいや,進化しんかろんもとづく自然しぜん主義しゅぎてき解釈かいしゃくさかんであった。現代げんだい哲学てつがくてき状況じょうきょうても,これまでしん哲学てつがく主流しゅりゅう形成けいせいしてきたデカルトてき二元論にげんろん超越ちょうえつろんてき観念かんねんろんたいして,大勢おおぜいとしては批判ひはんてきである。これら古典こてんてき学説がくせつ基礎きそ仮定かていたいする批判ひはん作業さぎょう重要じゅうよう哲学てつがくてき認識にんしき確立かくりつにつながったれいとして,まずげるべきはメルロー・ポンティの《知覚ちかく現象げんしょうがく》(1945)であろう。これは超越ちょうえつろんてき哲学てつがく経験けいけん主義しゅぎ哲学てつがくもひとしく閑却かんきゃくした身体しんたい意義いぎを,現象げんしょうがくてき考察こうさつ対象たいしょうとしてはじめて主題しゅだいした労作ろうさくである。意識いしきしょ現象げんしょうはみな身体しんたいという,客観きゃっかんであると同時どうじ主観しゅかんでもある両義りょうぎてき存在そんざい世界せかいへのかかわりとして解釈かいしゃくされている。また言語げんご分析ぶんせき方法ほうほうによるものとしては,G.ライルの《しん概念がいねん》(1949)がデカルトてき二元論にげんろん批判ひはん成果せいかおさめたが,より根本こんぽんてき持続じぞくてき意義いぎをもつのはウィトゲンシュタインの《哲学てつがく探究たんきゅう》(1953)で,伝統でんとうてきしん概念がいねん根底こんていである私的してき言語げんご見解けんかい徹底的てっていてき吟味ぎんみくわえ,〈言語げんごゲーム〉や〈生活せいかつ形式けいしき〉を基本きほん概念がいねんとするあらたな哲学てつがくてき分析ぶんせき境地きょうちひらいている。これらに共通きょうつうするのはしんにまつわる理論りろんてき先入せんにゅうのぞき,生活せいかつ世界せかい経験けいけんかえってしんしょ概念がいねんをとらえなおそうという態度たいどである。これらを継承けいしょうしつつ,関連かんれんするしょ科学かがく研究けんきゅう成果せいかをもまえたしん総合そうごうてき認識にんしきたっすることが現在げんざい哲学てつがくてき課題かだいであろう。
からだ(からだ) →心身しんしん問題もんだい →もの
執筆しっぴつしゃ

人間にんげん精神せいしん活動かつどう内容ないよううごきをいう〈こころ〉という日本語にほんごは,ふるくは身体しんたい一部いちぶとしての内臓ないぞうとく心臓しんぞう)をさす場合ばあいおおかった。8世紀せいきの《古事記こじき》《日本書紀にほんしょき》《万葉集まんようしゅう》には,〈こころ〉の枕詞まくらことばとして〈きも(きも)むかふ〉〈ぐんきも(むらぎも)の〉がもちいられており,また〈こころまえ(こころさき)〉(むねさきの),〈しん(こころきも)〉のかたりがみえる。いわゆる五臓六腑ごぞうろっぷ総称そうしょうが〈ぐんきも〉で,心臓しんぞうがそれらの〈きも〉にたいして位置いちするところから〈きもむかふ〉といい,また〈きも〉の一類いちるいとして〈心肝しんかん〉とんだのであろう。〈きもやや(きもわかし)〉(精神せいしんてき未熟みじゅく,《日本書紀にほんしょき》)のれいがみられるように,しん活動かつどうみなもと身体しんたい中心ちゅうしんめる臓器ぞうきにあるとし,とりわけ鼓動こどうはっする心臓しんぞう重視じゅうしされて,精神せいしん内容ないよう,はたらき全般ぜんぱんを〈こころ〉としょうするにいたったらしい。したがってこの時期じきには,身体しんたい精神せいしん対立たいりつ意識いしきはなおじゅくしておらず,むしろ〈こころ〉のうごきは身体しんたい活動かつどう一部いちぶとみられていたことが,さきのかたりれいからうかがえる。〈こころ〉にかかわる言葉ことばに,〈心痛しんつうし(こころいたし)〉,〈しんる〉(しんめる),〈けがれこころ(きたなきこころ)〉といったそく物的ぶってき表現ひょうげんにつくのもそのためであろう。《万葉集まんようしゅう》のうたにはおびただしい〈こころ〉の用例ようれいがあるが,その表記ひょうきは〈もとおのれりょ〉〈じょう〉〈〉〈かみ〉とさまざまである。当時とうじはまだ〈なさけ〉というかたり発生はっせいしておらず,じょうにわたる精神せいしん活動かつどうそうじて〈こころ〉とばれたわけだが,なおそこにじょう区別くべつする意識いしきもきざしつつあったとみられる。

