技術ぎじゅつ進歩しんぽ（読よみ）ぎじゅつしんぽ（英語えいご表記ひょうき）technical progress

外そと生せい的てき技術ぎじゅつ進歩しんぽ

外そと生せい的てき技術ぎじゅつ進歩しんぽは通常つうじょう、体からだ化かされた技術ぎじゅつ進歩しんぽembodied technical progressと、体からだ化かされない技術ぎじゅつ進歩しんぽdisembodied technical progressとに分類ぶんるいされる。前者ぜんしゃは、技術ぎじゅつ進歩しんぽの導入どうにゅうは最新さいしんの技術ぎじゅつを体からだ化かした新あたらしいビンテージvintage（製造せいぞう年月日ねんがっぴ）の資本しほん設備せつびや、新あたらしい技術ぎじゅつ知識ちしきをもった労働ろうどう力ちからの投入とうにゅうによって行おこなわれると考かんがえる立場たちばであり、この場合ばあい、時間じかんt（≧0）における生産せいさん量りょうY(t)は

で与あたえられる。ここでK_t、L_tはそれぞれビンテージtの資本しほんと労働ろうどうである。後者こうしゃは、資本しほんや労働ろうどうなどの生産せいさん要素ようその投入とうにゅうが新鋭しんえいであろうとなかろうと時間じかんの経過けいかにつれて同おなじ要素ようそ投入とうにゅうの組合くみあわせから生産せいさん量りょうが増加ぞうかする、すなわち、技術ぎじゅつ進歩しんぽは新旧しんきゅうすべての生産せいさん要素ようそに平等びょうどうに及およぶ、と考かんがえる立場たちばであり、一般いっぱんに生産せいさん関数かんすうを
　　Y(t)＝F［K(t), L(t), t］, ∂F/∂t＞0
と書かくことによって表あらわされる。

　以下いか、技術ぎじゅつ進歩しんぽが経済けいざいに及およぼす影響えいきょう、とくに所得しょとく分配ぶんぱいへの効果こうかを考かんがえるために、後者こうしゃの体からだ化かされない技術ぎじゅつ進歩しんぽについて述のべる。

　一般いっぱんに、ある成長せいちょう経路けいろ上じょうで技術ぎじゅつ進歩しんぽが所得しょとく分配ぶんぱい率りつを不変ふへんに保たもつ場合ばあい、この技術ぎじゅつ進歩しんぽを中立ちゅうりつ的てきneutral、労働ろうどうのシェアを高たかめる場合ばあいを労働ろうどう使用しよう的てきlabor usingあるいは資本しほん節約せつやく的てきcapital saving、資本しほんのシェアを高たかめる場合ばあいを資本しほん使用しよう的てきcapital usingあるいは労働ろうどう節約せつやく的てきlabor savingとよぶ。そして、成長せいちょう経路けいろの特定とくてい化かに応おうじて次つぎに掲かかげる三みっつの代表だいひょう的てきな中立ちゅうりつ性せいの基準きじゅんがある。

(1)ヒックスの中立ちゅうりつ性せいHicks neutrality　資本しほん・労働ろうどう比率ひりつK/Lが一定いっていである成長せいちょう経路けいろ上じょうで、要素ようそ価格かかく比率ひりつt/w（wは賃金ちんぎん率りつ、rは資本しほんのレンタルないし利子りし率りつ）が不変ふへんであれば、技術ぎじゅつ進歩しんぽは中立ちゅうりつ的てきである。同おなじ経路けいろ上じょうで、rの上昇じょうしょう率りつがwの上昇じょうしょう率りつよりも大おおきければ（小ちいさければ）、資本しほん使用しよう的てき（労働ろうどう使用しよう的てき）である。技術ぎじゅつ進歩しんぽがヒックスの意味いみで中立ちゅうりつ的てきな場合ばあいには、生産せいさん関数かんすうが産出さんしゅつ量りょう増大ぞうだい的てきoutput augmentingに
　　Y(t)＝A(t)F［K(t), L(t)］,
　　dA/dt＞0
と書かかれることが知しられている。ここでA(t)は時間じかんtでの技術ぎじゅつ水準すいじゅんを表あらわす。

(2)ハロッドの中立ちゅうりつ性せいHarrod neutrality　産出さんしゅつ・資本しほん比率ひりつY/Kが一定いっていである成長せいちょう経路けいろ上じょうで、利子りし率りつrが不変ふへんであれば、技術ぎじゅつ進歩しんぽは中立ちゅうりつ的てきである。同おなじ経路けいろ上じょうでrが上昇じょうしょう（下落げらく）するならば、資本しほん使用しよう的てき（労働ろうどう使用しよう的てき）である。技術ぎじゅつ進歩しんぽがハロッドの意味いみで中立ちゅうりつ的てきな場合ばあいには、生産せいさん関数かんすうが労働ろうどう増大ぞうだい的てきlabor augmentingに
　　Y(t)＝F［K(t), A(t)L(t)］,
　　dA/dt＞0
と書かかれることが知しられている。

