目次 独占力と独占の形態 独占形成の原因 独占企業の行動 独占による経済的ロス 研究開発における独占の効果 独占への対策 マルクス経済学 からみた独占 独占が生まれる背景 独占の市場支配力 反独占の運動 地理 ちり 的 てき 範囲 はんい および商品 しょうひん の性質 せいしつ で限定 げんてい される一定 いってい の市場 いちば での取引 とりひき を,一 いち 企業 きぎょう が一 いち 手 て に握 にぎ ることを独占 どくせん という。ただし現実 げんじつ には一 いち 企業 きぎょう による市場 いちば の支配 しはい という文字 もじ どおりの独占 どくせん は少 すく なく,比較的 ひかくてき 少数 しょうすう の企業 きぎょう が市場 いちば を支配 しはい する寡占 かせん (その特殊 とくしゅ 形態 けいたい が複 ふく 占 うらない )が多 おお い。多数 たすう の企業 きぎょう からなる競争 きょうそう 的 てき 市場 いちば からの乖離 かいり (かいり)を指 さ して,すなわち寡占 かせん も含 ふく め独占 どくせん という語句 ごく が用 もち いられることも多 おお い。また,市場 いちば の売手 うりて 側 がわ に独占 どくせん が生 しょう じることが多 おお いので,経済 けいざい 学 がく は売手 うりて 独占 どくせん を分析 ぶんせき することが多 おお かったが,最近 さいきん では買手 かいて 独占 どくせん にも関心 かんしん がもたれている。
独占 どくせん 力 りょく と独占 どくせん の形態 けいたい 一定 いってい の商品 しょうひん の地理 ちり 的 てき に限定 げんてい された市場 いちば における独占 どくせん 力 りょく が独占 どくせん 力 りょく の基礎 きそ 的 てき 概念 がいねん であり,この独占 どくせん 力 りょく を発揮 はっき する目的 もくてき でカルテル やトラスト という形態 けいたい の独占 どくせん が形成 けいせい される。法律 ほうりつ 的 てき に独立 どくりつ な複数 ふくすう の企業 きぎょう が協定 きょうてい を通 つう じて,生産 せいさん ,投資 とうし ,顧客 こきゃく などを割 わ り当 あて て,価格 かかく を固定 こてい して,競争 きょうそう を制限 せいげん することをカルテルという。協定 きょうてい によらず,企業 きぎょう 間 あいだ の暗黙 あんもく の合意 ごうい によってカルテルと同様 どうよう の効果 こうか が現 あらわ れることもある。企業 きぎょう 間 あいだ でコスト条件 じょうけん や生産 せいさん 能力 のうりょく と販売 はんばい 能力 のうりょく の乖離 かいり などの利害 りがい を異 こと にする事態 じたい に至 いた ると,カルテルはしばしば崩壊 ほうかい するので,独占 どくせん の形態 けいたい としては不完全 ふかんぜん である。これに対 たい して,トラストは典型 てんけい 的 てき な場合 ばあい ,合併 がっぺい によって諸 しょ 企業 きぎょう を一 ひと つの企業 きぎょう 体 たい に統合 とうごう するので,トラストによる競争 きょうそう 制限 せいげん はカルテルによるそれよりはるかに強力 きょうりょく かつ持続 じぞく 的 てき である。
一 ひと つの市場 いちば での独占 どくせん 力 りょく をてこに,企業 きぎょう が別 べつ の市場 いちば でも独占 どくせん 力 りょく をふるうことがある。経営 けいえい の多角 たかく 化 か によって多数 たすう の市場 いちば で活動 かつどう するコングロマリット や企業 きぎょう グループ の場合 ばあい ,一 ひと つの市場 いちば で独占 どくせん 力 りょく を有 ゆう すれば,相互 そうご 取引 とりひき を通 つう じて他 た の市場 いちば でもその独占 どくせん 力 りょく を発揮 はっき できる。第 だい 2次 じ 大戦 たいせん 前 まえ の日本 にっぽん の財閥 ざいばつ のようなコンツェルン の独占 どくせん 力 りょく はこの種 たね の独占 どくせん 力 りょく に基 もと づいている。
独占 どくせん 形成 けいせい の原因 げんいん 市場 いちば で独占 どくせん が形成 けいせい されるのには,さまざまな原因 げんいん がある。第 だい 1に,市場 いちば で活発 かっぱつ に競争 きょうそう が行 おこな われ,製品 せいひん 開発 かいはつ ・販売 はんばい 政策 せいさく ・組織 そしき 革新 かくしん などに優 すぐ れた経営 けいえい 手腕 しゅわん を発揮 はっき した企業 きぎょう が市場 いちば 占有 せんゆう 率 りつ (マーケット・シェア )をしだいに高 たか め,独占 どくせん 状態 じょうたい が形成 けいせい されることがある。市場 いちば 経済 けいざい ではこのような現象 げんしょう は避 さ けがたく,かつ,この種 たね の独占 どくせん は経済 けいざい 厚生 こうせい の点 てん からは問題 もんだい が少 すく ない。また,独占 どくせん の形成 けいせい に寄与 きよ した経営 けいえい の優秀 ゆうしゅう さが消滅 しょうめつ すれば,シカゴ学派 がくは の経済 けいざい 学者 がくしゃ が強調 きょうちょう するように,時間 じかん の経過 けいか につれて独占 どくせん 状態 じょうたい はしだいに解消 かいしょう される傾向 けいこう がある。
