海うみ退すさ（読よみ）カイタイ（英語えいご表記ひょうき）marine regression

地盤じばんの隆起りゅうきまたは海水かいすい準じゅんの低下ていかによって海岸かいがん線せんが海うみ側がわへ後退こうたいすること。海うみ進すすむと逆ぎゃくの現象げんしょう。海うみ退すさにともなって，それまでの海底かいていがあらたに陸地りくちとなり，また海うみはより浅あさくなる。地形ちけい的まとには，海うみ退すさによって広ひろい海岸かいがん平野へいやを生しょうずることが多おおい。海岸かいがん線せんが海うみ側がわへ後退こうたいすると，それまで沖合おきあいで細ほそ粒つぶ堆積たいせき物ぶつがたまっていた場所ばしょに，沿岸えんがん成なりさらに海浜かいひん成なりの粗あら粒つぶ堆積たいせき物ぶつが堆積たいせきするようになり，ある地域ちいきの地層ちそうの垂直すいちょく断面だんめんでは，深海ふかうみ成層せいそうから上方かみがたに向むかってしだいに浅海あさみ成層せいそうに移行いこうするなどの変化へんかが認みとめられることになる。しかし，陸りく化かしてしまうと堆積たいせき作用さようは中断ちゅうだんされ，あらたに侵食しんしょくをうけるようになることが多おおく，海うみ退すさ末期まっきの堆積たいせき物ぶつは地層ちそうとしては残のこりにくい。

　海うみ退すさは，地質ちしつ時代じだいを通つうじて，いろいろな規模きぼで繰くり返かえし起おこっている現象げんしょうである。大だい規模きぼな汎ひろし世界せかい的てきな海うみ退すさとしては，白はく亜紀あき末まつないしその直後ちょくご（約やく6500万まん年ねん前まえ）のものがもっともいちじるしい。また第だい四よん紀きの後半こうはんには，数すう度どにわたって大だい規模きぼな氷こおり床ゆかの発達はったつがあり，それにともなって海水かいすい量りょうが減少げんしょうし，海水かいすい準じゅんが低下ていかして，汎ひろし世界せかい的てきな海うみ退すさが何なん回かいか繰くり返かえされた。このうち，最終さいしゅう氷ごおり期きの最盛さいせい期き（約やく1万まん8000年ねん前まえ）には，現在げんざいにくらべて約やく100mの海水かいすい準じゅん低下ていかがあったことが知しられている。このような第だい四よん紀き後半こうはんの海うみ退すさは，世界せかい各地かくちの浅海せんかい底そこや沖積ちゅうせき平野へいやの地下ちかに，かつて陸上りくじょうで形成けいせいされた河谷こうだにの跡あとが，新しん期きの堆積たいせき物ぶつにおおわれて伏在ふくざいしていることにもっともよく示しめされている。
→海水かいすい面めん変化へんか
執筆しっぴつ者しゃ：坂本さかもと 亨とおる