(3)ソローの中立ちゅうりつ性せいSolow neutrality　労働ろうどう生産せいさん性せいY/Lが一定いっていである成長せいちょう経路けいろ上じょうで、賃金ちんぎん率りつwが不変ふへんであれば、技術ぎじゅつ進歩しんぽは中立ちゅうりつ的てきである。同おなじ経路けいろ上じょうでwが上昇じょうしょう（下落げらく）するならば、労働ろうどう使用しよう的てき（資本しほん使用しよう的てき）である。技術ぎじゅつ進歩しんぽがソローの意味いみで中立ちゅうりつ的てきな場合ばあいには、生産せいさん関数かんすうが資本しほん増大ぞうだい的てきcapital augmentingに
　　Y(t)＝F［A(t)K(t), L(t)］,
　　dA/dt＞0
と書かかれることが知しられている。

　これら三みっつの中立ちゅうりつ性せい基準きじゅんの相互そうご関係かんけいについてみてみると、証明しょうめいは省はぶくが、次つぎの二ふたつの命題めいだいが導みちびかれている。第だい一いちに、三みっつの中立ちゅうりつ性せい基準きじゅんのうち、任意にんいの二ふたつが成立せいりつするならば、残のこる一ひとつも成立せいりつする、ということである。第だい二にに、三みっつの中立ちゅうりつ性せい基準きじゅんを同時どうじに満みたすのは、生産せいさん関数かんすうがコブ‐ダグラス型がた、すなわち
　　Y(t)＝A(t)K^{αあるふぁ}L^{1-αあるふぁ}, 0＜αあるふぁ＜1
であるとき、かつそのときだけである。

　また均衡きんこう成長せいちょうとの関連かんれんでは、経済けいざいが均衡きんこう成長せいちょうの状態じょうたいにあるときには、技術ぎじゅつ進歩しんぽがハロッド的てき中立ちゅうりつでなければならないことも知しられている。

［羽鳥はとり　茂しげる］

内うち生せい的てき技術ぎじゅつ進歩しんぽ

内うち生せい的てき技術ぎじゅつ進歩しんぽには次つぎの二ふたつのアプローチが考かんがえられている。一ひとつは、技術ぎじゅつ進歩しんぽのレベルを内うち生せい化かしようとするもので、いわゆるR＆D（research and development）やアローの学習がくしゅう理論りろんtheory of learning by doingがそれである。前者ぜんしゃは、積極せっきょく的てきな研究けんきゅう開発かいはつ投資とうしによって技術ぎじゅつ進歩しんぽは実現じつげんすると考かんがえ、技術ぎじゅつ水準すいじゅんないし技術ぎじゅつ進歩しんぽ率りつを研究けんきゅう開発かいはつ投資とうしの増加ぞうか関数かんすうとして定式ていしき化かする。後者こうしゃは、日常にちじょう的てきな経験けいけんの累積るいせき（学習がくしゅう）によって技術ぎじゅつ進歩しんぽは実現じつげんすると考かんがえ、とくにアローの定式ていしき化かでは、学習がくしゅう効果こうかは累積るいせき「粗あら」投資とうしの単調たんちょう増加ぞうか関数かんすうとされる。いま一ひとつは、技術ぎじゅつ進歩しんぽのタイプを内うち生せい化かしようとするもので、誘発ゆうはつ的てき技術ぎじゅつ進歩しんぽの理論りろんtheory of induced technical progressとして知しられている。それによれば、技術ぎじゅつ進歩しんぽのタイプは資本しほんと労働ろうどうの相対そうたい的てきな費用ひように依存いぞんして企業きぎょう利潤りじゅんを最大さいだい化かするように選択せんたくされる。そして、いくつかの条件下じょうけんかにおいては、長期ちょうき的てきにはハロッド中立ちゅうりつ的てきな技術ぎじゅつ進歩しんぽが導みちびかれることなどが知しられている。

［羽鳥はとり　茂しげる］

『荒あら憲けん治郎じろう著ちょ『経済けいざい成長せいちょう論ろん』（1969・岩波書店いわなみしょてん）』▽『佐藤さとう隆三りゅうぞう著ちょ『経済けいざい成長せいちょうの理論りろん』（1968・勁草書房しょぼう）』▽『E・バーマイスター、A・ドベル著ちょ、大住おおすみ栄治えいじ・佐藤さとう隆三りゅうぞう訳やく『現代げんだい経済けいざい成長せいちょう理論りろん』（1976・勁草書房しょぼう）』