しかし,経営 けいえい の優秀 ゆうしゅう さが独占 どくせん の唯一 ゆいいつ の原因 げんいん ではない。下位 かい 企業 きぎょう を市場 いちば から排除 はいじょ する略奪 りゃくだつ 的 てき 商 しょう 慣行 かんこう や大 だい 規模 きぼ な合併 がっぺい など,上位 じょうい 企業 きぎょう の独占 どくせん 的 てき 行為 こうい が独占 どくせん を形成 けいせい ・維持 いじ することもある。とくに合併 がっぺい の影響 えいきょう は大 おお きく,たとえば19世紀 せいき 末 まつ から20世紀 せいき 初頭 しょとう と1920年代 ねんだい の2回 かい の大 だい 合併 がっぺい 運動 うんどう で,アメリカの主要 しゅよう 大 だい 企業 きぎょう は成立 せいりつ したし,日本 にっぽん やヨーロッパ でも1960年代 ねんだい の合併 がっぺい ・産業 さんぎょう 再 さい 編成 へんせい の衝撃 しょうげき は大 おお きかった。合併 がっぺい によって誕生 たんじょう した独占 どくせん は,市場 いちば で優劣 ゆうれつ の判定 はんてい を経 へ たものでないので,経済 けいざい 厚生 こうせい の点 てん からは問題 もんだい が多 おお い。
潜在 せんざい 的 てき 競争 きょうそう 者 しゃ の競争 きょうそう 圧力 あつりょく から既存 きそん 企業 きぎょう を隔離 かくり する参入 さんにゅう 障壁 しょうへき も,独占 どくせん を形成 けいせい ・維持 いじ する重要 じゅうよう な要因 よういん である。市場 いちば 規模 きぼ にくらべ効率 こうりつ 的 てき 工場 こうじょう の規模 きぼ が大 おお きすぎ,参入 さんにゅう 後 ご の価格 かかく 暴落 ぼうらく が必至 ひっし であったり,効率 こうりつ 的 てき 規模 きぼ の工場 こうじょう の建設 けんせつ 資金 しきん が膨大 ぼうだい で,潜在 せんざい 的 てき 参入 さんにゅう 者 しゃ の資金 しきん 調達 ちょうたつ 能力 のうりょく を超 こ える場合 ばあい ,すなわち規模 きぼ の経済 けいざい 性 せい が著 いちじる しい場合 ばあい は,既存 きそん 企業 きぎょう は潜在 せんざい 的 てき 参入 さんにゅう の脅威 きょうい から守 まも られ,独占 どくせん 利潤 りじゅん を享受 きょうじゅ しつづける。また,多 おお くの消費 しょうひ 財 ざい 産業 さんぎょう で,顧客 こきゃく 誘引 ゆういん の手段 しゅだん として用 もち いられる宣伝 せんでん 広告 こうこく やモデル・チェンジの費用 ひよう が,弱小 じゃくしょう 企業 きぎょう や潜在 せんざい 的 てき 参入 さんにゅう 者 しゃ には過大 かだい な負担 ふたん となり,既存 きそん 大 だい 企業 きぎょう の市場 いちば 占有 せんゆう 率 りつ が上昇 じょうしょう を続 つづ ける傾向 けいこう がみられる。これを製品 せいひん 差別 さべつ 化 か といい,市場 いちば 規模 きぼ の拡大 かくだい した今日 きょう では,参入 さんにゅう 障壁 しょうへき の形成 けいせい 要因 よういん のうちでもとくに重要 じゅうよう 度 ど が高 たか まった。
独占 どくせん 企業 きぎょう の行動 こうどう 独占 どくせん 力 りょく をもつ企業 きぎょう は,競争 きょうそう 的 てき 環境 かんきょう に置 お かれた企業 きぎょう とは異 こと なるさまざまな行動 こうどう をとる。最 もっと もありふれた独占 どくせん 的 てき 行動 こうどう は,カルテルなどによって競争 きょうそう を制限 せいげん し,価格 かかく を高水準 こうすいじゅん に固定 こてい する価格 かかく 固定 こてい price-fixingである。品目 ひんもく ごとに詳細 しょうさい な価格 かかく 表 ひょう を用意 ようい する古典 こてん 的 てき 価格 かかく カルテルをはじめ,企業 きぎょう 間 あいだ の暗黙 あんもく の合意 ごうい のみにその基礎 きそ を置 お くプライス・リーダーシップ ,全国 ぜんこく いずこの工場 こうじょう で生産 せいさん されたかにかかわりなく,業界 ぎょうかい 内 ない で設定 せってい した基準 きじゅん 地点 ちてん での工場 こうじょう 渡 わた し価格 かかく に輸送 ゆそう 費 ひ を加算 かさん した販売 はんばい 価格 かかく を設定 せってい して競争 きょうそう を制限 せいげん する基準 きじゅん 地点 ちてん 価格 かかく 制 せい basing point pricingなど,さまざまな形態 けいたい の価格 かかく 固定 こてい がある。