 〈こころ〉にふかくかかわるかたりに,〈こころ〉のはたらきをいう〈おもう〉がある。〈おもう〉も〈こころ〉と同様どうよう多面ためんてき精神せいしん作用さよう包括ほうかつするかたりだが,しばしば〈う〉と同義どうぎもちいられるように,情緒じょうちょてき含意がんいつよい。そこで11世紀せいき前後ぜんこうから,より知的ちてき思弁しべん作用さようをさすかたりとして〈かんがえる〉があらわれ,以後いご文字もじ使用しよう流通りゅうつうとともに普及ふきゅうをみるにいたる。こうした〈こころ〉の作用さようしめかたり展開てんかいにともない,〈こころ〉はしだいにその身体しんたいせい希薄きはくにし,肉体にくたいたいする〈精神せいしん〉の意味いみかたむいていった。たとえば,おなじ〈しんある〉とのいいかたでも,古代こだいではおおむね人間にんげん以外いがい山川やまかわ鳥獣ちょうじゅうについてそれらが〈感情かんじょうつ〉仮定かていがたしめすのにたいし,中世ちゅうせいでは人間にんげん知性ちせい教養きょうようをさすようにわってきている。現代げんだいにおいても,〈こころ〉は〈気持きもち〉〈かんじ〉といった類義語るいぎごくらべ,より主体しゅたいてき能動のうどうてき精神せいしん状態じょうたいにかかわってもちいられるわけだが,しかし他方たほう精神せいしん〉のかたりたいしてはなお原初げんしょ身体しんたいせいをとどめているといえよう。

執筆しっぴつしゃ


こころ (こころ)

1948ねん7がつ創刊そうかんされた同人どうじん雑誌ざっしだい2大戦たいせん急激きゅうげき左翼さよくてき風潮ふうちょうにあきたりない安倍あべ能成よしなり武者小路むしゃのこうじ実篤さねあつ天野あまの貞祐ていゆう田中たなかこう太郎たろう小泉こいずみ信三しんぞう梅原うめはら竜三郎りゅうさぶろうら,いわゆるオールド・リベラリストが結成けっせいした〈生成せいせいかい〉ので,当初とうしょ向日むこう書院しょいんから発行はっこうされた。同人どうじん自由じゆう発言はつげんとすることを方針ほうしんとし,エッセーのみならず,同人どうじん研究けんきゅう成果せいか回想かいそうろくなどがかなり長期間ちょうきかん連載れんさいされ,そうしたゆったりした誌面しめんづくりが一種いっしゅ風格ふうかくとなっていた。発行はっこうもと日本にっぽん評論ひょうろんしゃたけなわとうしゃうつり,53ねん4がつごうからおわりかんごう(81ねん7・8がつ合併がっぺいごう)までは平凡社へいぼんしゃから刊行かんこうされた。
執筆しっぴつしゃ

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日本にっぽんだい百科全書ひゃっかぜんしょ(ニッポニカ)しん」の意味いみ・わかりやすい解説かいせつ

