狂言綺語きょうげんきご（読よみ）キョウゲンキゴ

〈綺語きご〉は〈きぎょ〉とも読よむ。道理どうりにそむいた言葉ことばと飾かざり立たてた言葉ことばの意味いみだが，詩歌しか，物語ものがたり，管弦かんげん，音曲おんぎょくなどをいうのに用もちいる。《法華経ほけきょう》安楽あんらく行ぎょう品ひんに〈世俗せぞくの文筆ぶんぴつ，讃さん詠えい（うた）の外そと書しょ〉をつくる者ものと交際こうさいするなといわれているように，狂言綺語きょうげんきごをもてあそぶことは，妄語もうご戒を破やぶり，仏ふつの教おしえに背そむく行為こういと考かんがえられた。しかし，一方いっぽうでは《涅槃ねはん経けい》に〈麁言（あらあらしい言葉ことば）及および軟語（柔和にゅうわな言葉ことば），皆みな第一義だいいちぎに帰きす〉ともあって，狂言綺語きょうげんきごも真実しんじつを示しめす方便ほうべんとも考かんがえられた。後者こうしゃの立場たちばを明確めいかくにあらわしたのは《白はく氏し文集ぶんしゅう》の〈願ねがわくは今生こんじょう世俗せぞく文字もじの業ごう（ごう），狂言綺語きょうげんきごの誤あやまりをもって，翻こぼしえして当とう来世らいせ々讃さん仏ほとけ乗の（仏ふつの教おしえをたたえる）の因いん，転うたて法輪ほうりん（仏ふつの教おしえをひろめる）の縁えんとせん〉の一いち句くであった。日本にっぽんでも平安へいあん時代じだいの中期ちゅうき以降いこう，慶滋保胤よししげのやすたね（よししげのやすたね）や源信みなもとのまことを中心ちゅうしんとする勧学かんがく会かいに集あつまる人々ひとびとにこの句くが尊重そんちょうされ，《和漢わかん朗詠ろうえい集しゅう》にも編入へんにゅうされてこの考かんがえ方かたが普及ふきゅうした。
執筆しっぴつ者しゃ：山本やまもと 吉左右きっそう