商品 しょうひん の性質 せいしつ 上 じょう ,転売 てんばい が困難 こんなん な商品 しょうひん の独占 どくせん 的 てき 売手 うりて は価格 かかく 差別 さべつ を行 おこな う傾向 けいこう がある。同種 どうしゅ の欲求 よっきゅう を充足 じゅうそく する商品 しょうひん もしくはその供給 きょうきゅう 先 さき を他 た にもたない買手 かいて の需要 じゅよう は,そうでない買手 かいて の需要 じゅよう にくらべ,弾力 だんりょく 性 せい が低 ひく い。この2種類 しゅるい の買手 かいて が互 たが いに商品 しょうひん を転売 てんばい したりすることが不可能 ふかのう ならば,独占 どくせん 的 てき 売手 うりて は同一 どういつ の価格 かかく をこの両者 りょうしゃ に適用 てきよう せずに,需要 じゅよう が弾力 だんりょく 的 てき な買手 かいて に低 てい 価格 かかく を,非 ひ 弾力 だんりょく 的 てき な買手 かいて に高 こう 価格 かかく を適用 てきよう して,利潤 りじゅん を増加 ぞうか させることができる。貨物 かもつ 輸送 ゆそう をはじめ各種 かくしゅ のサービス業 ぎょう で,価格 かかく 差別 さべつ が発生 はっせい することが多 おお い。
独占 どくせん 企業 きぎょう はまた,市場 いちば 分割 ぶんかつ や顧客 こきゃく 割当 わりあ てによって互 たが いに競争 きょうそう を抑制 よくせい することがある。とくに第 だい 2次 じ 大戦 たいせん 前 まえ には,染料 せんりょう や火薬 かやく などの分野 ぶんや で,欧米 おうべい 企業 きぎょう が国際 こくさい カルテル を結成 けっせい して世界 せかい の市場 いちば を分割 ぶんかつ ,独占 どくせん したことがあった。
こうした独占 どくせん 的 てき 行動 こうどう のほかに,垂直 すいちょく 的 てき 統合 とうごう や経営 けいえい 多角 たかく 化 か を進 すす めた大 だい 企業 きぎょう が競争 きょうそう 相手 あいて に激 はげ しい攻撃 こうげき を加 くわ える強圧 きょうあつ 的 てき 行動 こうどう と呼 よ ばれる企業 きぎょう 行動 こうどう がある。たとえば,多角 たかく 化 か によって一 いち 部門 ぶもん の損失 そんしつ 補 ほ 塡 (ほてん)を行 おこな える大 だい 企業 きぎょう は,市場 いちば での規律 きりつ 回復 かいふく や競争 きょうそう 相手 あいて の排除 はいじょ を目的 もくてき として,一定 いってい 期間 きかん コスト割 わ れの低 てい 価格 かかく をつける略奪 りゃくだつ 的 てき 価格 かかく 引下 ひきさ げpredatory pricingを行 おこな うことがある。製品 せいひん の最終 さいしゅう 販売 はんばい までを統合 とうごう した企業 きぎょう がたとえば原料 げんりょう 部門 ぶもん で独占 どくせん 的 てき 地位 ちい を確立 かくりつ しているとき,他 た 企業 きぎょう への原料 げんりょう 供給 きょうきゅう 価格 かかく をつりあげ,加工 かこう 部門 ぶもん に特 とく 化 か した企業 きぎょう に打撃 だげき を与 あた える行動 こうどう は,価格 かかく 圧縮 あっしゅく price squeezeと呼 よ ばれる。そのほか,他 た 企業 きぎょう と取引 とりひき しないとの条件 じょうけん をつける排他 はいた 的 てき 取引 とりひき や,相互 そうご 取引 とりひき ,抱合 だきあわ せ販売 はんばい など,個別 こべつ 企業 きぎょう 間 あいだ では有利 ゆうり な取引 とりひき であっても,競争 きょうそう 相手 あいて にとっては実質 じっしつ 的 てき に競争 きょうそう 制限 せいげん 効果 こうか をもつ商 しょう 慣行 かんこう は多 おお い。
独占 どくせん による経済 けいざい 的 てき ロス独占 どくせん の経済 けいざい 効果 こうか として最 もっと も広 ひろ く認 みと められているのは,供給 きょうきゅう 制限 せいげん と価格 かかく 引上 ひきあ げにかかわるものである。独占 どくせん 状態 じょうたい から出発 しゅっぱつ して,独占 どくせん の経済 けいざい 的 てき ロスを図 ず で見 み てみよう。独占 どくせん 企業 きぎょう は限界 げんかい 費用 ひよう (MC )と限界 げんかい 収入 しゅうにゅう (MR )を一致 いっち させる数量 すうりょう (Qm )を供給 きょうきゅう し,価格 かかく はPm と高水準 こうすいじゅん に設定 せってい する。独占 どくせん が解体 かいたい されると価格 かかく はMC に等 ひと しいPc に下落 げらく し,供給 きょうきゅう 量 りょう はQc に増加 ぞうか する。すなわち,独占 どくせん は供給 きょうきゅう 制限 せいげん によって価格 かかく を引 ひ き上 あ げ,独占 どくせん 利潤 りじゅん (Pm ABPc )を獲得 かくとく するとともに,ABC に相当 そうとう する資源 しげん 配分 はいぶん 上 じょう のロスallocative lossが発生 はっせい する。このロスは現実 げんじつ にはかなり小 ちい さいのではないかという疑問 ぎもん が提出 ていしゅつ されたが,1964年 ねん ライベンシュタインHarvey Leibenstein(1922-94)により,競争 きょうそう 状態 じょうたい から離 はな れるほどコストの上昇 じょうしょう をもたらすというX(エツクス)非 ひ 効率 こうりつ X-inefficiencyの概念 がいねん が提示 ていじ された。