しん
こころ

しんとはいわゆる感覚かんかく知覚ちかくおよびじょうはたらき、ないしはそのをいう。哲学てつがくのうえでしん特徴とくちょうづけるとすれば、人間にんげん人格じんかくたらしめる原理げんりであるといえよう。しかし、いますこ具体ぐたいてきしん規定きていするには、それがなに対立たいりつしてかんがえられるかをみればよい。まずだいいちに、しん身体しんたい対立たいりつさせられる。この場合ばあいしんは、身体しんたいけた刺激しげき受容じゅようするもの、身体しんたいうごかすものなどとかんがえられる。だいに、しん行動こうどう、ふるまいに対立たいりつするものとしてかんがえられる。ひょうだった行動こうどう背後はいごにあり、行動こうどうとは独立どくりつはたらくものとして、いわゆる思考しこう感情かんじょう意志いしなどのとしてしん設定せっていされる。だいさんに、人間にんげん同士どうし人間にんげんとしてことなるとすれば、それはことなるしんをもつからであるとして、人間にんげん同士どうしことならせるものとしてのしんかんがえられる。そしてだいよんに、この世界せかいえ、こえ、あじわわれているのは、ほかならぬ自分じぶんにとってであるとして、世界せかいいっさいに対立たいりつする「自分じぶん」としてのしんかんがえられる。このように「しん」はけっして単純たんじゅん概念がいねんではないが、そこに共通きょうつうしてみいだされるのは、人間にんげんたんなる「もの」でない「しゃ」(人格じんかく)とする原理げんりだということである。

伊藤いとうしゃくやすし

 心理しんり学者がくしゃのだれもが承認しょうにんするようなしん定義ていぎはまだない。しかしおおくの心理しんり学者がくしゃは、知覚ちかく記憶きおく感情かんじょう意志いし知的ちてき活動かつどうなどの心理しんりてき過程かていしんむすけてかんがえている。しんということばは、つぎのような意味いみもちいられることがおおい。(1)環境かんきょうとのあいだ相互そうご作用さよういとな心理しんりてき過程かてい全体ぜんたい、(2)意識いしきてき経験けいけん全体ぜんたい、(3)心理しんりてき活動かつどう意識いしきてき経験けいけん説明せつめいするための構成こうせい概念がいねん、(4)主体しゅたい自己じこたましいまたは霊魂れいこん、(5)行動こうどうまたは思考しこう特徴とくちょうてき様式ようしき(たとえば、日本人にっぽんじんしん未開みかいじんしんなどという場合ばあい)。

 経験けいけんてき心理しんりがく登場とうじょうする以前いぜん心理しんりがくは、しん本質ほんしつ物質ぶっしつとのちがいなど)、れいせいかみとの関係かんけいなど)、道徳どうとくせいしん善悪ぜんあく)などの問題もんだいげてろんじていたが、とくにしん本質ほんしつ問題もんだいは「心身しんしん問題もんだい」としてながあいだつづ哲学てつがく心理しんりがく重要じゅうよう問題もんだいとなってきた。しん身体しんたいとの関係かんけいについては、つぎのようないくつかの立場たちば区別くべつすることができる。(1)身体しんたいだけが実在じつざいすると主張しゅちょうする唯物ゆいぶつろんmaterialism、(2)身体しんたいおよび身体しんたいてき過程かていしんはたらきの所産しょさんであり、しん現象げんしょう形態けいたいにすぎないと主張しゅちょうする唯心ゆいしんろんspiritualism、(3)しん身体しんたい作用さよう身体しんたいしん作用さようすると主張しゅちょうする相互そうご作用さようせつinteractionism、(4)心的しんてき過程かてい身体しんたいてき過程かていとは相互そうご影響えいきょうしあうことなく、まったく独立どくりつ並行へいこうして進行しんこうしていると主張しゅちょうする並行へいこうせつparallelism、(5)しん影響えいきょうあたえるあるしゅ事象じしょう身体しんたいにも影響えいきょうあたえ、身体しんたい影響えいきょうあたえるあるしゅ事象じしょうは、しんにも影響えいきょうあたえると主張しゅちょうする心理しんり物理ぶつりてき並行へいこうせつpsychophysical parallellism、(6)ある見方みかたからすればしん身体しんたいであり、またべつ見方みかたからすれば身体しんたいしんであり、両者りょうしゃ基本きほんてきにはひとつの本体ほんたいのもつふたつの特性とくせいであると主張しゅちょうする両面りょうめんせつdouble aspect theory、(7)心的しんてき過程かてい身体しんたいてき活動かつどう副産物ふくさんぶつであって、とくに重要じゅうよう役割やくわりをもたないと主張しゅちょうする付随ふずい現象げんしょうせつepiphenomenalism、(8)意識いしきてき過程かていのう物理ぶつりてき過程かていとはまったく同一どういつだというわけではないが、両者りょうしゃあいだには一対一いちたいいち対応たいおう関係かんけいがあると主張しゅちょうする心理しんり物理ぶつりてき同型どうけいせつpsychophysical isomorphism、(9)生物せいぶつがある程度ていど複雑ふくざつになると、しんてき性質せいしつしめすようになると主張しゅちょうする発出はっしゅつせつemergentism。