競争 きょうそう 状態 じょうたい から隔離 かくり された独占 どくせん 的 てき 大 だい 企業 きぎょう では,経営 けいえい 者 しゃ も労働 ろうどう 者 しゃ も最大 さいだい 効率 こうりつ 追求 ついきゅう の動機 どうき をもたず,組織 そしき 効率 こうりつ が低下 ていか しがちである。X非 ひ 効率 こうりつ を考慮 こうりょ して,完全 かんぜん 競争 きょうそう 下 か の限界 げんかい 費用 ひよう がMC t (<MC )であるとすると,価格 かかく はPc t ,供給 きょうきゅう 量 りょう はQc t となる。つまり,独占 どくせん によるほんとうのロスは,X非 ひ 効率 こうりつ (Pc BEPc t )と資源 しげん 配分 はいぶん 上 じょう のロス(ABC )と拡大 かくだい された資源 しげん 配分 はいぶん 上 じょう のロス(BCGE )の合計 ごうけい になる。このようにX非 ひ 効率 こうりつ を考慮 こうりょ に入 い れると,独占 どくせん による経済 けいざい 厚生 こうせい のロスはけっして小 ちい さくない,という考 かんが え方 かた が一般 いっぱん 的 てき である。
研究 けんきゅう 開発 かいはつ における独占 どくせん の効果 こうか 独占 どくせん の効果 こうか は価格 かかく や供給 きょうきゅう 量 りょう だけでなく,研究 けんきゅう 開発 かいはつ や広告 こうこく 活動 かつどう にも現 あらわ れる。研究 けんきゅう 開発 かいはつ は経済 けいざい の進歩 しんぽ に不可欠 ふかけつ であるが,それに必要 ひつよう な科学 かがく 技術 ぎじゅつ 水準 すいじゅん の飛躍 ひやく 的 てき 上昇 じょうしょう により,天才 てんさい 的 てき 個人 こじん よりも企業 きぎょう ,とくに大 だい 企業 きぎょう の研究 けんきゅう 開発 かいはつ 面 めん での役割 やくわり が大 おお きくなってきた。研究 けんきゅう 開発 かいはつ 資金 しきん の調達 ちょうたつ ,研究 けんきゅう 開発 かいはつ のもたらす利潤 りじゅん による動機 どうき づけのいずれの面 めん でも,独占 どくせん 的 てき 大 だい 企業 きぎょう が研究 けんきゅう 開発 かいはつ 活動 かつどう をリードする十分 じゅうぶん な根拠 こんきょ があるとするのが,シュンペーター =ガルブレース仮説 かせつ である。この仮説 かせつ には異論 いろん も多 おお く,多 おお くの実証 じっしょう 研究 けんきゅう によれば,若干 じゃっかん の例外 れいがい 的 てき 産業 さんぎょう を除 のぞ けば,競争 きょうそう の要素 ようそ に乏 とぼ しい分野 ぶんや では研究 けんきゅう 開発 かいはつ 活動 かつどう は活発 かっぱつ でないことが多 おお い。また,市場 いちば が独占 どくせん 化 か されると,価格 かかく 競争 きょうそう が回避 かいひ される一方 いっぽう ,広告 こうこく やモデル・チェンジなどの非 ひ 価格 かかく 競争 きょうそう が激化 げきか し,販売 はんばい 費 ひ が膨張 ぼうちょう するという懸念 けねん も強 つよ い。
このほか,独占 どくせん 化 か によって価格 かかく の下方 かほう 硬直 こうちょく 性 せい が強 つよ まり,一般 いっぱん 的 てき 物価 ぶっか 騰貴 とうき の原因 げんいん になりはしないかという管理 かんり 価格 かかく インフレ,独占 どくせん 価格 かかく の非 ひ 伸縮 しんしゅく 性 せい が生産 せいさん や雇用 こよう の大幅 おおはば な変動 へんどう をもたらさないか,独占 どくせん 企業 きぎょう の経営 けいえい 者 しゃ に与 あた えられる自由 じゆう 裁量 さいりょう 権 けん が,従業 じゅうぎょう 員 いん の採用 さいよう に際 さい して女性 じょせい や少数 しょうすう 民族 みんぞく に差別 さべつ 的 てき に行使 こうし されないかといった諸 しょ 問題 もんだい にも,関心 かんしん がもたれるに至 いた った。
独占 どくせん への対策 たいさく 独占 どくせん 規制 きせい の必要 ひつよう を説 と く声 こえ は経済 けいざい 学 がく そのものと同 おな じほど古 ふる い歴史 れきし をもつ。今日 きょう ではほぼ3種類 しゅるい の独占 どくせん 対策 たいさく が講 こう じられている。その第 だい 1は,規模 きぼ の経済 けいざい 性 せい が市場 いちば 経済 けいざい の機能 きのう を妨 さまた げない産業 さんぎょう 分野 ぶんや に,カルテルやトラスト,不 ふ 公正 こうせい な取引 とりひき 方法 ほうほう などを禁 きん じた独占 どくせん 禁止 きんし 法 ほう を適用 てきよう することである。独占 どくせん 禁止 きんし 法制 ほうせい には各国 かっこく でかなりの差異 さい があるが,1970年代 ねんだい には発展 はってん 途上 とじょう 国 こく でも独占 どくせん 禁止 きんし 法 ほう 制定 せいてい の動 うご きがあった。
第 だい 2は,私企業 しきぎょう の活動 かつどう を免許 めんきょ 制 せい や料金 りょうきん の認可 にんか 制 せい によって政府 せいふ が直接 ちょくせつ 規制 きせい する方法 ほうほう である。通信 つうしん ,交通 こうつう ,金融 きんゆう など多 おお くの分野 ぶんや で直接 ちょくせつ 規制 きせい が加 くわ えられていたが,70年代 ねんだい 以降 いこう アメリカを中心 ちゅうしん に規制 きせい 緩和 かんわ の動 うご きが目立 めだ つ。最後 さいご に,私企業 しきぎょう の活動 かつどう になじまない分野 ぶんや では公 おおやけ 企業 きぎょう を設立 せつりつ して,独占 どくせん の弊害 へいがい を防 ふせ ぐこともある。
このほかに,政府 せいふ の資材 しざい 調達 ちょうたつ や国際 こくさい 貿易 ぼうえき 政策 せいさく ,特許 とっきょ 制度 せいど など市場 いちば での競争 きょうそう に直接 ちょくせつ 影響 えいきょう を及 およ ぼす政策 せいさく があるが,それらの本来 ほんらい の目的 もくてき は独占 どくせん 対策 たいさく 以外 いがい にあることが多 おお い。執筆 しっぴつ 者 しゃ :岩崎 いわさき 晃 あきら
マルクス経済 けいざい 学 がく からみた独占 どくせん 他 た の多数 たすう の資本 しほん とはかけ離 はな れた大 だい 規模 きぼ な資本 しほん (企業 きぎょう または企業 きぎょう グループ)が,単独 たんどく または少数 しょうすう で,関連 かんれん する分野 ぶんや の生産 せいさん ,流通 りゅうつう ,金融 きんゆう などに支配 しはい 的 てき 影響 えいきょう 力 りょく を及 およ ぼす状態 じょうたい をいう。また,その状態 じょうたい にある資本 しほん (独占 どくせん 資本 しほん )そのものを指 さ すこともある。〈自由 じゆう 競争 きょうそう 〉という言葉 ことば と対比的 たいひてき に用 もち いられるが,資本 しほん 主義 しゅぎ 的 てき な私企業 しきぎょう 間 あいだ の競争 きょうそう のあり方 かた が変 か わるということであって,一般 いっぱん に競争 きょうそう がなくなるわけではない。つまり,主要 しゅよう な産業 さんぎょう 分野 ぶんや に独占 どくせん が成立 せいりつ すると,それまで多数 たすう の小規模 しょうきぼ 企業 きぎょう による自由 じゆう 競争 きょうそう が一般 いっぱん 的 てき だった段階 だんかい でみられたのとは異 こと なる特徴 とくちょう が,資本 しほん 主義 しゅぎ 経済 けいざい の全体 ぜんたい 的 てき な動 うご きのうえに現 あらわ れるようになる,ということである。
独占 どくせん が生 う まれる背景 はいけい 19世紀 せいき 末葉 まつよう 以後 いご の後期 こうき 資本 しほん 主義 しゅぎ が,それ以前 いぜん の自由 じゆう 主義 しゅぎ 時代 じだい との対比 たいひ において,まさにそのような特徴 とくちょう を示 しめ すものであった。当時 とうじ ,遅 おく れて資本 しほん 主義 しゅぎ 化 か したドイツやアメリカが,しだいにイギリス に対抗 たいこう するようになるが,それらの国 くに では重化学 じゅうかがく 工業 こうぎょう など巨大 きょだい な設備 せつび を要 よう する産業 さんぎょう が,個人 こじん 企業 きぎょう の自己 じこ 蓄積 ちくせき にかわる株式会社 かぶしきがいしゃ 組織 そしき の大 だい 企業 きぎょう によって推進 すいしん され,また,イギリス型 がた の商業 しょうぎょう 銀行 ぎんこう 業務 ぎょうむ とは異 こと なる産業 さんぎょう 金融 きんゆう が重要 じゅうよう な役割 やくわり を果 は たすことになり,産業 さんぎょう と金融 きんゆう の融合 ゆうごう による少数 しょうすう の独占 どくせん 体 たい に経済 けいざい 力 りょく が集中 しゅうちゅう されていった。それとともに,資本 しほん 主義 しゅぎ 世界 せかい の経済 けいざい 動向 どうこう には,イギリスを〈世界 せかい の工場 こうじょう 〉としていた時代 じだい とは異 こと なる種々 しゅじゅ の新 あたら しい現象 げんしょう が現 あらわ れてくる。その代表 だいひょう 的 てき なものが景気 けいき 循環 じゅんかん の発現 はつげん のしかたの変化 へんか であった。また,経済 けいざい 政策 せいさく 面 めん では,それまでの自由 じゆう 放任 ほうにん 主義 しゅぎ (レッセ・フェール )の傾向 けいこう が転換 てんかん し,帝国 ていこく 主義 しゅぎ の時代 じだい を迎 むか えることになった。つまり,独占 どくせん の力 ちから は,経済 けいざい 活動 かつどう のなかで発揮 はっき されるだけではなく,政治 せいじ の領域 りょういき でも発揮 はっき されて,経済 けいざい 政策 せいさく はもちろん,外交 がいこう ・軍事 ぐんじ にまでも影響 えいきょう を及 およ ぼしたのであった。この状況 じょうきょう は今日 きょう でも基本 きほん 的 てき には続 つづ いているといってよいが,2度 ど の世界 せかい 大戦 たいせん を経 へ て主要 しゅよう 国 こく の政治 せいじ 状況 じょうきょう が変 か わったため,独占 どくせん の力 ちから を制限 せいげん する政策 せいさく が重要 じゅうよう 性 せい を増 ま し,それが経済 けいざい の動向 どうこう に大 おお きな影響 えいきょう をもたらすようになっている。