 現代げんだい心理しんりがく行動こうどう主義しゅぎ影響えいきょうけ、意識いしきてき経験けいけん客観きゃっかんせいけるものとして研究けんきゅう対象たいしょうから排除はいじょする科学かがくてき心理しんりがく立場たちばをとり、「しんのない心理しんりがく」が主流しゅりゅうめるようになったが、それによってしんかんする問題もんだいそのものが解決かいけつされたわけではない。問題もんだいしんをどう定義ていぎするかであるが、しんという概念がいねん要求ようきゅうされる理由りゆう主体しゅたい同一どういつせいとか、認識にんしき恒常こうじょうせいとか、身体しんたいとの関係かんけいとかいったことが問題もんだいになるからである。そこで今日きょうでは、しんにかわって「ひと」とか「パーソナリティー」とかいった概念がいねんげられている。また、しん身体しんたいとの関係かんけいについても、のう損傷そんしょう薬物やくぶつによる心理しんりてき過程かてい障害しょうがい問題もんだい身体しんたい症状しょうじょう原因げんいんとして心理しんりてき因子いんし重視じゅうしする精神せいしん医学いがくてき問題もんだいのう発達はったつ心理しんりてき機能きのう発達はったつとの系統けいとう発生はっせいてき個体こたい発生はっせいてき関係かんけい問題もんだいのう活動かつどうとさまざまな意識いしき水準すいじゅんとの関係かんけい問題もんだい、などの具体ぐたいてき研究けんきゅう課題かだいげられ、電気でんき化学かがく分子ぶんし化学かがくなどの自然しぜん科学かがくてき立場たちばから研究けんきゅうされている。

宇津木うつきたもつ

藤永ふじながたもつちょしんとはなにか』(『講座こうざ 現代げんだい心理しんりがく1』所収しょしゅう・1981・小学館しょうがくかん)』

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ブリタニカ国際こくさいだい百科ひゃっか事典じてん しょう項目こうもく事典じてんしん」の意味いみ・わかりやすい解説かいせつ

しん
こころ
mind

常識じょうしきてきには,身体しんたいてきなものないし物質ぶっしつてきなものとは独立どくりつ存在そんざいとして,自我じが精神せいしん霊魂れいこんなどの言葉ことばとほぼ同義どうぎ使つかわれることがおおい。一方いっぽう現代げんだい心理しんりがくでは,個体こたいしめ複雑ふくざつ行動こうどう規定きていし,統御とうぎょしている機能きのうについての一般いっぱんてき言葉ことばとしてもちいられる。その場合ばあい機械きかいろんてき一元論いちげんろん立場たちばによれば,こうした行動こうどう規定きていしているのう活動かつどうないし過程かていといったものを漠然ばくぜんしめ用語ようごであるとされるが,他方たほう生理せいりてき過程かてい区別くべつされたあらゆる精神せいしん活動かつどう精神せいしん過程かてい統合とうごうないしまとまりの総体そうたいしめ用語ようごとされたり,またたん行動こうどう説明せつめいするために仮定かていされたいくつかの構成こうせい概念がいねんのシステムとしてかんがえられたりしている。

しん
しん
citta

仏教ぶっきょう用語ようご仏教ぶっきょう経論きょうろんでは,肉体にくたいたいする精神せいしんのこと。精神せいしんには,しん本体ほんたいしんはたらきとがあるといている。またしん説明せつめいについては,経論きょうろんによって種々しゅじゅ異説いせつがある。 (1) にん心臓しんぞう。 (2) おもねよりゆき耶 (あらや) 識のこと。 (3) 自我じが意識いしきであるすえのこと。 (4) 意識いしきのこと。 (5) 自性じしょう清浄せいじょうこころすなわち真如しんにょなど。