経済 けいざい 学 がく の抽象 ちゅうしょう モデルでは,市場 いちば の売手 うりて または買手 かいて として文字 もじ どおりひとり占 じ めの独占 どくせん を,売手 うりて や買手 かいて が二 ふた つの複 ふく 占 うらない や三 みっ つ以上 いじょう の寡占 かせん と区別 くべつ することもあるが,歴史 れきし 上 じょう 広 ひろ く行 おこな われてきた用語 ようご 法 ほう では単一 たんいつ の場合 ばあい だけに限定 げんてい されない。〈独占 どくせん 禁止 きんし 法 ほう 〉のような用例 ようれい もこのような伝統 でんとう によるものである。ただし,最近 さいきん では,同 おな じ意味 いみ を表 あらわ すのに寡占 かせん という言葉 ことば も多用 たよう されるようになっている。資本 しほん 主義 しゅぎ の初期 しょき にも,19世紀 せいき 末 まつ 以降 いこう とは異 こと なった意味 いみ で独占 どくせん が大 おお きな役割 やくわり を果 は たした。経済 けいざい 上 じょう の競争 きょうそう 制限 せいげん の意味 いみ でこの言葉 ことば が広 ひろ く用 もち いられるようになったのはこの時代 じだい であり,国王 こくおう や諸侯 しょこう によって個人 こじん や団体 だんたい に与 あた えられる,特定 とくてい 商品 しょうひん ・特定 とくてい 地域 ちいき の貿易 ぼうえき など特定 とくてい の経済 けいざい 活動 かつどう に関 かん する排他 はいた 的 てき 特権 とっけん を意味 いみ するものであった。これらの独占 どくせん は,前期 ぜんき 重 じゅう 商 しょう 主義 しゅぎ 政策 せいさく の一環 いっかん として,王 おう や諸侯 しょこう の財政 ざいせい をうるおしただけでなく,初期 しょき の資本 しほん 蓄積 ちくせき に大 おお いに貢献 こうけん したが,やがて弊害 へいがい が強 つよ まり,イギリスでは17世紀 せいき 後半 こうはん に,また大陸 たいりく ヨーロッパでも18世紀 せいき 中 ちゅう に廃止 はいし に向 む かった。19世紀 せいき 末 まつ 以後 いご の独占 どくせん は,政治 せいじ 権力 けんりょく によって与 あた えられたものではなく,資本 しほん 主義 しゅぎ の自生 じせい 的 てき な発展 はってん のなかから経済 けいざい 力 りょく そのものとして生 う み出 だ されたものであり,その力 ちから によって逆 ぎゃく に政治 せいじ 権力 けんりょく を左右 さゆう するようにもなったのである。
独占 どくせん の市場 いちば 支配 しはい 力 りょく 自由 じゆう 競争 きょうそう が行 おこな われていると,市場 いちば で取引 とりひき される商品 しょうひん の価格 かかく や量 りょう を個々 ここ の売手 うりて ・買手 かいて が意図 いと 的 てき に操作 そうさ することはできない。しかし独占 どくせん の場合 ばあい には,そのような操作 そうさ がある程度 ていど 可能 かのう になる。このような力 ちから を市場 いちば 支配 しはい 力 りょく と呼 よ ぶ。市場 いちば 支配 しはい 力 りょく によって売手 うりて が高 たか く維持 いじ している価格 かかく が独占 どくせん 価格 かかく である。取引 とりひき 相手 あいて の状況 じょうきょう をみて価格 かかく 差別 さべつ を設 もう けることもある。売手 うりて として高 たか い価格 かかく を,買手 かいて として安 やす い価格 かかく を強 し いるほか,リベート,付帯 ふたい サービス,他 た 商品 しょうひん との抱合 だきあわ せなど,種々 しゅじゅ の条件 じょうけん を強 し いることによっても利益 りえき を高 たか めることが可能 かのう であり,自由 じゆう 競争 きょうそう のもとで実現 じつげん されるであろう利潤 りじゅん よりも大 おお きい,いわゆる独占 どくせん 利潤 りじゅん を獲得 かくとく する。取引 とりひき 相手 あいて に対 たい して,このように自分 じぶん との取引 とりひき を自分 じぶん に有利 ゆうり に行 おこな わせるというだけでなく,さらに,自分 じぶん 以外 いがい との取引 とりひき に干渉 かんしょう することによって,自分 じぶん の競争 きょうそう 相手 あいて (同業 どうぎょう の企業 きぎょう )の販路 はんろ を閉 と ざしたり調達 ちょうたつ を困難 こんなん にしたりもする。このようなことは,商品 しょうひん の売買 ばいばい に際 さい してだけでなく,運輸 うんゆ や金融 きんゆう の面 めん でも行 おこな われて,競争 きょうそう 相手 あいて を倒 たお し,市場 いちば 支配 しはい 力 りょく をいっそう高 たか める手段 しゅだん になるのである。