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デジタル大辞泉だいじせんプラスしん」の解説かいせつ

こころ映画えいが

1973ねん公開こうかい日本にっぽん映画えいが監督かんとく脚本きゃくほん新藤しんどう兼人かねと原作げんさく夏目なつめ漱石そうせきによる小説しょうせつ『こころ』、撮影さつえい黒田くろだ清巳きよみ出演しゅつえん松橋まつはしのぼるつじ萬長つむながあんずなし乙羽おとわ信子のぶこ殿山とのやま泰司やすじ荒川あらかわ保男やすお小竹こだけがい登美とみほか。

こころ曲名きょくめい

日本にっぽんのポピュラー音楽おんがくうた男性だんせい演歌えんか歌手かしゅ五木いつきひろし。1990ねん発売はつばい作詞さくし星野ほしの哲郎てつろう作曲さっきょく船村ふなむらとおる

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世界せかいだい百科ひゃっか事典じてん旧版きゅうばんうちしん言及げんきゅう

心学しんがく】より

中国ちゅうごく思想しそうには,ぜん心学しんがくりくおう(りく象山ぞうさんおう陽明ようめい)の心学しんがくとがある。こころがくさきしん古典こてんにすでにおおくみられるが,心学しんがく一語いちごとして使用しようされたのは仏教ぶっきょう中国ちゅうごく渡来とらいしてから以後いごのことである。…

心臓しんぞう】より

動物どうぶつ循環じゅんかんけい中枢ちゅうすうてき位置いちにあって,周期しゅうきてきはくどうによるポンプ作用さようで,血液けつえき循環じゅんかん維持いじ調節ちょうせつ不可欠ふかけつ器官きかん心臓しんぞう血液けつえき循環じゅんかん原動力げんどうりょくであることが17世紀せいきにW.ハーベーによってあきらかにされるまでは,心臓しんぞうはいからきたプネウマpuneuma(霊気れいき)を身体しんたい供給きょうきゅうする器官きかんであるとするガレノスの血液けつえき学説がくせつ一般いっぱんしんじられていた。 なお,ラテン語らてんごのcorはギリシアのkardiaに由来ゆらいするが,cardi‐,coro‐のかたりは,たとえば心電図しんでんずelectron cardiogramのように,心臓しんぞうかんするかたりちゅうにしばしばもちいられる。…

心理しんりがく】より

心理しんりがくとは文字もじどおりしん(ことわり)のがくであり,心理しんりがくあらわ西欧せいおうは,ギリシアのプシュケーpsychē(しん)とロゴスlogos(理法りほうがく)の合成ごうせいにもとづく。日本にっぽんでは,1878ねん西にしあまねによって〈mental philosophy〉の訳語やくごとしてもちいられたのが最初さいしょとされる。…

精神せいしん】より

…〈しん〉とおな意味いみにももちいられるが,しん主観しゅかんてき情緒じょうちょてき個人こじん内面ないめんにとどまるのにたいし,〈精神せいしん〉は知性ちせい理念りねんささえられる高次こうじしんはたらきで,個人こじんえる意味いみをはらみ,〈民族みんぞく精神せいしん〉〈時代じだい精神せいしん〉などと普遍ふへんされる。このてん語義ごぎ成立せいりつ過程かていからもあきらかで,よう東西とうざいわずしん心臓しんぞううごきと関連かんれんしてできあがり,それゆえ身体しんたい内部ないぶをもつ概念がいねんである。…

のう】より

脊椎動物せきついどうぶつ神経しんけいけいにおいて神経しんけい作用さよう支配しはいてき中心ちゅうしんをなしている部位ぶいをいい,脊椎動物せきついどうぶつでは頭部とうぶがわにある食道しょくどうじょう神経しんけいぶしのうまたはあたま神経しんけいぶしという。脊椎動物せきついどうぶつでは,のう(頭蓋とうがい腔のなかにある)は脊髄せきずい(脊柱せきちゅうかんのなかにある)とともに中枢ちゅうすう神経しんけいけいかたちつくっているので,のう中枢ちゅうすう神経しんけいけい部分ぶぶんであるわけであるが,〈のう〉という言葉ことばは,中枢ちゅうすう神経しんけいけい代表だいひょうするものとして〈中枢ちゅうすう神経しんけいけい〉の意味いみもちいられることもある。…

※「しん」について言及げんきゅうしている用語ようご解説かいせつ一部いちぶ掲載けいさいしています。

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