単独 たんどく で十分 じゅうぶん な市場 いちば 支配 しはい 力 りょく を発揮 はっき できない場合 ばあい には,複数 ふくすう の大 だい 資本 しほん の共同 きょうどう 行為 こうい によってこれを実現 じつげん しようとする。価格 かかく や生産 せいさん 量 りょう を協定 きょうてい するカルテルや,進 すす んで共同 きょうどう 販売 はんばい 機関 きかん を設 もう けるシンジケート などがその例 れい である。法律 ほうりつ で共同 きょうどう 行為 こうい が禁 きん じられている場合 ばあい には,プライス ・リーダーシップ など共謀 きょうぼう の証拠 しょうこ を残 のこ さない方法 ほうほう がとられる。しかし,協定 きょうてい 違反 いはん 者 しゃ に制裁 せいさい を加 くわ えることができなくなるから,協定 きょうてい そのものを無用 むよう にするような単一 たんいつ の大 だい 規模 きぼ 企業 きぎょう 化 か の道 みち がいっそう重要 じゅうよう 性 せい を増 ま す。大 だい 規模 きぼ 化 か は,新規 しんき 拡張 かくちょう によらなくとも既存 きそん 企業 きぎょう との結合 けつごう によって急速 きゅうそく に実現 じつげん される。合併 がっぺい によって名実 めいじつ ともに同 どう 一 いち 企業 きぎょう になるほか,多数 たすう の企業 きぎょう の議決 ぎけつ 権 けん 株 かぶ を信託 しんたく させるトラストや持株 もちかぶ 会社 かいしゃ による支配 しはい (コンツェルン)も有力 ゆうりょく な手段 しゅだん である。より緩 ゆる やかな結合 けつごう を,株式 かぶしき の持合 もちあ いや重役 じゅうやく 派遣 はけん ,業務 ぎょうむ 提携 ていけい などによって実現 じつげん している企業 きぎょう 集団 しゅうだん の存在 そんざい も,ことに他 た の形 かたち での結合 けつごう が違法 いほう とされているような場合 ばあい にはいっそう重要 じゅうよう である。このような結合 けつごう 方式 ほうしき の多 おお くは一 ひと つの産業 さんぎょう 分野 ぶんや の活動 かつどう に限定 げんてい されないから,独占 どくせん の力 ちから は,多面 ためん 的 てき に生産 せいさん ,流通 りゅうつう ,金融 きんゆう の諸 しょ 分野 ぶんや にわたって発揮 はっき されうるものとなり,少数 しょうすう の巨大 きょだい グループが経済 けいざい 界 かい 全体 ぜんたい に支配 しはい 的 てき な影響 えいきょう 力 りょく をもつようになる。第 だい 2次 じ 大戦 たいせん 前 まえ の日本 にっぽん の財閥 ざいばつ は,強 つよ い結合 けつごう 体 たい の代表 だいひょう 的 てき な例 れい であるが,戦後 せんご の財閥 ざいばつ 解体 かいたい を経 へ て,より緩 ゆる やかな企業 きぎょう 集団 しゅうだん として再 さい 編成 へんせい されてきた。
このような独占 どくせん 資本 しほん を,大 だい 産業 さんぎょう 資本 しほん と大 だい 銀行 ぎんこう 資本 しほん の融合 ゆうごう という点 てん に着目 ちゃくもく して,金融 きんゆう 資本 しほん とも呼 よ ぶ。二 ふた つの言葉 ことば がほぼ同 おな じ対象 たいしょう を指 さ して用 もち いられているわけであるが,ニュアンスとしては,経済 けいざい 力 りょく 集中 しゅうちゅう に焦点 しょうてん を合 あ わせたのが前者 ぜんしゃ ,結合 けつごう の組織 そしき における金融 きんゆう の役割 やくわり に焦点 しょうてん を合 あ わせたのが後者 こうしゃ といえよう(用語 ようご の差 さ が学説 がくせつ の差 さ を反映 はんえい している場合 ばあい もある)。独占 どくせん の力 ちから は,当然 とうぜん ,政治 せいじ の領域 りょういき でも行使 こうし され,産業 さんぎょう 政策 せいさく ,通商 つうしょう 政策 せいさく など,自己 じこ に有利 ゆうり な経済 けいざい 政策 せいさく が求 もと められるだけでなく,海外 かいがい での勢力 せいりょく 圏 けん 確保 かくほ に国家 こっか 権力 けんりょく を動員 どういん し,権益 けんえき 擁護 ようご のための海外 かいがい 派兵 はへい や列強 れっきょう による植民 しょくみん 地 ち 支配 しはい が公然 こうぜん と正当 せいとう 化 か される。こうして,外交 がいこう 的 てき 対立 たいりつ から戦争 せんそう の不可避 ふかひ 性 せい も高 たか まる。独占 どくせん の要請 ようせい する国家 こっか の政策 せいさく 体系 たいけい は帝国 ていこく 主義 しゅぎ と呼 よ ばれて,時代 じだい を特徴 とくちょう づけるものとなった。
反 はん 独占 どくせん の運動 うんどう 独占 どくせん による収奪 しゅうだつ は,取引 とりひき や競争 きょうそう の相手 あいて になる中小 ちゅうしょう 企業 きぎょう ,農民 のうみん ,あるいは消費 しょうひ 者 しゃ から,当然 とうぜん ,非難 ひなん の対象 たいしょう とされる。反 はん 独占 どくせん 運動 うんどう が高揚 こうよう し立法 りっぽう 措置 そち が最 もっと も早 はや くとられた国 くに はアメリカで,1890年 ねん にシャーマン法 ほう が成立 せいりつ している。民主 みんしゅ 主義 しゅぎ 的 てき な政治 せいじ 制度 せいど が定着 ていちゃく しており,しかも東部 とうぶ の大 だい 資本 しほん によって不利 ふり な取引 とりひき を強 し いられる農民 のうみん や中小 ちゅうしょう 企業 きぎょう 主 ぬし が開拓 かいたく 地 ち で新 あたら しい政治 せいじ 的 てき 地盤 じばん をつぎつぎに形成 けいせい できたからである。ヨーロッパや日本 にっぽん のように,資本 しほん 主義 しゅぎ の発展 はってん とともに近代 きんだい 国家 こっか への道 みち を歩 あゆ みつつも,伝統 でんとう 的 てき な権力 けんりょく 機構 きこう が十分 じゅうぶん に解体 かいたい されていなかった国々 くにぐに では,その機構 きこう がむしろ独占 どくせん に有利 ゆうり に利用 りよう されることになって,大衆 たいしゅう 的 てき 基礎 きそ に立 た つ反 はん 独占 どくせん 政策 せいさく が重要 じゅうよう な政策 せいさく スローガンになるような条件 じょうけん を欠 か いていた。アメリカでも,独占 どくせん は,選挙 せんきょ を左右 さゆう することまではできないにしても,実質 じっしつ 的 てき に政府 せいふ を動 うご かす力 ちから はもっていたから,反 はん 独占 どくせん 運動 うんどう の特別 とくべつ の高揚 こうよう 期 き を除 のぞ けば,反 はん トラスト法 ほう の適用 てきよう を骨抜 ほねぬ きにし,むしろ法文 ほうぶん 上 じょう の〈取引 とりひき 制限 せいげん のための共謀 きょうぼう 〉を大 だい 企業 きぎょう の共同 きょうどう 行為 こうい にではなく労働 ろうどう 組合 くみあい に適用 てきよう して弾圧 だんあつ の道具 どうぐ にするというような露骨 ろこつ な逆用 ぎゃくよう も頻繁 ひんぱん に行 おこな われた。しかし,両 りょう 大戦 たいせん を経 へ て,民主 みんしゅ 主義 しゅぎ を掲 かか げる連合 れんごう 国 こく 側 がわ が勝利 しょうり し,しかも,外 そと に社会 しゃかい 主義 しゅぎ 圏 けん の成立 せいりつ ・拡大 かくだい ,内 ない に軍事 ぐんじ 動員 どういん の必要 ひつよう や戦後 せんご の混乱 こんらん の沈静 ちんせい 化 か の必要 ひつよう から,労働 ろうどう 者 しゃ や農民 のうみん などの経済 けいざい 的 てき 弱者 じゃくしゃ に対 たい しても政治 せいじ 上 じょう の権利 けんり や経済 けいざい 上 じょう の保障 ほしょう を与 あた える方向 ほうこう に政治 せいじ のあり方 かた が変 か わらざるをえなかった。アメリカ以外 いがい の主要 しゅよう 資本 しほん 主義 しゅぎ 国 こく も,独占 どくせん 資本 しほん の露骨 ろこつ な力 ちから の行使 こうし を制限 せいげん する政策 せいさく をとるようになった。そのなかで通常 つうじょう 反 はん 独占 どくせん 政策 せいさく の柱 はしら と考 かんが えられているのは競争 きょうそう 制限 せいげん 的 てき な行為 こうい や不 ふ 公正 こうせい な取引 とりひき を取 と り締 し まるための独占 どくせん 禁止 きんし 法 ほう である。もっとも,このいわゆる独 どく 禁 きん 政策 せいさく は中途半端 ちゅうとはんぱ なものにならざるをえない。この政策 せいさく の理論 りろん 的 てき 根拠 こんきょ の一 ひと つは,競争 きょうそう 条件 じょうけん の回復 かいふく による経済 けいざい 効率 こうりつ の上昇 じょうしょう ということであるが,競争 きょうそう そのものの中 なか に資本 しほん の大 だい 規模 きぼ 化 か や競争 きょうそう 企業 きぎょう の淘汰 とうた の可能 かのう 性 せい が内包 ないほう されているから,大 だい 規模 きぼ 化 か への傾向 けいこう に制限 せいげん を加 くわ えることが資本 しほん の活力 かつりょく をそぐという形 かたち で経済 けいざい の効率 こうりつ 性 せい を損 そこ なう可能 かのう 性 せい も否定 ひてい できないのである。また,企業 きぎょう 活動 かつどう に種々 しゅじゅ の制約 せいやく を加 くわ えられる大 だい 資本 しほん は,その政治 せいじ 的 てき 影響 えいきょう 力 りょく を行使 こうし して,たえず独 どく 禁 きん 政策 せいさく を形骸 けいがい 化 か しようとする。さらに,法律 ほうりつ の性質 せいしつ 上 じょう ,独占 どくせん そのものよりも,中小 ちゅうしょう 企業 きぎょう の共同 きょうどう 行為 こうい のほうが網 あみ にかかりやすいといった問題 もんだい も無視 むし しえない。執筆 しっぴつ 者 しゃ :春田 はるた 素夫 もとお